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鏡の国の  作者: すもも
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ありすのともだち

それから警察が来たのはすぐのことだった。

丁度夕刊の配達に来た新聞屋がドアノブにこびりついた赤い液体に不信感を抱きそのまま警察に通報し、駆け付けた警官はドアノブについた赤を見て顔を真剣なものにした。玄関を慎重に開け、彼らが目にした点々と続いている赤黒いものは見覚えがあるもので、顔に緊張が走る。


銃を構えながら不審者が出てきたらすぐに発砲できるよう、しゆっくりと足音を立てないように床の赤を追っていく、ひとつの部屋の前に到着した。彼らはお互いの顔を見やり、勢いよく扉をあけ放った。つんと鼻を吐く鉄の臭い。


鏡の前にはひとりの姿、エプロンドレスを着た小さな女の子が自分しか写っていない鏡に話しかけていた。

周りには、ぐったりと動かないねこ、ワイヤーが首に巻き付いた犬、白目を剥いているうさぎ、金魚、転がる少女の首、腹から血を流し続けている大人の女性。警官は何者かに襲われて少女だけが命を救われたのかと思ったが、すぐにその考えを打ち消した。


「ねえ、ありす。今度はおかさんも鏡に国に行ったよ。遊ぼうよ、遊ぼう」


鏡に向かってぶつぶつと呟く少女のその顔は微笑んでいた。寒気を覚えながらも女性警官が彼女に近づいた。


「この子たちをどうしたの?」

「鏡の国に連れて行ったの。見えるでしょう、みんな笑ってる」


少女は鏡を指さした、警官が鏡を見るけれど鮮血に染まったエプロンドレスを着ている少女の姿しか写っていない鳥肌が立ち一瞬声が出なくなるが、話しがあるから一緒に来て欲しいと伝えるとありすは拒んだりしなかった。


「じゃあありす、ちょっとお話してくるね」


鏡に向かって話しかけたありすを伴ってこの部屋から出て行く、ばたんと閉じられた扉のなかには鏡だけがぽつんと残された。


****************


「わたし、わたしのせいなんです、わたしが、あんな家に引っ越したから、あんな家に引越しを決めたから」


参考人としてありすの父親は警察に話を聞かれていた。娘であるありすは心の病を患ったと警察病院へと運ばれ、そこでありすは早く家に帰って鏡のありすと遊びたいとしきりに言っているのだという。他の鏡を見せてもそこに映るのは自分だと認めているのに、何故かありすは鏡のありすの存在を強く主張する。


「…どういうことですか?」


警察が問う。


「妻が、自然に囲まれた綺麗な場所で生活をしたいと言うので購入を決めたのですが、その価格がありえないくらいに安かったんです。何故かと問うと、あそこはかつて―――小さな女の子が鏡の前で命を落とした、からだと」


その小さな女の子は仲の良かった友達から見放されて、いじめを受けるようになってしまった。それに耐えかねた女の子は自ら命を絶ったのだと。けれどそれはただの噂でありそんな事実はあったためしが無いですよと不動屋は微笑んだが、思えばあの不動屋が信用できたか怪しい。あの家を売りたい一心だったようにも思える。


「たしかにあの家では噂が耐えませんね。幽霊屋敷、人が死ぬ家、などとも呼ばれていたり。けれど、ねえ、そんなものまさか報告書で書くわけにもいかないでしょう。娘さんは学校でもうまく馴染めていなかった、それで幻想のお友達を作ってしまったのですよ」

「えぇ、えぇ、そうかもしれません。でもわたしは、わたしはどうしてもあの家を選んでしまった自分を許せないのです、許せない、どうして、そんな噂を聞いた時点で別の場所にしようといえなかったのか、」


ぶつぶつといいながら自分の行動を嘆く父親に警察は何も言うことは出来なかった。


20年以上も前の話になるが、小さな女の子が鏡の前で自殺を図った事故があった。遺書にはなんでも「ありすとえいえんのともだちになる」と書かれていたのだという。

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