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きゅうけいさんは元気な子が好き

昨日の分は0時ではなく朝に投稿しておりますー。

 鈴さんと別れた後は、少し町中を散策することになった。


「っていうか、日が傾きかけてるし。一体何時間入っていたんだか」

「おんせんはねー、なんじかんはいっててもきもちいいよねー」

「それはきゅうけいさんだけですよっ! 一日中だって入っていそうですよねきゅうけいさんは」


 一日中はさすがに……いや、さすがになんてことはない、普通にずーっと入っていそうだ。スパリゾートで起きてから温泉。ご飯を食べて昼寝してお昼は水泳。晩を食べて温泉。そしてグースカ寝る。

 なんだ、最高じゃない……。


「今度は一日中入ろう」

「冗談で言ったのに本気ですか!? あたしはもう付き合いませからね!」


 しゅん。

 まあさすがに遊泳施設なしの温泉だけで丸一日は私も無理だ。ふやける。指とかぶよんぶよんのしわしわになっちゃう。

 はー、それにしても湯上がりシルヴィアちゃんも色っぽくてよかった。濡れた金髪がきらきらしていて、あれはいいものですね……。

 あとエッダちゃんは破壊力高すぎて、そこばかり見ないよう必死でした。


「町中、本当に不思議な雰囲気ですね。異世界に来たって感じです」


 私は異世界から帰ってきたって感じだよ!

 まあ十分にアトラクション施設の時代劇村って感じだ。

 国営放送の時代劇系連続テレビノベル、その撮影セットでできあがった歴史好き女子たちの集まりの場。最近では女子人気を集めてイケメン時代劇スターズが歌って踊る。

 謎の和楽器ロックスターをBGMに、伊達政宗がドイツ語で必殺技を叫んだりするシーンでツッコミどころ満載だけど、でもそれって時代劇村感なくない?

 でもイケメンって面白いことやってたらそれだけでエンタメ感あるよね。そのうち農家になったりとか。


 この町にもそういう、みんなからの注目を集めるスターみたいな人いるのかな?

 ……と思っていたんだけど。


「弥々華様、いっつもおせわさまな!」

「弥々華様! またうちにもよっていらしとくれー」

「ややかさまー、たかいたかいしてー」

「おうキヌ。……それにヤエにサブローに……ああわかった! 順番だ、遊んでやろう。まずはキヌだったな」

「わぁーいっ!」


 ……みんなのスターが弥々華さんだった。

 きゃいきゃい集まるこどもたち。


 そして、怖い物知らずで興味津々の子は、なんと弥々華さんの尻尾を引っ張った。


「ひゃうっ!」

「あははー、やっぱりしっぽよわいべー」

「こらヤエ! お前はもうちょっとお淑やかにならんといいオンナになれんぞ?」

「でもあたしー、ややかさまよりすずさまのがオトナのオンナってかんじすんべ?」

「ぐぅっ……あいつは育っているからな……」


 ……やっぱり尻尾弱い、ってことは何度も引っ張られているんだ。

 それに対してのあの反応。初日に私に怒ったことを考えると本当に弱いみたいだけど、子ども相手にはまるで本気で怒っている様子がない。

 子どもに対して優しいみんなのお母さんというかおばあちゃんというか……。


 ……いいなあ……。


「私も高い高いしてー」

「お主の方が高いだろっ!」

「だよねー」


 当然の反応をもらいつつも……そこで子供達の視線が私に一気に集まる。

 不思議と怖がってる様子はなく、興味津々といった様子だ。やっぱり子供はこういうところの偏見みたいなの少ないからなのかも。

 ちょっと嬉しい。


「あ、どーもどーも、私の名前はきゅうけいさん! よろしくね!」

「きゅうけいさん?」

「休憩ばかりしてるからね! さっきも昼から温泉入ったり寝てたよ!」

「あはは、へんなのー。きゅうけいさーん、たかいたかいしてー」

「いいよー!」


 さっきの最初の子だ。高い高ーい!


「きゃっきゃっ!」


 全く物怖じしないどころか、とても喜んでくれている。

 ちょっとじゃない、かなり嬉しい。

 これは幸せな気持ちになってくる。


 それからしばらく、私達は子供達と楽しく遊んだ。

 シルヴィアちゃんとエッダちゃんも仲良く遊んでいた。ちなみにエッダちゃんはすっごく狙われていたので男の子からフルガードしました。

 異界の少年といえど、えっちなのはいけないとおもいます!




「すっかり付き合わせてしまってすまんな」

「いえいえー、楽しかったよね」

「ええ、そうですね」

「たのしかったですぅ!」


 結局晩飯の時刻になるまで、ずーっと子供達と遊び続けていた。

 みんな楽しんでいたし、よかったよかった。やっぱり子供達ができるとみんなお姉さんになっちゃうよね。


 ……そういえばシルヴィアちゃんとエッダちゃんって年齢不詳だ。

 もしかして私より年上って可能性もあったんだろうか。

 エッダちゃんからはそんな様子はないけど、シルヴィアちゃんはどれぐらい年上なのか全く分からない。

 少なくとも頭の良さは私の数段上なのは分かっているけどね。


 お城に入ると、おなかもすいたし弥々華さんと一緒に食堂に行った。

 食堂は……今日もいいにおいだ。


 どうやらみんな、待ってくれているようだった。

 それは、話を聞くとどうやら私達だったようで。


「いも煮か。客人はどうだ?」

「あのおいもさんですよね! 私好きですぅ!」


 私はエッダちゃんが好き三回目。そろそろ天丼も飽きられる頃。


 とってもでかい大鍋の中には、沢山の芋と、ねぎと、そして肉が入っていた。

 なるほど討伐した肉の数々だこれ。たっぷり入っていて、肉ネギ鍋と言っても良さそうな雰囲気だった。

 その鍋の周りに、わらわらと城の人が集まってきている。みんな芋煮大好きそうだ。


「弥々華様、帰っていらしたのですね」

「ああ。お主達もご苦労。この肉は今日のだな?」

「そうです。皆さんここまで牛が食べられるのは久々なので作る連中も盛り上がっていますよ」

「それはよかった。では……皆のもの! 今回の魔牛討伐、特にこの肉はシルヴィア殿とエッダ殿が獅子奮迅の働きをしてくれたからあるようなものだ。我が本気を出したら焼いてしまうでな。皆この二人に感謝するように!」


 急に大声を上げて、二人に感謝の言葉を述べる弥々華さん。

 もちろん注目を集めて、二人はみんなから感謝の言葉をもらった。


「しるびあ殿! あなたは龍神であると伺いましたが、やはり素晴らしい活躍であったのですね!」

「シルヴィア殿はこの城でも話題でした!」

「エッダ殿も、やはり異国の使い手……海の外の者達はなんと強いことか。驚きました」


 わあわあとみんなから褒められて、シルヴィアちゃんはさすが古竜の娘、余裕の微笑みで「ええ、ありがとう」と返事をしていた。

 エッダちゃんは全くの逆で、目を白黒させながら「あわ、あわわ、あの、私そんな」と、遠慮の限りという感じでお礼を言えてなかった。

 本当に対照的な二人って感じだね。


「きゅうけい殿には、この我から感謝の言葉を贈ろう。嘘はつけないので魔牛肉の分は言えぬが、そなたの活躍のすばらしさが分かるのは我ぐらいだからな」

「えっ! はいっ! 何よりもの報酬ですっ!」

「ふふ、気遣いも出来て、本当に良い魔族殿だ」


 いえ、気遣いでもなんでもなく本気で一番嬉しい報酬ですっ!

 えへへ……弥々華さんにほめてもらっちゃったぁ〜。

 にへらぁ……。


「さあ、冷めてしまわんうちに食べよう! 肉はたっぷりあるからな!」

「よっしゃ、一番乗りだぜ」

「あっ貴様、それは儂の!」


 にぎやかに始まった芋煮大会。

 食べると牛肉と砂糖醤油の出汁のおいしさ、中に入っている舞茸の食感、何もかもがおいしかった。

 なんだか食べたことないのに懐かしい郷土料理って感じで、食べててとっても幸せ。豚汁が牛肉と里芋になったみたいな感じかな?


「昨日食べたものと近い味かな。ブイヨンのようでややオリエンタル、でもかなり食べやすい味。肉があれば芋などは別の野菜で代用できそう」

「ああ、これは醤油と砂糖のはずだ。後は大和酒も入っていたと思う」

「これもショウユなのね。やはりショウユとライスワインの酒は買って帰ろう」


 私も買って帰りたい。ていうか芋煮ほんとにおいしい。

 おにくたっぷりで里芋の腹持ちもよくて、大満足な晩ご飯だった。




 弥々華さんとはまた別れて、御城の客間に戻ってくると、再び寧々ちゃんがお部屋にやってきた。


「わあっ、寧々ちゃんこんばんわー」

「こんばんわ、きゅうけいさん、シルヴィアさん、エッダちゃん」

「ええ、こんばんわ」

「寧々ちゃんこんばんわぁ!」


 うーん、美少女パラダイス。わたくし大満足。

 寧々ちゃんもすっかり打ち解けた様子で、シルヴィアちゃんの近くにやってきていた。


「あの……あの!」

「ん、何かしら?」

「つ、ツノを触ってもいいでしょうかっ……!」


 お、おお……! 先日エッダちゃんにスーパープレイをした寧々ちゃん、今度は怖い物知らずの古竜様へのタッチを希望したっ!


「え、ええいいけど……面白くはないわよ?」

「いえ、面白いとおもいます……!」


 あまりにもストレートで面白い返しにシルヴィアちゃん困惑した顔になりつつも、近くでじっとして「どうぞ」と一言。

 そのツノに寧々ちゃんの指が伸びる……!


「……わあ、こんなに……しっかりしています……」

「…………」

「……素敵……。……あ、あの、嫌なら言ってくださいね?」

「ええ……」


 最初は優しい手つきですりすりと撫で、だんだんと握ったり軽く爪で鳴らすようにしてみたりしていた。


「……ねえ、本当に面白いの……?」

「はいっ! 素敵です、なんだか感触が気持ちよくて……」

「そうなんだ……ってきゅうけいさん!?」


 私もシルヴィアちゃんのツノを触ります!


 ……お、おお……! すごい感触……! なんだか、ちょっときもちいいです!

 こう、上手く表現できないんだけど、いいものを触って落ち着いてるような感じ。


「……むう……」


 ずっと触られてるシルヴィアちゃんが……今度は私のツノを触った!

 気がついたら正面を向き合って、シルヴィアちゃんと互いにツノを触り合っていた。そして当たり前のように寧々ちゃんもツノを触ってきていた。

 そしてエッダちゃんもやってきたところでツノを触るのを交代し、寧々ちゃんは私の肌をぷにぷに触って「おんなじ体温ですね……でも青い……不思議……」と私の青肌を珍しがっていた。


「……ふむ、触り心地もなかなか……」


 あ、あれ? 弥々華さん? なんだか私の髪の毛をするする指で梳いて、ちょっと匂いを嗅いで……って、待って?

 あれ、おかしいな? 最初はシルヴィアちゃんのツノで……あれ?

 ……あれぇ……?


 ……それから私は数分にわたって触られ続けて、ようやく解放された。触られただけなのに疲労困憊だ。

 というか、そもそも私は何も言われてなかった気がする。まあ私も何も言わずにシルヴィアちゃんのツノ触りに行ったけどさ。

 昨日のエッダちゃんはこんな気分だったんだ。確かに最初はこんなんじゃなかった。


「……うー……」

「悪かったって、そんなに不満そうな顔をするな」

「もふもふ」

「え?」

「もふもふを、長時間希望します」

「……し……仕方ない……それに関しては全面的に受け入れよう……」


 よし……ちょっと相手の罪悪感につけ込むあたりが罪悪感感じたけれど、それはそれ、これはこれですよ。

 弥々華さんのもふもふをもふもふしにいく。


 ……もふもふ……。


「んっ……」


 ……やはり、もふもふは最高です……。

 柔らかい……狐の毛ってなんでこんなに気持ちいいんでしょ……。


 もしも戻れたら、狐の毛皮の何か、マフラーとか欲しい……あ、でもかわいそうでもう着られないかも……。


「もふもふ、むふー……」

「…………」

「んふふー……」

「…………」

「……弥々華さんは、一体この最上家とはどういう関係なんですか?」

「…………ん? 唐突だな……」


 それは、確かに唐突な質問だった。もふもふ。

 しかし唐突なりに、私は気になったのだ。弥々華さんがどうしてこの家の名前と同じなのか、どうして城主よりも立場が上なのか。もふもふ。

 そして……寧々ちゃんの病状をどれぐらい知っているのか。もふもふ。


「……まあ、少しぐらいなら語ってもいい。お主らは本当に、皆いい奴ばかりだ。海の外の者はどれぐらい信用できるかわからなかったが、少なくとも三人とも、我の目から見て十二分に信用に足る」

「よかった、ありがとうございます」

「お礼を言うのは我の方だ。同時に、今まで助けてもらって置いて余り信用もしてやれなくて済まなかった」

「いえいえー、周りのみんなを守るためなら当然ですよ」

「そう言って貰えると助かる。では……」


 そうして、弥々華さんの話が始まった。

 さすがに空気を読んでもふもふはやめた。


 弥々華さんの話は当たり障りのない部分だったけれど、それでも十二分に驚くものだった。


 転生。

 弥々華さんは、一度転生をして今の姿になったのだという。


「……一体何の因果か分からんが、『子孫を助けよ』という神のお告げなのかも知れないと思ってな」


 子孫を助ける。

 それはつまり……。


「……そう。我はもともと、この最上家の人間だった。間違いなく遠い子孫なのだ」


 そうか、そうだったんだ……。なんとなくそうかなとは思ってたけど。


「じゃあ、狐の身体は」

「これは、どうやら死んだ狐から転生したらしい。千年生きて、というわけではないようでな。最初はほとんど妖力……魔力だな、それがなくて苦労したよ」

「……ってことは、弥々華さんの力は」

「強そうな種族の見かけ倒しで、今の姿に生まれ変わった直後のレベルは7だった」


 は!? レベル7……! たったの7の仙狐……!?


「自分の使える術……魔法は分かっていても魔力が足らなくて使い物にならない。だから必死で小鬼ゴブリンを倒して、修行もやって強くなろうとしたよ。ある程度は高くなったが……それでも先日のカマイタチの討伐は本当にレベルが跳ね上がった。改めて感謝を言いたい、ありがとう」


 弥々華さんが頭を下げて礼をしてくれる。


「いえいえ! 私が倒しても有り難みもないほど経験値にならなかったので、お譲りできてよかったです! 弥々華さんが強いとそれだけでスムーズにいくことも多いですし!」

「そうか、譲ってもらって申し訳ないことをしたと思っていたが、それほどか。素材の分も含めてのお礼として、お主達は我がしっかり世話しよう」


 そういえばあのでかい鎌は弥々華さんの分だった。結構いい報酬になったのかな、よかったよかった。




 私と弥々華さんが会話していて、その言葉が途切れた瞬間……何か違和感のようなものに襲われた。

 弥々華さんはすぐに気付いた。寧々ちゃんだ。


「ふぅ、ふぅ……」


 ……浅くて細かい呼吸になっている。


「な、何故……!」

「すみ、ません、体力、また減ってますね」

「くっ……きゅうけい殿!」

「【クリエイト:エリクサー】!」


 私はもちろん、すぐにエリクサーを作って寧々ちゃんに飲ませる。


「……っ、ふぅ……」

「ど、どうだ寧々!?」

「弥々華さん。ええ、全く何の問題もありません。……本当にすごい薬ですね。途中経過もなにもなく、一瞬で完全回復ですよ」


 よかった。寧々ちゃんはすっかり元気だ。

 しかし疲れたのか急に眠くなったらしく、部屋に戻って休むと言い、そのまま部屋から去ってしまった。


「……ヤヤカさん」


 寧々ちゃんを部屋から見送ったら、それまで黙っていたエッダちゃんが急に声を出して少し驚いた。


「どうしたエッダ殿」

「あの体調不良の原因、何か知ってるんですよね?」

「……何故そのようなことを」

「なんとなくです。病気では絶対にないと断言できますけど、体調が悪くなるのを前から知っているみたいでしたから。原因はあるんですよね……何故教えてくれないんですか?」


 弥々華さんは、痛いところを突かれたのか、とても辛そうな顔をしていた。

 どうやらエッダちゃんは、自分の村を救ってくれたクリアエリクサーが効果を発揮しなかったことをずっと気にかけていたみたいだ。


「え、エッダちゃん、そんな責めるみたいな……」

「いや、いいのだきゅうけい殿。……そうか、そうだな。ここまで世話してもらって秘密というのは失礼だ、少し話してもいいかもしれん」


 そして弥々華さんは、分かっていることを話してくれた。

 話を聞くと……その原因は予想外だった。


「———超長距離の、生命力吸収サクション?」

「そうだ」


 寧々ちゃんが受けている攻撃は、なんとHPを吸収する攻撃だった。

 なるほど、病気でも毒でもなく直接ダメージを受けているわけだ。そりゃあクリアエリクサーで治るわけがない。


「相手が弱っていないと効果のない、距離が遠くて威力が小さく、魔法防御があれば全く効果のない程度のものなのだが……」

「なるほど、それで元気があれば十分に大丈夫なんですね」

「そういうことだ」


 ああ、それで大切に御城の上側でしっかり守られているんだね。

 これはもちろん、義髙さんも知っていることなんだろう。話を聞くと、寧々ちゃんの寝室は壁に埋められた魔力結界の御札とかですごいことになっているらしい。


「逆に言うと、つまり体力が落ちれば寧々は衰弱する。……狙われるのは寧々だけなのだ」

「寧々ちゃんだけ……原因は?」

「……わからぬ」


 弥々華さんは、少し目を逸らしながら言った。

 ……深く追及するのはよそう。


「ということは……」

「ああ、そうだ。相手はこの近くまで来ている可能性がある」


 やっぱり、そういう結論になるよね。


「距離が近くなれば威力が上がるというほどではないが、どうやら札と身体の魔力だけでは抵抗しにくくなっているようだ」

「じゃあ、絶対にあたしたちで討伐しないといけないわね」


 話を聞いて、鶴の一声ならぬ竜の一声。

 シルヴィアちゃんの一言で、弥々華さんは驚いた。


「討伐まで手伝ってくれるのか?」

「何言ってるの。討伐しないと寧々ちゃんが助からないなら、そいつやっつけなくちゃいつまで経ってもきゅうけいさんは薬を飲ませるばかりじゃないですか。昼でも息切れするようになったら、今度はずっと張り付いてないといけないですよ」

「た、確かにそうだが……」


 弥々華さんは、まだこの問題に対してそこまで手伝ってもらっていいものかと困惑している様子だった。

 じゃあ、私からも。


「手伝いたいです!」

「……きゅうけい殿?」

「寧々ちゃん、こんな御城で一人っきりとか絶対かわいそうだし、それに、元気になったら一緒にいろんなことをしたい! 寧々ちゃんを守りながら妖怪退治をしてレベルアップとか、疲れたら温泉に行って豆乳飲んだりとか、他にも一緒に子供達と遊んだりとか……」

「……お主……」


 つらつらと、私の口から出るのは、今日の私がやったこと。

 私達のことだ。




 今日は本当に楽しかった。

 この町は、とってもいい町で、町の人は弥々華さん大好きで。


 でも、寧々ちゃんはきっと誰とも付き合いがないだろう。

 だって部屋から出られないお姫様なのだ。

 そしてお姫様の部屋に平民が入ることも出来ないだろう。


 私達と友達になって、仲良く喋って。

 ちょっと大胆に、エッダちゃんやシルヴィアちゃんに触れる寧々ちゃんの姿を見たら分かる。この子はきっと、もっと積極的に遊びたい、好奇心の限りに挑戦したいと思っている子だ。


 だから。

 小さい鳥籠に押し込められたお姫様の姿。

 知らない相手のせいで外に出られない。


 そんなの、私は納得できなかった。




 私は改めて、弥々華さんに向き直る。

 パーティ一同、みんなで頷き合う。


「私は、寧々ちゃんはきっと、もっと友達とか作って、いろんな近しい年齢の子と遊んで、そういうことをするべきだと思うの。絶対そっちの方が楽しいし……それに、寧々ちゃんが楽しいと思ってもらえると、私も嬉しいし」

「ええ、あたしもそう思うわ。だからこれは、あくまであたし達が自主的にやるだけのことよ」

「はいっ! 寧々ちゃんはきっと、外で明るく元気に動き回る方が、とってもとっても素敵で似合ってる子ですぅ!」


 よーし! みんな、思いは一緒だね。


「……まったく、本当に、いい出会いをしたな。ちょっと苦手意識のあったマモン様だが、今回ばかりは感謝せねばなるまい」

「どちらかというと、マモンのヤツよりも私こときゅうけいさんだけに感謝してくれたら嬉しいでっす!」

「お主はほんと、時々無茶苦茶な奴だな!」


 ちょっと冗談を言ったら弥々華さん、驚きながらもからりと明るく笑ってくれた。

 うんうん、しんみりするよりそういう笑顔が似合ってるよ!

 マモンにもちゃんと感謝してるよ。弥々華さんとの出会いは最高だもん。


「それではシルヴィア殿、寧々の容態も心配だし、そなたらの組はしばらく我と妖怪討伐に付き合ってもらうということでよろしいか?」

「ええ。改めてよろしくね。あたし達もあたし達で、弥々華さんに出会えて良かったと思ってるんだから。城主より偉い人にいろいろ融通してもらえるなんて、案内人としてはこの上ない贅沢だわ」


 まったくそのとおりです、さすがシルヴィアちゃんはいいこと言うね!


 私達は結束を固め、明日に備えて就寝するのだった。弥々華さんは、城主さんと会話をしてもう少ししてから眠ると言って部屋から出た。

 ……ちなみに今日は、夢を見なかった。

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