きゅうけいさんはやっぱり友達を諦めない
状況を整理しよう。
まず誰が見ても分かる事が一つ。
七つの大罪『貪欲の魔王マモン』による襲来。
マモンの配下による、ゴブリンの数にモノをいわせた襲来。
そして、ハリネズミの配下にネコの配下という弱そうな種族の中ではぶっちぎりに強そうなニードルピューマの集団。
そういえば……狐も配下にいたと思うけど、いないのかな?
そして、転移させられたビーチェさん。
その横にいるのはゴブリンキング。
転移位置は民家のすぐ上。
まあ、ゴブリンキングは今首なしだけどね。
ケルベロスがシルヴィアちゃんを攻撃したとき、私は反応できなかった。
最初の一撃で吹き飛ばされる古竜の姿を、焦燥感と無力感で見ていた。
……きっと、あそこに出現したマーメイドが遠距離攻撃を行い、ゴブリンキングが母親を娘の前で犯すような凄惨な現場になるはずだったんだろう。
一人でも殺されたら。
一人でも犯されたら。
私は、負けたと思っただろう。
「エッダちゃん!」
「へっ!? な、なんですかぁ!?」
「これがエッダちゃんが引いた、『勝ち確』だよ!」
「え、え?」
『心の病気』を治して、引き当てたこの現在。
勝負を決定づける最初の一手。
相手の最大戦力3つを1つだけにして、しかも1つは味方に。
敵の残りはエッダちゃんでも倒せるレベルの魔物と、マモンだけ。
こちらは、全員完全生存。
もう負けるルートがない。
「ギルドの皆さん! 南方面! あっちにたくさんゴブリンいるんで討伐をお願いします!」
大きな緑の鱗を持つ竜となり上空に待機していた、仲良くなった気のいいギルドのみんなは私にその竜の首を向けると、すぐに状況を把握して散開した。
私の指示一つで飛んでいく、最強種の部隊。圧倒的な戦力。
ゴブリンメイジの【ファイアーボール】を、まるで湖に落ちたマッチの如く消していくドラゴンの数々。
後のゴブリンは近接武器も弓矢もそう簡単には届かないね、ご愁傷様。
散開したドラゴンが、空からのブレスで村の外側にいるゴブリンを一方的に倒して回って試合終了。
いやー、やっぱ強いね。
やっぱ居候組、なかなかかっこいいと思うよ。
ちなみに村の内部に入り込んできたヤツもいるけど、基本的にそっちもギルドたむろ組がガンガン倒してくれていた。
混戦になっても人型で余裕勝利みたいだ。
リーダーに無断で指示出しちゃったけどいいよね、って確認して「そりゃまあいいですけど」って感じで軽く返してもらった。
「マモンのゴブリンは最大の懸念事項になるかと思ってたけどよかった。私一人じゃ絶対ダメだったねー。いやあ、みんなと仲良くなってよかったよかった」
「懸念事項? いやいや、きゅうけいさんは倒せたでしょうゴブリン」
「倒せないよ、一番苦手だから」
「……は?」
シルヴィアちゃんにとっては、多分私の発言はかなり意味不明に感じたことだと思う。
だって本当にゴブリンは紛う事なきザコである。
倒せないというのは、もちろん正確には違う。
「いやまあそりゃあ生理的に受け付けないけどね、ビーチェさんみたいな反応になっちゃうと思うけどね」
「はあ。じゃあなんで苦手なんですか?」
「わからない? 私があいつら倒せない理由」
「全く分からないです」
私は腕を組んで、堂々と胸を張った!
「あんな数のゴブリンが村に入り込んだら、めんどくさがりの私が全部倒せるわけないでしょっ!?」
……。
胸を張ったって言うけど、無い胸を張ったなーって自分で思う。
そしてシルヴィアちゃんも、ないもの仲間なので同じ顔してる。
自信満々に言うことじゃなかった。
ごめん、悲しくなるのでもう胸は張りません。多分。
「……はー、なるほど、きゅうけいさんとしては、この人数を相手にするのは自分では無理だったというわけですか」
「そうでっす! なまじ敵一体が弱いだけに、めんどくさいという要素が非常にネックになる……それがマモンのゴブリンだったんだよね」
「それで、仲間が多い時に討伐できてよかったというわけですか」
「範囲魔法を器用に使おうにも、こうなってくると難しいからね」
「……確かに、私もドラゴンブレスをこんな町中で吐き出すなんて選択は絶対にすることはないですね」
そうなのだ。範囲攻撃はとにかく便利である反面、あまりにも巻き込むモノが多くて混戦すると全く使えない。
よくある話で、軍隊が混戦すると弓矢は使えないっていうやつだね。混戦になればなるほどこういうのって難しくなる。
でも、この村でゴブリン軍団を相手に出来たのは本当によかった。こんなに相性の良い相手はいないだろうってぐらい、圧倒できている。
負ける可能性、鼠の毛先ほども想像できない。
絶対勝てない勝負を『ゴリラ対アリ』と表現している漫画があったけど、今回の戦いの『ドラゴン対ゴブリン』って全く同じ例えだと思う。
しかもドラゴン一体じゃないし、もう勝負にすらなってない。
「いやあ、それにしても」
私は視線を反対側に移した。
シルヴィアちゃんも、同じ方を向く。
「占い効果すごいね……」
「あたしも思います……」
そっちには、汚れた手を水魔法で嫌そうに洗っているビーチェさんがいた。
「なぜだ……なぜだなぜだなぜだァァァ!」
「わっ! あ、えっとマモン様? 久しぶりですね……前より服装の趣味……? が変わって驚きましたけど……」
ビーチェさん、驚き気味でもとりあえずマモンに対応する。
……何か気になることも言った。
「あなたは! マーメイドのあなたはワタクシの眷属にはできなかったものの、それでもワタクシの命令には従うはずなんですけどねェ!? どういうことなんですかこれは!?」
「どうって……え? 命令に従う? 見ての通り、私は自由ですが」
「そんなはずはない……! 命令できるように確認した筈! 何度も試して、そして解除された場合は連絡するように報告用のステルス系のゴブリンを配置した! 解除されてるなどありえないィ!」
私はその言葉を聞いて、はっとなった。
———解除された場合は報告するダンジョンに潜ませたゴブリン。
思い当たるところがありすぎる。
「ステルス? シルヴィアちゃん、報告用のステルス系のゴブリンって……」
「あー! あたしがぶったおしたダンジョンの中にいたあまりにも不自然すぎる一匹のゴブリン!」
マモンがこっちを向く。
「な……! あ、あなたはまさか、あの逃げるように指示を出していたシャドウゴブリンシーフを倒したと……!」
「ステルスだったんだ。きゅうけいさんのレーダーにかかれば他の敵との差も分からないぐらいすんなり見つかって、あっさり討伐できちゃったわよ。つーかあたしだけザコ担当みたいで不満だったぐらいなんだけど」
シルヴィアちゃん、勝ち気な笑みで私とエッダちゃんに視線を向けた。
「どーやらあたしが倒したヤツ、一番大物だったみたいね!」
「討伐お手柄様リーダー!」
「さっすがリーダーですぅ!」
ゴブリン一匹に軽口を叩き合ってるけど、ほんと大物中の大物だった。つまり、マモンの警報アラート解除していた。
そしてお陰様ですっかりシルヴィアちゃんのナナメったご機嫌もまっすぐ戻ってくれて私も嬉しくなる、ありがとうシャドウゴブリンシーフ。
シャドウ系でジョブ持ちゴブリンとか、シルヴィアちゃんのレベルにかかれば完全に誤差だったね! 1メートル刻みのものさしでは1センチも2センチも誤差なのだよ!
「ぐゥ……! お、のれおのおのれおのれオノレェ!」
そうこう喋り合ってると、急に様子の変わるマモン。
「うわ、何あれ」
「オノレオノレオノレ! オノレオノレオノレェッ!」
……様子が変わったってレベルじゃない、何かこう……取り付かれたようにキレてる。
そして自らのキラッキラの服装をガリガリと掻きむしる。
豪華絢爛って感じのどこの人間の貴族から奪ってきたかわからないような服が、ビリビリと破れる。
私はそこで、ビーチェさんの発言を思い出した。
———服装の趣味が変わった。
その服装を、自分で破っている。
今思えば、登場したときのセリフも何かひっかかる感じだった。
マモンって、こんなに傲慢だったかなとか。
今のマモン、完全に憤怒に染まってるなとか。
どうしても一度気になり出すとまともに見れない。
……なんだろう。
なんだろうこの違和感。
ステータスを見た。
ステータスはマモンだった。
間違いなくマモン本人だと思う。
だけど……。
どうしても、私はこう思ってしまう。
……こいつは、本当に、マモンなのか?
こういう時に頼るのは……もちろん、我らがリーダー!
「シルヴィアちゃん」
「はい」
「こういう時に頼りになるシルヴィアちゃんに聞くよ。……あいつ、正常な判断力あると思う? ないとしたらどうやって調べたらいい?」
「きゅうけいさんが自分のことを聞いてみたらいいんじゃないですか? ビーチェさんが最初分からなかった以上、きゅうけいさんって眷属と同じ姿だけど先代ベルフェゴールの生き写しではないようです……が」
ビーチェさんが私を一目で見て分からなかったってことは、ビーチェさんが全くベルフェゴールに会ったことがなかったというありえない可能性を除いたら、どうやら見た目は違うんだ。
「それでも最初は『ベルフェゴールの眷属』だと分かったということは、マモンがきゅうけいさんを見ても、少なくともベルフェゴール本人とは分からなくともベルフェゴールの眷属だと分かるはずです」
……あ! なるほど、確かにそうだ!
「さすがリーダーのシルヴィアちゃん! 行ってくる!」
「まさか、あなたは……いえ、あなたが出来ると判断したのならできるのでしょう! この村を……よろしくお願いします!」
背中にシルヴィアちゃんの力強い声援を浴びて、勇気九京倍!
私は一気にマモンとの距離を詰める!
「オノレオノレオノレ! この! このワタクシが! このワタクシこそが! あのようなルシファーなんぞに! ベルフェゴールのヤツなんぞに!」
うおおいきなりベルフェゴールに恨み節だ!
どんだけ先代恨み買ってるんだよホントいい加減にしろ!
「どうどう! こんにちわマモンさん!」
「なんだ! なんだ今度はあああ安いッ! 見るからに安っぽい魔族だなお前はアアア!」
「最初に会ったときともうキャラ違う! キレキャラになってる!」
あまりにもキャラが違いすぎてツッコミが頭より先に口で出ちゃうよ! どうしちゃったんですかマモンさん! かなりヤバイ人ですよ!
「あああお前お前どこの魔族だ! 鎧は金になりそうだな金になりそう金だ金は俺のものだ俺の俺の俺の!」
ちょっとちょっと一人称が変わってるよ、本当にどうなって———
「寄越せェ!」
「———うわっ!」
ちょっと考えているうちに私に飛びかかってきた! しかしぶつかる瞬間、私の体感速度が一気に加速する。もちろん、意識の急加速だ。
そりゃまあ私ってばレベルきゅうけいさんですし! その程度の攻撃なんて当たってやらないですよっ!
……しかしこいつはやばい。殴り方が無差別でこのレベルじゃ、他の友人にとばっちりがいったらちょっとヤバイ。
それにもはや疑うまでもなく暴れ方が半端なくおかしい。何か、こう、マモンを構成するはずのモノが別のモノに置き換わってるか、見えなくさせられているみたい。
……うん。
今自然に『別のモノに……つまり別人になってる』って思ったね私。
そうなんだ、こいつはやっぱりおかしい。恐らく、マモンはこんなやつじゃない。ビーチェさんの話、シルヴィアちゃんの話、そして私の印象。
全てがマモンに対して、これはマモンじゃないって言っている。
じゃあ何だ?
『心の病気』
そうだよね、エッダちゃん!
本当に、あの一言は私の不可能の境界線を飛び越えた!
病気に使うのは当然……
「薬しかないでしょ! 【クリエイト:クリアエリクサー】!」
私は、クリアエリクサーを手元に作り、そしてマモンの口に押し込む!
こいつもこいつでぎゃーぎゃー叫んでくれて飲ませやすいね!
———さあ、液体よ流れろ!
私が集中した意識を戻すと、液体が流れていくのが見える。暴れるマモンの体を羽交い締めにする。
そして液体を飲み干すと……マモンはやがて力を抜いた。
眠っている……これは、やっぱりビーチェさんと同じパターンだ。
ちょっとはたいてみよう。レベルはもちろん9999で。
「……ん……?」
「おはよーございます」
「……何、です? あなたは……ここは……ワタクシ、一体何が起こって……ハッ!?」
マモンが、自分の服を見る。
そして見る見る顔を青ざめる。
「あ、ああ……あああっ! 折角の人間の高価な服が! 一品モノの、こんな、保管して飾るために手に入れた貴重な服が破れている!? あ、あなたがやったのですかァ!?」
「いえ、自分で引っ掻いて破いたんだけど、記憶にない?」
「……な……!?」
「だって、あなたは今までの記憶ある? この服着た記憶は? 自分の服が破られた瞬間自分が何をしていたか記憶は?」
マモン、目を泳がせる。私の指摘に、明らかに狼狽していた。
……やっぱりそうだ。
クリアエリクサーを使ったから確実。
中身、こっちが元のものだ。
「ところで……あなたは一体? 見た限りベルフェゴールの眷属のようですが……ベルフェゴールの眷属に生き残りがいたと知れば、彼女も鏖殺女帝なんて呼ばれることもなかったでしょうに」
鏖殺女帝!?
もうこれ以上悪評を昇天フェニックスMIX盛りしないで!?
そのうち先代の悪事聞くだけで私が胃痛で死ぬよ!?
「え、ええっとだねー……マモンさんの敵ではないかどうかはまだ分からないけど、あなたの知ってる人ではないよ。見た目も違うはずだし……【ステータス】」
私は目の前にステータスを出す。そして……やっぱりマモンもその表記を見て顔色を変えた。
「べ、べべベルフェゴ」
「べつじん〜〜〜! べつじんなのぉ〜〜〜!」
もうここまで先代の話題を畳みかけられていた私のメンタルは、相手の反応が来る前に叫んでしまった。
だって! だってだよ!
私じゃないじゃん! 関係ないじゃん!
完全に赤の他人じゃん!? もーいいでしょほんとマジ迷惑ばかりおしつけやがって先代討伐してやるーっ! ああもうされてたんだったチクショーッ!
「……え、ええ? っと、もしかして、あなたは」
「に、二代目です……誰に話を聞いても先代ベルフェゴールに悪い噂しかなくてかなり泣きたい……」
「……そ、そう、ですか……ですよね……だってあの女帝ですものね……」
よっぽど同情してもらえたのか、すっかり肩に手を置いてうんうん一緒に頷いてくれた。
そして、さすがにここまで来たらわかる。
ナリキンマンことマモンさん、普通だ。
性格あんまおかしくない。
「ところで、ここに来るまでのことは覚えてる?」
「……正直全く……」
「じゃあ、古竜とか皆殺しにするとか言ったのは?」
私がそのことを突っ込むと、驚いたように立ち上がった。
「そんな、ありえない! 全員殺してしまったら次世代の古竜が生まれないじゃないですか! 成体以上にその老体が一番大きくなり、死骸からでも極上の角と牙と爪と鱗と骨が取れるんです。大きければ大きいほど価値が高い……! ドラゴンステーキなんて一時的な金にしかならないものより、死骸を奪ってバラす方が討伐されるリスクも少なく長期的にも利益になるんですよ!?」
……お、おおお!
言ってることが全然違う!
全然違うけど!
めっちゃマモンっぽい!
ああ、やっぱこっちがマモンさんなんだ。
「じゃあ、マモンさんはマーメイドに『貪欲の吐息』を使って操っていたことは知ってた?」
「な……! そんなこと、は……いや、できないこともないのか、今はレヴィアタンもいないし……いや、いつからいなかった……?」
「あと……これ言おうか迷ってますけど、筆頭眷属のゴブリンキングがマーメイドに手を出して反撃に遭っちゃって」
「……ああ……そういうことなら仕方ないですねぇ……。女の価値も、ゴブリンに襲われた経験があるようでは落ちてしまいますからね」
どこまでも価値絶対主義だけど、筆頭眷属が殺されてこれってかなり心広い魔王様なんじゃないでしょうか。
「……ワタクシはそれこそずっと引きこもっていた筈なんですがね……」
「それに関しては少し予想できはするんですが……取り敢えず一つ」
「ん? 何ですかね」
私が何か喋ろうとしたら、シルヴィアちゃんが近くに来た。
「きゅうけいさん」
「え、シルヴィアちゃん?」
「レーダーとリリースを」
なっ……!
リーダー、これから何か起こるって、予感している……!
「わかった……」
私は心の中で【レーダー】【レベルリリース】を使う。
これで大丈夫。
「……よし、お待たせしてしまい申し訳ないですマモンさん」
「ええっと、はい。まさかあのベルフェゴールにこんなに丁寧に対応されるとちょっと困ってしまいますね」
「マジでただの他人だからね? で、質問なんだけど……マモンさんは竜族の村に手を出すなって言ったら出しませんか?」
「元々出すつもりないですよ、そもそもリターンが期待出来なさすぎます。金目のもののために人間じゃなくて竜を狙う魔族なんて危険管理意識が壊滅的ですし、大量に供給があると単価が下がる。価値を分かっていない本当の馬鹿です」
そう言った瞬間……!
「———ハァッ!」
私は、再びスピードアップして、ショートソードを抜いて構えた。
カン、という音とともに、矢を跳ね返した。向こうの方には……どこから出たかボウガンを持ったシャドウオーク。
「……! 今のは!」
私はマモンさんの声に返事をすることなく、オークと……蠅をブッ叩いた。
両方ともレーダー反応消失。
そして……剣で跳ね返した矢が後ろのゴブリンに刺さると、ゴブリンは急に膝を震わせて体力不足であるかのように地面に倒れ伏した。
それを確認すると、マモンさんのところに戻った。
「今のは『暴食の呪い』のついたボウガンだろうね。それとベルゼブブの蠅がいたよ、あれで偵察……偵察っつうか盗撮と盗聴という嫌な行為、してるわけなの」
「盗撮と盗聴……! そういうことか! だからあいつ、あんなに情報通なのか……!」
「マモンさんも、一切信用されてなくて……予想ですけど、完全に『傲慢の吐息』『憤怒の吐息』使われてましたね。すごい傲慢でブチ切れてましたもん」
「……!」
そのことを指摘すると、マモンさんは少しふらふらしながら視線を彷徨わせていた。しばらく茫然自失としていて、ある程度落ち着くまで待つことにした。
大丈夫そうかなと私が声をかけると、少し弱々しくもこちらを向く。
……被害者、なんだろうな。この人も……。
「マモンさん」
「……何でしょうか」
「先代のベルフェゴールにいきなり要求をされてるのを知ってるので、今代のベルフェゴールとしてこうやっていきなり極端な要求するというのは心苦しいのだけど」
「……」
「でも、どうしても……お願いを聞いてほしいの」
さあ、これが本命だ。
「私、人間の味方になって、竜族とか、エルフとか、そういうみんなの仲間になろうと思うんです。……あなたも、私と一緒に人間の味方になってくれませんか?」
マモンさん、目を見開いて私の顔をまじまじと見る。
時間とともに少し落ち着いた様子になり……
「……先代に比べると、まるで何もかも別人ですね。実のところ先代は私も苦手でね……だから、いいですよ」
「ほ、ほんとに!? あと、友達とかなりたいんだけど!」
「友達!?」
「友達! もう私、立場とか魔王とかどうでもいいんで! そんなことよりたくさん友達ほしいの!」
マモンさんはさっき以上に驚いて……そして笑い出した。
「ははははは! いいですよ! 今までベルフェゴールとは付き合いもありましたが、友達という形式が希望なら友達になりましょう!」
「ほ、ほんとに!?」
「ええ! まったくどこの誰ですか、こんな変な魔族をベルフェゴールにした人は! 今日は嫌なことだらけかと思いきや最後の最後で最高ですね!」
こうして、今日は『貪欲の魔王マモン』が新しい友達になった。






