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異世界帰りの元勇者メリーさんと出会う

作者: 光寿寿

少し気分転換に書いてみました

読んでいただけると嬉しいです


 俺の名前は山田太郎21歳、一年ほど前に異世界で魔王との戦いを終え地球へと帰還した元勇者だ。


 異世界では仲間と共に戦いを挑むなどと言うこともなく、ただ一人で魔王を倒してこいと言われ必死に力を求め続け結果、強くなりすぎてしまった。


 無論その様な状況で仲間との絆やお姫様との愛など育まれることは無く、なんの未練も無かったので自力で時空を割り此方に帰ってきた次第だ。


「明日は朝イチから品出しか……」


 今はスーパーでアルバイトをしながら生計を立てているいわばフリーターと言うやつだ。


 今日もいつもの業務を終え、いつものぼろアパートに帰宅し飯を食って寝る、そのつもりだった。


 


 いつものようにドアノブに鍵を差し、鍵をねじ切らぬように慎重に回す、OK、ここまでは順調だ、そしてドアノブを握り潰さぬようにゆっくりと握りそのまま慎重に回す。


 「Prrrrr」


 突然の携帯の着信に俺は驚きついついドアノブを握り潰してしまった。


「また大家さんに怒られる……、誰だ? こんな時間に?」


 俺は軽く舌打ちをしながら、しかしまだ午後9時をまわったところ、相手に非があるほどの時間ではないと心を落ち着かせ液晶を覗き込むが、そこには見知らぬ電話番号が表示されていた。


「誰だ?」


 少し躊躇いはあったが仕事の連絡の可能性もあったため渋々出ることにした。


「もしもし?」


「私メリー、今駅の近くにいるの」


 俺は無言で電話を切った。

 ふざけたことにまさかいたずら電話とは、こいつのせいで俺はドアノブを握り潰したのかと思うと怒りが沸々とわいてくる。

 ああ、わかっているさ、握り潰したのは自分の責任だと。


「また修理費かさむじゃないか……」


 とりあえずドアノブは明日報告するとして今日はもうカップ麺でも食って寝ることにする。

 ふて寝だ。


 自分の部屋に入り荷物を床に置いたところでまた例の番号から着信がなる。


「Prrrrr」


「もしもし?」


 少し声色にトゲを持たせつつ律儀にも俺はその電話に出てしまった。

 可愛らしい声色をしていたのでもしかしたら誰か知り合いがふざけていてそこから何か発展があるのではと少し期待していたのかもしれない。


「私メリー、今近くのコンビニの前にいるの」


「何か買ってきてくれるのか?」


 俺がそう聞くと電話はブツリときれた。

 俺がここに住んでいる事を知っている友人は多くはないがいるにはいる、アルバイト仲間とかとはたまに部屋で飲むこともある、しかしあんなに可愛らしい声色の女の子には全く心当たりがない、仲間の友人の可能性もあるがアイツに女友達がいるとは聞いたことがない。


「まさか本当にメリーさんか?」


 俺はそこで思い出す。

 自分が異世界へ召喚され魔王と戦うと言う非現実的な事を経験していることを。


「メリーさんがいてもおかしくはないか」


 そう結論付けた所でまた携帯の着信が鳴り響く。


「Pr」


「もしもし?」


「はやっ……私メリー、今貴方の部屋の前にいるの」


 そう言うだけ言って彼女は電話を切った。


「……」


 俺に自分の居場所を教えるとはいい度胸だ。


 俺は換気のためにあらかじめ開けておいた窓から外へ飛び出し空気を蹴り屋根へと飛び上がる。


 そして屋根を伝って反対側の自分の部屋のドアを確認したがそこにはもう彼女の姿はなかった。

 本当にいたずら電話かはたまたもう部屋の中に侵入したか。


 そのまま下へ降り気配を消して部屋の中へと入ると小さなフランス人形が俺の部屋をキョロキョロと見回しているのが見える。


「Prrr」


 俺はすかさず電話をかけてやることにした。


「俺は太郎、今お前の後ろにいる」


 彼女は振り向こうとしたが俺はその頭を押させそれを制止しすかさず呪い解除の魔法をかけてやった。


 するとメリーと名乗っていた人形は力無くその場に倒れこみ動かなくなった。

 最後に電話越しにこの言葉を残して。



「私メリー、貴方なら私をこの呪いから解き放ってくれると思ってた、ありがとう、やっと成仏できるわ」







Fin



 

読んでいただきありがとうございます

現在連載中の第207甲殻魔導小隊も読んでいただけると嬉しいです


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