剣士と槍兵
赤い刺突と黒と白の斬撃がぶつかり合い、辺りに重厚な金属音を鳴り響かせる。
槍兵「へっ、こりゃ想像以上じゃねぇか!!!こりゃ俺が
当たりを引いたかもしれねぇな!!」
剣士「フン、こちらからすればただの外れだ、戯け!!今のも何とか凌いだだけだ、私の様な者が君に釣り合うわけがなかろう....」
槍「謙遜しやがって、並みの奴ならこれでもう終わっているさ!!」
夜闇に紛れて、刃を交わす者達が居た。青いタイツと軽装に赤い槍を持った獣の様な男と、黒と白の双剣を持った赤い外装の剣士であった。
槍「さあ、ギア上げていくぜ。付いて来いよ。」
その言葉と共に槍兵が加速し、青い残像と化して剣士の横から槍を突き出した。ギリギリで反応した剣士は右手に持つ陰剣で槍を晒し、左手の陽剣で反撃しようとするが直後に放たれた槍兵の蹴りにより吹き飛ばされてしまう。
剣「ぐっ....はぁ!!!」
即座に突撃してきた槍兵を迎え撃つべく態勢を立て直し、槍を真っ向から受け止める。スピードの乗った一撃を正面を受け止めることは困難であったが、剣士はそれを受け止め足元にクレーターができた。
槍「なにっ!?」
槍兵も今の一撃を正面から受け止められるとは思っていなかったようで、一瞬の隙ができてしまう。剣士がその様な隙を見逃すはずがなく、槍を弾き飛ばし槍兵の彼の懐へ入り、斬りかかる。
槍「いいぞ、もっとだ!!!」
剣「喋っている暇があるのか!?」
槍兵は何とか手元に柄を戻し凌ぐが、リーチという有利がなくなってしまい後手に回ってしまう。しかし、槍兵は心底楽しいといった表情であった。
槍兵は剣士の斬撃を槍に乗せることで晒した。しかし、これを予測していた剣士はその勢いのまま足を一歩踏み出し蹴りを放つが躱されてしまう。槍兵は一度距離を取り、態勢を整えた。
槍「死と隣り合わせ、やはり戦いはこうじゃなくっち ゃな!!」
剣「悪いが、同感できんな!!」
今度は先程と違い剣士が突撃していった。しかし槍兵は槍というリーチの有利を活かし、剣士を近付けさせない。
辺りに重厚な金属音が響き渡る。赤の刺突と白の斬撃が残像を残しながらぶつかり合い、黒の斬撃が闇夜に溶ける。加速していく二人の戦い。彼らの頭には、この好敵手を倒す事しか無かった。
加速していく二人の世界。獣の様に縦横無尽に走り回り槍を繰り出していく槍兵と、陽剣で槍を晒し陰剣で反撃を繰り出し、状況を冷静に観察し自身の勝機を手繰り寄せる剣士。彼らは攻めては守りを繰り返していき、永遠とも感じられる時間の中で一進一退の戦闘を続けていた。
しかし、その時間は槍兵によって破られた。
槍「ちっ、こりゃあ拉致があかねぇな....」
剣「どうした?降参してくれて構わんのだぞ。」
槍「そんなことするわけねぇだろ、馬鹿。名残惜しいが、最強の一撃を持ってしてこの勝負を決めるぞ。」
剣「もう勝ったつもりか??それは驕りだぞ。私の様な
剣士にも、奥の手ぐらいはあるさ。」
槍「へぇ、それは楽しみだぜ。」
槍兵は一足で大きく距離を取った。
槍「ケルト神話を知っているか。この槍はケルト神話
最強と名高い、"クランの猛犬"クー・フーリンの聖遺物、ゲイ・ボルグだ。これの能力を知っているな??」
剣「勿論、一刺一殺の呪いの槍。確かに強力な物だが、近付けばただの槍だろう。」
槍「その通りだ。だがな、これは投擲する事によって対軍にも匹敵する程の宝具となる。」
剣「ほう、ならばその神秘、私が打ったこの剣と磨き上げてきた技術を持ってして打ち勝つとしよう!!!《我が生涯の果てをここに。相反する二対は今、神をも殺す一つの神秘となる》!!」
剣士が詠唱を始めると、右手の陰剣が黒く禍々しいオーラを、左手の陽剣が白く神々しいオーラを纏い始める。そして双剣は互いに呼応する様に近づいていき、気付けば剣士の手の中には神々しくも禍々しい白と黒のが入り混じった一本の刀剣があった。
槍「へぇ、真の姿ってやつか。だかな、俺の宝具はそんな物じゃ止められんよ!!我が最強の一撃、手向けとして受け取るがいい!!」
槍兵は深く踏み込み高く跳躍した。槍からは果てしない程の魔力が溢れている。剣士も同時に剣を下に構える。それは鞘こそないが、抜刀術の構えに酷似していた。そして、二つの神秘が今解放される。
槍「突き穿つ死棘の槍!!!!!」
剣「人工宝具・天羽々斬!!!!!」
槍兵のゲイ・ボルグが赤い閃光となって剣士に迫る。しかし、剣士は抜刀術から解き放たれた銀の輝きで対抗する。
剣「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」
槍「野郎.....!!」
一見拮抗して見えるが、僅かに、だが確実に槍兵のゲイ・ボルグが押していた。
剣「まだだ!!!まだこんなもんじゃない!!!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
剣士が解放した刀剣《天羽々斬》に更に魔力を込めていく。銀の輝きが増し、出力が増していくがまだ足りない。
剣「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
直後、大爆発が起こる。二つの神秘のぶつかり合いは、互角に終わったのだ。煙が晴れ始めると更地になった大地と二つの影があった。空中にあったゲイ・ボルグが一人でに動き、吸い込まれる様に槍兵の手の中へ戻って行った。そして、歩いて行く。歩き着いた先には、全身がボロボロになって仰向けに倒れている剣士の姿があった。
槍「........」
剣「どう、した、殺さないのか??」
剣士は息絶え絶えで、今にも気を失ってしまいそうな様子だったが、満足そうな表情をしていた。
槍「....お前に、未練はないか??」
剣「ああ、俺は十分満足、しているよ。...あぁ、でも、お前に勝ちたかったなぁ....」
槍「そうか.....」
すると、槍兵が突然後ろを向き離れて行った。
剣「な、ぜ.....??」
槍「いつか、俺も倒せるぐらい強くなれ。まっ、絶対俺が勝ってやるがな!!」
槍兵が振り向き、挑戦的に笑いながら言う。剣士も最初は驚いた顔をしていたが、次第に笑顔になって言う。最初の皮肉げなものとは違う、少年の様な笑みであった。
剣「何を、次こそ俺が勝ってやるさ....!!」
槍兵は、その言葉に満足したのか何処かへ消えて行った。剣士も気合いで立ち上がり、次こそは奴に勝ってやると誓った。
はい、こんにちはこんばんわ、新谷洋です!!いやあ、どうですか!!今回は戦闘描写の練習で書きました。難しかったですが、結構いい出来だったんじゃないかなと思っています。別に、某腐れ縁の弓兵と槍兵ではありませんよ!?感想・意見あれば是非お願いします!!!