きゅうけいさんは思い出す
グリフォンさん改め、クローエさんのお話をみんなから聞いた。
「んー、ルシちゃんの筆頭眷属だと、私は知らないなぁ……」
「……ベルお姉ちゃん、そんなに前から、別の意識に乗っ取られてたんだね……。きゅうけいさん、クローエはね……」
パオラさん曰く。
白い髪が、茶髪の上にふわっと乗ったようなショートからミディアム。
キリっとした目つきで、パオラさんより背丈がある。
嫌味じゃないタイプの、誇り高い性格。
ビーチェさん曰く。
生真面目な性格。冗談は通じなく義理堅い。
何度か助けてくれたこともある。
レヴィアタン様のことは気に入ってたとか。
イデアさん曰く。
とにかくカッコイイ系女子。服は人間の男モノを着ている。
胸は平坦でお姫様より王子様系。スカート姿は見たことない。
男と言われたら七割は信じるぐらいの超美形。
仮に男だったら間違いなく狙った。
マモンさん曰く。
生真面目な筆頭眷属代表。
命令に忠実で、ルシファーに逆らったことはない。
筆頭眷属の中でも、パオラとクローエの評価は高かった。
リリアーナさん曰く。
恋愛には奥手な方。色恋沙汰に巻き込みたい。
匂いからムッツリスケベ確定。
……なんか最後の情報だけずっこけましたね。
ていうか元々レベル9999の色欲の大罪アスモデウスだったリリアーナさんが言うと、その信憑性めっちゃ高くて反応に困るんですけど。
ほら、パオラさんとビーチェさん、ちょっと顔を赤くして視線を逸らしている。
イデアさんも「あー……わかります、やっぱかー……」って、そういえばイデアさんは、リリアーナさん以上に手慣れたそっち系でしたね。
とにかく。
私はその全ての情報を頭の中で整理して。
恐らくこれで完璧、という像が出来上がった。
ショートカット。白髪に茶髪のメッシュかツートンみたいな、おしゃれなストリート系の雰囲気。
背丈は高くて、トゥーリアさんより少し小さいかな、ぐらい。
すらっとしたスマートな、細マッチョ系美女。
恐らく、宝塚の男役で組のスターになってる男装の令嬢みたいな人が、化粧なしの私服姿でワイルド系のズボンファッションになっている感じ。
……。
…………。
————あああああ〜〜〜〜〜〜っ!
もう絶対好きなタイプ〜〜〜〜〜〜っ!
話を聞きながら、自分でも自分で分かるってぐらい、口角上がりっぱなし。
めちゃめちゃ上がっているのが分かる。にやにやがおさまらないにやにや。
やばいやばい、トゥーリアさんとは別タイプの、女子校でバレンタインチョコ山ほどもらっちゃうタイプの人だ。
見てなくても分かる。特にサキュバスクイーンのイデアさんの男を見る目の信頼の高さと褒めちぎり方から、間違いなくその情報が正確であることを私に伝えてくる。
あー。
会いたいなー。
そんなことを思っていたからか、パオラさんはしっかり私に釘も刺してくれた。
人類全てとクローエさんだと、やっぱり人類を切り捨てることはできない。
でも。
「私のことなんて気にせず、自分のやりたいようにやって」
そんなことを言ってくれるもんだから、私も覚悟が決まった。
おっけー。
私、好きなようにやるよ。
パオラさんがドン引きするぐらい、やりたいようにやるよ。
誰かに喜んでもらうことは、それだけで報酬になるぐらい嬉しいから、私はパオラさん達に信頼されているクローエさんを連れてきて、またみんなの喜んだ顔が見たい。
だから、そりゃもー好き放題、徹底的にやりたい放題やっちゃうよ。
めちゃくちゃ能力に頼り切った方法で意地でも捕まえて、自分の友人が無理なら無理矢理筆頭眷属として奪ってでも、クローエさんを連れてくるよ。
そしてまた、眷属美女四人の姦しい空間をこの村に作ってもらうよ。
ていうかその光景ちょー見たいよ。
ほんともう、自分の望むことのため、自分の好き放題やっちゃうからね。
よーし、気合い入ってきたーっ!
がんばるぞー!
-
「その前におふとんセッティングしないとね」
「ほんとそういうところだけは全くブレませんね、きゅうけいさん……」
「わーっ! ふかふかですぅ!」
まず、私の最初のお仕事。
それは……ふかふか羽毛布団準備です!
人間の街とは離れた山岳部である竜族の村は、わりと年中寒い。
だからそれなりに皆暖かい服を着ているし、料理も温かいものが多い。
ていうかこの環境でおふろほったらかしにしていたのは信じられない。
とまあそんなわけで、私は竜族の村に戻るにあたって、絶対にほしいものを手に入れてきたのです。
それがこれ! ヤマトアイランドのふかふか羽毛布団!
地面にふわふわおふとんを敷いて、ふわふわ毛布を敷いて、そしてふかふかもこもこのぶあつい羽毛布団をかけて、枕を乗せて……完成!
この姿になって諦めていた、おうちと同じレベルの日本のおふとん!
おふとんだいすき!
きゅうけいさんの一番の友達、おふとん————
————と思った瞬間、私は以前同じことを思って……。
「……ミーナ、ちゃん」
自分が一人っきりだった時、まだシルヴィアちゃんと出会う前。
そんな独り言をしたことを思い出した。
「きゅうけいさん?」
「あ……シルヴィアちゃん」
「ミーナちゃんって、以前言っていたきゅうけいさんを受け入れてくれた女の子のこと、ですよね」
「うん」
私は、ミーナちゃんの話を二人にしたことがある。
私を受け入れてくれた女の子。
茶髪で、村娘という雰囲気の子。弟想いの女の子。
「そういえば、今日握手した人たちの中に、ミーナちゃんはいなかったな……」
「ふぇ、そうなんですか? なんだか話を聞くと、絶対きゅうけいさんに会いたいって思ってるはずですけどねぇ……」
エッダちゃんが首を傾げる。
そういえばエッダちゃんの状況って、ミーナちゃんに似てるかも。
私がクリアエリクサーで病気を取り除いたことで感謝されて、というのね。
「お礼、絶対に直接言いたいはずですよぉ。きゅうけいさんの姿を見て、山の魔物すら倒せない人間が受け入れるって、相当な信頼がないとできないはずですから」
「……うん」
あのとき。
私がこんな姿になって、一人っきりで洞窟にこもるような生活になりそうな時にも、独り言たっぷりで頑張れたのはミーナちゃんのおかげだ。
あんな小さい女の子に、助けても怖がられておしまい、なんてことになったら……私は自分の姿を憎んだだろう。
自分の角を折って、肌を見せない宗派の服を意地でも探して、それを今でも外していないはずだ。
そうならなかったのは。
自分の姿を、鏡で見ても憎まなかったのは。
ミーナちゃんが、最終的に受け入れてくれたからだ。
「どうして、会いに来ないのかな……」
「もしかしたら、旅に出てるのかもしれませんねぇ」
「うーん。ミーナちゃんの背丈はエッダちゃんぐらいだけど、レベルは数十分の一だから無理だと思う。まだ年齢も二桁なりたてってぐらいだったし」
「じゃあ……竜族の村への観光募集を、ご両親さんが断っちゃったんですかねぇ……」
……そう、なのだろう。
マモンさんの話によると、かなりの割合が魔族との交流に難色を示したと聞いた。
ミーナちゃんの家族が、いきなりマモンさんを受け入れたわけではなかったのかもしれない。
特に薬を渡した私の姿がこんなだってことを、ミーナちゃんが言ったとは思えない。
話したのか、話してないのか、それはわからないけど……。
ただ一つ。
ミーナちゃんは、竜族の村にはいなかった。
私は布団に潜り込み、久々に出発時の三人で眠った。
シルヴィアちゃんと、エッダちゃん。
私の旅の、はじまりの二人。
その二人と一緒に、ふかふかおふとんを並べて就寝する。
(最高級おふとんさん、あなたは素敵な友達。ほんとに大好き。だけど……)
私は天井を見ながら目を閉じる。
(きっと、ミーナちゃんの方が、温かいんだろうな……)
そんなことを思いながら、眠りについた。
ちょっとペース落とすかもしれません。じっくりじっくり。
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