4-24話
ナナシはかんかんと金づちを打つ。
『みう~』『ぴよ~』『きゅー?』『きゅ…』
後ろで真似して魔物たちが足で地面をたたく。
魔物たちは仲良くやっている。
ハリエットは家の物が珍しいのか誰かの後についてくることが多い。
それにジョージも付き合わされているようだ。
めんどくさそうにしながらもちゃんと付き合っている。
早速尻に敷かれている感が強いジョージである。
「マネしなくていいの…。いてっ!」
指を叩いてしまった。向こう行ってなさい!と八つ当たりしそうになるのを飲み込む。ステータスを見ると1のダメージを受けていた。指に息を吹きかけぶらぶらと振ってからまた再び金槌を手に取り作業を再開する。
手に入れた素材の売却や盗賊たちを退治した功績で懐に余裕があった。親分を討ち取ったのはガーキさんだがナナシ達にもいくらかが支払われたのだ。
シクステンさんからもしばらくのんびりしていてくれと言われたのでその日の食べ物分くらいの仕事をこなしていた。
「…まぁこれでいいだろう」
カカシの首を持って言った。
「ただいま」「おかえりー」
ベファナとアリスが帰ってきた。
「二人ともおかえり。おじさん出来たって?」
「まだもうちょっとかかるそうよ」
あの像の武器の破片は武器屋に持っていった。
少々曰くのある素材だが鍛冶師の目から見ても間違いなく一級品の素材だった。珍しい素材とあって鍛冶屋のおじさんは喜んで引き受けてくれた。
アリスは鎖鎌、ナナシは槍を注文した。
他の仕事もあるが腕によりをかけたいので待ってくれと言っていた。
そう急ぎでもない。のんびりと待っていよう。
「ナナシ君はできた?」
「…こんなものですかね」
カカシは金属のつぎはぎで作られた服を着せられた格好になっていた。
像の余った破片で作っていたのだった。
「ナナシ、首乗せてみて」
さてどうだろう。
反応を見てやろうとカカシの体に首を乗せて下がった。
しばらくしてカカシはゆっくりと顔を上げ、そして飛び跳ねた。
ガシャン。
カカシは自分の体を確かめるように見たあと二度地面を鳴らすように飛んだ。
ガシャンガシャン。
あの時の音だった。
あれからオーロプレト跡にはギルドから調査が入った。
水は枯れてしまい、めぼしい作物は取れそうにない。
ダンジョン化した鉱山はやたらと広いだけでロクに採れる物もなく、採算は見込めそうもない。
町に張られた結界も間もなく効力を失ってしまう。
そう遠くない未来に、オーロプレト跡としての形も消えてしまう。
住んでいた人もほとんどが鬼籍に入った今、子孫たちに語り継がれることもなく、やがては国の歴史書の片隅に記されるのみとなるだろう。
金属が鳴る音を聞きながらナナシは考える。
ハリエットが何故あそこにいたのか。
あのダンジョンのマナを吸い尽くして主として生まれたからなのか。はたまた偶然迷い込んだのか。ミウを通じて聞いてみたけどそれは分からなかった。
ガシャンガシャンガシャン
案山子が手を広げ体を傾かせたままくるりと一回転した。そしてナナシに向かって軽くジャブを繰り出し、挑発するように腕を曲げると外へと出ていった。
『みうみう!』
早く早くとミウが玄関のところで手招きをしていた。
「ナナシ」
「おっと…こら!投げるんじゃない!」
ベファナが竹やりを放ってナナシに渡した。
(…結局考えていても仕方ないか)
ナナシは一度手の中で竹やりを回すと、みんなを追って外へと出た。
『みう!みう!』
威嚇と自分の闘志を奮い立たせる為前足で地面をひっかく。
「わかったわかった」
宥めながらミウに乗る。
…何となく今日は槍を握る感覚が変わった気がする。
「いけミウ!」『みううー!』
結果はカカシが強くなったのか世の中はそんなに甘くないのであった。




