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きゅうけいさんはもふもふに惚れる

 弥々華さんの後を追って客間に入る。そこには誰もいなくて、それを確認するとすぐに弥々華さんは奥のふすまを開いた。

 その先の、更に先にお姫様は眠っていた。


 ……様子が明らかに違う。

 汗が噴き出ていて、体力をかなり使って疲労困憊といった様子だった。


「寧々っ……!」


 弥々華さんが心配そうに駆け寄る。近くには同じようにメイドさんがいらっしゃって、風邪の時のように塗らした布を額に置いていて、再び冷ましたものと取り替えようとしているところだった。


「なぜだ……」


 弥々華さんは、寧々ちゃんを見ながら今まで見せたことのない絶望感に苛まれた顔をしている。

 そんな弥々華さんの様子を見て、エッダちゃんが振り返る。


「きゅうけいさん、お薬で何とかできないですか!?」

「できるはず! 弥々華さん、いいですか?」


 私は返事を待たずに、手元にクリアエリクサーを作る。


「そ、それは……!」

「薬です! 病気なら何でも治るタイプのものです」

「そんなものが……! 千世!」


 メイドさんに指示を出して、クリアエリクサーを開ける。寧々さんの上体を起こしながら、ゆっくりと飲ませる……よし、これで大丈夫なはず!


 安心した様子の私達に対して……弥々華さんは緊張気味だ。

 でもでも大丈夫、病気の類がクリアエリクサーで治らないはずないからね。


「……っはぁ……はぁ……」

「…………」

「……はぁ……はぁ……」


 え……?


「……だめ、か……」


 まさか、治らなかった。

 その反応に一番驚いたのは……エッダちゃんだ。


「そ、そんなはずはありません! この薬は、どんな魔王の呪いだって解除してしまう薬なんです! きゅうけいさんの薬で治らないものがあるはずが……!」

「……そうか、それほどの薬か……」

「そんな……どうして、どうして……ッ!」


 エッダちゃんは、自分たちの集落がこの薬で治った。

 だから、この薬に全幅の信頼を置いているし、それ故に自分たちを救ってくれた薬が効かなかったことがショックだったんだろう。

 納得できないという反応だった。


「……体力の落ち込み方が酷い。やはりそこをやられたか」


 体力? そこをやられた?

 わからないけれど、体力がなくなったというのなら……!


「【クリエイト:エリクサー】」


 私は今度、こっち側を出した。


「これで症状がよくなれば」

「……すまない、助かる……」


 いつもの威厳のある雰囲気ではなく、非常に弱々しくなっている弥々華さん。話しやすくはなったけど……やっぱりこういう姿は見ていたくはない。


 再び体を起こさせて、エリクサーを飲ませる。病気を治す類の者ではないけれど……。


「……はぁ……んくっ……んっ……。…………」


 一同が、緊張した面持ちで寧々ちゃんを見る。


「……あ、れ? 弥々華様?」

「寧々ッ!」


 大声を上げて、寧々ちゃんに抱きつく弥々華さん。

 治った……何故か分からないけど、こっちで治った。


「……い、今の薬は一体……?」

「えっと、普通の体力回復薬ですよ」

「普通? 市で売っているようなものか?」

「あー……まあ、性能が高いものですけれど、私はそれを作れるので。ただ高価であんまり経済乱したくはないので、黙っておいてもらえると」

「そうか……そういうことなら黙っておこう。いやしかし、本当に助かった……まさか薬一本でここまで持ち直すとは」


 私と弥々華さんの会話を聞いて、寧々ちゃんが申し訳なさそうに声を出した。


「あ……弥々華様、もしかして私、また発作を……」

「よい、よい! お前が気にするようなことなど何もないのだ!」


 大声を上げて、謝ろうとした寧々ちゃんの発言をかき消すように止める弥々華さん。その姿に寧々さんも周りも、ちょっと呑まれていた。


「っ、はい……わかりました。今は発作は治まっているようです。今までになく調子が良いぐらいで」

「そうか、本当に大丈夫なんだな?」

「本当ですよ……よっと」


 寧々ちゃんは、病み上がりながらその場で立つと、かるく飛び跳ねてみた。

 よかった、とっても元気って感じだ。


「本当に体力が戻っています。今日のお薬はすごいものだったんですね」

「あ、ああ……こちらの方……ええと、きゅうけい殿? に、いただいたものだ」

「どーもどーも、きゅうけいさんって呼んでね!」


 もう本名はあきらめた!

 それにしても『きゅうけい殿』は新しい! 響きがちょっと本気なのか冗談なのかわからなくて面白い。


「ありがとうございました、きゅうけいさん。見合ったおもてなしが出来るかは分かりませんが……」

「いーのいーの! さっきおいしいものたくさんもらったし、後はもうこの気持ちいい畳とか、あとふかふか羽毛布団とかでグースカ眠れたらいくらでもお薬融通しちゃうよ!」

「ほ、本当か!」


 私の言葉に反応したのが、弥々華さんだった。


「薬を融通してくれるというのは、本当なのか……!」

「材料がなくとも魔力だけで私は作れますし、それに眠れば魔力を回復することが出来るんです。むしろその眠る場所の確保が大変でして……」

「そ、そういうことならいつでもいていい……いや、いてくれ!」


 両手をガシッとつかまれて、弥々華さんに懇願される。

 それまでの余裕のある大人な雰囲気と違う、あまりに必死な様子にちょっと驚いた。


「も、もちろん! 寧々ちゃんとも仲良くしたいし、病気で死んだりしちゃったら絶対後悔しちゃうから、治るまでは一緒にいるよ! もう関係を持った以上こんな可愛いお姫様、見捨てるなんて私達全員できないよ、ね!」

「言われるまでもないですよ、異種友リーダーとしてその方針でしばらく活動しましょう」

「わ、私も寧々ちゃんともっとお話とかしてみたいですぅ……!」


 当然だよね! さすが私達のパーティ、みんな良い子!


「本当か……! ああ、ありがとう……ありがとう……」


 ……なんと弥々華さん、私の前で涙を流し出した。

 これはどれほど珍しい事態なのか、向こうで寧々ちゃんもメイドさんも驚いた顔でお互いを見合っていた。


 それからものの数分か、あるいは数十秒か。


「……っ、ふふ、今度は我が泣かされてしまったな」


 落ち着いた弥々華さんは、少し恥ずかしそうに涙を拭うと、またいつもの大人びた顔になってくれた。

 うんうん、さっきの泣き顔も綺麗でいいけど、やっぱりきりっとしたかっこいい顔が似合ってるね。


「よし、何かしてほしいことがあれば我に出来ることなら言ってくれ」

「もふもふしたいですっ!」


 間髪かんはつを入れずに即答した。シルヴィアちゃんとエッダちゃんは、完全に呆れ顔だったけど、こればかりは譲れません!

 もちろん弥々華さんも呆れ顔だ。


「お、お主は、まだ諦めてなかったのか……!」

「だってだって! ずっと獣人に会いたいって思ってて、特に狐の人はずっと気になってて……だから、弥々華さんの話を聞いたときにどうしても会いに行きたいって思って、それで海の向こうからやってきたの」

「ヤマトが目的ではなかったのか?」

「ヤマトも目的だけど、一番の目的は弥々華さんだよ!」


 私が言い切ってからというものの、頭を掻きながら「うーむ……」と唸っている弥々華さん。

 やがて決心したのか、目を閉じて頷くと、私の方に向き直った。


「良いぞ」

「……! ほ、ほんとですか!?」

「まあ、耳までだな。尻尾はあまり慣れておらんので、そちらはなしだ。その条件でどうだ?」

「十分です、ありがとうございます!」


 や、やった……! 狐っ娘のもふもふをもふもふできるもふもふ権をゲットできましたもふもふ!

 もふもふ、もふもふしなくちゃ……。

 私はそわそわとにじり寄って、弥々華さんの耳の後ろに手を伸ばす。弥々華さんも緊張した面持ちだ。


 ……さわ……。


「んっ……」


 触ってみたけど……なんと、とってもやわらかい……モフモフしてる……ほんとにモフモフしてる、これやっばい……。

 見た目が結構ツンツン立ってるから、ちくちくするかなーと思ったけど……全然だった……。


 もふもふ……さわさわ……。

 ああー……弥々華さんきもちいい……これ好き……。


「……」


 シルヴィアちゃんもやってきた。

 無言で頷いて、場所を交代する。

 もふもふ。シルヴィアちゃんが弥々華さんをもふもふ……。

 なんだか、とっても、たのしい雰囲気だ。


 あ、エッダちゃんもやってきた。

 エッダちゃんも弥々華さんをもふもふ。ちょっと触ってから、エッダちゃんの口元がにまーっと開く。エッダちゃん、よっぽど気持ちいいのか、弥々華さんにぴったりくっついて触っている。


「……むぅ……」


 あっ、弥々華さん反撃開始する様子。

 一体何が気になってるのかな、と思いきや……エッダちゃんの耳を触りだした。

 エルフ耳! そういえばエルフ耳ってどんななんだろうね!


「ひゃ……!」


 弥々華さんは……耳の後ろから、指で軽く端っこを押すようにした。むにむにと手前側に曲がるエッダちゃんの長い耳。

 あ、あんなふうになるんだ……。


 ……むずむず……。


 わ、私も、いいかな?

 私もエッダちゃんに近づいて、耳を後ろから触る。エッダちゃんは困惑したようにびくっとしていたけど、特に抵抗はしなかった。


「……あぅ……」


 やわらかい……人間の耳と一緒だけど、思った以上に柔らかかった。

 私の様子を見て、シルヴィアちゃんもエッダちゃんの耳を触りに行った。そして弥々華さんの手は離れて行き場を失う。


「……ごくり……」


 ……なんと、次に寧々ちゃんが動いた。

 耳が埋まっている寧々ちゃんが狙いを定めたのは……!


「ふあっ……」


 うおおおっ! 可憐な顔をして大胆ッ!

 寧々ちゃんスーパープレイ!

 なんと……エッダちゃんの……胸に行きましたッ!


 その指がずぶずぶと沈んでいく様を、つるぺたの和風メイドさん含めてみんなが一斉に注目する。

 気がついたら、シルヴィアちゃんも弥々華さんも手を止めて、その柔らかく変形する茶色の水風船に目を奪われていて……。


「あ、あのぉ! なんかおかしくないですかぁ!? そもそもこんなんじゃなかったことないですかぁ!?」


 ……当然、エッダちゃんの悲鳴が響いた。




「……いやー、すまんすまん。珍しくてね」

「うぅ……まあ確かに私も無言でもふもふしにいきましたけどぉ……」


 エッダちゃん、涙目になりつつも怒ってはない様子だった。


「それにしても寧々が大胆で驚いたぞ……」

「ううっ、すみません場の空気に流されちゃって……周りで誰もあそこまで大きくないから……その、ごめんなさいエッダさん……嫌、でしたよね……」

「あっ、いえ、怒ってはないですよ! 男性の前ならともかく、みんな女性ですし……。……あ、あの! 私のことはもっと気軽に呼んでください、ぜひ仲良くしましょう!」

「は、はい! えっと、エッダちゃん」

「うん! 寧々ちゃん!」


 ハイ尊い。

 それにしても寧々ちゃん、ファインプレーでした。MVP寧々ちゃん。

 エッダちゃんは……すっごかった。変形のすばらしさを目に焼き付けさせていただきましたとも。

 ありがとう寧々ちゃん、今日のあなたは私の中で神様です。


「ふう……それで、今日はもういいな?」

「まだです!」

「うっ! ……い、言った手前、要求を断るようなことはしないつもりだが……」

「一緒に寝たいです!」


 その要求は意外だったのか、驚かれた。


「一緒に寝たいって、我とか? 布団を横に繋ぐのでいいのだよな?」

「えっ!? あっ! も、もちろんです! いえ抱き枕にしてもいいというのなら抱いて寝たいですけどっ!」

「……さ、さすがに勘弁してくれ……」


 ですよねー。それに私だってそこまでやると本当に抑えがきかなくなりかねない。

 だって弥々華さんは……本当に素敵なのだ。もう私の本能が、この人を好きって言いまくっているのだ。


「隣で、その……手とか繋いで寝てくれると、嬉しいなあって」

「子供か……いや、お主は子供だったな……。……ま、いいだろう」

「ほ、本当ですか! やったー!」


 やった! 

 私が喜んでいると、寧々ちゃんもやってきた。


「弥々華様……その、私も今夜は一緒に」

「なんと寧々もか? ふふ、いいだろう。まったく今日は甘えんぼさんが多い日だな? ま、いいだろう」


 弥々華さんの右手が寧々ちゃんに、そして……左手が私の髪の毛に触れる。細くて小さい指が、やさしくわしゃわしゃと髪の毛を掻き分けていく。


 ……ああぁ……きもちいいぃ〜……。


 なんて感触にトロ顔でデレデレしているうちに、いつの間にか和メイドさんの手によって敷布団が五つ並べられていた。

 私とシルヴィアちゃんとエッダちゃん、そして弥々華さんと寧々ちゃん。


 私は服をぱっと装備解除で脱いで、おふとんの中にするすると潜っていった。


 するする、するする……。

 ……わああ……きもちいい……これあれだ、ビジネスホテルとかに行って、着替え脱いでお風呂入って、浴衣をめんどくさがってそのままおふとんに潜り込んだときのあの感じ……。

 素肌おふとん、最高だあ……。


「もう、本当に仕方のない人ですね」


 リーダーがくすりと笑って、布団の中に入っていく。私のことを仕方ないみたいに言っていたけど、おふとんに入ると完全に顔が緩んでいた。

 エッダちゃんもその様子を見て急いで入り、そしてふにゃふにゃのかわいらしい笑顔になって、うつぶせで枕に顎を乗せてこっちに顔を向けた。


 そう、こっちに顔を向けた。

 おふとん、修学旅行で枕を中心に集める感じの並び方だった。


「えへへ、きゅうけいさんだー」

「わーい、エッダちゃんだー」

「わぁー」


 布団から真上に両手を伸ばす感じで、エッダちゃんとおててにぎにぎする。うへへーたのしいーほんとに修学旅行の女学生みたいー。


「賑やかな家族が増えたな」


 声の来た見ると、右隣に弥々華さんが約束通り入ってきていた。


「わー」

「……我もやるのか?」


 私はエッダちゃんから手を離して、弥々華さんの布団に手を伸ばす。


「わー」

「…………」

「……わー……」

「仕方のないヤツだなあ……」


 ……! おててにぎにぎされた! 弥々華さんの小さい手!


「えへへぇ〜」

「……まったく……」


 困ったように苦笑すると、弥々華さんはそのまま目を閉じた。

 見れば、シルヴィアちゃんはもう寝息を立てている。


 ……そうか、そういえばかなりの長時間、空を飛んでいたもんね。

 それにリーダーとしてかなり気を張りっぱなしだったはずだ。

 でも、弱音なんて絶対吐かない。小さい体でもずっとかっこいい、リーダーだ。

 本当に、私達のパーティの誇りだよ。


 エッダちゃんの寝息も……寧々ちゃんの寝息も聞こえてきた。

 正面の弥々華さんも……あ、目が合った。


「ふふ……おやすみ、可愛い魔族殿」

「お、おやすみなさい、弥々華さん」

「うむ」


 と満足そうに呟くと、私の青い手をその綺麗な両手で掴み、手の甲を優しく撫でながら慈愛に満ちた微笑みを向けると、やがて目を閉じた。


 ……あうぅ……本当に弥々華さん、ステキすぎるよぉ……。

 なんだかもう、好きってだけじゃなくて、憧れちゃうというか。

 今までにないタイプで、半端なく好きになっちゃってる。

 私はその優しい手の感触に、やがて睡魔に抗えなくなり———




 ———最後に涙を落とす弥々華さんの顔を見て、意識を手放した。


 - - - - - - - - - -


 冬なのに 山なのに 今日はあつい

 冬なのに 夜なのに 今はあかるい


 どうして どうして どうしてなの


 -


 お前のせいだ!




 お前が———




 ———お前が娘を殺したんだ!


 - - - - - - - - - -


 んん……朝だー。

 なんだか夢を見ていた気がするけど、夢ってあれだよね、かんっぜんに忘れるよね! 起きた直後とかには思い出せそうな気がするけど、「まあどうでもいいっしょ」とかなることが多い。


 でも時々、起きた直後に夢の内容を「今の、今の、うーんうーん」って思い出すことに時間かけて、朝食食べているときもずーっと夢の内容の断片を思い出そうとして、何故かキャッチーなCMを連想してそっちに思考を取られて、一度思い出した流行歌のループ再生に嵌って抜け出せなくなったりして。


 で、最終的に思い出せた! そうだこんな内容だった! すっきりしたーって見事に思い出せるってことない?

 ない、かな?


 え? 普通は夢の内容にそんなに執着しない?

 ですよねー。


 隣を見ると、既に弥々華さんは布団から出ていた。どこかにいないかなと思って周りに目を凝らしてみたけど、よくよく見るとシルヴィアちゃんもエッダちゃんも寧々ちゃんもいなかった。

 ……あ、あれ? もしかして私だけおいてけぼり……?


 じわっ……。


「なーに泣きそうな顔してるんですか」


 っ!


 呆れ気味の顔が、廊下にあった。

 し、シルヴィアちゃんっ!


「だ、だって、みんな私のこと置いていったと思っちゃったからぁ〜!」

「置いていくわけないでしょ、むしろ……その」


 ……ん? 何だろう、急に言いにくそうになった。

 もしかして、変なことやらかしちゃいましたか?


「言っていいのかわからないけど、きゅうけいさんはものすごく泣いていて、とても起こすに起こせない状態だったといいますか……」

「え、私が?」


 思えば落胆系とか、恐怖系とか、追いかけ回される系のタイプの夢だった気がする。

 なんだか夢の内容って、内容は覚えてないけど感情だけ覚えているって例もあったり、本当に不思議。


 顔をぺちょぺちょ触ってみる。確かにちょっと泣いていたみたい。

 でも夢の内容は覚えていないので理不尽である。

 何かの方法で夢の世界とか記憶できたりしないかな! 私きゅうけいさんはベルフェゴールなんだし、それぐらいの魔法あっていい気がするんだよね!


 そんな能力不要? そんなー。


「はぁ、とにかく朝食を食べますよね」

「朝食! もちろん!」


 そう返事すると、シルヴィアちゃんと一緒に食堂に行った。


 さすがに連日大広間なんてことはなく、そこには板の間にテーブルが並んでいた。わりと洋風な見た目で驚いたけど、そもそも籐のロッキングチェアなんてものを開発している世界でこの程度の和洋折衷はありますよね!


「きゅうけいさん、おはようございますぅ!」

「ねぼすけが起きたな」


 そこには既に、エッダちゃんと弥々華さんがいた。


「いやーふとんきもちよくて。用意してくれた人にお礼を言わなくちゃ」

「そうか、では我から伝えておこう」

「よろしくお願いします!」


 弥々華さんは再びあの優しそうな目で微笑み、朝食を並べてもらうよう言う。……うう、あの微笑み、完全に私の弱点って感じ。なんだかこう、きゅんとくる。


 並んだのは、味噌汁と豆腐だ。


「こ、これはなんですかぁ?」

「豆腐は……もちろん知らないな。……まあ食べてみるといい、苦手なようなら残してくれて構わん」

「はい!」


 エッダちゃんが恐る恐るスプーンを入れると、もにゅりとやわらかく変形する。

 ……あれ? 何か足りなくない?


 そのまま口に運び入れて……疑問って感じに眉根を寄せて首を傾げた。


「あ、味がまったくない……甘いかと思ったら、もっと違う……なんだろうこれ、変な食べ物……」


 あ、ああーっそうか、甘い方で予想してしまっていたんだ。

 そりゃ微妙な味にしか感じないよね、味なし大豆プリン。


「ああ、すまない。説明しなければならなかったな。これだ、醤油だ」


 そして出したのは、当然醤油。

 そこから出る黒い液体を豆腐にかける。


「豆腐はこちらの一般的な食事だが、果たして口に合うか。甘くはないぞ」


 エッダちゃんが、再び恐る恐る口に入れて……そして今度は、目を見開いた。


「これがショウユとトウフ……! 私、トウフ好きです!」


 私はエッダちゃんが好きです! 二回目!


「そうかそうか、よかった」

「ええ、これはいい食感ね……なかなか悪くないと思うわ。プディングの、味付けをソースが担っているようなものね。ショウユもトウフもオリエンタルで独特だけど、黒いソース一つでここまでちょうどいい味わいになるのは素晴らしいわ。その濃さを個人の裁量で調整できるのは、むしろ強みかしら」


 し、シルヴィアちゃん先生の説明はさっぱりわかりませんが! きっとシルヴィアちゃんが言うのならそうなのでしょうっ!

 後は味噌汁を飲んで、中の里芋もしっかり食べて、今日のごはんも大満足なのでした!




 食べ終わってゆったりしていたけど、さすがにそろそろ立ち上がらないと。


「さて、今日は何をしよっかなー」

「別に城の中にゆっくりいてくれて構わんぞ?」

「だそうだけど、どうするリーダー」


 シルヴィアちゃんは、逆に弥々華さんに聞き返した。


「ヤヤカさんは今日は何をやるのですか?」

「うむ、寧々の容態も安定したし、再び妖怪が出ていないか討伐任務の方を調べてみる予定だ」


 そのことを聞いて、私達は顔を合わせて頷き合った。

 みんな考えることは一緒だね!


「そういうことでしたら、一緒に行ってもいいですか?」

「いいのか?」

「むしろ食べて寝ているだけだと本当に鈍ってしまいますし太ってしまいますから。昨日のこともありますし、個人的にこちらの魔物にも興味があるので手伝いたいと思います」


 シルヴィアちゃんの発言に、私もエッダちゃんも頷く。


「分かった、そこまで言われて断るのも失礼だろう。一緒に来てくれるか?」

「ええ!」


 そうして私達は、再びあのヤマト冒険者ギルドへ足を運ぶのだった。

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[一言] 火事、だよなぁ…。
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