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見習いナナシの仮面劇  作者: ころっけうどん
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2-23話

「何だ?知り合いだったのかい?」


「いえ…?初めてお会いするかと…」入ってきた女性は首を傾げていた。


「ナナシ君が来る少し前に手紙が届いてね。こちらは祖父の友人の孫で…」


「アリスといいます」


ナナシはじっとアリスと名乗る少女の顔を見つめた。


…似ている。


うさぎの耳が強く印象に残っているせいかもしれないが雰囲気が似ているのだ。


でも顔に火傷の痕は見当たらない。


アリスはじっとミウを見ている。


「ミウ。あのお姉さん会ったことあるかい?」そっと耳打ちした。


『うーん…?』確信が持てないでいるようだ。


「初めましてアリスです。あの…すみません、以前どこでお会いしましたでしょうか?」


おずおずと差し出された手をナナシはそっと握った。


「ユナさん…いや知っている人に似ていたもので。あの失礼ですがお顔に火傷をされたことは?」


ナナシはアリスの顔をじっと見つめる。


「火傷ですか?切り傷とか打撲はしょっちゅうなんですけど顔に火傷は…」


そう言って自分の顔を触りながら照れたように笑った。


「ナナシ?早くこれ直そう?」


杖を振って気だるげにベファナはナナシの肩に顎を乗せる。

アリスさんの顔が一瞬曇った気がした。


「初めましてウサネコさん」


ほうと息を吐くアリスさん。


『みうみう♪』


牧場で仲間にするようにやあと手をあげる。

第一印象は良いようだ。


「…おなか触らせてもらってもいい?」

『みう?』


ミウがよっこらと姿勢を変える。

毎日触っているからか触りたがる人は多い。


「ナナシ!」


ベファナがナナシの耳を引っ張った。


「いたいいたい!わかったわかった!畑はこっち!」


畑の隅に補修した木の枝を突きさす。

水をやってじっとベファナはその前に佇んでいた。

ミウとアリスさんは一緒に遊んでいたようだ。


その日は簡単な食事で済ませ次の日買い物をしてお祝いをすることにした。

ミウにナナシとアリスとベファナを乗せて町に行く。

ミウには3人で乗っても大丈夫。

買い物を済ませ家へと戻る前に3人は孤児院へ向かった。


「「「「ななしにーちゃーん!」」」」


「「「「みうちゃーん!」」」」


「「「とりさんだー!!」」」」


「「「「…しらないおねーちゃん?」」」」


「おばちゃんこんにちは」「こんにちは」「こんにちは」『みうー!』『ぴよ!』


「おやナナシ君とミウちゃん。…そちらの二人と鳥さんは初めましてだね?」


「アリスです」「あいあむベファナ」


「”賢者のフラスコ”に新しく入られた二人です」


「ほう…そうかい。まぁシクステンのやつは何を考えているか分からないところがあると思うけどよろしく頼むよ。こんなところじゃなんだあがっておくれよ」


ナナシはヤキトリを膝に乗せて座る。その両脇にアリスとベファナが座る。3人に向かい合っておばちゃんが座わる。

子ども達は大事な話をすると知りつつ雛に触らせろという雰囲気がひしひしと伝わってくる。視線がヤキトリに集まって時折おっかなびっくりアリスとベファナにチラチラといっている。


「そっちの子は卵が孵ったのかい?」


『ぴよ』「はい、おばちゃんこいつに名づけをお願いしたいんですけど…」


「せっかく”聖職者”になったんだからナナシ君が名付け親になってあげたらどうだい?」


「僕が…ですか?」


「そうそう。呪文は【我は願う。この者が”○○”という名でこの世界に認められることを】。名づけを経験すればこれでナナシ君も一人前だよ」


ナナシはお面を被り雛をテーブルに乗せて向かい合う。


「【我は願う。この者が”ヤキトリ”という名でこの世界に認められることを】」


「…本当にそれでいいのかい?」


雛が淡く一瞬光に包まれた。


『ぴよー?』


「よろしくヤキトリ」ナナシはキュッと抱きしめて”ステータス”を発動させた。


=====


名前:ヤキトリ


年齢:0


職業:


スキル:


HP 10/10


MP 0/0


STR 1


VIT 1


SPI 1


MND 1


AGI 2


DEX 1


=====


紙に書いて皆に見せてあげる。

用の済んだヤキトリが子ども達に連れていかれミウが追っかけていった。


「ナナシ、ナナシ」くいくいと袖を引っ張るベファナ。


「ん?」


「わたしもわたしも」


「…これは名づけだよ?ベファナはステータスに名前あるでしょ」


「ないよ?」


「本当にない」


何かを言おうとしたナナシをおばちゃんは遮った。


「…たまにいるんだよ。ちゃんと儀式を受けられなかったんだろう。お前さんは私が名付け親になってやろう」


「ナナシがいい」


「我儘言うんじゃないのおばちゃんで我慢しな。【我は願う。この者が”ベファナ”という名でこの世界に認められることを】」


光に包まれた後のベファナの顔は不満そうだ。


「むー」


「ほら膨れるんじゃないの。あんたたちクランなら”ステータス”を共有しておきな」


「ほらナナシと…アリス?ベファナのだよ?」


ステータスは拙い字で書かれていた。


===============


名前:ベファナ


年齢:15


職業:魔法使いLv2


スキル:


火魔法Lv2、魔力収束、霊力増大


HP 25/25


MP 42/42


STR 7


VIT 5


SPI 13+2


MND 10


AGI 4


DEX 6


===============


「アリスさんは…」


『ぴよー!!』『みうみう!』


ヤキトリの悲鳴が上がった。ミウの叱る気持ちのこもった鳴き声。


「あの子達は全く…そろそろ勉強でもさせるかね。お前たちもそろそろいい時間だから家に戻ったらどうだい?」


3人と2匹は門を出て行った。


「ねぇナナシ?」「ナナシはかぞく?」「そうだよ」「ミウも?」「うん」『みうみう』「ヤキトリも?」『ぴよ』「おばあちゃんみたいにいなくならない?」「…うん」「アリスもだよ?」「えっ?」「ア・リ・ス・も・だ・よ」「はい…うん…」


困ったような顔で返事をするナナシ。


自由気ままに話すベファナ。


じっと微笑んでいるアリス。


楽しそうに草原をかけるミウ。


ヤキトリはじっと空を眺めている。


身寄りのない3人と2匹は家族となって家へと帰るのだった。

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