最弱のダンジョン
冒険者ギルドを出た俺たちはまず、ご飯を食べることにした。
ちょうどお昼時だし、慣れないことばかりで疲れ、お腹が空いていたため休憩だ。
「ユキト様、あそこからいい匂いがします。行ってみませんか?」
ラファが指をさした場所の、食事処に入ることにした。
昼時で少し混んでいる感じだったが、三人用の丸テーブルが空いていたため、すぐ案内される。後でダンジョンに行くので、サンドイッチなどの軽食で済ませることにした。ラファとメフィスは人間の食べ物が初めてみたいで、とても美味しそうにサンドイッチを食べていた。
食事の間に今後について二人と話し合うことにする。
俺が異世界から来たことやスキルのこと、魔王を討伐する目的など話した。
その話を聞いた二人だが・・・・・・
「「ユリト様についていきます」」
旅は多い方が楽しいですよ。魔王討伐も同じです。
と力強くラファとメフィスが言っていた。
ラファに悪魔は魔王の仲間ではないのかと尋ねた所、悪魔は個々が強く魔王に従っているものもいれば、全然関係なく過ごしているものもいると言った。ラファ自身も冥界にずっといたため、魔王の存在すら知らなかったと。
そして、二人に鑑定眼で強さを視たいと言ったところ
「「乙女の秘密をのぞき見はだめです」」
と一蹴された。
俺は踏み込むとこではないと判断した。決して目が笑っていない二人に怖気づいたわけではない。
店主に飯代を支払い、俺達は最弱のダンジョンに挑む。
店から出て、町をでてすぐダンジョンに着いた。
(町からだいぶ近いな。近すぎて、モンスターに合うこともない。ダンジョンの前の門番は半分寝てやがる・・・・・・)
ウトウトしていた門番に通行証を見せて、俺達三人はダンジョンに入る。
15分後・・・・・・目の前のボス部屋にたどり着いた。
「確かに最弱というだけありますね」
メフィスが呆れた顔で言った。
ただ言いたいことも分かる。フロアにスライムが2~3体しかいなく、そのスライムですら襲ってこないダンジョンなんて聞いたことない。
これまでの道中、最初にいた1体を蹴りで粒子に変えて他は無視して階段を下りてきただけなのだ。一通である。最初から称号が欲しいために来ただけで苦労しないことに越したことはないのだが、物足りなさを感じた。
「とりあえず、さくっとボス倒して町に戻りましょう」
ラファの声に同調するように、俺はボス部屋の扉を開けた。
中には・・・・・・ゴブリンがいた。
だよな。聞いた通りのままだったよ。少しでも期待を残した俺が間違いだったよ。
『火魔法:火玉』
俺はゴブリンをすぐさま光の粒子に変えた。
(何も気にしなく魔法を使っているが、魔力やMPの概念はどうなっているのだろう)
大事なことだと考え、念話で二人に聞いてみた。
同じ魔法でも人によって威力に差があり、限界が来たときはこれ以上使えない感覚が来るらしい。時間がある時にでも限界を測ることにする。
「ユリト様、宝箱がありますよ!」
ラファの声が響く。
そして、空から一枚の手紙が降ってきた。
『1000回目ボス踏破記念品贈呈 ダンジョンマスタより』
(まさにゲームだな)
そんなことを思いながら、小さいダンボールくらいの宝箱を開けた。
顔全体を覆うタイプの真っ黒い仮面が入っていた。手に持つ前に鑑定眼を発動。
『漆黒の仮面』戦闘時すべてに補正がかかる。
装備は一先ず必要ないと考え、仮面を手に持つと『漆黒の仮面』は装備欄に移動した。
「よし、帰るか」
「「はい、ユリト様」」
帰りは特に問題なく、『始まりの町』に着いた。
二人に先に宿を取ってもらうために、お金を渡し俺は一人冒険者ギルドに通行書を返却に行く。受付にマリノがいたため、そのまま返却手続きをし、ダンジョンマスターの手紙を渡す。マリノの可愛い顔に驚愕の表情を浮かべる。
「まさか最弱のダンジョンにもボーナスがあるとは・・・・・・・」
(ん?ボーナス自体は普通なのか?)
マリノが深呼吸し、再び口を開く。
「最初のダンジョンでダンジョンボーナスとはユリトさんすごいですよ!それも最弱のダンジョンでなんて・・・・・・普通のダンジョンは大体100回単位にボーナスがでると言われています。最弱のダンジョンは今まで誰もボーナスの報告がなかったことから、でないとされていました」
なるほど。そういう仕組みがあるのか。
「それだと冒険者の数を揃えると、ボーナスを独占している奴等が現れるのではないのか?」
「数々のパーティが集まっている大規模のクランでボーナスの独占を行っているダンジョンも確かに存在します。ただ、ボーナスも良い時と悪い時があるのでそこまで実入りがいいわけではないのですよ」
今回アタリでよかった。ソロでボーナス狙いは無理だ。
マリノさんにお礼を言って、二人から念話で教えてもらった宿に行く。
まさかの三人部屋だった。
「「ご主人様と一緒に寝るのは当たり前です!!!」」
誤解しそうな発言だったが、一緒なのは部屋だけでベットは別々でした。
期待なんかしてないよ?ほんとに。
悶々として、朝が上るのを待つことなく、異世界一日目が終えた安堵と疲れから、ベットに倒れてすぐ眠るのだった。