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 店の外に出る。日光を思わすような強烈な光が視界に飛び込む。ほんの一瞬だけ空を見上げた。


 「今日もいい天気、……と言えるのかな」


 自分のいる場所は洞窟の中である。当然のことながら天井があり、地上のように空を望むことはできない。


 「目を凝らせば偽物だとわかるけど、ここまで再現できているのはすごいと思う。」


 空のように薄い水色に染まった天井を見ながらそうつぶやいた。


 この天井は商店街に住む造園屋が魔法と迷宮に自生する特殊植物を使用して作成したものである。もともと迷宮内には魔力を光に変換して生体発光するコケが存在していたのだが、それを採取して品種改良を行い。太陽光にきわめて近い光を放つように改良したのだ。それがこの商店街が存在する階層すべての天井に張り巡らされている。


 それだけであれば、特筆すべきことは無いのだが。このコケを下地として、魔法で地上から見える空の姿が投影されており、リアルタイムで同期されている。そのため、太陽の動きに合わせて、光の強さの管理することも出来ていることから、地下だというのにこの場所には朝があり、昼があり、夜が目に見える形で存在していた。


 さらに、外界の気候に合わせて熱を発して温度を調整してくれるという優れものである。ただし、それだけの機能を発揮するには当然のことだが相応の維持費が必要となる。


 「確かに、ずっと土でできた壁や天井を見続けるよりも、気分的にはいいけど、それのために町内会費がたかくなるというのはなぁ」


 ぽつりとつぶやく。細かい内訳は忘れたが、町内会費の2割程度はこの空を投影する費用を含んだ光熱費に使用されているのだ。この費用以外にも中には外気を取り込む換気費用と温度調整が含まれているため


 この町で商売を行っている身分の者としては商店街の総意であれば受け入れることしかできないのだが、不満に思わないわけではない。


 そんなことを考えながら、店の扉に掲げてある営業中の看板を裏返して、店の営業を閉店に切り替えた。


 今朝のようなトラブルがたびたび起こるため、シアン一人で店番をさせるのはまだまだ不安であった。ヴォルフにお願いすることもできたが、そんなことで借りを作るのも嫌だったので、素直にあきらめたのだ。


 戸締りを確認し、地下に降りるための扉を目指して少し足早に歩き出した。夕飯時まで5時間程度の余裕があるとはいえ、早めに戻ってきたいという気持ちがそうさせていた。


 この依頼には特に制限時間があるものでもなかったが、早めに帰らないと夕食の支度が遅くなってしまう。


 「俺はともかくとして、シアンは飢えさせたくない」


 シアンの年齢は数えで14歳かそのぐらいのはずだと記憶している。ちょうど成長期真っ最中の子供である。一食ぐらい抜いたところで、そこまで影響がない事は理解しているが、俺があのぐらいの年の時は、一食とはいえ飯が食えない辛かった記憶がある。


 成長期の少女が飢えるような状況を作ることはなるべく避けたい。彼女を預かっているものとして最低限の義務が俺にはある。そう、シアンを立派に成長させる義務が俺にはあるのだ。

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