きゅうけいさんは当然お風呂大好き
5/25内容に大幅に手を加えました。
私たちは、ちょうど晩のいい時間でお腹が空いたので食事を取りに行った。行き先は、すっかりおなじみの食堂。
ビーチェさんは初めての料理にとっても感動していて、それはもうたくさん食べていた。んふふー、私が味付けとか先生役やったんだよー。今だから言えるけど指導役とか緊張でドキドキものでした。
食堂のおばちゃんも、トゥーリアさんレベルの美人さんが、シルヴィアちゃんのパーティ加入ということで、記念だと嬉しそうにたくさん出してくれた。
まあシルヴィアちゃんと私は、一緒に「やっぱりあれだけ食べても」「全部……」と、ビーチェさんの胸を見て唸っていて、ビーチェさんに不思議な顔をされた。
トゥーリアさんもエッダちゃんもわかっていなさそうな顔をしていた。こ、これが持たざるモノとの違い……!
次は私、レヴィアタンに転生するよ。レヴィアタンに転生して、思う存分自分の眷属のおっぱいをもぐよ。
あ、でもゲームのレヴィアタンめっちゃ胸おっきかったね。
おなかもいっぱい、5人で屋敷まで戻ってきた。
もちろんビーチェさんも一緒だ、仲良くいこう!
これからパーティに入るのなら一蓮托生だよね!
「ところで、あの……」
ビーチェさんが言いにくそうにもじもじしている。
「どうしたの?」
「私、住む場所ないんだけど、どうしようかなって……」
「なんだそんなことかい」
トゥーリアさんが、会話に入ってきた。
「元々こっちのきゅうけいさんもエッダも、あたしのところの居候だよ。でっかい屋敷だからさ、あんた一人入れるぐらいなら余裕だって。ただちょっとベッドはないんだけどな……」
「あ! それでしたら」
ビーチェさんが、自分の寝どころと聞いて声を上げた。
「お風呂はあるでしょうか! ありましたら寝ることはできます!」
……そっか、そもそも人魚なんだった。
私の記憶の中でわざわざ人間形態になっていた記憶はないから、そもそも普段から水の中で眠ることが出来るんじゃないかなーっていう当たり前のことだ。
「ああ、テルマエがあるぞ」
「って、テルマエ!? 大浴場があるんですか!?」
「えっ!? きゅうけいさん?」
公衆浴場。
その単語を聞いて、日本人休憩大好き女子は飛び跳ねた。
「なんで言ってくれないんですかぁ!」
「え? だってみんな生活魔法を使っているし、ていうか大罪の魔王とか体洗うの必要ないじゃないですか」
「おふろはー! おふろはいやしなのーっ! やだやだはいるのぉーっ!」
わがまま魔王様爆誕!
私はおふろに入りたいあまり、ちびっこみたいに床でじたばたした。
シルヴィアちゃんもエッダちゃんも呆気にとられてたけど、ぽかぽかおふろは絶対ゆずれないの! ふかふかおふとんぐらいゆずれないの!
「え、えええ……? いやあの、いいですけど……」
「ほんとっ!?」
ぴょんっととびはねて復帰!
現金な反応で周りは目を白黒させているけどそんな場合じゃない!
おふろ!
「ま、まあ減るモノでは、ないですし……。でも本当に珍しいですね」
「温かいお風呂に浸かると、気持ちいいじゃないですか! 気持ちいいのは何よりも優先されることなんです!」
「はあ……」
私はそのお風呂の良さを力説した。
それはもうばりっばりに力説した。
あの体に浸かった瞬間の「あ〜」っていう感じとか。
体を洗ったときのさっぱりした感じとか。
温泉に浸かりながら飲むお酒とか。
「待って?」
ぴくりと、トゥーリアさんが反応する。
「湯に浸かりながら、酒?」
「そうですっ! あのですね、こう、お椀の中に酒の瓶とグラスを入れて、倒れないようにして、静かな波打たないお風呂に浮かべながら、夜の月を眺めながら……そうですね、この辺りだと、キリッと辛口の白ワインが冷えたモノを、ぐびっと……!」
トゥーリアさん、さっきまでの様子とは大幅に違う反応。
「いい……いいぞ! それやばい、絶対うめーわ! そうか、屋外テルマエで冷えた酒を浮かべて一人で飲むのか、なんという贅沢だ……!」
やった、めっちゃ好感触!
「あ、もちろん浴槽に置いて一緒に飲みながら語らうってのもいいですよ!」
「きゅうけいさんは、風呂の入り方に詳しいなあ……!」
「もちろん! ベルフェゴールは全ての休憩たりえるものに対して詳しいのです!」
ロッキングチェアの心地よさはつい最近知ったけどね!
「いやはや、これは本格的にあたしも怠惰にやられそうだ。でもきっと、本当に呪いのようにダメになることはないと確信しています。そこはもちろん信用していますからね」
「わわ……えへへ、ありがとうございまっす!」
すっかりトゥーリアさんとの好感度も上がっちゃっててびっくりした!
私はトゥーリアさんからそこまで信用してもらえてたとは思わずガッツポーズだ。やっぱりおいしいごはん効果が強かったかな?
「そうと決まれば、今日は道場も終わったんだし、早速テルマエを用意しよう!」
「用意させるって、専用の人がいるわけじゃないんですか?」
「いいや、村の中では誰かが代わりに出来るほどの魔力もないので、水を入れて暖めるのはあたしがやってますよ。その方が効率いいですから」
おお、道場のみんなのためにお湯を作るトゥーリアさん、さすがというか、そういうのってかっこいいよね!
下働きの人に任せるんじゃなくて、最強で長の娘のトゥーリアさん自らねぎらってあげるというの。
道場の子ら、嬉しいだろうなあ。
「トゥーリアさんって、最初は妹好きの美人! って思ったんですけど、ビシっと決めるところが決まってるというか、かっこいい人ですよね」
「えっ!? と、突然だな? いやあその、きゅうけいさんに言われると照れるな……へへ、ありがとう」
「どういたしましまして!」
トゥーリアさんは、トゥーリアさんが思ってる以上に、みんなのかっこいい道場主だよ!
そしてシルヴィアちゃんは、トゥーリアさんを褒められると自分のことのように喜んでて、ホントにいい姉妹だなって思うよ。
と思ったんだけど。
「お姉様。テルマエ、ちょっと汚くない?」
「やっぱり……そう、思う……?」
「これだと、ちょっとその、病気とかカビとか? なっちゃうでしょ」
「うう……分かっているんだけど、調整が難しいというか、洗う魔法もイメージ力が非常に必要なんだが……恥ずかしながら、細やかな仕事にはあまり自信が……」
トゥーリアさん、肝心なところでぽんこつだった。シルヴィアちゃんに指摘されて、ちょっぴり涙目。
でもそんなところも魅力というか、このキリッとしている最強お姉様がぽんこつ涙目おねえちゃんになっちゃうのも、ギャップ萌えっていうか超かわいいです!
ずるい!
しかし汚いのはダメだ。なんといってもビーチェさんが、困ったように嫌そうな顔をしている。
多分、本心としてはめっちゃ嫌なんだろう。だけど泊めてもらっている手前、そう大きく出られないというところじゃないかな。
よし、こんな時は!
「ねーねー、ちょっといいですか?」
「きゅうけいさん? どうしたんですか?」
「私、洗いたいです! おふとんみたいに、きれいきれいしたい!」
「……! よ、よろしいのですか! 確かにきゅうけいさんの洗った毛布の綺麗さといったら素晴らしいものでしたが」
「もっちろん! 私も入るんだから気合い入れちゃうよ、任せてくれたまえでございます!」
私は気合一発、「【ウォッシュ】!」と叫んで風呂場を凝視した。それはもう、おうちの隅々まであの汚れをこそぎ落とすあの感じ、ぬめりを取る感じ、そしてカビを殺菌するイメージ映像!
……あのCMの綺麗になる映像ってただのイメージ映像だっていうことなの最近まで知らなかったよ。びっくりだよ。庵奈に言ったら「もーきゅうけいさーん、漂白剤とかーあんな映像みたいに白くなるわけないでしょー、おもしろいなー」と呆れ気味に笑いながら言われちゃったけど!
だけど今日は、その映像のとおりに綺麗にするつもりで! 綺麗にしまっす!
視界のテルマエをじーっと見ながら、黒い部分を真っ白にするように。
大丈夫、これでもご近所の出来たて銭湯やモデルハウス、新築のお風呂のCMなど沢山見ている。白いお風呂をイメージするのは、難しくない。じっくり、じっくり……。
……やがて、そこには接合面も真っ白になった、ぬめりも黒カビもなにもない、新品同様のテルマエが広がった。
「す、すごい……! すごいすごい! 人間の建築担当に作ってもらった当時のような綺麗さだ……!」
「こんなに綺麗だったのね……」
「ああ、シルヴィアは出来た当時のものは知らないだろう。真っ白の継ぎ目は、もうイメージしようと思っても全く魔法に反応しなくてな……」
私はそんな二人の会話を無視するように、次の魔法を発動する。
ガン無視である。
だってね、だってね!
このテルマエ、すっごいの!
なにこの建築美術? 映画セットか何か?
めちゃくちゃ綺麗!
ゴーッジャス〜ッ!
大きさはね、街の銭湯ぐらいなの。
それはもう道場の門下生のみって感じだからね、仕方ない。
でもね、でもね……建築が完全にヨーロッパのそれ。
だからもう、ホントに映画のセットみたいで。
私はね、こんなものを見せられて……我慢できません!
(【ホットウォーター】)
お湯よ出ろ出ろ……たっぷりたっぷり……。
「あ、きゅうけいさん、お湯まで……」
「待ちきれませんから!」
「その、何から何までやっていただいてなんと感謝の言葉を言ったらいいか……」
「なーにいってるんですか! こんな素敵な大浴場を使わせていただけることに比べたら、雀の涙ほどの魔力消費なんてどうってことないです!」
私はお湯をしっかり出しながら、ふとあることが気になった。
「あの、ビーチェさん」
「ええ! 何かしら!」
「これぐらいの温度がダメとかあったりします?」
「ふふ、ないよ! そもそも多少の炎攻撃程度なら余裕で防げるレベルなんだから、お湯くらいじゃやられないし、むしろ大好き! それよりも……本当に綺麗になって感動! こんなに立派な浴場だったなんて……!」
「うん! 私もめっちゃ楽しみだよーっ!」
そして、広い浴場にたっぷりお湯を出し終わった。
「できたー! はいるぞー!」
私はもう、装備解除で一気に服を脱いだ!
そして下着っぽいやつも、脱ぐ!
「うわっ!? きゅうけいさん!?」
「一番いきます!」
ひさびさおふろは、まちきれない!
私はそのまま浴槽の近くに行って勢いよく!
……もちろん掛け湯します。
「あ、その辺は丁寧なんですね」
「休憩時間に関わる全てのマナーは分かっておりますから!」
「本当になんというか、徹底してますね……」
私はそんな会話をしながら桶でお湯を体に…… 温かさがじんわり来る! 自分が入れたお湯だけどこれは気持ちいい!
そして足を入れて、じわっと熱さが伝わってきて……
膝、腰……!
そして肩から首まで……ッ!
「っくゥ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
快感!
きもちいいぃぃ〜〜〜っ!
すっごい贅沢!
広い空間、円形に広がる大理石の誰もいない浴場。
透明のお湯がきらきら波打って、天井に反射して輝く。
ちょっぴり天井開いてて、屋外から、爽やかな風が顔に当たる。
石の感触が、お尻から肘を置いた場所まで、気持ちいい。
貸し切りモードの視界。映画セットを独占する贅沢。
現実世界では条件も場所も到底合わないような入浴。
し、しあわせぇ〜……。
もおおっ、こんなにいい大浴場があるのなら、もっと早い段階で入っておけば良かった!
こんないいものを黙っているなんて、トゥーリアさんも悪い人だよぉ〜っ!
「ふふ、ほんとに気持ちよさそう」
あっ、ビーチェさんも来た。
もうなんというか、美しいのなんの。
文字通りお姫様に同席させてもらってる感覚。
「めっちゃきもちいい!」
「そうね、こんなに素敵な大浴場だったなんて思わなくて。っとそうだ、【マーメイドフォーム】」
おおっ、ビーチェさんが素敵な人魚姫さんになりましたっ!
その様子を見て、後ろから声がかかる。
「ほお……なるほど確かに人魚なのだな。しかしこうやって見ると……本当に、お前は美しいなあ……」
「え、トゥーリアさん?」
「ああいや! 他意はないんだ、はは……。……その、な。今まで魔王の眷属ってだけで会話を諦めていた存在がこのようなマトモに喋れる美人だとは思わなかったから、むしろフォームチェンジすればお前さんよりよっぽど人間離れしてるあたしらなんて、随分と得な生まれだったなって思っちまってよ……」
トゥーリアさん、自分の生まれとビーチェさんとの差に思うところがあるみたい。
それは確かに、私も思ったことだったし、ビーチェさん自身も言っていた。
こんなに綺麗なのに、大罪の眷属というだけで怖がられるなんて。
「でもきゅうけいさんがいないとそんな判断できなかったですよ。確かに今は、こんなに綺麗で話しやすい人とは思わなかったから馴染んでますけど」
おおっ、シルヴィアちゃんがワンピを脱いで……脱いでます!
脱いで入ってますありがとうございます!
……世界に感謝したい! この美少女の美しさを……!
「あっ、私も入りますっ!」
そしてエッダちゃんが……! エッダちゃんが入ります!
……すごい、脱いだエッダちゃんやばい……ちょっとこれマジでしゃれになってないやばい……。
肌がチョコレートなだけに、こう……浮いてるのがすっごくわかる!
「……」
「……」
あ、私とシルヴィアちゃん、お互い目を合わせてる。
分かる、分かるよ……あれはね、勝てない……。
この場で最強なのはレベル140。これはもう共通認識。
ビーチェさんもすっごくセクシーな大きさだけど、元々の身長があるからそこまでのインパクトはないかなーって感じだ。
エッダちゃんでこのレベルなら……トゥーリアさんは……!
……って、トゥーリアさん?
「あ、きゅうけいさん。お姉様なら喜々としてお酒取りに行きましたよ」
「まだちょっと明るいのに!?」
「今日はもうぐでんぐでんによっぱらうんじゃないんですかねー?」
お、おねーちゃん……。
でも、そんなちょっぴり残念美人なところも、かわいい!
トゥーリアさんも、かわいい魅力たっぷりだね!
……ふと、とある懸念事項に気付いた。
ビーチェさんを知って連想したことだ。
「あの、ええっと、ビーチェさんいいですか?」
「ええ、何かしら」
「その……ヒューマンフォームって……もしかして、眷属みんなできたりしますか?」
「みんなはできないわね」
……おお!? 即答された。
「そ、そうなんだ」
「そもそも我々筆頭眷属というのは、別に筆頭眷属という特殊な種族じゃなくって、魔物や魔族が、強かったため選ばれたという感じなの」
あ、じゃあ横並びってわけじゃないんだ。
「特別強い存在、ではあるのだけど……だからそれぞれ、大幅に違うの。一名ずつ紹介しよっか?」
「是非!」
私はそれから、ビーチェさんの筆頭眷属の話を聞いた。
「まず、ケルベロス。あいつは完全に魔物だよ」
「そうなんだ、よかった……もう既に滅ぼしてたからなあ」
「えっ!? 筆頭眷属の中でもあいつかなり強いよね!?」
「ちなみに私がサポートしたとはいえ、トドメを刺したのがシルヴィアちゃんだよ。倍のレベルがあっても倒せたんだから、古竜のドラゴンブレスってすごいよね」
「な、なんと……やはり竜種最強は伊達ではないわね……」
「あっ、その、ありがとうございます……」
うんうん、シルヴィアちゃんは可愛らしく照れてるけど、本当に竜の姿の時はかっこいいのだ。
しかしケルベロスは分類としてはマーメイドとは全く違う魔物なんだ……と思ったけど、三つ首の人間になられても確かに困るね……。
「ユニコーンは、人間にはなれないわ。ケルベロスとともに魔物の延長線上ということ。スライムとか、ワイバーンとか、ああいうのね」
「ユニコーンって違うの? 神獣みたいな」
なんとなく、そういう神聖なイメージがあった。
こう、女神様に付き従う的なやつ。
「いやいや、一番ヤバイ奴じゃない」
「そうなの!?」
「元々女性の敵だけど、憤怒の筆頭眷属となったことですぐキレる奴になってたのよ。男と非処女は角で惨殺、処女は即犯すわ」
「……え? ええっ待って!? いや、処女は即自分のモノって……でもそれじゃあ処女じゃなくなるじゃん」
「そうよ。犯した後殺すの」
「皆殺しじゃん!」
「だからさっきから一番ヤバイ奴って言ってるじゃない。ユニコーンが出向いた後は村一つ穴が空いた死体で埋め尽くされて壊滅だよ」
ゆ、ユニコーンってそんな生き物だっけ……?
もっと、こう、白くて青くてきらきらーっとしたイメージがあったんだけど……違うユニコーンなのかもしれない。
それともそんなに詳しいわけじゃないから、実際そうなのかも……。
「ちなみにアスモデウス様が殺したわ」
「ってもう死んでるの!?」
「だってアスモデウス様の眷属と会合で目が合った瞬間に殺しに行ったもの。サタン様もそれを聞いて『色欲が憤怒に染まったな』って笑ってたわ」
ああー……まあ、うん、そりゃそーなるわ。
どう考えてもユニコーンと色欲の眷属がまともに絡めるわけがない。
ちなみに説明すると、アスモデウスはえっちなことの大悪魔で、眷属のサキュバスはえっちしないと死んじゃう魔族で、ユニコーンは処女以外惨殺する魔物。
いやー絶対無理だねこれ。そもそもそんなの筆頭眷属として連れてくるなっつー話ですよ。
「傲慢の筆頭眷属のグリフォンは人間になれるわ」
「そうなんだ」
「そもそもあんまり傲慢な性格じゃないのよね。……ふふっ、きゅうけいさん、絶対仲間にしたいって顔してる」
「もちろん! それを聞いただけで興味津々です!」
グリフォンは昔から、いろんな旗や勲章とかになってるよね。幻の生物系でもかっこいい印の一つってことでなじみ深いけど、なんで傲慢なんだろ。たまたまルシファーに捕まっちゃったかな?
「貪欲の筆頭眷属ゴブリンキングは……強いゴブリンなので、元々人型だけど会話はできないし、まあ……乱暴だよね」
「小さい女の子限定でひどいことする魔物なんだっけ」
「あと武器やお金とか取ったりね。それがそのまま滅茶苦茶強くなってしまったのがゴブリンキング」
うーん、文字通り悪い魔物の超強い版って感じ。
そりゃ出てきたら大騒動だなあ、見つけ次第討伐しなければいけない。
「色欲の筆頭眷属サキュバスクイーンは、言うまでもないよね」
「やっぱり、その……えっちなの?」
「もちろん。見た目はとても背の高くて胸の大きい美女ね」
「会話はできそうだね」
「出来はするけど……本来ベルフェゴール様にも色欲の要素が備わってるのに、先代はとにかくめんどくさがりでそういう話全部蹴ってたにもかかわらず、いざとなったら人間とは性交せずに皆殺しにしろとか言うからアスモデウス様とは仲悪かったわね」
ねえ先代マジでなんなの?
もうちょっと積極的にさあ、みんなと仲良くなる努力とかしようよ。これじゃ誰も味方にならないよ。眷属ぐらいだよってそういう奴なんだった。
私これアスモデウスと今更仲良くできたりするのかな? あとサキュバス一族とか。出会う前から印象最悪で話聞くだけで心折れそうなんだけど。
……もしかして、大罪の残り六魔王、ベルフェゴールが嫌いだから死んだ後に領地に戻ったとかないよね……?
しかし本当にすごい情報だ。凄すぎて、隣のシルヴィアちゃんもエッダちゃんもびっくりしている。
筆頭眷属の詳細な話なんて、筆頭眷属を仲間にしなければ絶対分からなかっただろうね。本当に友達を諦めなくてよかった。
「会話できそうな魔族なら、ほぼ確信を持って味方に出来そう」
「今のビーチェさんを見た限り、十二分にありますね、これ」
私とシルヴィアちゃんが盛り上がっていると、ビーチェさんが「あ、でも」と付け加えた。
「眷属だった場合はわからないよね。私はもうレヴィアタン様が滅んでいたし、そういうのは前例がないから」
「ああ、なるほどなあ……」
簡単にはいかなさそうだけど、こうやってマーメイドが仲間になったんだから、やってみる価値あるよね!
「というか」
「ん?」
「ベルフェゴール様であるきゅうけいさんは、人間形態になるフェニックスの所在は知らないの?」
「あっ、ベルフェゴールの筆頭眷属か。うーん、知らないよぉ。そもそも私がこの姿になったとき、眷属ゼロで突然ルマーニャ近くの山の中にいたんだもん」
あ、三人とも驚いてる。
ってこの話初めてだから当たり前か。なんだかどこかでばれそうだけど……まあここまできたら、話してもいいかなーなんて思ってたり。
でもさすがに信じるにしてもしないにしても、ちょっと世界が遠い話すぎてどうしようもないし、まだまだ保留ってことで。
「そう、なのね。フェニックスは……フェニックスは輪廻の象徴で不変ではあるのだけれど、その……怠惰で滅び好きではなかったので……」
「あ、フェニックスさんはそうなんだ」
「先代ベルフェゴール様は、優秀な筆頭眷属であったフェニックスに対して驚くほど興味なさそうだったわ。最後の方は隷属の強制力を使ってフェニックスに虐殺命令していて……なのでその、先代が滅んだ後は真っ先にどこかへ消えたはずで……」
「ええ〜〜〜っ!?」
先代〜〜〜っ!
ほんっとろくなことしてないな先代〜〜〜っ!
「はぁ〜っ……それじゃあフェニックスは」
「見つけてもちょっと説得は難しいかもね……」
参った、これは課題だ。
でも……諦めないぞっ。
人間形態になって、ちゃんと会話出来る自分の筆頭眷属、絶対いい子。
というか先代と私の考えが合わないし、絶対良い子。
うーん……私以外の説得とかなら聞いてくれるかな?
「ねえ」
「はい?」
「私が敵の攻撃を防ぐのサポートするとして、フェニックスを説得してくれって言われたら、みんな協力してくれる?」
三人はそれぞれ顔を見合わせて、そして私の方を見てくすりと笑った。
ん、んん?
「何ですかソレ」
エッ!? なんだかシルヴィアちゃんに、笑いながら変なツッコミをもらった。
「いやいやきゅうけいさん。私があなたにどれだけ救われたと思ってるんですか」
「そうですよぅ! きゅうけいさんが助けてほしかったら、ぜーったい、協力しますぅ!」
「冒険者パーティとしてはあたしがリーダーだけど、実質上はこんなに異種族を集められたのは、『異種族友の会』の名付け親であり、その名付け理由のとおりの活動をしているあなたを中心に集まっているからですよ。だから」
シルヴィアちゃん、私の頭をぽんぽんと叩いて。
「もーほんっと何それって感じ! 今更ですよ、あたしたちみんな、あなたのやりたいことについてくだけで楽しいんですから!」
……そんなに、私のことを……。
……こんなに……。
こんなに、私の友達って、頼りになるんだ。
友達……なんて心強い!
「ありがとう……! 私、やるよ! もうね、この世界の友達にできそうなの、全部私の友達にしちゃう勢いで頑張るよ」
「大きく出ましたね!」
「それでこそですぅ!」
「できそうな気がするわ!」
「そうだな! それでこそきゅうけいさんだ!」
「いやー、アドバイスが効きすぎて嬉しいよー」
ん? 何か多くない?
「って、トゥーリアさんとレジーナさ———っうおおおお!?」
でっか!
でっっか!?
トゥーリアさんはもちろん、レジーナさんも着痩せってレベルじゃないですよそれ!
「さーて、友達記念にさ! きゅうけいさんのオススメの飲み方、いってみようか!」
「話聞いたらもー我慢できなくって、楽しみすぎてついてきちゃったよー」
というわけで……おお、水風船が、2個から6個……ほんとに例外なく浮かぶんだ……。
「ビーチェさん、お酒はいけるクチ? って飲んだことないよね」
「ええ。いただけるの?」
「もちろんだ! 飲んでみよう、何事もチャレンジってな! 仲良くなった記念だからあたしがおごるよ」
「まあ! 嬉しいわ!」
それぞれの種族から集まった、それぞれの立場だけど。
こうやって集まれて、みんなで意気投合して。
私たちは暖かな大浴場に浸かりながら、絆を深め合った。
ちなみにビーチェさんは、すっごい笑い上戸でした。






