任務
「ピンポーン―――」
静かだった家にベルが鳴り響く
「今行く」
「私も付いていっていいですか?」
「それが仕事だろ」
地球上で戦いが起きている中でも人々は平常運行である
桜の話題で持ちきりだった
「実は私、学校に行ったことがないのです」
名の知れたお家柄に生まれた桜は1から11まで一流の先生方に教えてもらい「学校」に通ったこともないのだという
「学校は暇なところ…だよなテレス?」
「暇潰しにはいいかな」
テレスは暇なとき学校に顔を出すことがある
「そんなこと言わないでよ」
明らかに落ち込んだ桜をなんとか励まし僕ら学校に到着した
「おはよう、おはよう、みんなおはようー」
廊下をすれ違う人々に一方的な挨拶を咬ましている桜
(なんかこっちが恥ずかしい…)
「おはよう、久しぶりだね」
初めて返されたと桜は後ろを向くが声の主は僕らの方を向いていた
「「おはよう」」
「今日はテレス君もいるんだね」
テレスは「久しぶり」と返す
彼は同じクラスの中野宗也、剣道部に入っていて僕が学校で話す数少ない友達の一人だ
「それでさ―――」
話に置き去りになった桜は本日2回目のしょんぼりモードに突入した
授業もあっという間に終わりお昼を迎えた
「昼飯どうしよう…」
お昼ご飯を作ってくれていた妹はもういなかった
「実はお弁当作ってきました!!」
「じゃじゃーん」と自演効果音を手の動きと合わせる
「気が利くね―――」
一目散に飛び付くテレス、そこで携帯は鳴った
「今学校か? 至急屋上に来てくれ」
この学校に来て2年、屋上から見える景色は絶景だと知った
「SCの新人は君たちかい?」
そこには黒いフードを被った怪しげな男がいた
男は指にたくさんの指輪が付けていた
その中のひとつはどこかで見たことのある色だった
「仕事の内容は知っているよな?」
「武装集団が現れたって……」
「そうさ、彼らを倒すだけだ簡単だろ」
「他にもSCの機動人はいるはずだ、なぜ僕らが?」
そう尋ねると男は言った
SCの機動人はたくさんいるが地球規模で毎日多くの事件が起きていること
戦いを終わらすための手がかり(新たな神戦記の入手)などで精一杯なのだ
「まぁ、見た目も怪しいことだし桜くん彼らに私を紹介してやってくれ」
桜は「今からお昼なのに…」と初めて怒った
しかし相手が相手なのか声は小さかった
「彼はSCの機動人送迎役、エリさんと同じくらい偉い人…」
「「なにぃ…」」
この怪しい男がSCのトップだと言うのか!?
「じゃあ、行こうか現場はシアトルだ」
男が近づいて来る
ハッと気づくと、ここが屋上でないことは明らかだった
「桜くん終わったら連絡してくれ」
男の表情は分からなかったがこのあと用事がある様子だった
「ダダダダダダ―――」
近くで銃声がなった、現場はすぐそこらしい
「じゃあ、行ってくるね」
そう言うと桜は歩き始めた、その足は手慣れさを醸し出していた
「桜、僕らも行くよ」
テレスも頷く、力になれるか分からないが兎に角、一緒に………
「いいよ、いっつもこうだから」
冷たい声で言うと彼女の髪が桜色に変化した
「言い忘れてた! 花びらが降ってくる場所は安全だからそこに居てね……」
「待っ―――」声をかける間も無く、彼女は走り出した
いつもの桜とは違うのはオーラで分かる、今のオーラは殺気と混沌が混ざってるように感じた
「(夜桜、発動)」
銃を構えた武装隊員を花びらが集まって出来た刀で裁く
常に的確すぎる剣裁きで相手を行動不能にしていった
「女がいるぞぉ!!」
隊員の人が叫ぶと周囲にいた仲間が集まってきて銃を捨てナイフや剣を取り出す
「(早くしないとお昼が終わっちゃう)」
彼女の刀の斬る速度が上がった
次々と出てくる敵を目にも見えない速さで縦横無尽に裁く
「痛っ!」
肩に敵のナイフがかする
後ろに回転し遠心力を使い、刀を振った
血し吹きも上がらない速度と切れ味を誇る彼女の刀はとても悲しそうだった
部隊の隊長と思われる男が海斗の喉仏にナイフを当てていた
「なんで?? 海斗くんが―――」
「ごめんでも桜を一人にはできない!」
桜が少しだけ表情を緩ました
敵のナイフが海斗の喉に食い込む、血が垂れて一本の線ができた
男が笑った次の瞬間
桜が持っていた刀は花びらに戻り、狙撃銃へと再構成された
「パァン!」
正確な角度で発射された銃弾は敵の頭を貫いた
「さすがだな、桜」
「喋らないで下さい!」
桜は僕の喉に手を当てた、すると花びらが集まり切り傷は跡形もなく消えてしまった
「ありがとう! 海斗くっ―――」
出会って2日の男女が抱き合っていいものなのか?
「それでテレスさんは?」
「テレスには警察と協力して指示官をやっていたよ」
するとテレスがウトウトと近づいてきた
「やっと終わった―――」
僕らは地面に横たわる緊張が解けてドッと疲れが出てきた
あの男に桜が連絡をすると、男はずっと居たのかのように現れた
家に着いたときには夕食の時間になっていた
「お弁当、冷めちゃった…」
桜が残念そうに言った、僕らは顔を見合わせる
どうやら考えは同じなようだ
「いただきます」
僕らは箸を使い桜が作った弁当をつまむ
冷たかったが温かい味がした
「っ……」
桜は声にもならない様子で僕らを見たあと一緒に弁当を食べた
「まだおいし―――!」
「そうだな」
「おいしいね」
僕たちに褒められたのが嬉しいのか彼女の頬は赤くなった
「私やるじゃん!」