第一話
ある夜の森の中。道という道が整備されていない森の中で人知れず実験を繰り返す研究所があった。その研究所はとある大国が極秘に運営を行っており、他国に負けない軍事力を手に入れるための実験が日夜行われていた。
しかし、その研究所からは火が燃え上げっており中からは研究員たちの悲鳴が聞こえていた。
「くそ!――どうしてこうなった!」
彼の名前はシュバイという。
彼はこの研究所の研究員であり、とある一大プロジェクトのリーダーを任されていた青年だった。彼は懸命に森の中を走り、なんとか追ってから逃げ切ろうとしていた。
……国が極秘に取り組んでいる研究に参加することにリスクはあるとは思っていた。しかし、国が本腰を入れているプロジェクトなだけあり警備は万全だった。自分でも知ってるような凄腕の冒険者や国が抱える暗部の組織。
そんな連中がたがか数人の集団によって一瞬で殺されてしまった。性格は世間的にいったらクズな奴らもいたが、今までも侵入者を何度も排してきた実績はあった。
「クッ……なんとか街まで逃げなれば……」
シュバイはいざという時の為に作られた脱出口から大事な研究品を持って逃げていた。これを持って逃げれば国からもいい印象を持たられるだろうし、なにより仲間は全員死んだのだから……この研究において俺の重要性は高くなるはず。
もうすぐ森を抜ける!だんだんと森の中から街の光が見えてきており、後10分もあれば街の入れ口に到着するだろう。
「……はぁはぁはぁ」
普段研究所にこもっているシュバイは運動なんてほとんどしていない。しかし、命の危機が迫ることで火事場の馬鹿力が発動したのか、彼は平常時の2倍ほどの速さで森の中を掛け抜けていた。
「はぁ、何とか逃げ切れそうだな」
とシュバイが正面を見てみると真夜の中で若干しか見えないが整った顔立ちの女が立っていた。
「うわっ!!誰だアンタは!?」
「ワタシ?ワタシの名前はカエデだよ」
カエデと名乗る女はよく見ると15歳ほどの少女だった。その少女は近づいてみると、少し垂れた目、薄い桃色の唇、程よく膨らんだ胸に引き締まった身体に美しい銀髪をサイドテールした美少女だった。
「君は何をしているんだい?」
シュバイはこんなところで話し込んでいる場合じゃないと感じながらも、ついついカエデに話しかけてしまった。
「……」
……しかし、彼女からの返事は返ってこない。不審に思い彼女の顔を見ようとしたところで、シュバイの思考はブッラクアウトした。
「うーん?おしゃべりはいいや。……普通に殺らせてもらったよ」
その少女の言葉をシュバイは聞くことが出来なかった。何故なら、彼はもう死んでいるのだから。