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見習いナナシの仮面劇  作者: ころっけうどん
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8-14話

5日目。


「よく眠れた?」

「ええ…おかげさまで」


昨日の強烈な眠気はトレントの睡眠作用のある粉が原因だった。仕業と言うかおかげというのか結果的にゆっくり休めた。


「なるようにしかならないわよ。これだけ休めれば残り2日寝なくても大丈夫よ」


これならなんとか乗り切れそうだ。


「「「ありがとう」」」


アリスさんも声に出した。

一晩そばにおいてくれたトレントに別れを告げて出発した。


降り続けた雨は味方にも敵にもなった。

器にたまった安全な水は味方であり地面のぬかるみと湿気は敵である。


水気が多ければ火が起こしずらくなる。じめじめとした不快感の中にいるだけでも体力を消耗する。地面のぬかるみはそれに対応した足の装備でなければ足をとられまた体力を消耗する。


そんな環境でついに限界に達してしまったようだ。


『みうー!!』


…ミウが野生化した。


常に低く唸り声をあげて睨むようにあたりを警戒している。


そもそもダンジョンという特殊な空間。

じめじめと不快な環境。

周囲にいる敵。目には映らなくてもミウの感知できる範囲には多くいただろう。

何より普段は三食おやつに昼寝付きと過ごしてきた。

栄養はあっても腹を満たすまで至らない食事。


ストレスが限界を超えてしまったようだ。


一昨日魚を食べさせたのが良くなかった。


柑橘系の果物が手に入ったので塩焼きに添えて出すと目に涙を浮かべてうまいうまいと食べてくれた。その様子を見ているだけで胸がいっぱいになった。あの顔が見れて作ったかいがあったと思う。


ただ量はナナシとアリスの分とベファナの半分。

4匹と半分ではミウを満足させることは出来なかった。


それでどうやら歯止めがかからなくなってしまった。


みうみう吠えながらずんずん進んで行く。


探せば魚があるんじゃないか。


ミウはナナシ達3人を乗せて砂浜を歩いていた。


頭を指でいたずらで突いてやると振り返って睨まれた。

…いつもならくすぐったそうにみうみう鳴くのにショックだ。

なんか赤いオーラでも漂いだしたような気さえする。

もしかしてとステータスを見ると上がっていた。


======


名前:ミウ

年齢:2

職業:

スキル:五感強化、身体強化(+)、応援


HP 77/77

MP 0/0

STR 28+5

VIT 32+5

SPI 3

MND 5

AGI 32+5

DEX 8

======


まぁミウのステータスが上がってくれるのは良かった。


野生を取り戻したと言うべきか。

ただ初めて会ったときはこんなギラギラしていなかったと思う。

ストレスで生存本能が刺激されたのだろうか。


うちのウサネコ達も適度に食事を減らした方がいいのだろうか。


『ご主人~おさかなが食べたいよ~』

「バナナ食べる?」

『おさかな~』

「いらない?」

『ちょうだい~』


半分程むいて下を叩くとポンと飛び出す。ミウが口でキャッチした。

泣いたり怒ったり感情の起伏が激しい。


シクステンさんに「魚屋さんに良いところをとっておいてください」と伝言できないだろうか。とりあえず賞金もらったら真っ先に魚屋へ向かおう。


『むっ!』


ミウが走り出した。

森の中へ入っていく。

前の方からガサガサ音がする。


「ミウ!ストップ!」


他のクランか兵士だ。


『うー!!』

「こら!ご飯抜きだぞ!」


ミウの足が止まった。ガサガサの音が離れていく。目視は出来なかったがクランか兵士の人が逃げきれたようだ。音が完全に聞こえなくなったところでアリスは弓を解除した。


『あの人はどこ!?』

「どうどう」


さっきからミウが動き回るせいで遭遇しかける率は上がっていた。

食料を確保する為に移動する必要があった。昨日の雨で補給が出来ずそれはどこも同じだろう。


ただあくまでも遭遇”しかける”のだ。

幸か不幸かミウと気づいた段階で逃げ出してしまう。

なのでミウさえ抑えておけば人との戦闘は発生しなさそうだ。


『おさかなが食べたいよー!!』


…抑えられればだが。


みんなでミウを慰めながら移動する。


「えっ?」


どこかの兵士の野営の後を見つけた。


「…兵士達がここにいたみたいだけど」


アリスでさえも驚いた表情を見せた。


鎧の残骸が散らばっていた。残っている部位を集めても一人分に足りない。

そしてこれ見よがしに印が落ちていた。

ケガ人がいれば救助するつもりはある。


ミウが念入りに周囲のにおいを嗅ぐ。

ミウもアリスも誰かがいるのか見つけられない。

無理矢理にロープが引きちぎられて鳴子が散らばっている。


「魔物から逃げ出した?」


残骸は着の身着のまま逃げ出した結果。

そう思うのが自然だろう。

人の仕業なら印は回収していく。

そんな逃げなくてはいけない魔物がいるのだろうか。


「これもらっていいのかな?」

「…」


冷たい視線が飛んできた。

良いも悪いも置いておくという選択肢はないのだ。

聞かなくても視線だけでとりあえず分かった。

手を合わせておく。ミウのおさかな代にさせてもらおう。


『みうう…』


ミウが正面を睨めつけている。


「どうしたの?」


ミウの見る先をナナシも見る。

ちょっと穴が開いている?


ナナシがのぞき込んだ時だった。

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