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英雄の巻き込まれ建国譚  作者: 信礼智義
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第1話の1 ターイエへ

しばらくお休みをいただきました。「英雄の冒険旅行譚」「英雄の人生探訪旅行譚」の第3部になります。

今回は中編ほどのボリュームになりますが、お付き合いいただければ大変ありがたいです。

王女様護衛というシャオイエでの冒険を終えた九頭英雄は、シャオイエで聞いたターイエのヘイス族の里に隠されている古代ユダヤの宝物である「契約の箱」について、是非とも調べたいと思い、大学の教授に連絡を取って、日本には戻らず、直接ターイエに行きたいと伝えた。

 教授も面白い伝説だといい、シャオイエでのレポートをメールで提出することを条件に英雄に契約の箱を調査する許可を出した。

 そして、英雄はシャオイエでのレポートを仕上げると、ターイエに出発した。


ヘイス族の元にある契約の箱を見るためにターイエに向かった英雄には連れがいた。「なんで、マーシャも来ているの」英雄は言った。

「だって、英雄だけそんな面白そうなものみるなんで許されないわよ」マーシャは言った。

マーシャはシャオイエ王国の第2王女で、英雄が暗殺者から命を守った女の子であった。

「それにもう少し一緒に旅がしたいし。お別れしたら今度はいつ会えるかわからないもの」マーシャは小声で言った。


マーシャにはお付きの護衛兼世話役として二人の女性が付いていた。年は20代半ばをすこしすぎているぐらいだろうか。一人は髪をポニーテールにしている長身の女性で、目が鋭く、顔は美しいが冷たい感じのする人だった。もう一人は背はそんなに高くはないが、微笑みを絶やさない、一見優しそうな人だった。ただ、英雄を見る目はとても冷たかった。

「サルパと申します」「ニルパと申します」二人はとても友好的とは言えない目で英雄に挨拶をした。

「二人は子供の時から私たち姉妹の面倒を見てくれた信用置ける使用人なの。私はお姉さまのように思っているわ」マーシャはニコニコしながら言った。


4人は車で国境の町に向かって進んでいた。ターイエとシャオイエは国境がつながっている。なので、陸路で行くことが可能であった。

マーシャが外を見ている隙にサルパは英雄に言った。「私たちはあくまでマーシャ姫の護衛であり、あなたを守る義務はありません。自分で何とかしてください。いえ、はっきり言ってこの旅の最中にあなたを亡き者にしたいと思っています」真顔で言われた。

「えーと、なんでそんなに嫌われているの?」英雄は疑問に思い、首をかしげた。

「あなたは可愛いマーシャ様の心を射止めたと聞きます。こんな弱弱しい、何のとりえもない外国人なんかに私たちが目に入れてもいたくないほど大切に思っているマーシャ姫をどうして取られなくてはならないのですか」静かな声で言った。

「それって僕に言われても」英雄は困惑した。第一マーシャとは友達だけど、恋人というわけではないのですが、心の中で英雄は思った。

「せめて、同じ外国人でもこの前のクーデターからターイエ王家を救い、ターイエの大英雄と言われた方ならば涙を呑んで諦めますが、よりにもよってあなたなんかに惹かれるなんて……」サルパは悔しそうに言って、英雄をにらんだ。

英雄は、それ僕なんだけど、と思ったが、ややこしくなりそうなので黙って、外を向いた。


国境についた一行はターイエ軍の出迎えがあった。

武装した100名ばかりの兵士の中、旧日本陸軍の軍服を着た老人が民族服を着た少女に付き添われながら立っていた。

英雄は思わず「少尉殿!」と叫んで駆け寄った。

老人は前にターイエでの反乱事件に巻き込まれ、英雄にとって忘れられない大冒険をした際、お世話になった旧日本陸軍の軍人で、鈴木昭男少尉と言った。彼にそそのかされて、英雄も旧日本陸軍(?)に徴兵され、軍曹の階級をもらっていた。

「なんだ、九頭軍曹じゃないか。久しぶりだな。元気にしとったか。それにしても変なところから来たな」鈴木少尉はびっくりしたように言った。

「少尉殿もお元気で。研究のため、シャオイエに行く機会があって、その足でこちらに来たものですから。あっと、元帥閣下とお呼びした方がよろしいでしょうか」

鈴木少尉はターイエでの軍の反乱事件を解決した功労者でターイエ軍の名誉元帥の地位をもらっていた。

「貴様と俺は日本陸軍の軍人でもある。日本軍の階級で呼び合うのが正しいだろう」

二人は微笑んだ。英雄はこの老人のことが好きだった。

英雄の腕を引っ張るものがいた。見ると、鈴木少尉の傍らにいる少女が服の裾を引っ張っていた。

「アプリちゃん久しぶり」英雄は笑顔で言った。彼女とは前にターイエで冒険をした際、知り合った子だ。鈴木少尉のひ孫にあたり、鈴木少尉のお世話役兼ストッパーの役割を担っていた。

「ヒデオ、いいえ旦那様お帰りなさいませ」アプリは笑顔で答えた。

英雄は顔をこわばらせた。やばい、結婚のこと忘れていた、と思った。アプリちゃんは鈴木少尉から英雄の嫁にやると言われていたのだった。

えーと、アプリちゃん…」

「ヒデオ、そういえば伝えておいた方がいいだろうと思うのだが、お前とアプリは結婚することに決まったからな」少尉はこともなげに言った。

「少尉殿、それは…」

「その前にスラーシャ姫とホンス族の娘もお前の嫁になるからな」

「えっ、ちょっと待ってください。何が何だか」英雄はとても困惑した。

「ヒデオ、結婚ってどういうこと?」マーシャが後ろから迫っていた。その目は完全に座っていた。

「ごめん、何が何だかわからない」英雄も困惑していた。

その時鈴木少尉が言った。「貴殿がシャオイエの王女か。私はターイエ王国元帥アキオ・スズキ・ヘイスである。貴殿たちを王宮に案内するために参った」

「ご挨拶ありがとうございます。わたくし、シャオイエ王国第2皇女マーシャ・シャオイエでございます。元帥閣下に直接お迎えいただき、大変光栄です」マーシャは礼をしながら返答した。

「それで、ヒデオの話はどういうことなのでしょうか。スラーシャ姫と結婚されるとか」マーシャは尋ねた。

「それは長くなるので、車の中でお話ししましょう」少尉は言った。

鈴木少尉、アプリちゃん、私、マーシャ、サルパとニルパが同じ車に乗った。

そこで、鈴木少尉は九頭軍曹について話し始めた。

いわく、英雄は第一皇女を(たぐい)まれなる知恵で無事首都を脱出させ、さわやかな弁舌でヘイス族を説得し国王の奪回に協力させ、なんと単身で王宮に忍び込み国王一家を助けだし、知恵を持って反乱軍を壊滅させ、再び王家に王位を戻した大功績をあげ、この国の准将の位と第一級国家英雄勲章を授けられたことをマーシャ達三人に話した。

鈴木少尉の話を聞き、マーシャ達はびっくりして黙ってしまった。

「英雄が列車の中で言ったことは本当だったんだ」マーシャは言った。

「それで、ターイエ王家はこの九頭軍曹を王家にとりこむことにしたのだ。手始めに第一皇女のスラーシャ姫を娶せることで王族の一員とし、そこに今回のクーデター転覆に最大の手柄を立てたヘイス族と、反乱の首謀者ティガル将軍の出身部族であるため力を落としたがターイエで一番人口が多く、多くの軍人を輩出して政治的な力が強いホンス族、その二つの部族の娘をこいつに娶せることにした。まあ、政略結婚だな」鈴木少尉はこともなげに言った。

「この国ではこいつは大英雄だ。嫁を出したいやつはいくらでもいる。この国の伝統では、嫁は4人まで取れるから、王はそれをうまく使って王家の政治的な力を保つつもりだろうな」鈴木少尉はつづけて、「あと、こいつにはもう一つ空きがある。王はそれも利用するつもりだろう。まだ誰にするかは決めていないようだがな」と言った。

「ちょっと待ってください。僕の意思はどうなるのですか」英雄は言った。

「これは極めて政治的な世界の話だ。軍曹の意思は関係ない。それに聞くが、スラーシャ姫は嫌いか?」

「いえ、そんなことはありません」英雄は言った。彼女は一緒に冒険した仲だし、とても美人だし、また、性格もお姫様なのに結構気さくなスラーシャ姫、愛称でスラさんと呼んでいいと言われた、を嫌うはずがない、でもれっきとしたお姫様と結婚だなんて考えたこともなかった、と英雄は困惑していた。

「アプリはどうか」鈴木少尉の問いに「年齢が…」英雄が言った。

アプリはきょとんとしながら言った。「私、結婚できる年齢ですよ。すでに子供も産めますし」「いや、そうではなくて」「旦那様は私のことが嫌いなのですか?」泣きそうな顔で言ってきた。「そんなことない。大好きだよ」英雄はあわてていった。

「じゃ問題ないですね」アプリはにこっと微笑みながら言った。やられた!と英雄は思った。

「少尉殿、ホンス族の子と言うのは、いくつぐらいなのですか?」英雄は尋ねた。

「たしか、アプリより少し上だと聞いたな」少尉はこともなげに言った。

アプリちゃんより少し上ってまだ、13・4歳ぐらいかよ!一体全体何考えているのだこの国は、と英雄は思った。

「ねえ、あと一つ空きがあるといったわね」それまで黙っていたマーシャは言った。

「ああ、空いておるぞ」少尉は答えた。

「そこ、私、予約」マーシャは顔を赤らめながら言った。

サルパとニルパはあわてていった。「お待ちください。マーシャ様」「そうです。国王陛下にお話ししてから出ないと」

「ぼやぼやしていると誰かに取られちゃう。だったら私が嫁になる。いいわねヒデオ!」

「はい!」英雄は思わず答えてしまった。

少尉は驚いた顔で「お前隣の国のお姫様まで惚れさせたのか。すごいな」と笑っていた。

契約の箱を調べに来たのにどうしてこうなった、と英雄は頭を抱えた。


頭を抱えている英雄を見て、「なあ、軍曹。スラーシャ姫はお前のことが好きなんだぞ。姫はお前を婿に迎えるよう必死に王を説得したそうだ」と鈴木少尉は穏やかに言った。

「本来、外国人、それも平民が王家の婿になるなんて考えられない。実際、皇太子は反対していたそうだからな」

「そうなのですか?」皇太子とは会ったことが何回かあるけど、そんなに嫌われているとは思わなかった、と英雄は思った。

「それだけ王家というものは誇り高いのだよ。王はお前を利用するつもりでこの結婚に賛成しているようだが、皇太子はかなり王家としてのプライドが高い性格だからな」少尉は言った。

「この婚姻を断るのはお前の勝手だ。ただ、スラーシャ姫は悲しむだろうな」そう鈴木少尉は言うとそのまま黙ってしまった。

自分はスラさんのことをどう思っているのだろう、と英雄は思った。

一緒に旅した、一緒に危機を乗り越えた、一緒に冒険して楽しかった、そんなスラさんは嫌いではない、いや、結構好きだと思う、英雄は考えた。

でも王族の一員のとなるのは僕にとって荷が重い、英雄は思った。

でもスラさんが僕と結婚するためにいろいろ骨を折ったらしいし、スラさんはかなり美人だ、おそらくこれを逃したらこんな美人と結婚できるチャンスはないだろうな、彼女いない歴=年齢の英雄の心は揺れ動いた。

とりあえず、スラさんと話をしてみて、単なる勘違いだったら結婚は解消してもらい、それでも僕との結婚を望むのであれば、スラさんと結婚しよう、でもほかの三人はどうする?アプリちゃんは自分のことを好いていてくれる、マーシャもそうだ、でも二人はまだ幼い、ならば婚約ということで話をまとめれば、了解してくれるのではなかろうか、ホンス族の子はとりあえず会ってみてから考えよう、と英雄は自分の中でとりあえずの結論を出した。


実生活でいろいろあり、執筆が遅れました。そんなこんなで遅くなってしまいましたが、もしよろしければ、ブックマークと星をいただければありがたいです。

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