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きゅうけいさんは新大陸に降り立つ

ちょっと作者のきゅうけい時間が長すぎたけど、また再開! していきまっす!

 なんだかこーやってシルヴィアちゃんの背中に長時間乗るのも久々だなーって思う。私たちのパーティ『異種族友の会』の、遠征モードだ。『ドラゴンフォーム』で古竜の姿になったシルヴィアちゃんの背中の上での、快適な空の旅。

 そんな今回のシルヴィアちゃんの背中は、一人多い。


「少し話をしておきたいのだけれどいいかな?」

「うん、私もパオラさんとお話ししたい!」


 フェニックスのパオラ。

 先代ベルフェゴールの筆頭眷属であり、人間との友好関係を築いて大和の街を守っていた優しくてかっこいい女の人。

 その姿は、背が高くきりっとした顔をしていて、赤い髪が毛先に行くに従って黄色くなっている。長い髪は風が靡いて炎のように……と言いたいところだけど、シルヴィアちゃんの防御魔術つきの背中はほぼ完全な無風だったりする。

 シルヴィアちゃん航空ほんと超快適フライト。


「えーっと、そういえばパオラさん。最初に気になったんだけど、アスモデウスさんのところに行くってことは交友とかあったんだよね」

「同じ筆頭眷属のサキュバスクイーン……イデアっていうんだけどね、私とイデアは個人的に仲が良かったのよ」


 サキュバスクイーンのイデアさん! 絶対超セクシーだ!


「基本的に人間大好きというか、人間がいないと成り立たないからアスモデウス様も仲はよかったけれど……同時にアスモデウス様があまり他の魔王様にいい印象を持っていらっしゃらなかったのを知っているの。だから、その後どうなったかは分からないのよね。無事だといいけど……」


 確かに、男性いないとサキュバス一族どうしようもない部分あるもんね。それで人間に悪感情がないということなら……これは期待できますよっ!


「それに……」

「それに?」

「今代のベルフェゴールを見せたいのよね。きゅうけいさんがたとえかつてのベルフェゴールと同じ種族だったとしても、私が信頼しているということを前面に出せば、信用してもらえるはず。会った際はそのことを十分に利用していくわ」


 ……そんなことを、考えていたんだ。

 パオラさんは……あなた自身はあんな目に遭っていたというのに。


「自分をそんな便利な道具みたいに言わなくても……パオラさんって、やっぱどこまでも良い人だよね」

「それ、殺されかけても全く怒らないあなたが言っちゃう? これでも本当に感謝してるんだから。あと申し訳ないともやっぱり思ってるから、あなたは堂々と私を頼るべきなのよ」

「でも……」

「……ね、友達だというなら……私に、一番欲しいものをくれると嬉しいわ」

「な、なになに! なんでも言ってよ!」


 パオラさんの一番欲しいもの!

 この無欲で誇り高い感じの超かっこいいお姉様の一番欲しいもの!


「……それはね、『私が必要とされる』という事実よ。それも『私じゃないといけない』というぐらいの。ずっと、自分は本当にいていいのか、このまま自分が現世に居続ける価値があるのか、悩んでいたから」

「あ……」

「フェニックスの私に対して『友達になりたい』というのがあなたの一番の望みだったと聞いて……自分が必要とされるというシチュエーションの想定に気負いすぎた。だから、この喜びに見合うものをものをお返しできて、初めて私は素直に救われる気持ちになるの」


 ……この人は。

 本当に、どこまで誇り高いのか。


「今になって思うのよ。誰かの上に立って崇められることを望むとか、逆に眷属として命令に忠実であるとか……そういう関係性を自らの意思で望むのは不自然だって。魔王自らの対等な関係を望まれて、私は……私自身の過去を恥じたわ。きっと勇気が持てなかったのね。自己の内から溢れる動機も。

 ……ねえ、きゅうけいさん。私はこんな種族で、自分で言うのも何だけどここまでレベルの高い立場になって、結構尊大だったと思うけど……。……弥々華は私と、その……友達になってくれると思うかな」


 私はパオラさんの言ったことに、既視感を覚えた。

 それは、つい先日の旅立ち前で言われたことと、そしてシルヴィアちゃんやエッダちゃんの故郷で言われたことだった。


 ……なるほどなるほど、あの時のみんなはこーゆー気持ちか。

 じゃあ私も言ってみよう。


「たぶんそれ今更過ぎるよ」

「え?」

「弥々華さんでしょ? 向こうはとっくに友達のつもりだと思うよ」

「——」


 パオラさん、何か言おうと口を開いたままフリーズ。

 ぽかーんという擬態語をくっつけたい顔だけど、これ絶対私も今までみんなに見せてたんだろなー。

 ちょっとかわいいかも。


「そ……う、なの?」

「うん、終盤弥々華さんも大分やわらかくなったし」

「ああ……そうね、ピリピリした感じがなくなって、母親っぽい顔というか……」


 弥々華さんは、自分とその子孫の命をあの腹立つ鳩の妖怪に狙われ続けていた。恐ろしい妖怪だった……私だってレーダーの魔法がなければ、絶対に戦おうとは思わなかっただろうね。まさか山形城そのものが人質状態だっただなんて。あんな残酷な妖怪が敵にいたのなら、ずっと気を張りっぱなしだっただろう。

 そんな七代に渡る問題も解決できて、ずっと監禁状態だった寧々ちゃんが元気に外で遊べるようになって。寧々ちゃんと千世ちゃんを見守る姿は、本当に優しい母親の笑顔であり、子孫の無事に安堵する守り神様だった。


 でも、私には。

 あれが、孫の元気な姿を見て喜ぶおばあちゃんのように見えて。

 おばあちゃんっ子だった私は、そんな弥々華さんの姿に、じわりとこみ上げるものがあった。


 私も……おばあちゃんにもっと元気な姿を見せたかったな……。


「……弥々華さんは、今とっても幸せなはずだよ。特にさ、あの妖怪を倒したパオラさんのこと特別に思ってるって。だから、胸を張って対等な友達として接したらいいと思うよ」

「そう……そうね、今度会ったらもっとお話をしたいわ」

「うんうん、それがいいよ!」


 友達ってやっぱり素敵だ。きっと弥々華さんとパオラさんだけの思い出も沢山あるんだろう。




「あ……あのっ!」


 ふと横から声を上げたのはエッダちゃんだ。


「わ、私も話に加わってもいいでしょうかっ!?」

「そういえば大和では慌ただしかったし、あまりあなたとは話さなかったわね。いいわよ、ダークエルフの、エッダでよかったわよね」

「はいっ、エッダ・モンティです! 集落をきゅうけいさんに助けていただいて、それからずっと一緒に旅をさせていただいていますっ!」

「モンティ!? 名前は知ってたけどまさかのモンティ家の子なのね。魔王がダークエルフを助けてモンティ家と魔王が仲良しなんて、驚くしかないわ……そりゃ私も友達にぐらいされちゃうわね。よろしく、エッダ」

「よろしくですぅ!」


 エッダちゃんがパオラさんに頭を撫でられてニコニコ顔。……いやあ、絵になりますね……昔見ていた薔薇なんだけど百合な小説『女神像の前で』っていう学園の姉妹仲ものの濃い作品があったんだけど、あの三年のお姉様と一年の末娘見てる感じで最高。

 ……そういえば続刊出てるって聞いてたけど、そのうち読もうなんて思わず買っておけば良かったなあ……。あっ、そういえばこっちの世界に来ちゃったから連載ものの漫画とか続きが全然読めない!

 忍者ものの漫画のやつは結局アレどうなるんだろう、ああーんこっちに来て長い時間経っちゃったし……。


 ……いや、そもそも私はここに来る前に一度『終わった』んだった。


 死後転生。

 それ以外に表現しようがないのが今の状況。


 死んだ人間に、連載作品を読むことなんてできないのは当然だ。だから私は、一度もう続編が見られなくなってしまった今の状況に対して不満などはない。

 ……いや、本音を言うと続きがわかんないままっていうモヤモヤ感はすっごく不満あるけどね?

 でも、今の状況は未来が何もなくなっていた状態の私に比べたら、最高にエンターテインメントしてる。控えめに言って超楽しい。

 何より……。


「っていうかダークエルフってこんなに見た目幼くてもほんっと胸おっきいわね、実は偽物……ってことはなさそう」

「ふあっ、あうっ、や、やめてくださいよぉ……」

「ああ、ごめんごめん。つい触り心地が良くてね。まあ女同士なんだし、いいわよね?」

「それは、その……そうですけどぉ……」


 ……この状況より楽しい休暇などあるだろうか!

 いいや、ないねッ!


「……きゅうけいさん、何ガッツポーズしてるの?」

「勝ってる」

「え?」

「私、最高に勝ってる。勝ち組ボーナスタイム」

「はあ……そっすか……」


 私はそんな呆れ声などまるで聞こえず、この素敵な時間を存分に堪能した。


 -


「だ、だからごめんって……」

「……ふーんだ」


 一旦目的地の街近くの山に降り立って、まず最初のパオラさんのお仕事は、むくれたシルヴィアちゃんのご機嫌を取ることだった。


「た、確かに遠慮なく背中に乗っちゃったけど、でも一人で飛ぶのもね」

「そうじゃないわよ」

「ええっと、だったら何が……」

「……ずいぶんと楽しそうにしていたじゃないの」


 腕を組んで、顔をそっぽむけているシルヴィアちゃん。


「そりゃ当然、あたしは竜の姿になったら会話なんてできないですしー? メンバーが仲良くなってくれるのはリーダーとしていいですけどねー?」

「もしかして、会話って……」

「全部聞こえていたわよ。なんだか仲良く触り合ったりしてたわね」

「うっ……」


 そうだった、シルヴィアちゃんは背中の上でのこそこそ声とか全部聞き取れるんだった。

 当然あのいちゃいちゃしてた時の会話も全部聞こえている。


 さすがにパオラさんもたじたじだ。


「……その、ごめん。……。……私はまだ、リーダーとの距離感掴めないから、どう言ったらいいかわからないけれど……」

「……」

「私とも、その……積極的に会話してくれると、嬉しい……かな」


 気まずそうにパオラさんが話す。

 シルヴィアちゃんはそんなパオラさんに対して……ばつが悪そうに頭を掻いた。


「……ああ、もう……ごめんなさい、あたしもちょっとふてくされてただけなのよ。きゅうけいさんと、パオラさんにあんなことがあったから……。距離をどう測ればいいか分からないのはあたしも一緒だから。今のは軽い冗談ぐらいに受け取ってもらえると、その……助かるわ」

「ん……そういう、ことなら。改めてよろしく、シルヴィア」

「ええ、こちらこそ。パオラ」


 二人が握手をする。どっちもキリっとした美人だ。

 うんうん、みんな仲良しが一番だね。


「ところでパオラ」

「ええ、何かしら」

「せっかくだし、次はパオラが飛んでくれない?」

「…………」


 パオラさん、無言でぷいっと首を背けた。

 ……あれ? この流れだと快諾って感じかと思ったら黙っちゃった。


「……ちょ、ちょっと! そこは『いいわよ』って言ってくれるところじゃないの!?」

「あのさ、シルヴィア」

「何よ」

「……私の背中、()()()熱いよ? ほんとに乗るの?」

「…………。…………遠慮しておくわ……」


 言われて納得、パオラさんはフェニックスなのだ。その姿は火の鳥そのもので、まあ早い話がめっちゃめちゃ熱い。実際にハグもらった私だからわかるけど二人は絶対乗るの無理。


 うーん……心苦しいけど、暫くはまだシルヴィアちゃんに頼り切りかなー。




 ところで降り立ったこの場所、アメリカとかカナダに位置するような場所だった。アメリカンでウエスタン! みたいな感じかと思ったら、中世的なこの世界ではまだ移民をしていなかった。


 日本もといヤマトアイランドでも思ったけど、ゲーム内世界だと思っていたのに結構しっかり全世界がちゃんとあるんだなあ。やっぱりこれ完全に異世界だ。

 そんなこの大陸に降り立った理由だけど、パオラさんが以前アスモデウスはこちらの地方のことを話していたので、もしかしたらこっちに来ているのかもしれないと予測したとのこと。それで、近いからこっちにまず来てみようと。


「私が聞いた話によると、アメリカは、耳の生えた人達とか、顔まで狼の人型の獣人という種族がいるわ」


 犬耳! 猫耳! 獣人!

 もふもふ! もふもふ〜っ!


「あ、でも魔族とは敵対しているはずだから、きゅうけいさんはなるべく迂闊な行動は控えてよ」


 しゅん……。


 ……そうかー、魔族とはそんなにどこの世界でもはじかれちゃってるかー。まあ仕方ないよね、私が最初に湖で自分の姿見たときもめちゃめちゃびびったし。

 でも……もふもふしたいなあ———


「———ひゃっ! え、シルヴィアちゃん?」

「もう、そんなに寂しそうな顔しないでくださいよ」

「え……私って今そんな顔してた?」

「見るからに『落ち込んでますぅ〜……』って感じの顔でしたよ。捨てられた子猫か何かみたいでしたね」


 思いっきり顔に出る方だった。うう……はずかしい。


「最初は難しくても、ここでもヤマト同様にあたしたちがうまく立ち回りますから。どこまで上手くいくか分かりませんが、獣人は竜族とも友好関係がありますし、きゅうけいさんにもすぐに話ができるようになると思いますよ」

「あっ……うん! わかったよ! 期待してる!」

「ええ! 任せてください」

「おっと、フェニックスも友好関係あるから頼りにしていいわよ」

「わあっパオラさん! お願いしますぅ〜!」

「そうそう、どんどん友達を頼って!」


 かっこいいし頼りになるし爽やかだし、パオラさんを友達にできてよかった。先代ベルフェゴールの筆頭眷属フェニックス、とっても素敵な人だった。


 と、パオラさんを見ているとお腹にふにょりと衝撃があった。

 ……この幸せすぎる感触はっ!


「わ、私も頼ってくださいぃ〜! 何ができるかわかりませんけど……!」

「エッダちゃん! エッダちゃんはね、私に抱きついてくれているだけで私の寂しさとかそういうの考える暇もないぐらい幸せになるから十分役に立ってるよ!」

「そうなんですか? だったらずっとぎゅっとしてますぅ!」


 ふおお、エッダちゃん相も変わらず無防備すぎるっ!

 悪い虫にひっつかれないか、私が守らないとっ!




 え、悪い虫が私?

 アーアー聞こえない。


 だって私の名前はきゅうけいさん。

 いかにも無害そうでしょ?


 ……最近本格的にきゅうけいさんとしか呼ばれないので、段々自分の本名忘れかけてきてる気がする……。




 とりあえずいい感じにみんなのおかげでメンタル回復して幸せ一杯になりましたので、それじゃあ新大陸でちょっくら調査開始といきますか!

この作品とは別ですが、私が連載している

『勇者の村の村人は魔族の女に懐かれる』

https://ncode.syosetu.com/n3922ek/

が、この度書籍化することとなりました!

これも応援いただいた方のおかげです、ありがとうございます!


また詳細は後日となりますが、いくつか変更して来年頭に出版を目指していますので、もしよろしければ読んでいただけると嬉しいです!

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