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見習いナナシの仮面劇  作者: ころっけうどん
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8-27話

上下が逆さまになる奇妙な感覚を終えてダンジョンへと着地する。


「「「「…」」」」『ぴよー!』『きゅー!』


ダンジョンの中には人はいない。

立ち入り禁止。そのはずだ。

なのにじっとどこからか誰かに見られているような気がする。


「ここは立ち入り禁止のハズよね?」

「そのはず」

「…どこからか誰かに見られているような気がするな」


じんわりと何かがまとわりついているような気がする。

アリスもクレハも何か嫌な気配を感じているようだ。

ベファナはぼんやりと宙を見ている。


この嫌な気配の正体が見えているのだろうか?


「ベファナ?」

「んー?」

「何か見えるの?」

「…わかんない」


ここはダンジョンだ。

魔物が生息しているのでそれがじっとこっちを見ているのだろうか。


今回は様子を見て来てくれと頼まれた。

変な気配がする。嫌な予感がする。

それだけでは引き返すには少し足らない。


「…調べてみましょうか。」


北へ向かって歩き出した。

藪漕ぎをしてまっすぐ進む。


「…静かですね」「ああ静かだ」「静かすぎるわね」


しばらく進んでも魔物と遭遇しない。

しなさ過ぎだ。

ミウに聞いても周りにはいない。


『みう?』


ミウが何かを感じ取ったのか足を止める。

3人が顔を見合わせて武器に手をかけ周囲に目を配る。

ベファナだけがじっと正面を見つめていた。


「…大丈夫!…ですか?」

「ナナシ殿待った!」


人が倒れていた。まずはそう思った。

クレハに抑えられてよくそれを見ておかしいと考え直す。

人に見えたそれは袋から空気を抜いたようにしぼんでいた。


ひゅん


アリスが先手必勝で矢を放った。

クレハは盾を構えナナシとベファナを庇う。


命中。


へんじがない。ただのしかばねのよう…だ?


「人じゃない?」


アリスは放った矢に紐を結んでいた。

人と思わしきものに刺さった矢に結んだそれを引っ張ってみる。

刺さった矢に人と思わしきものが引っ張られた。軽いらしい。

手繰り寄せると引きずられて崩れてしまう。


「…近づいてみましょう」


途中で止めて周囲を警戒しながら近づいて調べてみることした。


「なんだこれは?」クレハも疑問の声をあげる。


しかばね。したい。いたい。むくろ。なきがら。


なきがら。


何となくその言い方が一番しっくりくる気がする。

それには中身がなかった。人は人なのだが皮だけ。小柄なうつ伏せになった人の背中が内側から破裂したように裂けていた。


「まさか…脱皮?」


確かにウサネコ達の毛皮のイメージと重なる。

アリスさんの言う通りもし人が脱皮したならこんな跡が残るんじゃないか。


「寄生する魔物か?」


人が体の中から魔物に食べられたのならまず皮も残さず食べられてしまう。

残ったとして手やら足やらそれとわかるようには残らないだろう。


そう考えると疑問が残る。


中身はどこへ行った?


「…脱皮してからまだそう時間が経ってないわよ。経っていても3日は経っていないと思う」


矢の先で人の抜け殻を持ち上げてみせた。

この世界では雨の周期が決まっている。

雨に打たれていないのも合わせて考えると見立ては正しそうだ。


「ミウ近くに何かいる?」

『みうみう~』


周囲にはいないらしい。

ニオイを追えないとなると…。


「飛んでいった?」


突拍子もないことを言ってしまったが他に何があるだろうか。

時間が経ってにおいが消えてしまっただけなのか。


多分これがドウさん。その抜け殻だろう。

生き物ではないからアイテム袋やショワンの背中に入る。


持って行く?

そのままにする?


「こうなってしまっては持っていった方がいいだろう。これを見せれば事件だと一発でわかる」


予備のアイテム袋に”人の抜け殻”をしまった。

この間の地図がまだあった。見つけた位置を記した。


これで一旦報告に戻った方が良いだろう。

来た道をまっすぐ戻るだけだ。

魔物ともエンカウントしていない。


「何が起きていると思う?」

「それは魔物を見かけないことか?さっきの人の抜け殻か?」

「魔物を見かけない方」

「魔物が急に見せなくなる異変か?」

「一番考えられるのは…考えたくないわね」

「それはね」


聞いたナナシにも何となく想像がついていた。

ウサネコ達が住みかを追われた時だ。


「生息している魔物を脅かす凶悪な何かが出現した時よ」


『げこっ』


奇妙な鳴き声が進む方から風に乗って流れてきた。

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