護衛依頼
「おはよう」
今は日が昇る少し前である。
昨日はあの後、すぐに冒険者ギルドに行き手続きを済まし、宿に戻って休んだ。
商業都市『リエン』は、王都から半日ほどかかるため朝早くの出発となった。
詩音が野宿をするのが嫌だからだ。そこについては賛成だ。
「おはようさん、馬車はもう準備できてるから、すぐ出発や」
馬車と御者は詩音が、商人ギルドから手配していた。
初老の男性が御者台から会釈をする。
そして4人が馬車に座り、出発する。俺の向かいに詩音が座り、横にメフィスでその正面にラファが座った。王都から『リエン』の道は、商人達がよく使う道のため整備されていて揺れも少ない。盗賊やモンスターの出現情報も0ではないがそこまで出ないらしい。
「急な依頼なのに受けてくれて、ありがとな」
「気にするな。だが、そこまで急いでいる理由を聞いていいか」
詩音は悩む顔をし、それからゆっくりと口を開く。
「うちらはな、叶えたい願いがあるんや。あんたも聞いてるやろ、魔王討伐の報酬を。だがな、待っているだけやあかんのんや。うちらには時間がないんや」
「願いの内容は聞かない。で詩音達は何年以内だ?」
その質問に詩音は驚く。まさか自分達と同じ条件であるとは思っていなかったのだろう。
「3年や。魔王討伐にどれだけかかるかわからへんけど、日本にいた時と違い希望があるならうちらは3年間全力で魔王討伐に向け動く覚悟や」
「そう「なあ」」
俺の返事にかぶせるように、詩音が口を開く。
「ユリトさぁ、うちらの『フロマージュ』とパーティー組もうや!それだけ強いし、メフィスとラファいれて、パーティー上限の6人や!ちょうどいいやろ?」
メフィスとラファが困った顔をして、俺に顔を向ける。
詩音の境遇に同情の気持ちが生まれるが称号のせいで組めないからだ。
「詩音、すまない俺は称号のせいで組めない。後、メフィスとラファは俺のスキル扱いだからパーティーを組んでいるわけではないんだ」
詩音は悲しそうな顔をしたがすぐさま腕で隠し、「そっかー」っとだけ呟いて話は終わりといった感じで横に向き、馬車にもたれかかる。
詩音がそのまま寝入ってから何もなく馬車は進み、昼休憩を取る。
商人達が休憩する広場があり、そこでイスとテーブルを『空間魔法:収納』から取り出す。スープの鍋に皿とスプーンも。『空間魔法:収納』は、入れた時の状態で保存されるため、スープは温かいままだ。料理や食器は、『はじまりの町』で少し手に入れて、イスとテーブルは昨日泊まった宿屋から借りてきた。容量についてだが、同じスキルを使えるメフィスとラファ曰く、家の大きさになると入らないが限界を感じたことはないと言っていた。
「ユリト有能すぎやなー。もうパーティいいから一緒にいてほしいわ」
遠慮なくスープを食べながらそんなことを言う詩音に、俺達は苦笑いだった。
ご飯を食べながら、詩音にパーティーについても聞いてみた。冒険者ギルドでリーダーになる人が申請することで登録される。転移者同士は、『メニュー』からも行える。ドロップはリーダーかランダムに設定できるらしい。転移者とこの世界の住人が組むとドロップは『メニュー』のアイテム欄などに行かない。自分達で拾わないといけないと言っていた。
パーティーの一番のメリットは補助系のスキルを受けれることだった。攻撃上昇などの魔法・スキルはパーティーを組まないと効果がないらしい。
(中々、ややこしい世界だな)
「てかユリトのユニークスキル『召喚』って言ってはったけど、『メイド召喚』なん?」
御者が馬車の整備をして、こっちの死角になっている事を確認する。
「なわけあるかよ。メフィス、ラファ見せてやれ」
「「いいのですか」」
「かまわん、詩音驚くなよ」
それと同時に、メフィスとラファは隠していた部分を可視化する。
メフィスの背中から身長を超える、白い翼が現れる。ちなみにメイド服は破れない。羽の説明をされたが理解できなかった。そういうものらしいということで。
ラファは、腰の部分から黒い羽根に頭から角が生える。ラファも同様のため、メイド服は破れない。
詩音が口をパクパクしていた。
面白い顔をしているが俺も最初見た時同じ顔をしていると考えたら笑えなかった。