きゅうけいさんはみんな一緒がいい
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三巻が配信開始されました!
三巻にはエッダちゃんの挿絵があるので、是非是非見てくださいませ!
パオラさんが泣き止んで、ゆっくりと立ち上がる。
そして……まあうん、私と目が合いますよね。照れてる照れてる。
「……きゅうけいさんには、恥ずかしいところ見られちゃったわね。人前でこんなに泣いちゃうのって、やっぱり後々どういう顔すればいいか気まずいわ」
「あ、それに関して言うならそっちのベルフェゴールも、レヴィアタンが討伐されたって聞いたときにぎゃんぎゃん泣いたからおあいこだよ」
「たたタマエちゃん!?」
慌てた様子の先代へと、ドヤ顔して腰に手を当てる。
ふっふっふ、勝った!
「まあきゅうけいさんは、マモンさんの眷属である獣人の尻尾触って怒られるという、一番しょーもない理由で泣いてましたけどね……」
「しししシルヴィアちゃんっ!?」
あああばらされたああ!
私がヤマトアイランドで最初にやらかした、ほんとに一番しょーもなくて、調子に乗って魔が差したやつをばらされてしまったあ!
「……もしかして、弥々華のこと?」
「そうよ」
しかもそれが、弥々華さんと一番付き合いの長いパオラさんにばれてしまったっ!
パオラさんが「そっかー、弥々華に泣かされたかー」とニヤニヤしている。
こ、今回は私の負けだった……しかし、第二第三の私がいずれあなたたちを恥ずか死させることであろう……!
「さて、そろそろいいかな?」
と、ここで手を叩いて皆の注目を集めるのはトゥーリアさん。
「一応村長の長女っつーことで、あたしが代表して言わせてもらうけどよ……きゅうけいさん、そっちの魔族は味方つーことででいいんだよな?」
「もちろん。私が洗脳を解いた先代ベルフェゴールだよ」
「そっかあ、魔王三人目が味方かあ。……なーんかきゅうけいさんと一緒にいると、ちょっとやそっとじゃ驚かねーな……」
いえ、さすがにそこは驚いてもいいと思いますトゥーリアさん。
私は目立つことをしているわけじゃなくて、本当に気の向くままに動いてるだけでしてね。
おかしいな、こんなはずでは……あ、これ私何かやっちゃいましたパターンだ。
「ま、無事で何より。ルフィナ! お前が助けてくれたんだよな、よくやってくれた! やっぱ、『おてんば女王』は何年経っても伊達じゃねえな!」
「もーっ、トゥーリア様それ一体いつの話ですか! 言わないでくださいよぉ!」
おおっ……ルフィナさん、冒険女王の前は、おてんば女王だったんですね! 確かにそんな感じでお似合いです!
そんな呼ばれ方していたルフィナさんも、かわいい!
「じゃ、ついてきてくれ。えーっと、あんたもそれでいいか?」
「私? もちろんいいよ。パオラちゃんの友達なら、きっといい子ちゃんだと思うし」
ニコニコしているベルフェゴールの姿にちょっとたじろぎつつも、頭をぽりぽり掻いて村長の屋敷へと歩き出したトゥーリアさん。
絶対照れてますよね。もちろん最高にかわいいです。
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「よりにもよって、『置き去りのダンジョン』の下層か……」
ワープしてから一体何があったか、ルフィナさんからトゥーリアさんに説明を受けていた。
私が話すより、グランドギルドマスターのルフィナさんの方が圧倒的に説明が上手いし、私の知らない知識も補って話してくれている。
私と先代、ルフィナさんの後ろでさっきから頷くだけ。
「本当に、私が間に合ってよかったです。最下層のベルフェゴールさんが捕らえられていた部屋までの道は、天井から壁まで全面ワープのL字通路。きゅうけいさんでも通行手段がなかったから、ホーリードラゴンの姿で移動しました」
「なんつー意地の悪いダンジョン……飛べない種族はどうあがいても通れない上、あたしらみたいなでかい古竜じゃ壁にぶつかって戻されちまうってか……」
「そう。レベルが上がったところで、下層付近はなかなか難しかったと思う。人間なら四桁のレベルになった上で、モンスターテイマーが最低条件になるでしょうね。その方向でダンジョン攻略情報と生息モンスターをまとめて、攻略に必要な情報とレベルをまとめます」
なるほど、ルフィナさん自ら調査して、その豊富な知識で攻略情報をまとめて世界中のギルドマスターにデータを送るというわけだ。
世界共通の『ダンジョン攻略必要レベル』というやつ、こうやって調査・共有されていくんだね。
「宝を持ち出した後だということも付け加えると、無謀に挑戦して死ぬ人も減るでしょう」
最後にそう言った瞬間、マモンさんの首がぐるっと回った。コワイ!
「今……宝と言いましたかネ?」
「マモンさん、それに関してはベルフェゴールのお二人から話を聞いてくださいね。元々きゅうけいさんから提案されたので」
ルフィナさんがここで私にぶんなげた!
マモンさんの眼力が、すっごい! くわっと見開いて、めっちゃこっち見てる!
そそそそうでした、マモンさんは強欲の魔王。
相手の持っている物は「殺してでも うばいとる」というぐらい本来ならば欲深い魔王でしたっ!
今は『無傷で寿命を迎えた古竜の長のパーツ』という究極のお宝のために協力関係にあるので、全力で守ってくれる頼れる魔王様だけど!
そんな私の緊張を知らず、ニコニコしながらマモンさんの眼力へ手を振るお隣のベルフェゴールさんマジぱねーっす。
「マモンちゃんは、おっきくなっても欲しがりねー」
「もちろん、ワタクシの身体から衝動が湧き立ちますからネ!」
「タマエちゃんが、マモンちゃんにって私に相談してきてくれたのよ。ちゃんとお礼言いましょうね」
「おおっ、そうでしたか! きゅうけいさん、あなたはやっぱり分かる方だ! 友人として心から感謝しますよォ!」
マモンさんがものすっごい揉み手で背中を丸めながら笑いかけてくる。先代さん、パーフェクトコミュニケーションでした。
ほんと先代さんめちゃ頼りになります。
「うん。ベルフェゴールが探し当てた最下層のお宝は……これ!」
私の手に、大きくて綺麗な魔石が現れる。
そのサイズに周りの女子から一斉に注目が集まり、更に「うわあ……!」と近くにいたエッダちゃんから声が上がる。
女の子はみんなきらきらの宝石大好きだからね!
「これは、なんと巨大なルチル……いえ、違う……全然違う! まさか、この大きさと密度で、魔石なのですか……!」
「うん。見た目は普通のルチルだけど、中の金糸も魔力の塊、水晶部分も世界最高峰レベルの魔石、しかもそれがこのサイズで出土したよ」
「素晴らしい……!」
マモンさんが近づいて手を伸ばそうとしたところで、ひょいっと一歩引いて石を持ち上げる。
「こーかんじょうけんっ!」
「む! それはもちろんそうですネ。これほどのもの、ただでいただけるとはもちろん思っていませんよォ……。条件は何ですかネ?」
私は、後ろを向いてパオラさんを見る。
パオラさんは自分が見られると思っていなかったのか、驚いた顔をして自分の顔を指さして首を傾げる。
キリッとしたかっこいいお姉様系の顔ながら、ベルフェゴールが来てから心なしか幼くなったような印象のする可愛い反応に、私は満面の笑顔で頷く。
再びマモンさんの方へ目を合わせる。
よし!
「先代ベルフェゴールさんを、仲間として受け入れて守ってくれませんか? どんな相手が来ても、マモンさんが守ってくれたら私もどこにいっても安心ですから!」
言った!
私の、この宝石を持ってきての交換条件!
「…………」
「……あれ?」
「………。…………?」
マモンさん、口を少し開いたような、なんか心ここにあらずっていうぽかーんとした表情。
え? え? なんか反応ほしいんですけど……?
「……きゅうけいさん」
「は、はいっ」
「交換条件とは、それだけですかネ……?」
「ええっと、それだけです」
なんとも不思議な表情をしたまま、マモンさんが手のひらを上に向けて、こちらに差し出す。
……契約成立、でいいんだよね? 私は魔石をマモンさんの手の上に乗せた。
マモンさんは、その宝石を傾いた日光に当てて輝かせて……長いため息をつくと、魔法で収納した。
それからマモンさんは少し目を閉じると、ベルフェゴールの方へ向いた。
「……あなたの後任の器、とてもワタクシでは計れませんヨ」
「ふふっ、マモンちゃんもそう思う? 私もなのよ」
「今日からまた、よろしくお願いしますネ。……ベル」
「うん」
へえー、マモンさんはベルフェゴールのこと、ベルって呼んでたんだ。
私も今度、そう呼ぼっかな? 長いし、なんといっても私もベルフェゴールだからややこしいし!
とそんなことを思っていると、後ろから急にぐわっと押される!
って、これ、抱きしめられて……! パオラさんが後ろから抱きついてきてる!?
「きゅうけいさん、あ、あの、ありがとう……!」
「ん、どういたしまして!」
「でも、本当によかったの? あんなすごいお宝の交換条件、まるで私のために使ってくれたみたいで」
私はパオラさんの方を向いて笑った。
「そもそも北エイメラ大陸で、先に私を助けてくれたのパオラさんじゃん。眷属じゃなくて、友達のあなたに。だから私も、友達の望むことをしたいなーって思っただけだよ。それぐらいしか私、してほしいこととかないからねー」
そう言ってにへらと笑うと……パオラさん、なんと私の身体に顔を寄せて、今度は私の胸の中で泣き出してしまった!
「もう……! きゅうけいさん、普段はとぼけてるのに……そういうの急に、ずるいわよ……っ!」
あはは、今日のパオラさんは泣き虫だなあ。
……私もちょっと鼻の奥がつーんとしているけど、ばれないように頭抱えちゃうもんね。
でも本当に、これが私の一番の望みですから!
やっぱり、みんな仲良く一緒にいられたらいいよね!






