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きゅうけいさんは休憩したい!  作者: まさみティー
アフターストーリー
220/278

きゅうけいさんは覚えている人と祝う

 質問コーナーといっても、シルヴィアちゃんとエッダちゃんはほとんど一緒に旅し続けていたわけだからね。

 だから必然的に、質問の内容は——。


「なるほどなるほど、日本はヤマトアイランドと似ているけど沢山の国の文化を大規模に輸入したから、ルマーニャだろうとエイメラだろうとバーロンだろうと料理は知っていると」

「そういうこと。ヤマトアイランドのような光景は、数百年ぐらい前かな?」

「興味を惹かれますね……」


 日本の話となりましたとさ。


 弥々華さんの国の生まれであるというふうに以前は説明したけど、そこからシルヴィアちゃんはひとつ疑問を持ったらしい。

 ヤマトアイランドの生まれであることを予測し、ヤマトアイランドの文化を知っていて馴染んでいる。間違いなくヤマトアイランドの生まれ。

 しかしいざ私の異世界に戻ってみると、出てくる建物は四角いし、買ってきた物はケーキ。


 果たして私の住む日本はヤマトアイランドなのか、それとも違うのか。


「良いと思ったものは見境なく輸入していくし、でも変えたくないという人もいるし……そんなのがこちゃこちゃっと混ざっていった結果が私の国……というより、大多数の国かなあ」

「他の国も近いようなものなのですか?」

「多分ね」


 少なくとも近隣思い出しても、中国も韓国も、タイもベトナムもフィリピンも、基本的に洋服しか着てないはず。

 文字通り立体裁断の、洋という文字の文化からやってきた服だ。ポンチョみたいなのしか着てない国とか多分なかったはず。

 便利なモノはみんな使う、それが現代の在り方ですね。


 あとはもう、やっぱり人間だもの、好きなものには前のめりというか。

 イギリスで中華料理の店が出るのはそれが好きだからだし、日本がウイスキーの輸出国家として名を馳せるのも好きだから。

 それは日本酒が嫌いになったわけではなく、ウイスキーが好きになったからという話。

 だから空手を習う外国人が日本にやってきたりもするわけで。


 そして世界中に一気に広がったものといえば、シルヴィアちゃんが気にしたそれもひとつ。

 女の子の別腹、みんな大好きケーキである。

 ちなみに日本という国、世界大会でも上位常連国家のうちのひとつだそうです。


「ケーキ発祥の国じゃなくても、やっぱケーキおいしいと自分達で頑張っちゃうもんでね。世界中の国がケーキのおいしさと美しさを追求して、そしてケーキの国で競い合ったりしてるみたい」

「基本水準の上がる基盤が出来上がってるんですね……」

「さすがに私も上澄みの世界の味は食べたことないけどね」


 一度は行ってみたい、エンペラーホテル。確かそういうところで出してくれるはず。

 以前通販でエンペラーホテルの料理のレトルトを見つけたんだけど、ふつーに五桁の値段が並んでいて白目を剥きましたね……。


「おっ、きゅうけいさんがちょうどケーキの話をしてるねー」


 と、そこで庵奈がカートを押しながらやってきた。

 ……ん? 何もってきてんの?


「きゅうけいさん、起きたら何日になってたか、覚えてる?」

「それは、もちろん」


 数年ぶりに戻って、真っ先に確認したのが日付だ。

 そしてコンビニのケーキを二人に振る舞ったわけだけど、そういえばケーキとかお店で沢山並んでいるのも当然な季節なんだった。


「まさか……」

「こっちの世界の時間軸とか、気にしてもねー。私は私のやりたいように、今日これを食べるよー」


 庵奈がカートから開けたら出てきたのは……ごんぶとい茶色の丸太!


「イメージ魔法って面白いねー。元々木という意味らしいから、木っぽいイメージで固めてみたらほんとにチョコが木の形で固まったんだもん、笑っちゃうねー」


 庵奈がその端っこをすいすい切っていくと、そこには実に細かい年輪が現れる。

 その細い年輪はクリームであり、挟まっている木の一年一年がしっとりとした生地。


 そう——ブッシュ・ド・ノエルである。


「ふわあ……!」


 その見た目に、真っ先にエッダちゃんが食いついた!


「庵奈、こんなに料理できたの!?」

「基本的な再現ぐらいはねー。そんなに得意ってほどじゃないけど、生活魔法ってのが凄すぎ。あとはまーおいしいものを食べた量なら自信がありますので。わはは」


 そうでした。

 そもそも私、最初の料理は素材に助けられただけの大した出来じゃないリゾットでしたね。

 おいしいものの記憶を辿りながら料理を作っていった結果が今なワケだから、私よりおいしいもの食べてるだけの庵奈が料理作れないわけがないですね。


「……まさか、魔王って当たり前のようにあれぐらい作れるの……?」

「あたい、まおうってわからなくなってきたぞ……まおうってなんだ……?」


 ごめん人類最強の女子組、私と庵奈は魔王として何の参考にもならないので……。

 後は、魔王らしい魔王といえば……。


 膝枕で寝てる魔王。

 猫を乗せてる魔王。

 酒盛りしてる魔王。

 ちっちゃい天使。


 やっぱ私達を参考にしてていいです。

 魔王の標準はパティシエです。

 もう自分で何言ってるか分かんなくなってきた。


「というわけで、今日は私からお礼ね」

「お礼? 何かしてたっけ?」

「……そもそもきゅうけいさんが、私の十倍ぐらい仕事こなしてたから倒れたんでしょ。そういうの無自覚なの、よくないよ」


 あっ、そういえばそうでしたね……。


「まー助かったのは本当だから。あとは、そんなきゅうけいさんが自暴自棄になってこの世界滅ぼしたりしてないのは、周りのみんなのおかげでしょ」

「それはもちろん。人間に受け入れられなかったら、もう魔王側になるぐらいしかなかったね」


 魔王になっちゃったんだもんなあ。受け入れてもらうという意味では、魔王側だったらそのあたりは全くひっかかりなかったはずだし。

 本当に、ミーナちゃんの勇気を出した一歩と、シルヴィアちゃんの存在、そして私を怖がらなかったエッダちゃんがいてくれたから、なんとか保ってられたという感じ。

 最初に『置き去り』で一人になった時に、一人の怖さを思い知ったからね。


「というわけで、この作ってみたら大きすぎた丸太をみんなに食べていただこうということです。はいメリークリスマス」

「気が利くね」

「全部仕事抱えてたヤツがよく言うよ」


 軽口を言いながらもひとつをいただく。

 直径がでかいから、この丸太一枚でもすっげえ巨大で笑う。


「みんなも食べるー?」


 庵奈の問いかけに、そりゃあもちろん。


「甘い物は別腹ですから!」

「だよねー」


 こう答えましたとさ。


 というわけで、庵奈からもらったケーキを食べる……いやマジで美味いな庵奈のケーキ。

 なんていうか、標準的なおいしいケーキというのを通り越して、ちゃんとした『お店の味』がする。

 あとで教えてもらお。


「それじゃ私もメリークリスマス」


 最後に庵奈は自分の分を取り分けて、まだ半分以上ある丸太の皿に蓋をすると私の隣に座った。


「そろそろ今年もおわりかー。年始どこ行くー?」

「近所の神社で一番ひっそりしてるところかな。甘酒もらいに行って適当に初詣」

「わはは、じゃあ私も一緒に行こう」


 フランスの洋菓子でキリスト生誕を祝いながら、日本神道の神々の話をする。

 これが日本人の標準である。


「元旦、何願うー?」

「そりゃあもちろん」


 年の終わりに襲った、トンデモ体験。

 とてつもない苦労の末に、とてつもなく大変な状況。

 必死に頑張るしかなかった私が、必死に世界の全てを救うまで働いたのだ。


 今の私の願いは、一つしかない。


「——今年はもっとお休み取れますように!」

「わはは」

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― 新着の感想 ―
[一言] その願い!おいらにも! あ、お給料へりすぎない程度に!
[良い点] 魔王とはいったい……女子組より料理力高い…
[一言] メリークリスマス!
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