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きゅうけいさんは乙女と共感する

久々更新でランキングに入っていました、ありがとうございます!

少し以前より軽めな感じで更新続けていきます。

「それに関しては、私から」


 ……!

 地面に座る私の後ろから聞こえてくる声は、色気を含むセクシーボイス。

 トゥーリアさんを超える高身長の人間、リリアーナさんだった。


 トゥーリアさん、さすがに自分より大きい女性に見下ろされることは少ないから、ちょっとたじたじ。


「あ、ああ……リリアーナさん、でいいのですよね?」

「そんな丁寧な言葉遣いもいらないわ。それでは————イデア以下四名、全員服を着ろ」

「ハッ!」


 リリアーナさんが慣れた様子で命令し、イデアさん達がすぐに装備の要領でシャツ……いや、コートを着た。

 エイメラ大陸で着ていたような、超巨大フルーツ二個詰め袋ではない、身体のシルエットが一切見えないガッチガチの厚手のコート姿。


「これでどうかしら」

「……す、すまない、気を遣わせてしまったな」

「構わないわ。少し私含め常識がずれているところがあるの、ごめんなさいね」


 まずはその認識の齟齬を埋めるように丁寧に対応すると、リリアーナさんは私の手を取って、立ち上がらせた。


「ごめんなさい、私のために土下座させてしまって……」

「あーっ、いいですよほんと! 友達のためなら、ましてリリアーナさんやイデアさん達のためなら、こんな安い頭とかいくらでも下げちゃいますんで!」

「その頭、ほんとは全く安くないんだけど……でも、ふふっ、そういうところがきゅうけいさんって感じで、好きよ」


 好きって言われる度に心臓が喉から出るぐらい跳ねる私ちょろい! でもどういたしまして!

 私自身は魔王ってつもりなくて、未だに下っ端OLのつもりだからね!


 ってやりとりを見ていたトゥーリアさんが、リリアーナさんに近づいて見上げる。


「……あなたは、元アスモデウス、と聞いた。その……人間に関しては、どれぐらいの理解を?」

「そっちでこっちを面白そうに見ているマモンと同じぐらいよ。色欲アスモデウス強欲マモンは、人間の社会を知っていないとちゃんとその能力を発揮できないの。……でも」


 リリアーナさんは、周りにいる竜族の男性を何人か見渡している。


「私個人は、実はその……えっと……」

「……?」


 トゥーリアさんが、首を傾げる。

 顔を赤くした乙女モード全開のリリアーナさんが、男性諸氏と目を合わせて、コートの下の胸を自分で抱くようにしている。

 やがて諦めたように小さく息を吐くと、困ったように笑って、とんでもないことを言った。


「……未だに処女なの」


 ……。


 ……。


 ぱーどぅん?


「えええええええーーーーーーーっ!?」


 私が叫んだ。いや、私以外が叫んだかもしれない。

 そりゃもう驚いた。

 だってあなた、そういうのの象徴みたいな存在ですよ? 18禁の暴力みたいな見た目と能力で、処女!?

 っていうか!


「だってユニコーンには襲われたって!」

「あれは、私のかわいいイデアに襲いかかろうとしたから……」


 え、待って。

 待ってじゃあマジで花も恥じらうチョー乙女なの!?

 この色気で……!?


 いや……可能性としては、確かにあった。

 パオラさんのお話では、ずっと恋に恋する乙女みたいな、そんな呟きをしていたって言ってた。

 少なくとも、嫌がる男に無理矢理襲いかかるってことはしていなかったと聞いた。

 つまり『幸せになりたい』というのは、やはり無理矢理男女の関係を持つのではなく、色欲の力とは別で男性と『幸せ』になりたいと思っていたわけで……。


 ……あっ。

 今、村の男達の視線が一斉に集まってる。


「なので、その……もしも私みたいなレベル1000の大女でも、受け入れてくれる男性がいらっしゃったら……そうね……」


 襲っちゃいますか!? 天国に連れて行っちゃいますか!? カルメンさんみたいになっちゃいますかーっ!?


「……手をつないで、デートをしてみたいわ」


 めちゃめちゃ乙女でしたーーーっ!?


 ハイ好感度ストップ高。この人、あんだけ私に色っぽく絡んでおいて、男には本気で内面乙女だ。多分男を魅了して捕まえてたの、主にイデアさん達のために頑張ってたんじゃないかな。

 可愛すぎる。もう周りの独り身の男達、結構な人数がリリアーナさんのかわいさ気になってしょうがないでしょ。だって私もその一人だもん、分かる分かる、分かるよーわかり手魔王だよー。

 ほんっと、なんでこの人、アスモデウスやってたんだろ!?

 なんで……って。


 そこまで考えて、理解した。

 自分が魔王になるつもりがなくても、魔王になってしまった存在。

 人間の嫌がることをしたいわけではなく、望んだわけでもない姿を持ったせいで、苦労した存在。

 そう。



 ————この人、私と同じだ。




 力を持ったから、できることもたくさんある。実際に私はエッダちゃんも救えたし。

 だけど、ミーナちゃんとその家族には、この姿で会いに行くことなどできない。

 悪魔に救ってもらっただなんて言われたら、ミーナちゃんと家族の迷惑になってしまう。

 私は、この能力は好きだけど、この姿は自ら望んだわけではないのだ。


 それでも、私がこの姿になったことで、パオラさんみたいな本当に素敵な、友達で、眷属で、尊敬できる最高のお姉さんとここまで近づけた。

 リリアーナさんにとってのイデアさん達も、そのはずなのだ。


 全ての条件が願望に合致した、なんてことはそうないものだ。

 自分がうまくいったかどうか簡単に言い表すことって、なかなかできない。一言では足らないことばかり。


 でも。


「ようやく人間になって、アスモデウスの種族も継承できて、眷属も無事が保証されたから……そろそろ私も、自由に動きたいなって」


 きっとこれが、ずっと高い位置に存在していた彼女が、地に降り立ってまで望んだ理想。

 うまくいったと言える、最良の選択なのだ。


「……あー。まあ、合意がありゃフリーのヤツなら、いいんじゃねーかな? くれぐれも相手アリのやつは避けろよ」

「それはもちろん。私は女の人も好きだから、あまり争いたくはないわ」

「おう、わかった。一応サキュバスの4人は影響がこええから自分から声をかけるってのはナシでいいか?」

「無論、徹底させるわ。……いいわね?」


 リリアーナさんが振り返ると、イデアさん以下サキュバス組が頷く。

 ユルトの街で捕まった際に、他の女性とのトラブルという意味でかなり反省したようだね。


 ってわけでトゥーリアさんの許可をもらって、ちょっとうきうきしているリリアーナさん。

 そんな表情も破壊力絶大でかわいいです。


 話がまとまったところで、さあ帰りの挨拶を……というタイミングで、ゆっくりこちらに近づく、金髪美女さん。

 私がその姿を懐かしんで名前を呼ぶ前に、後ろから珍しく嬉しそうな声が上がった。

 私より遙かに長い間、友達だった人。


「ビーチェ!」

「パオラっ!」


 それは、途方もない時間離ればなれだった、筆頭眷属同士の再会だった。

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