こうして、俺と幼馴染の高校生活は始まりを告げた。
3話目です!
「それにしても、未だに信じられないな…」
葉月と並んで歩きながらそう呟く。
「なあ、1つ聞いていいか?」
「んー?なになに?」
やけに上機嫌な葉月を横目に疑問を口にする。
「どうして、今まで俺が勘違いしてる事言わなかったんだ?」
「だってそれは・・・」
葉月は立ち止まって俯きながら答える。
「僕が女だって言ったら…太陽と距離が出来ちゃうような気がして…今までみたいに一緒に居れなくなったらどうしよう、とか考えたら言い出すタイミングがどんどん無くなっちゃって…」
そう言った声は僅かに震えていて、後になるにつれて力を失っていく。
思わず、手を差し伸べそうになる。
俺が葉月の事を男だと思ってたことで、こんなにも苦しめていたなんて…
「な〜んてね!」
さっきまでの態度が、嘘のように明るい口調になる。
そこには、イタズラが成功したかのように笑う葉月がいる。
きっと俺は今、とても呆けた顔をしているだろう。
「僕は別に女だってこと、隠してたつもりは無かったんだけどな〜 それに、今朝の太陽の顔は最高だったよ!」
ケラケラと笑う葉月は、年相応の女の子らしい表情をしていた。
胸の鼓動がうるさいのは・・・きっと、入学式に緊張しているからだろう。
満開の桜に出迎えられ校門をくぐると、綺麗な制服がぎこちない生徒がいる。
おそらく、俺たちと同じ学年だろう。
校舎前にはクラスの名簿が大きく張り出されている。
自分の名前を探していると、隣から袖をくいっと引っ張られる。
隣を見ると、
「僕たち、同じクラスだね!」
と、葉月は俺にだけ聞こえるような声でつぶやく。
その表情は、満開の桜のように可憐で、明るく、綺麗だった。
「ホントか!同じクラスになるの初めてだな」
「そうだねー、楽しみ!」
「あぁ、そうだな」
両腕で小さくガッツポーズをする葉月を見て微笑む。
それに気づいた葉月はハッと頬を朱に染めて俯いてしまった。
本当になんで勘違いしていたんだろうか…
こうしてコロコロ感情を表す姿はまさしく女の子そのものだ。
やけに周囲から視線を感じるのも、美少女である葉月を見るためだろう。
「お!太陽と葉月じゃん、おはよー!」
ふと横から声を掛けられる。
そこには爽やかな男が立っていた。広瀬大地だ。
身長は俺よりも高く、モデルみたいな顔立ちで女子からの人気が凄い。
大地とは小学校から同じで、俺や葉月と一緒によく遊んでいた。
「おはよう、大地のクラスは…俺たちと一緒みたいだな」
名簿を見ると同じクラスの所に名前があった。
「おぉそうか!楽しくなりそうだ!」
「僕もそう思うよ!」
葉月も大地の言葉に賛成する。
「だよな!あ、制服よく似合ってるじゃん、太陽の反応どうだった?」
・・・ん?
「あれは傑作だったよ、僕を見るなり倒れちゃってさ」
そう言って葉月は堪えきれずに笑い出す。
「そりゃ良かった、俺もそれ見たかったなー」
「いや、ちょっと待て」
「どうしたんだ?」
「んー?」
2人揃っておかしいとこなど無いという風に振る舞う。
「大地は葉月が女だって事知ってたのか…?」
「ははっ、当たり前だろ!逆になんで男だと思ってたのか聞きたいぐらいだよ」
「うぐっ」
痛いところを突かれた。
「そういう事。隠してたつもりは無いって言ったでしょ?」
「あぁ、そうみたいだな…」
がっくりと項垂れる。
ホントに俺だけだったのか…
もう何も信じられない!と言わんばかりに塞ぎ込んでいると、
不意に葉月が声をかけてくる。
「これからは、今までの分まで女の子扱いしてね・・・?」
葉月が小首を傾げて、上目遣いで俺の事を見ていた。
心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
「えっ、それってどういう・・・」
俺は思わず聞き返すと、葉月は顔を真っ赤にして体育館へと逃げていった。
こうして、俺と幼馴染の高校生活は始まりを告げた。
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