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きゅうけいさんはようやく友達になる

 さあやってまいりましたヴェアリーノの冒険者ギルド、件のマリカさんにコンタクトを取ります。

 中に入ると、近くの男性がこちらをふと振り向いた。


「——うおっ!?」


 そして大声で驚きました。

 何事かと一斉に振り向く武具を装備した面々。

 な、なんだか一気に注目集まっちゃって恐縮しちゃいますね。


「ど……どーも……」


 まずは挨拶、といつものようにぺこぺこ頭を下げて中へ。


「はいはい! みんな失礼のないようにいつも通りね!」


 ここでぱんぱんと手を叩いて、エドモンダさんが皆を仕切る。わあお、ほんとに偉い人だった。

 でっかい男の人をびしばし指導する魔法使いの女の人、大変かっこいいです。


「マリカは?」

「あー、マリカさんならちょうど下ですね。審査やってんであんま邪魔しちゃ悪いかもしんないすね、魔王さん来たのなら途中で切り上げちゃいそうですし」

「なるほど、マリカなら有り得るなあ……わかったわ」


 エドモンダさんがこちらに手招きをして、奥へと案内する。


「それじゃ、みんなマリカの方に案内するけど、私の後ろを静かについてきてね。集中してるから気付かれないと思うわ」


 後ろのみんなと目を合わせて頷く。


「いや、今から無言じゃなくてもいいのよ?」


 そこはまあ、なんとなく。

 いざそのシチュエーションを想像すると、言われた直後に予行演習みたいに動いちゃうことってあるよね


 あと振り向いた時に気付いたけど、クローエさんはエッダちゃんの後ろをしっかりガードしてくれてありがとうございます。




 下の階段を降りていくと、キンキンという音が聞こえてきた。

 おお、金属ぶつかってる音だ。模擬戦の木剣というわけじゃなくて、重い感じのやつ。


 地下に降りると、そこに現れたのは大きな広場。円形の練習を、柵のような区切りでぐるっと囲んで二重の円みたいになってるの。

 例えるなら、アリーナ観戦みたいなノリかな? さすがにあんなに広くはないけれど。


 そして中心にいるのは、出ました赤い髪のセミロングのお姉様。

 大の男二人から同時に来る剣を易々と捌くと、蹴りを入れて吹っ飛ばす!

 もう一人がその隙に襲いかかるも……掴んで投げたァ!


「んー、いいところまで行ってると思うんだけど……『B』はあげられないかな? でももうちょっとってとこ。『S』の中でも私は強い方じゃないんだから」

「ぐぐ……」


 倒れたまま悔しがる男に対して、女性の剣が静かに伸びる。

 首に突きつけられた切っ先と、ぱっと見て怒ってると分かる表情。


「どんな結果でも、礼節を欠くなと教えたはずだけど」

「——ッ! は、はい! ご指導ありがとうございました!」

「ありがとうございましたッ!」

「次忘れたら降格な?」


 さらっと怖いこと言って震え上がる男達。うんうん、挨拶は大切だからね。

 大の男にも強く厳しく、そして礼儀正しい人である。これはいい人だね。


 その二人が礼をして戻っていくのを見守ると、キリッとした顔がエドモンダさんを捉えて緩む。


「よっエド! なんか用か?」

「マリカ、昼食は?」

「……。ああっ!? しまった、買ってきといて家に置いてきた!」

「だから持ってきたわよ」

「さすが相棒!」


 からっと笑い、こちらに一歩踏み出——したところで、ようやくエドモンダさんの後ろに私達がいることに気付いた。

 笑顔のままぴたっと止まり……しばらく、私と無言の邂逅。


「……」

「……」

「……えーっと、どーもどーもお久しぶりです」


 ちょっと沈黙に耐えられなくなって声を上げると、マリカさんは再びゆっくりと歩き出した。


「……え、え? 待ってエド、なにこれドッキリ?」

「私もさっき会ったばっかりだって」

「ま……マジで……えっ、本物……!」


 ようやく事態を把握したのか、マリカさんがくわっと口角を上げてこちらにやってきた!


「わーっ! わ、魔王様! お会いしたかったです! あの、私、マリカっていって、その、ヴェアリーノでちんけな冒険者やってる者でして、うわ、本物、本物だ……!」


 な……なんだかすごくテンション上がった!

 しかもすっごく目きらきらさせて、子供みたいなはしゃぎ方し始めた!

 やだ、このイケメン女子すっごくかわいい!


 これあれだ、タレントがお忍びでターゲットの近くに潜んで、実はいましたみたいなドッキリするやつだ!

 しかもまさかの仕掛ける側の気持ちになるとは……!

 なんか、ここまで喜ばれると恥ずかしいやらこそばゆいやら!


「おーおー、きゅうけいさんがいっちょ前に照れてる」

「あわわ、シルヴィアちゃん、私こういうの慣れてないんだって〜」

「きゅうけいさん、かわいいですぅ!」

「いつでも可愛いのはエッダちゃんだと思います!」


 わちゃわちゃしながらも、私は二人の頭を撫でながらマリカさんに話しかける。


「すっかりお久しぶりとなりました、きゅうけいさんこと球惠・火神です。でもみんな『きゅうけいさん』って呼んでるんで、そう呼んでくれると嬉しいな」


 ていうか魔王様って呼び方で初手からこんなに好意的なのが初めてなので、反応に困るよ!


「えっ、で、でも私にとって魔王様は、えっと、うーん……」

「あ、ちなみにエドモンダさんはめっちゃタメで話してくるよ」

「待って嘘でしょずるい! じゃあ私もきゅうけいさんで!」


 やったね! というわけで久々の人間の友達が増えました!

 それにしても……最初からエッダちゃん以上に好感度が150%ぐらいありそうでこっちが照れちゃうね。


「いやー、ほんときゅうけいさんが来てくれたおかげだから。以前もやもやしてたものが全て解消されたってゆーかさ。うちのクソ指揮官から解放されて、ほんと目の前が拓けたっていうか! 私もああいうことしたいって思ったね!」

「そこまで言われるとほんと照れちゃうなあ……。そういえばその貴族さん、どーなったの? 降格とは聞いたけど」

「いやまあタダ飯喰らいも処刑も違うかなって感じなんで、領主のところの事業の一部だったかな? そのへんで商品の計算とかの仕事任されたんだっけか。収支の計算には手を出せない、下働きって感じ」


 そっか、そんな感じになったのか。

 さすがに極端にひどいことにはなってないようで安心した。


 その私の感情を拾ったのか、マリカさんが首を傾げる。


「……あの、私が聞くのも何だけど、不満とかない?」

「不満って何が?」

「いや、クソ貴族処刑しろみたいな、もっとボロカスなった方がスッキリするとか、そんな感覚。私ら冒険者はみんなそんな感じだったんで」


 あー、確かに嫌な奴ってなると因果応報があった方がすっきりするよね。

 それは分かる。

 分かる……けど。


「私はこの事件の裏に多分ルシファーがいることに気付いてたから、ちょっと元貴族さんは巻き込み事故みたいなものだったんだよね。それに悪人だからって更生の余地なしっていうより、その人だけの能力があるのなら今までの分社会貢献した方が絶対にいいと思ってね」

「……」

「すっきりするのは一瞬だけど、すっきりし終えた後に若干もやっとしたり、後悔したり、もったいなかったなーとか思ったりするのって単純に損だからね。過去にも似た理由で山賊を更生させたことはあったし。会話不可能と思って明確に殺したのは、魔王サタンとか、敵対した眷属達ぐらい?」


 マリカさんは目を閉じて、大きく息を吸って吐いた。

 ……な、なんでございましょう?


 そして目を開くと、エドモンダさんと仲良く盛り上がった。


「な! な! やっぱこの魔王様ちょーかっけーよな!」

「わかる! いやマリカの言ってたの大げさすぎって思ってたけど、本物ちょーかっこいい! やばい!」

「はいっ! きゅうけいさんはとっても素敵なエピソードが沢山あるんですぅ!」

「お、あんた分かってるな! きゅうけいさんのいいやつ全部教えてくれよ!」

「ぜひぜひ〜!」


 エッダちゃんが二人の会話に乗ったァ!

 異様な熱気に包まれた三人に対し、私は主に顔面に熱気が集まってきています!


 魔王に状態異常が効くはずないと思ったけど、褒め殺しがめっちゃ効いてる!

 ちょっと頭ぼーっとしちゃう!


「いい子たちだね。どうする、きゅうけいさん。ここで褒め殺し、聞いてく? どちらにしろ別行動ってことはないと思うけど」

「……た、耐えて見せます……!!」


 クローエさんのとんでもない提案に対して、そりゃ私はこう答えるしかなかった。

 もしかしたら、転生後一番の耐久試合になるかもしれない……!


 エッダちゃん、手加減してね!

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔族の場合は、顔の青みが増すのかな? まぁ、お顔でお茶は沸かせそうだけど( ´∀`)
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