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きゅうけいさんは作りながら語る

 たくさん話してお腹もすいて、すっかり日も傾いた。

 そろそろ解散かな? という雰囲気の中……ここで手を上げて、リクエストを出したのは、ルフィナさん。


「はい! はい! はいはい! 晩ご飯はきゅうけいさんの料理がいいです!」

「へ? ルフィナさん?」

「きゅうけいさんさあ〜、あっちにお礼だのこっちにプレゼントだのしておいて、ダンジョンから助けた上に背中に乗せて飛んだ私に対して、あ〜んまりお礼が足りないんじゃありませんことぉ〜? ね、ね? お願い!」


 お、おおっ……!? ルフィナさん、腕を組んでずいずいっと肩を寄せてくるっ! そして手を合わせてくる!


 珍しいルフィナさんの、わがままモードです!

 そんなルフィナさんの姿も……もちろん可愛い!


 清楚系美女という圧倒的攻撃力のルックス、お転婆モードでもおねだりモードでもギャップで最高ダメージ叩き出すのでずるい!


「それに、私、もう二度と食べられないって本気で思っちゃったぐらいの、最後の晩餐の味って気分だったから……」

「あ……」


 そっか……ルフィナさんにとって、あの料理はそれぐらいの気持ちを込めて食べてくれた料理なんだ。

 そういうことなら、もちろん頑張らないとね!




「ふんふんふーん」


 この台所に立つのも久しぶり。

 ドラゴネッティ家、兼道場。

 子供達がわーっと集まって、私のサンドイッチだっけ、ピザだっけ、食べてくれたのはほんとにいい思い出だ。

 トゥーリアさんに認めてもらうまで、頑張って頑張って、そしてこの村……竜族に受け入れてもらえた。

 人類側の村に住まわせてもらえた初めての経験は、私の第二の人生において、大きな一歩となったのだ。


 ……きっと、まだ、ルマーニャは無理だ。

 それでも、私がシルヴィアちゃんと繋がって、シルヴィアちゃんからトゥーリアさんに話が行って、トゥーリアさんからレジーナさんに、レジーナさんから村長への話で、正式に村長公認となることができた。


 レジーナさんの、友達たくさんというアドバイスを守って、ビーチェさんとも友達になって、マモンさんとも友達になれた。この二人に対しては、本当にエッダちゃんのアドバイスのおかげだ。


 今はそのマモンさんの手腕のおかげで、戻ってきた頃には魔王の私にも、友好的な態度を取ってくれる人間がかなりの人数いた。


 ミーナちゃんに出会って、魔族というものがどう見られるかということを感じて……あれから私は、一年で世界一周した。

 この一年で、私のやったこと、そして私の友人達のやってくれたこと、そのつながりによって生まれた関係は、得難いものだ。


 少しずつ、一歩ずつ……なんてものじゃない、三段飛ばしの猛ダッシュで、人間と魔王の私の垣根が外されていっている。

 すごい、何百年か何千年かの壁が、たった一年でここまで。


「……きゅうけいさん、何か考え事してんの?」

「あ、トゥーリアさん。いやー、みんなのおかげで、人間と魔王が自然に会話できる世界になりそうだなあって思って」

「おうよ、きゅうけいさんのためとあらば、きゅうけいさんを知った人ならみんな協力すると思うぜ。……つっても、今回の騒動はちょいと厄介だったがな」


 今回の問題……間違いなく、ルシファー襲撃の話だ。


「人間と魔族の友好関係、それは条件が合えば敵対する必要もないっていうことだ。だが逆に言うと、条件の合わない魔族は思いっきり敵対する。今回のルシファーはもちろん、その眷属も、だろう」

「お互いがお互いを、滅ぼすしかないのかなあ」

「……まあ、そうだろうな。きゅうけいさんにとっては、つらい選択になるかもしれねえ」

「ううん、覚悟はしているよ」


 トゥーリアさんにも、私の話を聞いてもらおう。


 私は魔族に関して、まだ最初の頃は、『話せば分かる』程度にしか思っていなかった。

 だけど、違った。


 サタンの眷属に出会って、サタンの眷属に殺された孤児のマイケル君と、暖かな義父母に出会って。

 そして何より、サタンのマイケル君に対しての行為の、あまりの残虐非道さに、私は根本的な部分から考えを改めさせられた。


 私が怒ると面白いから。そんな理由で雑に殺されかけたマイケル君。

 ボビーさんと、ペトラさんに、実の息子のように愛された彼を、私は、守り損ねた。

 私たちの最高のリーダー、シルヴィアちゃんがいなかったら今頃……もう私は、立ち上がれなかったかもしれない。

 レベル九京の魔王でありながら、守ると約束した子供一人守れなかったら、自分で自分を許せない。


「……サタンっての、きゅうけいさんが倒してくれたという話……本当に心から安心するよ。昔の話だけど、父上が負けた相手をあっさり殺した魔王なんで、あたしらはそいつに備えて鍛えてた部分もあったからね」

「レヴィアタン自体、そんなに抵抗しなかったらしいからね」

「……あたしのせいではないとはいえ、ビーチェさんには悪いことしちまったな……」

「うん……」


 私はパオラさんの反応、そしてリリアーナさん——アスモデウスを見た時のイデアさんの反応を見て、どれだけあの人型の主従関係が強固なものであるか感じたのだ。

 マモンさんは筆頭眷属であるゴブリンキングに対してあっさりしていたけど、人間の言葉が話せず交流がなかったから、あれぐらいの距離なのだろう。

 もしかしたら一体二体じゃないのかも。


 ……そういえば。

 グリフォンは、ルシファーの眷属だ。

 そしてグリフォンは、人間形態になると聞いた。


 ここまで来たんだ、後で詳しくグリフォンのこと、聞いておかないと。


「だったらよ。えーっと、パオラさんやイデアさん、あとベルさんリリアーナさんにも聞かねえとな」

「そうだね。きっとあの人達しか知らない情報もたくさんある」

「……やっぱりきゅうけいさんは、グリフォンも友達狙い?」

「もちろん! と言いたいところだけど……ルシファーの筆頭眷属ということを考えると、クリアエリクサーで元が攻撃的な性格なら」


 私は、シルヴィアちゃんがケルベロスに殺されかけた瞬間を覚えている。

 そして自分が、パオラさんの攻撃を受けた時のことも覚えている。

 もしもグリフォンが、元から傲慢な魔族だというのなら……。


「私が、責任を持って倒します」

「……あんまり気を張るなよ?」

「はい、ありがとうございます」


 トゥーリアさんの優しい言葉に微笑みながら、鍋の蓋を開ける。

 湯気がぶわっと広がり、バターのいい香りがぶわーっと広がってきた。

 隣の鍋も蓋を開けると、そこにはお肉とお芋がたっくさん。

 その隣も……おおっ、いい感じだね。


「出来上がったんで呼んできてもらってもいいかな?」

「え? ええっ!? あ、あれ、ほんとだ、いつの間に……」


 私の料理に驚くトゥーリアさん、大変かわいいです!


 ……もう帰ってきてからかわいいかわいいしか言ってない、私の語彙力かんぜんに死んでる。

 仕方ない、みんな超絶美人なのに、とってもナチュラルな感じで気取ってなくて、魅力的なんだもん。

 この世界は『可愛い』の天国。


「……ほんとにきゅうけいさんの手際の良さ見てると、最初に出会った頃の自分を思い出して穴に入りたくなるわ……」

「いえいえ、あれもいい経験でしたから!」

「そう言ってくれると……」


 頭を掻いて困ったように笑いながら、トゥーリアさんはみんなを呼びに行ってくれた。




 食卓に並んだ料理を、集まったみんなでいただく。

 パスタもスープも、いっぱい。


「おお、これは……かぼちゃ料理ですか」

「うん! 北エイメラから持って帰ってきたよ。今日はかぼちゃ料理が食べたい日なのだ!」

「ふーむ……その理由はわかりませんが、とてもいい出来です、おいしいですよォ」


 料理を褒める男性はいい男性。

 マモンさんは宝石とか金とかのモノが絡まないと、基本的にめっちゃ紳士だよねって思う。


「そうだねマモンちゃん、タマエちゃんの料理、とっても上手くてびっくりしちゃった。私はこういうこと、なーんにもできないからなぁ……」

「いやいや、怠惰の大罪って普通そうだもん、きゅうけいさんがちょっと凄すぎるだけ。ベルお姉ちゃんは気に病まないでね?」

「……やっぱり普通そうよね? タマエちゃんが怠惰じゃなさすぎるだけよね?」

「そーそー。あの人椅子で寝ている時以外は基本的に張り切ってるし、全部自分でやっちゃうから」


 パオラさん、ベルさんのことかなり身近に感じているというか、なんと丁寧語ですらなかった。

 とっても仲のいい、身長逆転姉妹って感じでめちゃ尊い。最高。

 あとパオラさんがいちいち私を褒めるので顔が熱いです。てれてれ。


 ……っと、あんまりじっくり見てもいられない。

 私はここで、どうしても切り込まなければならない話題を、早いうちにしておきたいのだ。


「ところで、二人……あと他の魔王サイドのみんなにも質問があります」


 パオラさん達がこちらを向く。


「グリフォンについて、どれぐらい知っていますか?」

今日かぼちゃ料理つくりました。ハッピーハロウィーン!

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