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見習いナナシの仮面劇  作者: ころっけうどん
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4-9話

急ブレーキ。

ミウがひっくり返った。ナナシ達は投げ出された。

ナナシは岩壁に背をぶつけた。パラパラと破片が頭にかかった。

顔を上げたナナシの目の前を黒っぽい妖精玉が通り過ぎて行った。

目の前ではミウが仰向けにひっくり返ってぜーぜー言っている。


あたりを見回すと真っ暗な炭鉱を時折発生する妖精玉が所々ぼんやりと照らす。

地面に触れて感じるちょっとした違和感。

鉱山がダンジョンと化している証左だった。


ダンジョン化すると魔物の活性化や地形の変化等といった危険を伴う。しかし今まで取れていた資源がさらに生成されやすくなり、それまでその場所で採掘されなかった新しい鉱物が採れることもある。マナを帯びた鉱物やそれに引き寄せられ他から魔物が引き寄せられて危険さを増していく。


しばらく項垂れたまま呼吸を整えながら、教わった内容を思い出していた。

のどがカラカラだ。視界が利かない中、手探りで水筒を探していると頭上を何かが飛んでいく音がする。

慌てて身を屈めて水筒の水を飲んだ。

首筋に冷たいしずくが落ちてきてナナシは小さく悲鳴を上げた。


「みんな…大丈夫です…?」


警戒しながら小さく言ったが反響して思いの外大きく耳に届いた。


「うでいたいー」「何とか…」『ぴよー』『みゅ~』


そばでぼんやりと立ち上がった影が見える。


「まだ頭が…ガンガンするわ…」


アリスさんの声だ。

ナナシも立ち上がった。

何かを踏んだ。


「こう暗くっちゃ危ないな…」


「任せて!ファイ…「待って!」」


アリスがベファナを抑えた。


「…なぁに?」不満そうに答えた。


「ベファナ!この中で火はダメ。爆発するかもしれないから…」


アリスが早口で言った。

そうか洞窟の中だとそういう危険があるのか。

今のところ息苦しかったりクラクラしたりとか異常はない。

ふと鉱山ではカナリヤが変なガスが出て無いか調べるのに使われるとかいうのを思いだした。


『ぴよ?』


ヤキトリは大丈夫そうだ。そもそも火山地帯に生息しているので炭鉱のガスなんか効果があるか疑問だが。


「ナナシ君カンテラを出してくれる?」


シクステンさんから支給されたもので、マナを供給して光を発するため火気厳禁な場所でも使用出来るカンテラである。


町の雑貨屋で見たときは結構なお値段だった。


「装備品で苦労しないっていいわ…」


アリスさんがぽつりとつぶやいていたのが印象的だった。


アイテム袋から取り出そうとするとベファナが「ベファナがやる!」とナナシを制した。


まぁ…この中で一番MPの多いベファナが適任だろう。


ベファナがマナを込めると洞窟の中を魔力で出来た頼りない光が薄ぼんやりと照らし出す。視界は10mもない。どこでも使えるのが利点だが炎式と比べると明かりが弱いのが難点である。


さっき踏んづけたのは壊れたつるはしの破片のようだ。


「ミウけがはない?」


『みうーみうー』


動けないほどのけがはないようだ。

舌を出しているので水を飲ませてやる。

アリスとベファナも飲んでいた。

とりあえず動きそうもないのでひっくり返ったミウのおなかに3人が乗る。

真ん中にカンテラを置いて向かい合った。

3人はほっと息を吐いた。


「さっきのあれは…」


「オバケ?」


「たぶんゴーレム…みたい…だったけど…あんなの見たことないわ…」


「ゴーレム?」ベファナが聞いた。


「錬金術師が木とか石で作る動く人形よ…。ほら、うちの案山子のあの子よ」


「うちのカカシあんなのじゃないよ?」


少し怒りだしたのでナナシは宥める。


「あれなんとなく…この間退治したゴーストに似ていた気が…」


「ゴースト…?アンデッドなのかしら…?ごめんなさい、私あんまりゴーストを見たことがないから分からなかったわ」


「…あの子さみしそうだったね」ベファナが言った。


「「えっ?」」


…さっきのは聞き間違えじゃなかったのだろうか。


「あの人形何か言ってませんでした?『行かないで』って…」


『ぴよぴよ』ヤキトリが肯定するように頷いた。


アリスさんは首を横に振った。


「ともかく…あれはただの魔物じゃないわ」


アリスさんにも分からない魔物のようだ。

遠くで何か重い物が落ちたような音がする。


…落盤だろうか。


アリスさんが耳を澄ませた。ミウの耳もピクピク動いている。


『みう~』


「駄目だわ…反響しちゃって近いのか遠いのかもわからない」


ミウがよっこらと起き上がった。鼻を鳴らして首を横に振った。


「においがわからないの?」


ミウが頷いた。ナナシも鼻に意識を集中させてみる。

どうやら鉱山の洞窟の中の独特なにおいのせいで鼻が利かないようだ。


「これはちょっと…困ったわね」


今まで探知はミウが頼りだったのだ


「もうちょっと休んだら…出口を探そう」


懐中時計を見ると日の沈む頃合いだった。


『ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン…………………』


どこか遠くか近くか不気味な声のような音が響いてきた気がした。

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