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「僕は死神だ。」
夜の灯りで暗いアスファルトに
革靴の音だけが響く。
僕の歩き方では踵がすり減ると
母親によく怒られた。
通り慣れた我が家への道が
見知らぬ町に見えるのは街灯が
消えかかり不気味に点滅しているからだろうか。
物心がついた時、飼っていた犬が死んだ。
可愛がってたのに、あっさりと。
僕を虐めていた同級生が一家心中した。
虐めていたと言っても
今思えば、子どものいたずら程度。
それでも当時の僕は
その子が死んで「バチが当たったんだ」と
本気で思った。
中学に入った頃、祖母が死んだ。
仕事ばかりの母親に変わり、僕の面倒を見てくれていた。
祖父はすでに若い頃に亡くなっている。
「藤は、おじいさんにそっくりね。」
それが、祖母の口癖だった。
高校のとき。
担任になった教師が死んだ。
不慮の事故。
別に僕は悪くない。不慮の事故なんだから。
それでも、僕は怖くなって高校を中退した。
自宅の鍵穴に鍵を差し入れたとき
自分で持っていた紙袋が目に入る。
「チッ。」
その中から小さな袋を探し当てる。
それを、適当に破き、中身を適当に振り撒いた。
4日前の朝。
ついに、母親が死んだ。