神が選ぶ異世界転移に当選したけど焼肉の火加減のコントロールが忙しくてそんな事に構ってられない
人でにぎわいでいる焼き肉チェーン店の一角
私、事、神の前に座っているこの男、名前を井上昇と言う
とある企業の製造の営業担当をしているのだが、この度、栄えある私が担当する世界の住人+チート能力付きに選ばれたので直接迎えに来ると言う破格の待遇をした所、
「奢るのならば話を聞こう」
と目の前にあったこの焼き肉屋に入り、手っ取り早く注文をし、一番最初に来た霜降りお肉をじっくり焼き始めた
目の前には私の分のビールジョッキが置かれているが私は頬杖をつきながら彼の答えを待っていた
と言うのも、以前から異世界の神々たちが、この地球からバンバン転生者やら転移者を自分たちの世界へ引き抜きが多かった為、権力のあるこちらの世界の神が怒り、規制をかけて数多くの条件を付けた上での引き抜きをOKにしたからだ
以前のように暴走した車に撥ねられたからと言って勝手に連れて行けなくなった
まず条件の一つに転生者を呼ぶのではなく神が迎えに行くか、代理人が行く事
そして条件を伝え納得をしたら連れて行っても良いと言う決まりなのだが
ずっと肉を焼き、口へ運びまた焼くそれを繰り返す
いつしか一皿目の上にあった肉はすべて網の上に乗っかっていた
すかさずオーダーを呼ぶベルを鳴らしホルモン、ロース、ミスジを彼は頼み、再び肉へと視線を戻す
炭の遠赤で肉の表面に油が上がるとトングで肉をひっくり返し、彼は一息つくように自分の目の前に置かれていたビールを飲む
やっと手が止まった!
ついに解答が来ると思い、私は体を起こすが彼はトングを握り焼かれてる肉を見つめたまま静止している
「あのぉ・・・井上さん・・・?」
思わず声を掛けるが、最新のJ-POPと他の客の喋り声が二人を包む
耐えきれなくなり、私が口を開く
「先ほどお話した通り、肉体は若返り、欲しいチート級の能力の付加、暮らしは貴族クラスになりますので是非ぃ私の統べる世界へと来ていただきたいのですがぁ」
つか、なんで私が下手に出てるの?
しかも支払いが私なのに全く聞いてないんですか、何なのこの人???何で???
「煩い、肉を焼くのに忙しい、黙れ」
ようやく口を開いたと思ったら暴君かと思える口ぶり
肉の暴君なの?
「ですが、お肉も食べましたし、そろそろお聞かせ願いたいのですが」
制約さえなければ転生させるのに・・・内心、イライラが募る
そういうと彼は右手に持ったトングを置きじっと私の目を見て凍る一言を言った
「肉に集中してるから無理。」