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6.
限界だった。
ウィルバーはその日から、少しずつ荷物をまとめていた。
親方やおかみさんにばれないようにベッドに下にリュックを隠し、旅に使うものに思考を巡らせては仕事の休みの日になけなしの金で揃えていった。
――行くなら、今日だ。
家も街も静まり返る今夜、ウィルバーは旅に出る決意をしていた。
――今なら行ける。
――今日なら行ける。
その言葉を何度、心のなかに繰り返しただろう。
決意を固めても、リュックを背負ってみても、いざとなると立ち上がれないのだ。
――行くって決めただろう!
――こんな街、出ていってやるって!
――こんな仕事、やめてやるって!!
「……決めただろ……」
そうつぶやいて頭を膝に押し付けると、足音が聞こえた。
――親方!?
コツコツと近づく音は足早で、リュックを再びベッドの下に隠す時間もない。
――バレたら殴られる!
――ど、どうしよう!?
ウィルバーは部屋の入口とは逆の窓を見た。
――逃げる!!
そう思った瞬間、ウィルバーの足は窓に向かって走っていた。
仕事でも使っている大ハンマーを振り下ろし窓を砕く。
ウィルバーは飛び散るガラス片とともに外へと飛び出した。
「ウィルバー!!!」
大声を出した親方の顔など見ることはできない。
夢中で走った。




