きゅうけいさんはジャンクなご相伴にあずかる
『きゅうけいさんは休憩したい!』コミック11話更新! サンプルはこちら↓
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ダメでした。
「——それでですね、優しくお姫様をお世話をしていると思ったら突然敵からの攻撃に気付いて叫ぶんです! 自分の身を挺して、ヤマトアイランドの巨大な魔物の攻撃を身代わりに受けたんですぅ!」
いや、あれは偶然でして……。
「魔王サタンの攻撃なんて、見てもいない! サタンに体中痛めつけられた少年を気遣うように、こちらを見ながら笑いかけて手を振るんですよ! もうそれまでの恐怖なんて吹っ飛んじゃって、目の前に敵の魔王がいるのにすっかり危機感なんて忘れちゃいました!」
まあ、攻撃全部暗記してるからね……。
「しかも! 倒した後には——」
「待って待って」
まだまだ続きそうなエッダちゃんを止めに入る。
「さ、さすがに長いって! マリカさんもう飽きてるよ!?」
「まだ半分もいってないですよぉ?」
「いやいや、全然飽きてないよ?」
完全にちょっとヤバいスイッチ入ってるエッダちゃんだ!
そしてマリカさんもあっち側だー!
あわわ、あのね、私といたしましてはですね。
褒められるのは嫌ではないのですが、なにぶんただのゲーマーデバッガーさんでありますので、いつまで経っても褒められるのには慣れておりません。
めっちゃ顔から火が出ちゃう。
こういう時にいつも助けてくれるのが、パオラさん!
あっ、今日連れてきてないんだった!
「……まったくもう、ここで押しが弱いのがきゅうけいさんらしいですね」
と、後ろで声を上げたのは我らがリーダー!
にゅっと顔を出すと、手をぱんぱんと叩いて注目を集める。
「はいはい、積もる話はやりたい方でどうぞ。エドモンダさんは、昼食を届けに来たんでしょう?」
「あっ、そうでしたね」
エドモンダさんははっと気付くと、手元のバーガーみたいな包みをマリカさんに渡す。
見た感じ、それは……ピザっぽいけど、サンドイッチっぽいやつ。
でもとっても食べやすそう。
そんなわけで、無事に会話が中断となったのでした。ありがとうシルヴィアちゃん。
私はまだエッダちゃんのことを侮っていたかもしれない……。
鞄の中から、現れるもちもちハンバーガーピザ……次の包みからも現れる現れる……。
……。……?
どんだけ食べるんですかマリカさん。
「ん? せっかくだし一緒に食ってく?」
「あっ、いいんです? ぜひぜひ食べたい!」
「沢山あるからどうぞ! へっへっへ、魔王様におごっちゃったね」
エドモンダさんがお野菜多めのトマトサンドみたいなのを食べる横で、マリカさんの手元にあるのは……肉肉チーズのタッカルビとも特盛りチーズ牛ともつかない、力こそパワーみたいなピザバーガー。
それを六つテーブルに置き、うち四つをこちら側へと寄せる。
「あ、私は気分でたくさん食べるだけだから気にしなくてもいいよ。後ろの方達もどーぞ。持ってたところで大して金使うところもないし」
……マジで一人で全部食べるつもりだったみたい。本格的に痩せの大食いですねマリカさん。
エドモンダさんとの差が極端で、でもなんだか納得できる感じで、なかなかいい女子コンビです。
「あら、いただけるのね。じゃああたしも遠慮なく」
「わぁ! ありがとうございますぅ!」
「俺だけ遠慮するのもおかしいよな、じゃあ有り難くもらうよ」
クローエさんを見て、マリカさんが首を傾げる。
「ひょっとして女性?」
「ああ、こんなだから分かりにくいかもな。一応クローエという元魔王眷属だ。だが今は……まあ、きゅうけいさんの友人の一人だよ」
「おおっ、ほんとに女性だった。よろしく」
うんうん、クローエさん初見だとほんと中性的で分からないからね。
地下のテーブルに座って、一緒にピザサンドを食べる。
……おおっ! おいしいですねこれ!
なんか、濃い味付けにガッツリ肉類特盛りって感じの、すごく分かりやすい食べやすさ!
彩りとかは二の次で、ひたすら元気になる感じのやつだ!
「うんうん、牛とチーズとブラックペッパー……トマトはもちろんだけど、玉ねぎ多めなのがおいしいのかな? 新たまの瑞々しさがとってもすてき。他は……あっ、クミンそのまんまぱらぱらっと入れてる。それでカレー味っぽくなってるんだね。いけるいける、おいしいね」
こういうイタリアンでありながらジャンクに食べられる感じ、いいね。
カレーパンとか買い食いするの、めちゃ好きだったのを思い出す。
パンを揚げるのは、さすがにこっちでは食べたことない。
もちゃもちゃ食べてると……何やら集まる注目。
エッダちゃんは笑顔で、シルヴィアちゃんは呆れ気味の苦笑。
「ど、どったの」
「いや、魔王様料理詳しいのな……?」
「あ、うんうん。作ったりするよ」
マリカさん、眉間を押さえながら呟く。
「どうしよ、魔王様より女子力低いかもしんねえ……」
「ああ、それなら大丈夫。あたしたち竜族の全員より、きゅうけいさんの料理の方が上手いですから」
「それ大丈夫って言うんですかね?」
「ぶっちゃけ大丈夫じゃないですね、この人怠惰の大罪ですし」
私の種族名に、マリカさんとエドモンダさんは顔を見合わせる。
そしてこちらを振り向くと、
「なんで?」
と声を揃えた。
凸凹コンビなのに息ぴったりですね。
「よく言われます。なんでだろね?」
「働く時以外はいくらでも寝ているからでは?」
「さすがシルヴィアちゃん、分かってる!」
「自慢げに胸を張られましても……」
そんな和やかな会話とともに、お食事が終わった。
おいしかった、たまにはこういうのもいいね。
ちなみにマリカさん、二つとも食べてクローエさんより早かった。
よく噛んでね。
すっかり食べて、お互い打ち解けたかなってぐらいになって。
「ところで、先にこれを聞くべきだったかもしれないけどさ……」
椅子にもたれかかっていたマリカさんが、身を乗り出してきた。
「きゅうけいさん達がヴェアリーノに来たの、私に会いに……じゃないっしょ?」
「半分以上はマリカさんに会いに来るためだよ。ちょっと来そびれちゃった」
「マジすか。うわ、待ってヤバい照れるんだけど」
「私もさっき照れたので大人しく照れ顔を見せて下さい」
「急に悪魔的な意地悪さになったな!?」
マリカさんの手を掴んで、お顔を覗き込んで満面スマイル。
いやー、きりっとカッコイイ人の照れ顔っておいしいですね。
さすがにあんまり覗き見て嫌われても嫌なので、数秒眺めて引く。
「ありがたやありがたや……」
「な、なんなのもう……」
「マリカ、きゅうけいさんは突然こういうことする人だから気にしちゃダメよ。ていうかあたしもやられた」
「マジか、魔王様不思議すぎるな……」
赤面して頭をぽりぽりするマリカさん横で、珍しい友人の顔を覗き込むエドモンダさん。
マリカさんは睨み返すも、どこか迫力がなく笑顔で返され溜息。
と、今度はエドモンダさんがこちらを向いた。
「マリカのついでとはいえ、私も友達にしてくれてありがとね、きゅうけいさん」
「いえいえ、オマケのつもりじゃないですよ。よろしくね」
「ふふっ、ほんと話しやすいなあ。それじゃ、きゅうけいさんに遠慮なく聞いちゃうね」
「遠慮なくどうぞ!」
にこっと笑うエドモンダさん。緑の髪の魔法使いさん、実に魅力的。
マリカさんに比べるとそこまでグイグイ来なさそうなエドモンダさんが、その笑顔のままずいっと身を乗り出して私の目をじっと見つめる。
そしてすっかり緩んでいた私に対して、エドモンダさんは明瞭な声色で聞いてきた。
「じゃあ質問。マリカに会いに来たのが十割じゃないのなら、残りの理由ってもしかして、前回の戦争とか、例えば他の魔王に関わる話?」
あっ、このコンビこっちがブレーンだ。






