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十二ヶ月目

「どういう事です! 危険すぎるから殺すことになった、とは!」


 この時ばかりは普段の立場も忘れ、デスクに座る上司に食ってかかる役人。上司の方も応戦した。


「仕方がないだろう。閣議で決まったことなんだから!」

「あんた責任者でしょう! そのぐらい覆せなくて、なにやってるんです!」


 どう見ても上司の方が劣勢である。

 積極的に処分に賛成した彼はもごもごと言い訳をした。


「私にだって出来ないことはあるんだよ!」

「見損ないました」


 憮然としたままくるりと背を向け、部屋を出て行こうとする役人に上司は声をかけた。


「おい、どこに行くつもりだね」

「直接上に抗議させてもらいます」

「やめなさい。無意味だ」


 嗜める。

 役人は振り返ると悔しさを顔に滲ませた。


「彼はおとなしく従う意思を見せていたじゃないですか。どうしてこんな事に…」

「危険物を野放しにしておく事は政府としては容認できんのだよ」

「そんな分かったような、分かんないような事言わないでください!」

「もう処分は遂行されているんだよ」


 役人は自身の血が凍りついた音を聞いた気がした。


「え?」


 呆然と呟く彼女に、上司はタブレットで『証拠映像』とやらを見せた。

 そこに映っているのは、先日見たばかりの臓物である。

 いや同じであるか確信はないが、きっと同じものなのだろう。


 画面の両端から、ぬっと黒手袋をした手が現れた。

 それは、まな板の上に載せられた心臓を片手で固定すると、もう片手でナイフをぐっと突き刺した。

 刺さっている。

 手がナイフを一気に引き抜くと、あたり一面に血がまき散った。

 ドクドクと血が溢れ出ている。小さな臓器から出すでも、一人の人間から出るのでも、多すぎる量だ。

 どうやっても助からない血の量だ。


「う……」


 それでも役人は俄かに信じられなかった。

 まさか、彼が死ぬなんて。


「納得したかね?」


 遠くで声が聞こえる。

 手を下したのはどこかの誰かでも、

 殺したのは役人である。


 だって、場所を教えたのは彼女なんだから。


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