彼女は・・・そう、呟いた
「……太陽、ねぇ、太陽ってば!」
幼馴染の葉月の声がする。えらく剣幕な様子で俺の名を呼んでいる。
やけに重たい瞼を開けるとそこには、心配そうな表情を浮かべた葉月がいた。
「あ!太陽!気がついたんだ、良かったー!」
そう言うと葉月は先程の表情から一転して満面の笑みでそう告げる。
「僕の制服姿を見るなり倒れちゃって…ホントにびっくりしたんだよ」
ん?制服…?
・・・そうだ、思い出した。
俺は、葉月の制服姿を見てそれに驚いて気を失ったのだ。
葉月をじっと見る。確かに女物の制服を着ている。
似合っている。違う、今はそんなことはどうでもいい。
なぜ葉月がそれを着ているか、だ。
「そ…そんなに見つめられたら恥ずかしいよ…」
そう言うと、葉月は少し朱に染まった頬を隠すように俯いた。
え……?天使?
いや待て、こいつは男だ、男であるはずなのだ。
確かに傍から見れば美少女だ。
でも葉月と共に過ごしてきた時間がそれを否定する。
そう、お風呂だって一緒に入ったこと…ないな…
そうだ!授業のプールなら、、、一緒のクラスになった事ない…
あれ?なんで俺、葉月の事男だと思ってたんだ?
ああ、そうだ、あれは確か、幼稚園ぐらいの時に・・・
「もう、泣かないの、男の子でしょ?」
「・・・うん」
「ほら、葉月ちゃんは泣いてないじゃない」
「・・・」
葉月と大喧嘩した後、俺はものすごい泣きっぷりで母を困らせていた。
その頃の俺は超がつくほどの泣き虫で、対照的に葉月は全く泣かない子だった。
母親には何度も「男の子だから泣かないの」と言われてきた。
その中で俺は、ある結論に至る。
どんだけ喧嘩しても泣かない葉月って、実は凄い男なのではないかと。。。
ん?・・・おかしい。確かに俺は昔から葉月が男だと思っていた。
でも、それは誰かの口から聞いたわけでもなく俺がそう思っていただけだ。
俺はついに疑問を口にする。
「は、は…葉月さんってお、女…だったの?」
やばい、緊張で声裏返っちゃったよ、さん付けしちゃったよ、とかどうでもいいことを考えていると
葉月はハッと目を見開いたかと思うと、手を口に当てて小悪魔のように微笑み、
「やっと気が付いた? 太陽の…バカ」
彼は、いや彼女は・・・そう、呟いた。
2話目です!
読んでくださった皆さんありがとうございます!
更新ペースはあまり早くないですが、
ゆっくり続けて行きたいと思います。