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きゅうけいさんは文化の違いを確認する

 ギルドへ戻ってくると、まずはやっぱり討伐の報告だ。弥々華さんが鈴さんと目を合わせる。


「いつも通りで構わぬな?」

「ええ、問題ないよ」


 何か確認をし合うと、弥々華さんが受付に立った。


「弥々華様、お疲れ様です」

「ああ。ゴブリンの討伐任務を完了してきた」

「やはり……その」

「そうだ。一人で完了してきた。以上だ」


 弥々華さんは、切り取った耳や奪った装備などをギルド嬢に渡す。

 ……ん?

 今、何かおかしく……あれ? 一人で討伐完了?

 いや、確かに合ってるけど……。


 ……弥々華さんが報告するの……?


「報酬は……」

「ああ。後で話をしておくゆえ、我一人に」

「わかりました」


 やっぱりそうだ、鈴さんは全く報酬を受け取るつもりがないらしい。


「鈴さんはそれでいいの? ……って、あれ?」


 鈴さん、いない……?

 周りを見てみても、既に鈴さんはギルドから出て行った後のようだった。


 ギルドの人と話を終えた弥々華さんが報酬を手に持ってやってきた。そのままギルドの畳のスペースにまでやってきて、腰を下ろす。

 用事が済んだはずなので、何か話があるんだろう。シルヴィアちゃんが私達に目を向けると、そのまま弥々華さんの正面まで歩いて行った。

 みんなで一緒に弥々華さんの正面に座る。


「今の、説明していただけますよね?」


 今の、というのはもちろん、報酬を全部一人で取ったことだろう。

 どう考えても、今日の活躍は鈴さんだ。そんなこと、私達が確認するまでもなく弥々華さんが一番知っている。

 にもかかわらず、その手元には安値でありながら数がすごかったため、討伐数の端数で凄いことになってしまっている重そうな報酬の袋があった。

 金貨で纏まらなかったため、銀貨銅貨がジャラジャラ入っている。


「……分かったと思うが、鈴は冒険者組合に登録していない」

「やっぱり……」


 予想通りと言えば予想通りだが、鈴さんは冒険者ギルドに登録していない、完全なるフリーの戦士だった。

 それなら報酬を受け取れないのも分かる。受注自体できないからだ。

 それでも、いくらなんでも一切報酬を受け取らないというのは極端なのではないかな。それで鈴さんはいいの?


「なんでも、別に構わないらしい。服は一張羅だし、何か欲しい物があるというわけでもなさそうで、我も普段のあ奴はどういう奴なのか全く知らないのだ」

「極端なのね……でも、討伐任務には協力するんだ」

「そういうことだシルヴィア殿。鈴は、基本的に戦うだけだ」


 鈴さんは、ある日突然弥々華さんの近くに現れたらしい。

 討伐任務で、厳つい顔の餓鬼っていうクソガキとかじゃなくてそういう名前の妖怪に囲まれていたとき、周りを圧倒的な炎の渦で覆ってしまったとか。

 そして討伐任務の報酬を全部譲ったと。最初は弥々華さんもかなり食い下がったらしい。報酬は正当な対価だ、その能力で冒険者として協力するべきだと。しかし鈴さんの反応はとても淡泊だった。


『そういうの、いらない』


 そして、めんどくさそうにふわっと消えてしまい、結局弥々華さんが全部を討伐したことになった。

 事情を受付さんに話したけど、もちろん報酬は弥々華さんが総取り。そして弥々華さんは、そこで鈴さんが他の人の討伐の手伝いもしているということを聞かされた。


 とてつもなく強い、黒髪セミロングの美女。

 ピンチの時に、助けに入ってくれる。

 報酬は、一切受け取らない。


 ま、当然人気が出ないはずがない。


「ギルド側からも、見つけたときには積極的に入らないかとアプローチしてみたらしいが、常に空振りに終わっているらしくてな」


 話を聞く限り、まあ間違いなくちょっと頼んだ程度でギルドに登録してくれるとは思えない。きっと何度お願いしても間違いなく断るだろう。


「……悪い人じゃないんだろうけど、一気に胡散臭くなってきましたね」


 鈴さんには悪いけど、その通りだと思う。

 ギルドに登録しないということは、単純にそれだけ自分の情報を出したくないということでもある。

 別の町に登録したことがあればわざわざ提示の義務がない場合もあるけど、一度も登録していないのに魔物討伐をやっているというのは、さすがに不自然だ。


「まあ鈴はそういう奴なんだが、なにぶん悪い奴ではない上に、見ての通りあ奴がいなければ討伐任務が成り立たない場合も多くてな。我でも上位の方なのだが、それでも妖怪は強い。お主らが来てくれて本当に助かっているよ」


 そう本心から安心したといった様子で微笑んだ。

 ……確かに、現状で全ての厳しい任務を謎の鈴さんに全部お任せしてしまうと言うのは非常に不安定な上に成り立った平和だろう。


 でも……私はやっぱり、鈴さんのこと信用したいな。

 かっこいいし。

 あと友達になりたい。


 ……ものすっごい振られ方しちゃったから、自信はないけど……。


 鈴さんの話はそこで打ち切って、私達は席を立った。

 ちなみに報酬は四等分。まあ当然だよね、本来なら全員一銭ももらう理由なかったから。




 組合ギルドを出ると、シルヴィアちゃんが町中の散策を希望した。

 ちょうど連日食べている食事の調味料や、お土産用のお酒といったものを買うための時間とのことだった。確かに私もその時間ほしかったのだ。

 というか、前回は子供と楽しく遊んでいて一日が終わってしまった。まあみんな子供だからね! 子供達と一緒にわいわい遊ぶことはいいことです!

 え? 私はもう子供じゃないOL年齢だって? この中での精神年齢は間違いなく一番子供だと思いまっす!

 ……自分で思ってて悲しくなってきたのでやめよう。


「そういうことなら、再び町中を回ろう。なあに、時間はたっぷりある。さすがに連日子供と遊ぶのも疲れるだろうし、なにより今日は寺小屋の日だ。恐らく子供達は勉強をしているだろう」


 あ、学校のことだよね。そっか、だったら先日みたいに子供達にわらわら襲われるということもないだろう、安心安心。


 町中を歩くと……そりゃまーいろんなお店がありましたとも。

 予算は連日の討伐で潤沢だった。なんといってもそもそもがSランクのシルヴィアちゃんだし、任務も難度の高そうなやつだったし、今日の分の収入ももらっちゃったし。


 まずみんなが注目したのは……服屋! やっぱりこのお店の中だと女の子なら服屋からスタートするよね。ちなみに私はおふとんを探していました。


「綺麗な柄ね……金で刺繍をしてあるの? こんなものが様々な色で、様々な柄でたくさんあるなんて……」


 シルヴィアちゃんが注目したのは、着物だった。


「絵では見たことあったのです。書物でこういう服があると勉強してはいたんですが……まさか実物を見るのとで、ここまで差があるとは思いませんでした。っていうかほんとどういう細かさしてるんですかこれ、模様全部糸ですか!?」


 さすがの才女シルヴィアちゃん、着物自体は知っていた。

 だけど、当然それは白黒の簡素な絵による解説だった。実物の着物を手にとって、なかなかのテンションアップっぷりに微笑ましくなる。


「王国のドレスもとても美しいですが、あちらが布そのものの着付けで芸術的に派手にするのに対して、こちらは布そのものに派手さがあるといいますか……うわ、こっちの赤いいな……いくらですか?」

「こちらは小金貨13枚です」

「買います!」


 結構いいお値段だと思ったのに、シルヴィアちゃんは即断した。お店の人もびっくりの決断スピードである。


 そしてシルヴィアちゃんは、ひとつのものを見つける。なんだかドット絵みたいな着物だ。……なんだっけ、どっかで見たことあるんだよなあ……。


「……待って、まってください。なんですかこれは」

「シルヴィア殿は、本当に賢いというか目聡いというか……一目見て、それのすごさがわかるのだな」

「理解できるけど、理解不能です。想像通りの作り方ですか?」

「想像通りだろう、織る前に色がついている。設計から完成まで、半年ほどかかるものだ」


 その着物は……


「小嶋紬といってな。さすがに高価なものだ」


 ……思い出した! 大島紬だこれ! 作り方を映像で見て、あまりの細かさに見てるだけで肩が凝るやつ!

 それの、加工前のでっかい布。


「こちらの値段は?」

「こちらは……小金貨で700枚ですね」

「ぐぅっ……!」


 さすがに手が出ないお値段だった。うんうん、そうだよね、大体こういうのの反物でしかも大島紬って、そこいらの中古の着物の100どころか1000倍ぐらいあるからね……。

 余裕で家が買える金額だった。


「……でも、いいなあこのモノトーンでオリエンタルなのに静かな感じのアート作品……欲しいなあ……」

「あの、でしたらお客様、こちらはいかがでしょうか」

「……ん?」


 お店の人が奥から持ってきた物。それは、マフラーだった。


「えっ、これはさっきの柄のマフラーですか?」

「はい。気軽に手にとってもらえたらと思って作られたものです。絹ですので見た目以上に手触りもいいですよ」


 うおーっ、モダンだー。って、籐のロッキングチェアがある時点でそれぐらいものもあるか。なかなか楽しい世界だなー。

 シルヴィアちゃん、その大島紬マフラーを身につける。


「……これ、いくらですか?」

「小金貨5枚です」


 マフラーにしては破格の高額であり、大……小嶋紬にしては破格の安値。その結果は……。


「買いますっ!」


 満面の笑顔で即決だった。よかったね、シルヴィアちゃん。


 そういえば、エッダちゃんはどこにいったんだろう。


「むぅ〜……」


 奥から、なにやらかわいらしいうなり声が聞こえてきた。エッダちゃんがかなり苦しんでいる様子だった。

 そして奥から出てきた姿を見て、私はもうぶっとんだ。


「全然着れませんでしたぁ……!」


 それは……エッダちゃんの浴衣着だった。

 だけど、気に入った柄が小さい物しか無くて……その小さい物をエッダちゃんが着るとですね、主に胸が足りなくてですね……!

 あ、溢れ出る! 水風船が洪水を起こしそう! これはとてもではないけど見せていいものじゃない! 主に私に!


「うぅ〜……残念ですけど、こちらはあきらめますね。というか、胸があると似合わない物が多いです」

「エッダ殿は豊満であるからなあ。大和は胸の大きい女、なかなかいないのだ。エッダより大きな者など、この国では後一体何人いるか……」


 いえ、エッダちゃんぐらいのロリ巨乳はさすがに王国でも珍しいと思います。


「しかし、モノはあるぞ」

「ほ、本当ですかっ!」

「ああ。シルヴィア殿と近いモノで、胸をすっきり見せられるものがある。ちょっと待っておれ……」


 弥々華さんが、店の奥の方に入っていった。そして店員といくらか会話をして、エッダちゃんを呼ぶ。

 しばらく待っている間、シルヴィアちゃんとマフラーの感触とか、いろんな着物の模様を楽しんでいると……やがてエッダちゃんが姿を現した。


「うわ……!」


 そこには、綺麗に胸元まで納めたエッダちゃんがいた。

 に、似合っています……なんだか独特の似合い方です……! 肌の色と白い着物の合い方がきらっきらしてます! 銀色の髪とも合ってます!


「綺麗……!」

「えへへ……ありがとうございますぅ。もう決済しちゃいましたぁ」

「そうなんだ。……あ、あの!」


 シルヴィアちゃん、やはりその姿を見て自分も着付けを希望した。そりゃそうだよね、真っ先に買ったのにこんなの見せられたら自分も着たいって思っちゃうのは当然だ。


 そしてシルヴィアちゃんが奥に行き、私はエッダちゃんをベタ褒めしたり、エッダちゃんにぎゅっぎゅ抱きついたり、くんかくんかしたり。

 しかし、さすがの和装ブラのおかげなのか、むにゅむにゅ分がなくなってしまったのは少し悲しみが強い。もっとむにゅむにゅしたかったです。


 とのんびり思っていたところで、シルヴィアちゃんが出てきた……!


「ふふっ、どうかしら」

「綺麗……」

「わあっ、素敵ですぅ!」


 シルヴィアちゃん、気がついたら髪留めも買っていた。赤と金の着物を着て、とってもかわいいお嬢様って感じの見た目になっていた。

 ほんとシルヴィアちゃんのかわいらしさ、完成されすぎ。


「ところで、きゅうけいさんは着ないんですか?」

「私は服とかはいいよー。予算の使い道はもちろん、おふとんとかその辺を徹底的に買う方向に使いたいからね!」

「ぶれなさすぎですよきゅうけいさん……」


 シルヴィアちゃんが呆れて笑いつつも納得してくれたようで、結局私は買わずにそのままの格好で三人で町中を歩くことになった。

 着物姿の二人は、町に馴染む……かと思いきや、あまりにもお嬢様オーラが出過ぎていてこれはこれで浮いていた。

 でもオッケーです。主に後ろ姿をじろじろ私が見ているだけで幸せ一杯なので万事オッケーです!




 次はお土産、酒屋さん。

 シルヴィアちゃんは、真っ先に弥々華さんにリクエストした。


「弥々華さん、予算はあまり考えなくて良いので、そこそこのお酒をたくさん持ってきてくれる? よっぽどの最高級品ってんじゃなくてもいいので、量があればあるだけいいわ。竜族の長の父上と、姉上とその友人が飲むので」

「竜族の長殿か! ならば要望通り種類をそこそこ良い物で揃えよう。大和酒と焼酎……は、麦と芋とだな。全て一升瓶で買うとして……大和酒を複数種……」


 シルヴィアちゃん、大和のお酒を大人買い。あのトゥーリアさんとレジーナさんの『すごいでかいコンビ』のテルマエ酒飲みの日は凄かったからね。あれを見せられると、量はあるだけあっていいって思うのも当然だ。

 焼酎なら割って飲むことも楽しく出来るだろうし、しばらくもつ…………もつかなー?


「ふむ、そうだな……シルヴィア殿、ウィスキーはどうだ?」

「飲んでいたと思うけど、あるの? 弥々華さん」

「作っておるよ、ワインはないが、エールもそこそこ種類が作られておったはずだ」

「あるだけ全部選んでもらえないかしら? お任せするわ」

「うむ、任された!」


 弥々華さん、気合いを入れて瓶を選び出す。次から次へとお店の決済所に積み上がっていく酒の瓶の数々。お酒は、最終的には二十本ぐらいになっていた。それをシルヴィアちゃんは迷い無く決済、お酒をアイテムボックスに入れた。酒豪もびっくりの買い方!


「ありがとう弥々華さん、本当に助かったわ」

「なあに、選ぶのは我も楽しい。……ところでエッダ殿はどうだ?」

「えっとえっとぉ、私は一番いいやつを、中ぐらいの大きさの一つでお願いしますぅ!」


 中ぐらいの一つって、あれだよね、720mlのやつ。

 小さいサイズってわけじゃなければあれだけど、日本酒一本あれだけっておみやげにしては控えめすぎるというか……。


「エッダちゃん、少なくない?」

「あの、家族がほとんど飲まないんです。お父さんも兄さんも弱いから。私は強いけど、そんなに積極的に飲まなくて」

「……?」


 今、一番気になる人をさらりと飛ばしたような……。


「……お母様は……?」

「一杯で酔うぐらい弱いんですけど……お酒自体は大好きって言ってて、一杯飲んではお父さんに絡みに行っちゃってそのままお部屋に連れていっちゃう感じです。『だから大好き』って言ってたんですけど、お父さんは弱くて飲まないのに、お母さんは弱くて大好きって不思議ですねぇ」


 ……お、おお……肉食系カルメンさん、お酒の力に頼って強引にアスモデウスモードになってるのですね……。エッダちゃんは天然で気付いてないけれど、明らかに酒の勢いってやつですよね……。

 がんばれお父様……お酒を買って帰るとエスカレートしそうだけどがんばれ……エッダちゃんの下の子を作るまでがんばれ……。


 特にあのテオ君の男の娘っぷりを見るに、弟でも妹でも100%大天使が産まれるの確定で主に私がめっちゃ喜ぶのでがんばれ……!


「どうしたんですか? きゅうけいさん」

「いや、なんでもないよ。お母様にお酒を買ってあげるエッダちゃんはいい子だなあと思っただけだよ!」

「え、えへへ……」


 テレテレしながらかわいらしい着物姿でかわいらしく照れるエッダちゃん。

 うんうん、ずっと天使のエッダちゃんでいてね。


「きゅうけいさんはどれにするんですか?」

「私も日本酒たくさん買い込むよー。またトゥーリアさんとレジーナさんと一緒に飲みたいからね。ビーチェさんはお酒大失敗しちゃったから次誘うのはもうちょっと経ってからかなー」

「あはは……あれはすごかったですね……」


 さすがにあの大失態を自分で覚えているというのはつらい。でもまた、一緒に仲良くおいしく月見酒といきたいなあ。




 さて、次は……おっ、今度は食材のお店に調味料のお店、おいしいもの作る奥様のための広場って感じの場所だ。

 旦那さんも料理作ろう。っていってもこの時代にはなかなかないか。

 と思ったら、この世界の旦那様、結構お店の前にいらっしゃってた。


「弥々華さん弥々華さん、料理を作る男の人結構いるんだね」

「ん? そりゃそうだろう。男の刀剣術と女の魔術忍術、後者の方が強いことも多いからな。そういう女性を支える男も多い」


 わあ、モダンな和風マフラーといい和洋折衷なロッキングチェアといい、文化レベル妙に高いと思ったけど下手したら現代より現代っぽいぞこの世界。いいと思います、居心地最高。私にも毎日料理作ってくれる旦那様いないかな? 私は寝てるだけなの。

 さすがに寝てるだけは無理? そもそも青肌黒白目の魔王じゃ無理?

 ですよねー。


「ショウユなるもの、他にも調味料があれば教えてほしいわ」

「うむ。では醤油と味噌だな。砂糖と塩はあるな?」

「そうね。こちらには後は塩胡椒やスパイス、そして液状のものはビネガーぐらいかしら、あるのは。他は料理でワインを使ったりバターやチーズを使ったり、近所ではトマトをメインにした物が多かったりするわね。醤油みたいなものはシェフがその場で作るのが一般的だと思うわ」

「なるほど、やはり海の外は凝っていて勉強になるな。こちらでは大体今言った五種類に、海鮮のものや野菜、茸類などを煮詰めて味を作るものが多い。基本的には大体どれも醤油でなんとかなるようになっておるのではないかと思うよ」


 思えば日本の料理って大体醤油を作るまでが非常に長くて、その醤油や味噌を使って料理するの自体はすぐ終わるんだよね。味噌汁とか味噌溶かしたら味噌汁の味になるもん、何気にとってもインスタントスープの素。

 イタリアとかフランスだと、素材自体はすぐあるけど、スープのベースを作ることに時間をかける感じかな? まあなんとなくの感覚です!

 それも今ではコンソメの素とかいうの使って一発、トマトケチャップ一発とかなんだからいい時代になったものだ……その調味料の数々、今使えないけどっ!


 私達は三人とも、醤油と味噌を買った。私は日本酒を多めに買っていたのと、個別に酢を買った。山椒の実とか、麻の実芥子の実唐辛子なんかも。胡麻もいいね、ミルまであるので全部買います。

 浅漬けもいいなあ。えっ福神漬けとかあるんだ、買おう。あっ柚子胡椒まで? 買います買います。大根も買っておこう。

 なんだかんだと食べるの大好きなので買いまくってるね!


 一通り買い物が終わると、弥々華さんが私の近くに来た。


「そういえば先ほどからきゅうけい殿には何も教えていないが、いいのか?」

「いいですよー、おふとんとかざぶとんとかの売り場以外にこだわりはないですから!」

「そ、そうか。きゅうけい殿は休憩が好きなのだな」

「はい! きゅうけい大好きでつけられたあだ名がきゅうけいさんですから!」


 そういえばそのことを言ってなかったのか、弥々華さんはおかしそうに「魔族もなんとも面白い種族よな」と笑っていた。

 魔族がというか、私が一人おもしろい系なだけな気もいたします。




 三時になった。なんだか今日は……甘い物の時間にしたい気分!


「弥々華さん! あまいものをきぼうしまっす!」

「お、おおっ!? きゅうけい殿、唐突だな……しかし、ふむ……甘い物か。分かった、その店に行こう。我も言われてみると食べたいと思っていたところなのだ」

「やたっ! 言ってみるもんだね! シルヴィアちゃんとエッダちゃんもそれでいいよね?」

「ええ、もちろんです。こちらの甘い物は興味ありますね」

「はいっ! たべたいですぅ!」


 よしよし、好感触。

 私達は、みんなで甘味処へと向かった。


 しかしそこで、文化の違い発覚。


「ま、豆なの……?」


 弥々華さんがお団子の説明であんこの話をすると、二人はつぶあんのつぶが豆であることを見て少し引いていた。


「豆を砂糖漬けしてすりつぶして黒いパテに……すみません、余りに想像が付かなくて……」

「あわわ……お肉に蜂蜜かけるような感じでしょうか……」


 なんと、あんこもダメだったとは……いや、確かに苦手とは聞いたことがあったかもしれない。文化の違いってやつだった。


「ふむ、それではみたらしでいこう。醤油と砂糖で甘辛いが、砂糖が多めなので食べやすいはずだ」

「頑張って挑戦してみるわ……!」

「わ、私もそれで……!」


 二人はみたらし団子でいくらしい。


「きゅうけい殿は?」

「私はつぶあんがいいなー。あと飲み物も」

「ああ、飲み物はそうだったな。……店の人! 茶を四つ。みたらし二つ、あんこ二つだ!」

「弥々華様! うちにいらしてくださるなんて嬉しいです。お客様の分もですね、かしこまりました!」


 さすが弥々華さん、お店に来ただけでタレント来店ってぐらいの歓迎っぷり! 注文してすぐに、四つの真っ黒いのと、四つの琥珀色のものが出てきた。これは……お団子一人二本だっ! やったね!


「いただきまーす!」


 私はつぶあんだんごを食べる!

 んんん……甘〜い! 砂糖とか貴重品だから甘さは控えめかな? だなんてイメージは全くありませんってぐらい甘いつぶあんです! ホント風景が昔の日本的なだけで、文明レベル高い! ああもうほんと永住したい……。

 お茶お茶。うん、めっちゃ渋くてバランスがいいです。


「……おいしい。甘辛いって聞いて緊張していたけど、いくらでも食べられそうなぐらい。本当においしいわ」

「はいっ! これ私好きですぅ! おいしくて、でも甘いだけじゃなくて、しかも腹持ちも良い感じの食感で……!」


 二人ともみたらしオッケーだった! やったね!

 うーん、あっちもおいしそうに見えてきたぞ……。


「あの、きゅうけいさん……その」


 ん? 一本をすぐに食べ終えたシルヴィアちゃんがちらちら私の方を見ている。


「厚かましくて恥じ入る限りなのですが……きゅうけいさんの……あんこのも、一口いただけませんか……?」

「……! もちろん! ぜひぜひ挑戦してみてね! エッダちゃんも食べていいよ!」

「えっ! あ、あの、ありがとうございますぅ!」


 エッダちゃんもさっきからちらちら見ていたのは、もちろん気付いているよ!

 だって私は、今日は着物姿の二人をずーっとガン見しているからね! 記憶の写真館に額入りで飾れるぐらい!


 シルヴィアちゃんと、エッダちゃんが、それぞれ一個ずつ口に入れる!


「……! あ……甘い……本当に甘いですね……。……ちょっと甘すぎる気が……うーん、あたしはみたらしの方が好きです……でも、案外豆の砂糖漬けでも悪くないですね」

「私もみたらしの方が好きですねぇ……でもあんこも、思ったよりは悪くないです。食べ慣れたら大丈夫になるかな?」


 おお、二人ともみたらしの方が好きだった。

 なるほど、好みは分からないものだね。でもダメってほどダメじゃなかったらしい。よかったよかった。

 比較的二人とも、どの日本料理もとい大和料理も受け入れている感じがして嬉しいね。




 ……と思ってたんだけど。


「す、すまん……完全に油断していた」


 珍しく、弥々華さんがおろおろして平謝りしていた。


「さ、砂糖とミルクはないの……!?」

「うええ、これどんな紅茶のストレートよりもキツイですよぉ……コーヒーのブラックの方がマイルドかもですです……」


 私はめっちゃ甘いつぶあんを食べていたから気にならなかったけど、出てきた緑茶がかなりの濃さでとんでもない渋さで、二人はそのお茶だけはNGだったのでした。いやー飲み慣れてるって怖いね、私全く気にならなかったよ。


 今日はいろんな反応が見られて、楽しい一日だったね!

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