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鏡の国の  作者: すもも
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けんか

「ねえ、めありちゃん」


昼休みにありすはめありに話しかけた。


「なあに?」

「うん、家にね変わった友達がいるの」


1番の友達であるめありに、秘密の友達を紹介して秘密を共有したいと思った。それに鏡のありすはめありの周りに居た子達のことをちゃんと見抜いていた、そのことを疑ってしまったのを謝りたい。


「めありちゃんがよかったら、お家に来てその子に会ってもらいたいの」


自分を友達だとちゃんと言ってくれためありなら、鏡のありすもめありのことを好きになってくれるはず、鏡のありすだって、めありのことをみたらきっと好きになってくれる。ありすの好きな友達がまた別の友達も好きになってくれたらそれはとても嬉しい。


「うん!ありすちゃんのおうち行って見たい」


めありはふんわりとした髪を揺らしながら嬉しそうに微笑んだ。



めありはさっそくありすの家に来ることになった。めありの家はありすの家から正反対にあるけれど、めありの家は学校から近いらしいので一度ランドセルを置いてからまた学校に戻ってきてくれるそうだ。ありすはめありが再び学校に戻ってくるのを校門で待つことにしたけれど、ひとりこうして待っているとどうにもそわそわしてしまう。


「おまえ!」


聞きたくない声が聞こえてありすは反射的にぬいぐるみを強く抱きしめた。声に視線を向けるとそこには思った通りの人物、ぶらいあんがいた。


「おれ知ってるんだぞ!おまえ、お化け屋敷に引っ越してきたんだろ!」


引っ越した家を初めて見た時に思ったことと同じことを言われた。たしかに見た目はそうかもしれない、けれど住んでみるとおかしな家じゃない。鏡のなかに女の子が住んでいる絵本の中みたいな素敵な家だ。


「おれ知ってるんだぞ!あの家には人の命を奪う化け物が住んでるんだ!お化け屋敷に住んでるからおまえも変なんだろ。そのうさぎが人を食べるんだ!」

「この子はそんなことしない!いじわるしないで」


がおーと両手を上げてぶらいあんはけらけら笑い出す。あの時謝ってくれたのに、ふりだけで全然反省なんてしていなかった。


「おー?泣くのか?泣いちゃうのか?うさぎのぬいぐるみが離せない、ありすちゃんは泣いちゃうのか?」


顔を覗き込まれてありすの周りをくるくる回る、ぶらいんの友達の男の子は後ろからその様子を見てげらげら笑っている。ちっとも面白くない、全然面白くない。ありすはうさぎのぬいぐるみを抱きしめて俯く、男の子なんて嫌い、嫌い、嫌い!


「こらー!何してるの!またそんなことして!」


そこにめありが走ってやってきた。ぶらいあんは一瞬しまったという顔をして、友達と一緒に走っていったけれど、立ち止まって振り返った。


「めあり!そんな子と仲良くしていたら、いずれ死んじゃうぞ!」


大声を張り上げてランドセルを弾ませながら友達と一緒に笑って行ってしまった。ありすはだ強くうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。


「もう!ぶらいあんったら本当に子どもなんだから!」


めありは腰に手を当てて憤慨した様子を見せた。


「ありすちゃんあんなの気にしなくていいよ!ああいう人はいつかバチが当たるんだから」

「うん。ありがとうめありちゃん」


ありすはめありが自分以上に怒ってくれたことが嬉しかった。幾分か足取りも軽くなり、長い道のりをふたりして歩く普段ならあんなにも遠く感じる道のりが、ふたり一緒だからありすとめありもそれほど苦には感じなかったし、めありと一緒に居たらさっきの嫌なことも吹き飛んだ。


「ただいまー」


家へとつくと何時に無く明るい声で玄関の扉を開け放った。


「お帰りなさい、今日は随分と元気がいいのね」


微笑みながら出迎えてくれたのはありすの母親。ありすの隣に居るめありに気がついて、表情がさらに華やいだものになった。


「あら、今日はお友達を連れてきたの?」


友人を連れてきたことが相当嬉しいのかその声も弾んでいた。


「うん!」


ありすも嬉しそうに頷く。


「こんにちはありすちゃんのお母さん。わたしめありって言います」


ぺこりと丁寧にめありはお辞儀をした。


「あらあら、ご丁寧にどうも。ゆっくりしていってね」


ありすの母親は嬉しそうに言う、ありすは靴を脱いで玄関を上がるとめありにも入ってと促すとめありはお邪魔しますとありすの家へと足を踏み入れた。

ありすがめありを初めに通したのは自分の部屋、ぬいぐるみが飾ってあって、ありすらしい可愛らしい部屋だった。


「わあ、かわいい子がいっぱい」


かわいいものが好きなめありも目を輝かせて喜ぶ。


「えへへ、この子がふれっど。このこがあいりす、このこが」


めありが喜んでくれたのが嬉しくて、ありすは次々とぬいぐるみのい名前を紹介していく、でもどんなぬいぐるみがあっても1番ありすが大切にしているのはうさぎのめありだということには変わらない。ありすが楽しげに話していると、ドアをノックする音が聞こえた。ありすが返事をすると、お茶とお菓子を持ったありすの母親が部屋に入ってきた。


「クッキーよ。たくさんあるから遠慮しないで食べてね」

「ありがとう、おばさん」


めありは手作りのクッキーを見て嬉しそうに微笑んだ。ありすの母親はありすが自宅に友達を招いたことが嬉しいのか、にこりと笑ってありすの部屋を出て行った。めありはさっそく食べてみることにした。かわいらしい動物の型に切り抜かれたクッキーは齧るとさくさくとした食感とふんわりと甘みがあってとても美味しかった。


「おいしい、ありすちゃんのお母さんってお料理が上手なのね」

「えへへ、お母さんはお菓子作りが好きなんだよ」


自分の母親が褒められたことが嬉しくてにこにこと笑って返す、ありすは母親の焼くクッキーが大好きだった。


「ありすちゃんの紹介したかったお友達ってこの子たちのことだったの?」


ひとつづつぬいるぐみを楽しげに眺めていためありがありすに聞く。


「うんん、めありちゃんに紹介したいお友達は別の部屋にいるの!」


ありすは嬉しそうな顔をする。

こっちの部屋にいるのとめありを鏡の部屋へと連れて行く、何も知らないめありの表情からはただの好奇心しか見て取れない、ありすは1番の友達であるめありに不思議な友達を紹介できるということがとても嬉しくてわくわくしていた、鏡の部屋を開いてありすはめありを連れて入っていく。


「ありす」


鏡に向かってありすは声をかけると、大きな鏡の中にありすと同じ顔をした少女が姿を現した。めありはありすの後ろで不思議そうな顔をしている。


「ありす、見て今日は友達のめありを連れてきたの」


鏡に向かってありすは声をかける。


「…………ありすちゃん、何を言っているの?」


後ろで見ていためありがありすに声をかける。


「めありちゃん、この子が紹介したかったともだちだよ」


ありすは鏡に手を向けながら満面の笑みでめありに紹介する。ありすの嬉しそうな顔とは対照的にめありの顔はどんどんと曇っていく。


「ありすちゃん、そこに写っているのはありすちゃんでしょ?ありすちゃんが何を言いたいのか分らないよ」


めありからはありすが鏡に映っているようにしか見えなかった、同じ顔、同じ服、同じ動作、それはどうみてもありす自身が鏡に写りこんでいるだけ。

しかしありすにはどうしてめありがそんなことをいうのか理解出来なかった、ここに映っているのは自分ではなくてもうひとりの「ありす」自分の友達のありすなのだ。


「ねえ、変な冗談は止めて向こうで遊ぼう。さっきのぬいぐるみの子達で遊びたいな」


ありすは仕方なく頷いた、めありにありすを否定されたことがショックでたまらなかった。めありならば鏡のありすとも一緒に遊んでくれると思っていたのに。

いつも大切にしているぬいぐるみで遊ぼうとしても、ありすはちっとも面白くなかった、鏡のありすと、めありと、だったら楽しかったはずなのに。めありもありすが楽しそうでないことはすぐに気づいてしまい、めありもおもしろくなさそうだった。それでもせっかく遊びに来たのだからと色々と話をふってみるのだが、ありすは「うん」とか「そうだね」と頷くばかりで普段温厚なめありもついにいらいらしてきた。


「ありすちゃん、そんなに鏡の友達が大切だったの?」


めありのイラつきを感じることが出来なかったありすは、めありが鏡のありすに興味を持ってくれたのだと勘違いをしてぱっと顔を上げて嬉しそうに頷く、3人で遊びたいというありすの願いがかなうかもしれないと思った。


「鏡の中に友達がいるなんてありすちゃん変だよ!鏡には自分の姿が映るんだよ。3年生にもなって鏡の中に人が居るなんて思うなんてありすちゃん変!」


めありはありすの友達だと言ったのに、こんなことを言われるなんて思ってもいなくてありすは鈍器に殴られたような感覚を味わった。


「なんで…そんなこというの?ありすはあたしの友達だよ」

「ありすちゃん変。鏡と話すなんておかしいの!わたし帰る!ありすちゃんはわたしと遊ぶより鏡と一緒に遊びたいんでしょ!!」

「めありちゃん!!酷いこと言わないで!」


めありはもうしらない!とぷいとそっぽを向いてお邪魔しました!と大きな声で言うとずんずんとありすの家を出て行ってしまった。

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