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きゅうけいさんは騒動を察知する

結局落ち着かず更新しちゃいましたね……!

「魔族を見た?」


 一仕事終わってからしばらくの時間が経過しての、とある朝。

 私たちの朝食後にドラゴネッティの家へやってきたのはルフィナさん。

 開口一番に言われた内容に、シルヴィアちゃんエッダちゃんとともに顔を見合わせる。


「本当なの?」

「ええ。北部の街『ヴェアリーノ』のギルドマスターからこちらに連絡が入ったの。見たのはBランク、信頼度は高いわ」


 Bランクといえば、かなりの手練れのはず。

 ゲームではFランクからスタートするからね。


 魔族が本当に現れたという話。私も姿勢を正して真剣な顔になる。


「魔族の特徴、教えてもらえる? 見つけた人の詳しい話も」

「その魔族は、見た目が太っているらしいわ。全身が黄色いか、赤茶色に近い姿をしていて、一瞬人間かと思ったそうだけど……目の中が真っ黒で、間違いなく魔族であると確信したと」


 確定、ベルゼブブの眷属だ。

 ベルゼブブ本人はまず外を出歩かないというベルさんの情報と、ルマーニャからダークエルフの集落を抜けた海岸にいた、最初に倒した暴食の肥満眷属と見た目が一致する。


「情報を仕入れてきたのは、ヴェアリーノのBランク冒険者パーティの斥候スカウトの男性ね。直接戦闘は得意ではないものの、視力が良く、隠密に長けた能力を持っているからパーティでも重宝されているわ。それでも、生きて帰ってこられた時には憔悴しきっていたそうよ……」


 それは……そうだろう。

 下級魔族でも、この世界の人間にはかなりの格上だ。一対一で倒すのなら、もう人類を引っ張れるレベルの勇者になるしかない。


 それでも、AランクBランクの人間が集団で襲いかかれば、魔族だって相手が一人なら倒せる。

 だけど、相手もそんな迂闊に姿を出すことはないだろうし、何より集団で倒せるからといっても、先陣を切って魔族に殺される前衛に名乗り出る人もまずいないだろう。

 あくまでそういう作戦は、相手が街まで襲いかかってきた時だ。


「幸い、Bランクの人たちも混乱を避けるよう考えているので、まだまだ情報は出回っていない状態。だけど……」

「相手から動くことも考えなくちゃいけない」


 ルフィナさんは、口を引き結んで頷いた。


 私は、シルヴィアちゃんを見る。

 シルヴィアちゃんは、もちろん頷いた。


「行きましょう。以前情報共有した話から察するに、エッダの集落を襲った魔族と同族の可能性が高いです」

「はわわ……大変ですぅ! ヴェアリーノ近くにいるということは、みんなが危ない……!」


 エッダちゃんが、とても慌てている。

 こんな緊急事態だけどその姿めっちゃかわいいんで、とりあえず肩に手を当てて落ち着けよう。


「どうしたの? もちろん助けに行くよ」

「いえ、あのルフィナさんっ! その情報、いつぐらいの話ですかぁ!?」

「少し待ってくださいね。【コネクト】」


 うおおっ、また知らない魔法! ルフィナさんの手のひらに、なにやらピクトグラムみたいなものが!

 グランドギルドマスターのルフィナさん、ワールドポジションといい、いろんな魔法使いこなすなあ!


「……ルフィナです。ステファニア、例の魔族の件だけど、いつの話? ええ……ええ、そうなのね。こちらから強いグループを向かわせるわ。そちらのギルドには寄らないけど、私が信頼している方だから探りを入れるのは禁物。街の周りだけ、警戒を固めて」


 さりげなく、ギルドには寄らないと付け加えてくれている。

 ……きっと、私が降り立つと問題になるからだ。

 だって間違いなく、ヴェアリーノはルマーニャと同じように人間の街。マモンさんがあれだけ大放出の取引をして、それでも僅かな割合しか魔族に気を許さなかった。


「……体調不良者? 北からの……だけ……? わかった。その件も含めて、伝えておくわ」


 何やら不穏な単語が出てきたところで、ルフィナさんの手元のアイコンがふわっと消えた。通話終了っぽい。


「ルフィナさん、寄らないこと言ってくれてありがとう」

「ふふっ、きゅうけいさん見つけたら騒動になっちゃうからね? ま、私に逆らえるギルマスなんていないんだから、堂々としていたらいいわよ!」


 腰に手を当ててドヤ顔! ドヤかわいいっ!

 ほんとルフィナさんめちゃんこ偉い人なんだなあ。本人こんなに見た目も性格もかわいい人だけど。


「後はレーダー使って近くに人間がいたら逃げたらいいわ。ま、好奇心は猫も冒険者も殺すから、助けなくっても自業自得よ。……って言っても、助けちゃうんだろね」

「えへへ〜」


 そりゃもちろん。瞬間移動して魔物を掃除するぐらいは余裕だからね。

 それに、助けられるのに助けられなかったら絶対夜寝られないし。


「っと、さっきのエッダさんの話でしたね。魔族を発見したのは、三日前の夜の話。ギルドが閉まっていたので、パーティはその翌日にギルドへと報告。それから私のところへ連絡がまとまってやってくるのに少し時間を置いてしまって、昨日の夜に報告が来たの」

「じゃあ……魔族が来たのは、三日以上、前なんですか……」

「そうですね。……そういえば追記事項として、北の森から帰ってきた人が、体調を崩して寝込んでいたという話もあったわ」


 ルフィナさんがその話をした直後……エッダちゃんはがばっと立ち上がった。

 突然の動作で、皆驚く。


「あわわ……たいへん、ですぅ……!」

「ど、どうなさったんですか? エッダさん、珍しく……」

「……だって、ルフィナさん……ヴェアリーノの北には……」

「はい、ヴェアリーノの北には森があって、その海岸……あっ!」


 な、なんだなんだ? ルフィナさんも立ち上がって、エッダちゃんに頭を下げた。


「も、申し訳ありません! 言われるまですぐに連想できていなかったです。そうでした、あまり最近は交流がなかったので失念していました」

「あっ、いえ、あの、はいぃっ」


 ルフィナさんの謝罪に、エッダちゃんがちょっと申し訳なさそうに手を胸の前に持ってきて振るけど、展開が分からない。


「あの、そろそろ教えてもらえると……」

「そそそうでしたぁ! きゅうけいさんは、えっと、シルヴィアさんの話だと、それ以前にこの世界を見て回ってないので、ほとんどルマーニャ近辺と、私たちの行ったところしか知らないんですよね……」

「そうそう」


 つまり、私の……『きゅうけいさんの行ったことある場所』という事柄について、シルヴィアちゃんとエッダちゃんは、完全に把握している。

 一緒に行ったことない場所は、知らない場所。例外があの『置き去りのダンジョン』ぐらい。


「ヴェアリーノの街は、ルマーニャの街と非常に近い関係なんですぅ。街があって、山があって、森があって、海岸があるんですけどぉ……それだけじゃなくて」

「それだけじゃない?」


 エッダちゃんは頷くと、その事実を言った。

 そして私は、エッダちゃんがどうしてこんなに慌てているかようやく分かった。


「ヴェアリーノの北には……『ブライトエルフの集落』があるんです! かなり前にお会いしましたけど、私と同じ『魔族狩り』トスカニーニさんの一族もいて……!」


 完全に狙われてるパターンだこれ!

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