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きゅうけいさんは故郷を知る

 本日は、昨日の酒精がハッピーに回ってぐでんぐでんした後はシャキッと起きました。いいお酒って二日酔いにならないからいいよね。


 いやあ……昨日はすごかった。

 何がすごかったって……ワイン、ワインですよ。


 見るからに高いです! って感じのワインを飲んだ。

 っていうかあのマモンのワインですよ。

 絶対高かったね。平社員前世じゃ絶対味わえなかったタイプ。


 そういうヴィンテージワインってやつ、すっげえエグいと聞いてた。

 もうね、全然。信じられないぐらいおいしいの。

 私はもう感動したね。

 しかもその後もどんどん取り出してきたからねお酒。どんだけあんのと。


「昨日はおいしいワインでしたねー!」

「え、ああ、そう、ですね……」


 ……? 珍しく普段ははっちゃけてるトゥーリアさんがおどおどしている。


「どうかしたんですか? 何か……」

「あの……きゅうけいさんは、あれの価格、聞きました?」

「……え?」


 な、なんだろう……猛烈に嫌な予感がする。


「あれは、金貨50枚だそうで……」


 え?


「レジーナが言うには、その後に出してきたのも小金貨で取引されるようなものばかりらしく、総額だと……家とか買えるんじゃないかと……」


 ……。


「もしかして」

「まあ……アレを飲んだ以上は仲良くしましょうねってことですね……」


 ひ、ひええ……。

 今更ながら、強欲貪欲金銭欲なマモンさんの「お金の使いどころを間違えない」という意味を理解した。

 恒常的に古竜の老衰した素材が手に入るのなら十二分にリターンできるという長期利益優先な考えでいただいちゃったんだねアレ。

 いや、えっと、私死んでもお金になる素材なさそうですけど、めっちゃ飲みまくっちゃったんだけど後でケチついたりしないよね?


「ああ、きゅうけいさんはそもそもマモンを助けた本人ですから、怒られるなんてことは絶対ないと思いますよ」

「だ、だといいなあ……!」

「そんなことを心配しているの、あなたぐらいですって」


 楽しそうにカラカラ笑うトゥーリアさん。

 なんだか本気でそんな心配してるのがありえないみたいで、これはこれでちょっと恥ずかしくなってしまう。





 ……思えばトゥーリアさんとは、最初いきなり斬りかかられるところからスタートしたんだった。

 そして疑いの目を向けられ、一ヶ月ほど信頼を得るためになんとかみんなのお食事を作って、それから村のみんなにごはんを食べさせて……

 ……その時には、もうトゥーリアさんは、私を村のみんなに馴染ませるために頑張ってくれていた。


 シルヴィアちゃんを見た後だから分かる。

 トゥーリアさん、やっぱりシルヴィアちゃんよりは頭の回転が遅い。


 でもね、そんなトゥーリアさんが私のために頑張ってくれて、ちょっとシルヴィアちゃんに先手を取られて涙目になっちゃってたり、追い抜かれそうでおろおろしていたり。

 どれもこれも一生懸命に姉として頑張っていて、そういう姿ってもう出来不出来に関係なく、やっぱり輝いて見えると思う。

 トゥーリアさんは、自分のことシルヴィアちゃん大好きなただの妹バカだと思ってそうだけど、とんでもない。

 こんな素敵で可愛いお姉さんなら、そりゃーシルヴィアちゃんもお姉ちゃん大好きになっちゃうよ。


「トゥーリアさん、いろいろありがとうございました」

「ん? 何ですか改まって」

「私もトゥーリアさんみたいな姉が欲しかったなーって思いまして」

「え、ええっ……? 何なんですか本当に?」


 照れてる照れてる。


「いろいろしてもらったなーって思って」

「……。村全体で言ったら、むしろしてもらってるのは我々の側だと思うんですけどね。食事の水準が上がったのは本当に村始まって以来の革命ですし」

「たまたまですよー、たまたま誰でもできるそんなことをしたのが私だっただけです」

「まさか———たまたまなわけないです、絶対」


 ん?

 私が視線を向けると、トゥーリアさんの表情が真面目になっていた。

 今度はあちらが改まった感じで、ちょっと緊張する。


「え? な、なんでしょうか……!」

「この村に来るには、そもそも竜族の信頼を得なければならないのです。そしてあなたはシルヴィアの信頼を勝ち取った、だから間違いなく偶然ではなく自分の能力や個性でやってきたのです」

「そ、それこそ過大評価だよ!」

「まさか。だって我々、お客様をお迎えしたら料理を作らせるだなんてメイドのようなことをさせたりしないですからね。本当に、きゅうけいさんしかできないことだったんです。そして、村人全てがあなたに感謝するようなことをしてみせた」

「あ……」

「だからあなたは、本当にすごい。私はあなたに会ってから、自分がどれほど驕り高ぶった小物だったかと思うようになったほどですよ」


 ……。……ど、どうしよ……。

 すっごく嬉しいんだけど。

 すっごくうれしいんだけどさ……

 高評価過ぎてトゥーリアさんの顔が見れない……。


「あ、ありがとうございますぅ……もう、そんな照れること言ってくるなんて反則ですよ……」

「そういう控えめなところも魅力ですね」


 ふふふと笑うトゥーリアさん。笑う度にものすっごい美人だからドキドキしっぱなしのこっちがなんだか一人でテンパってるみたいでぐぬぬ……。


 ええい、なんかお返ししたい! 照れるようなお返し!

 あ、そうだっ!


「もうっ! トゥーリアさんだってほんとにシルヴィアちゃん憧れちゃって好かれまくっててすごいんですからね!」

「シルヴィアは懐いてくれていますが、もう憧れってほどでは……」

「だって半分寝ぼけてるところで私、「村で一番美しいのはシルヴィア様だよー」なんて声かけたら「ちがうよーおねえちゃんのほうが美人だよー」って返ってきましたからね! あれ完全に素でしたから! そもそも私、トゥーリアさんが美人だって聞いたから、トゥーリアさんを見るためだけにこの村に来たんです!」

「そ、そうだったんですか!? え、ええと……で、どうですか……?」

「毎日眼福でございましたッ! さっきの笑顔も、今の照れ顔も、トゥーリアさんは全部最高ですッ!」


 そこまで言い切ると、トゥーリアさんは顔を真っ赤にして「ど、どうも……ううっあたしがぁ……? 慣れねーよぉ……」と横を向いて困ったように頭を掻いていた。

 ……ああんもおお! このちょっとヤンキー入ってる喋りでのマジ照れギャップが既にかわいすぎる! やばいでしょトゥーリアさんの魅力!


「な、なんだか口説かれてるみたいで変な感じです……ああ、そろそろレジーナを迎えに行きますか」

「っと、そうでしたね」


 私はトゥーリアさんとそんな朝のこっぱずかしいやり取りを終えて、レジーナさんと、一緒に飲んでいた人の下へ移動した。

 移動したっていうか、屋敷内の道場もとい宴会場に入っただけだけどね。




 屋敷の中央で、仲良く眠る魔王と占い師。

 レジーナさん仰向けでグースカ寝てるけど、なるほどこう見ると確かに……でかい……!


「ほーら、おきなよー」


 トゥーリアさんが肩をゆさゆさ揺らして……ゆさゆさ時間差で揺れる……!

 ありがたやありがたや……。


「……? きゅうけいさんは何をやってるんですか?」

「レジーナさんとトゥーリアさんも、とても尊いなと思って拝んでます」

「も、ってなんですか」

「以前シルヴィアちゃんとエッダちゃんにもやりました」

「ええ……?」


 トゥーリアさんの困惑する声の横で、レジーナさんがゆっくり起き上がる。


「んん……あ、おはよー。きゅうけいさんもおはよー」

「はい! おはよーございまっす!」


 私が明るく返事をしたのを見て、ふとトゥーリアさんがレジーナさんを見て、顎に手を当てて考え出した。


「……なあ」

「ん? どしたのさートゥーリア」

「レジーナは最初っからタメ口なんだな? 意識しなかったけど」

「あ、そういえばそうだねー」


 トゥーリアさんが、むむむと考え込んで……


「そうか」


 私の方を見て、


「まだ、あたしはきゅうけいさんのこと、妹の客人で審査対象のつもりで見てたのか」


 そんなことを言った。


「……えっと、どういうことです?」

「あたしもレジーナと同じように、『友達』になりたいってことです」


 あ……!

 トゥーリアさんと……友達!


「はい……はい! 私、トゥーリアさんとも———」

「というか、すっかり忘れていた」

「———え?」

「なんだかなあなあで流していただけで、あたしずっときゅうけいさんのこと友達のつもりだった。最後の一歩踏み出し忘れちまってたなあ」


 ……え、っと……。


 トゥーリアさんは。

 もしかして、私のこと。

 ずっと友達だと思っていた?


「ほ、本当ですか……!?」

「何を指して本当と言ってるかはわかんないですけど、きゅうけいさんはあたしにとって、これ以上なく話しやすい友達でしたよ。ああ、なんだか意識すると、今までなんで忘れてたんだろうって気持ち……でも」


 ああ、本当に……。

 本当に、この人も友達になってくれるんですか?

 友達になってもいいんですか?


「きゅうけいさんは、あたしにとって友達であると同時に、一番尊敬できる相手なんです。だから対等だなんて思うことすらおこがましいとあたしは思ってるんですが……でも、もしもきゅうけいさんがよければ」

「なりたいッ! 私、トゥーリアさんのこと、この村に来てから大好きで……! だから、もっと、仲良しに……友達になりたいですッ!」


 ……い、言った……!


「……よし! じゃああたしときゅうけいさんは今日からマブダチだぜ! 中身は恥ずかしながら見た目ほどお淑やかじゃねーけど、よろしくな!」

「えっ! あっはい! はい、嬉しいです!」


 ……い、今一瞬反応できなかった!


 あのね、超絶美人の女神様ルックスなのに、男勝りスマイルでこっちに視線寄越すのはね! これは本気でやばいです!

 どっかのゲームに『スマイルするだけで相手の男は即死する』みたいな必殺技持ってる女神様とかいたけど、トゥーリアさん思いっきり女性特効のそれなんで手加減してください!

 ただでさえ女子高ではバレンタインチョコ総取りしそうなタイプの長身美女なのに、まさに一番似合う表情しないでください!

 かっこよすぎて心臓止まっちゃう!




「へっへっへ、きゅうけいさんが友達増やしまくって楽しいねー」

「本当に、愉快な方ですねェ」


 ……お、おお!? そこにはいつの間にか……。


「レジーナさんにマモンさん!」

「どうもどうも、あなた、きゅうけいさんってあだ名なんですね?」

「はい! その経緯はですね」


 そして私は、二代目ベルフェゴールになった経緯を話した。


「……ふむふむ、なるほど。面白いですね……。……いやあ、それにしても……あなたがベルフェゴールになって本当によかった。先代みたいなのはもうご勘弁願いたいですからね。案外レヴィアタンももうとっくに復活しているのかもしれません。しかしあなたみたいに争いが嫌いな人が来ればいいですねェ」

「平和主義者でっす! できれば人間も魔族も活かしたいけど……」

「ま、少なくともベルゼブブはもちろん、サタンとルシファーもどこかで殺さないといけないでしょうねェ。三名は少なくとも二代目になってもらわねば困りますとも」


 確かに……今回の襲撃のことを考えるとそれは明白だ。


 エッダちゃんの村を『暴食の呪い』で滅ぼしにかかった、監視しまくりのベルゼブブ。

 マモンさんが竜族の村を皆殺しにするとまで言った、『傲慢の呪い』を使ったであろうルシファー。

 そして、あの会話不可能なレベルで怒り狂ったマモンさんは、『憤怒の呪い』のサタン。


 恐らく三人は繋がっていて、三人とも明確に人間の敵として人類を滅ぼすつもりだろう。

 特に最後の最後、操られるマモンさんに『暴食の呪い』付きのボウガンで殺すという捨て駒具合は酷かった。

 盗聴野郎のベルゼブブのやつは、少なくとも私は絶対許したくない。


「……そういえば、アスモデウスは?」

「あの方も、何をやってるかわかりませんねェ……。ま、そのうち見つかるでしょう」


 あっさり言ってのけた。うーん、興味あるなー。

 間違いなく喋れる方だと思うんだけどね。


 ……個人的に色欲を司るセクシー美女が見たいだけだって?

 当たり前でしょ! 見たいよそりゃ!


「いやあ、それにしても飲ませてもらって悪いですねー」

「いえいえ、大した量じゃないですから大丈夫ですとも」

「あの麦焼酎、芋焼酎まで全部出してくれた辺り、マモンさんのコレクションは素晴らしいです」

「ふふふ、部下に買わせていた甲斐がありました」




「……ああ! 思い出した!」

「えっ!?」


 突然トゥーリアさんが大声を出して一同驚いた。


「米のワイン! 米のワインだよ! 相談されて今ようやく引っかかってたものがわかった! あれのことだったんだな!」

「え? え? どれのこと?」

「トウの家具だよ!」


 ———籐の家具。


 籐家具。

 その単語は……絶対出るはずがないものだった。


 だって、言ってないし座らせてないのだ。

 トゥーリアさんは……()()()って言うはずなんだ。


 ってことは……!


「きゅうけいさんの出身地って、ヤマトアイランドじゃないですか。そのまんまヤマトともいいますね」

「ヤマトアイランド……大和島!」


 ま、ま、間違いない!

 日本だ!

 日本のことだ!

 でも絶対淡路の大和島のことじゃないよね!

 どっちにしろ絶対日本だ!


「は、はい! 恐らくそこで間違いないです! 自分の国の名前が分からないので、ずっと名称を探していたんです!」

「ああ、よかった! 上手く繋がったよ、実はシルヴィアにも「きゅうけいさんと籐の家具に繋がりがあるかもしれない」って相談受けていて、伝えようかどうしようか迷っていたけど、やっぱ秘密とかない方がいいからよ! 喋っちまったわ!」

「トゥーリアさん〜〜っ! 最高です〜〜っ!」


 やった……やった!

 ついに見つけた、私の出身……とは正確には違うけど、日本らしき場所!


「ってことは、マモンさんの部下っていうのは」

「仙狐というそれなりに強い狐の雌の亜人を飼っているんですがね」

「狐っ娘! はいはい! はいはい! 友達になりたいです!」

「ワタクシと友達な以上、断らせませんよォ」


 うわーっ! ちょっと待ってこれ期待大だよ!

 狐っ娘とかもう楽しみすぎちゃうよ!


「……ああ、そういえばあなた、タマエ・カガミでしたよね?」

「あっ覚えててくれたんですね」

「相手の名前を間違えないのは信頼の基本ですヨ。そうですか、じゃああなたは本当は『カガミタマエ』と発音するのでは?」

「……! そ、そこまで分かりますか!」

「ええ、モガミヤヤカというファミリーネームが前になった女がその亜人でねェ。ファミリーネームは後ろにしないでほしいと言われたのを覚えています」

「最上さん! うわー、元の記憶だと山形方面にいそうな子かな」

「フフフ、本当に近しいみたいですね。彼女は現地にいるので、会いに行ってみますかネ?」

「是非是非!」


 私がそこまで言って、ふとトゥーリアさんの顔が少し寂しそうになった。


「ああ、そうか……きゅうけいさんがその地に行くのなら、当然ながらお別れ、だな……」

「あっ……」

「……なに、一生会えなくなるわけでもないし、むしろ私だって会いに行こうと思えば飛んでいけるんだ。きゅうけいさんはそれこそシルヴィア以上に広い世界を知っているだろうから……」

「トゥーリアさん……」

「悲しくはないさ。最後の最後にこうやって友達だって堂々と言えるようになったんだからよ。あたしはむしろ、嬉しくてたまらねーよ、あたしの友達がどんだけすごいヤツになるかって」


 ああ、トゥーリアさんって……本当に素敵だなあ。

 この大らかな姉に見守られて、シルヴィアちゃんは大きくなったんだ。

 そりゃ、大好きになっちゃうよね。


「うん……うん! 私、みんなが私のことを胸を張って友達だって言えるようになるよ!」

「でもな、今でも十分だぞーってことは覚えておいてくれよ」

「はいっ!」


 よし……次の行き先が、決まった!


 -


 それからしばらくの時が流れて。


「ビーチェさんは、結局行かないの?」

「んー、なんだかマモン様と改めて意気投合しちゃってね。お互い主人と筆頭眷属をなくしたもの同士として、この村を守る方向にしようかなって」

「そっか」


 その決意を聞いて、シルヴィアちゃんがビーチェさんに抱きついた。


「パーティメンバーからは絶対に外しませんからね」

「……はい、リーダー」

「あなたは、ずっと私たち『異種族友の会』のメンバー。あなたが助けを必要にしたら、私たちは必ず行きます」

「それ、リーダーがピンチだったら私が助けに行くって方が一般的だと思うんだけどなあ」

「……ふふ、そうね。じゃあ私たちがピンチになったら助けに来てよね」

「移動が出来ればなあ」


 そう。ワープはまだできないのである。

 ケルベロスが一瞬でワープしてきたことと、マモンさんが一瞬でビーチェさんを呼び寄せたことを考えると、そういう瞬間移動はできると思った方が自然だ。

 だけど……私はマモンさんに聞いてみたところ、そういった類の魔法は使っていなかったようだった。


 やっぱり、どこかで操っているんだろうな……。


「しかしお姉様、まさか思いっきり言い当てちゃうなんてね」

「すっごく遠いからね。やっぱりトゥーリアさんって凄いよね!」

「もちろん、私のお姉様なんですから!」


 シルヴィアちゃんは、トゥーリアさんを褒められることが何よりも嬉しい、というような笑顔で頷いてくれた。

 うんうん……やっぱりシルヴィアちゃんは、お姉ちゃん大好きな笑顔が一番だね。




 みんなが笑顔。

 みんなが友達。

 話せる相手は、誰一人減っていない。


「エッダちゃん」

「ふぇ?」

「エッダちゃんはやっぱりすごかったよ。この村に今住んでいるみんなが無事なのは、エッダちゃんが私に一言くれたからだよ」


 改めて伝えても、エッダちゃんはやっぱりピンと来てない様子だった。


「やっぱりそこまでの影響じゃない気がします」

「影響するんだよ……話をちゃんと聞くって大事なことだよ」

「……きゅうけいさん?」


 そう、私は友人の忠告を聞かずに完全に体調を崩した。

 初日には庵奈に言われてたのだ、「かろーしするかもー」って。

 ワーカーズハイなんて単語知らなかったけど。

 庵奈はヒントをくれた。私は手を差し伸べられていた。

 なのに、自分は大丈夫だと思って聞かなかった。


 友達を増やすということをレジーナさんから聞かされて。

 エッダちゃんの、「心の病気みたい」は聞き逃さなかった。

 そうじゃないかも、なんて思って流していたら、ビーチェさんはゴブリンキングと組んで……将棋倒しのように被害が広がっていた。


 一歩。その一言で選ぶ一歩。

 じわじわと動くんじゃなくて、たった一つの選択で大きく動く。

 私たちは、そんな選択の上にいる。


「私にとっては、この村で一番助かったのがエッダちゃんなの」

「な、なんだか褒め倒しすぎて照れますぅ……」

「今後も、エッダちゃんのことは頼りにするから、友達でいてね」

「っ! も、もちろんですぅ!」


 そう言い合って再び友情を確かめるように抱き合って。

 そして私のお腹付近は、今日も幸せ絶頂だった。




 さあ、いよいよお別れだ。


「シルヴィア……本当に、行くのか」

「もちろんよ! でも、きゅうけいさんのおかげで家族との会話が一人でおいしいもの食べるよりも暖かいって気づけたから、もう大丈夫。また半年一年帰ってこないなんてことはしないつもり」

「そうか。……きゅうけいさん、改めてありがとうございました」

「ありがとうございますね、きゅうけいさん!」


 長のエドモンドさんと、ナタリアさんがお礼を言ってくれる。

 今日はナタリアさんともお喋りだ。


「いえいえっ! そんなことよりこの村に活気が来てよかったです!」

「ええ。まったく、長のやるべき事をいろいろやってくれました。ダンジョンも鍛錬の場として有効なのか、時々冒険者のパーティが来るんですよ。魔法を限界まで使って回復して、というのを繰り返せるとても効率的な鍛錬の場だとかで」

「あ、じゃあ時々人間の人がいるのは」

「はい、間違いなくあなたのおかげですよ。ふふっ」


 なんと……! 竜族の村そのものと人間の冒険者を繋げちゃった!

 どんどん友達の輪が繋がるね。


 長さんが話を継いだ。


「マモンさんもかなり話しやすい方だったし、初日は随分といい思いをしてしまったな。わからないものだ……だから、面白い。でも……一番分からなかったのはベルフェゴール、あなただった」

「え?」

「あなたは何もかも予想外すぎた。トゥーリアと同じように、私もあなたの印象が最初とは正反対となってしまったよ」

「トゥーリアさんと同じ! じゃあじゃあ!」


 私が言うのは、もちろんこれ!


「長老……エドモンドさんも私と友達になりましょう!」

「おお、儂も言っていただけるのか。もちろんいいですよ。これで村人全員と友人になりましたな」

「やったあ! ………………って、え?」

「ん?」


 私が一瞬呆気にとられるも、エドモンドさんはそれこそ驚いたというふうに返してきた。


「いやいや、何を驚いているんですか」

「え? 友達になった?」

「驚くことですか?」




「もう村人全員、明るく話しかけるあなたのことを友人だとしか思ってないと思いますが」




 ……。

 待って。

 ねえ待って。


 年齢とともにね、涙腺ってメチャ緩むの。

 最後の最後にそういう不意打ち、ずるいでしょ。

 ああもう、ダークエルフの集落でもやられたのに、油断してた。


「……っ! そ、そうですね! そりゃもちろん! 私もみんなのこと……友達だって思ってますから!」

「うむ、あなたのような人にそう言ってもらえて村代表として光栄に思う。……それでは、シルヴィア」

「はい。……【ドラゴンフォーム】」


 シルヴィアちゃんが、古竜の姿になる。

 そして今回も、私とエッダちゃんが背中に乗る。


 何か忘れ物はなかったかな?


「きゅうけいさん! ベルフェゴールのきゅうけいさん!」


 あ、マモンさんだ!

 はいはい! 私です!


「ヤマトにもギルドがあります、そこでマモンの名を出して仙狐のモガミを呼んで下さい。彼女ならすぐに駆けつける能力があるはずです」

「はいっ!」

「それではあなたの旅路を祈っておりますヨ! ついでにあなたの目から見て良さそうなものがあったら紹介してくださいネ!」


 最後の最後にちゃっかりしてるぅ!


「もちろん! 特に、休憩時の道具を選ぶのには一日の長があります!」

「ハハハ、何よりも頼もしいコメントだ! 楽しみにしていますよォ!」


 そりゃもう、現地の部下を紹介してもらった分たっぷりお礼しますとも!




 私の国、日本。

 ヤマト。


 やっとここまで漕ぎ着けた。

 今回の行き先、本当に楽しみだ。


「それじゃあシルヴィアちゃん! ちょっと遠いけど、ヤマトまでお願い!」

「またいっぱい、素敵な場所を探して休憩していきましょう!」

『————グルルァァァァァッ!』


 おおっ! 今日のシルヴィアちゃんは気合十分だね!


 さあ、行こう! 私たちの次の旅路へ!

 そして、次の、きゅうけいさんのきゅうけい場所へ!


 なーんてね!

第二章完結です! 面白かった、続きが気になる、更新頑張って! と思っていただけましたら、下側より評価、そしてブックマークいただけると嬉しいです!

よろしくお願いします!

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