きゅうけいさんはヴェアリーノでの出来事を思い出す
それから、クローエさんの先導ですんなり目的地のヴェアリーノ前に到着した。
私とエッダちゃんは二回目だね。あっエッダちゃんは正確には三回目か。
「久々ですね、ここも」
「えっ、シルヴィアちゃんも来たことあるの?」
「まあ、個人的に昔来たことがありますね」
あー、そっか。
元々シルヴィアちゃんって、一人でうろうろいろんなところを飛び回っていたんだもんね。
ヴェアリーノにも個人的に来たことがあってもおかしくないか。
「ところで……そろそろ入ったら?」
前で腰に手を当て、クローエさんが聞く。
私がクローエさんの方を向くと、クローエさんは首で後ろを指した。
そこには、思いっきりガン見してきている門番の皆さん。
「俺らってすげえ目立つし、特にきゅうけいさんの存在感って隠しようがないからさ。さっさと話を通して、何事ってわけでもないと安心させた方がいいんじゃねえかなって」
はい! その通りだと思います!
うーん、とってもゆったりした生活に入ってきているので、自分の見た目が真っ青であることを未だに忘れかけてしまう。
鏡を見ても最早驚かない火神さんですが、初対面の人にとっては目玉真っ黒の魔族以外の何者でもないからね。
私はみんなに頷くと、門番さんの方へとちょっと腰低めに近づく。
「ど、どーもどーも、以前領主さんにお世話になった者です。えっと、通していただくには何か証明とか必要な感じでしょーか?」
「カガミ様でいらっしゃいますね、どうぞお通りください」
そうだね、やっぱりすんなりと入ることは…………ん?
「入っていいんです?」
「はい。領主様から許可をいただいております。それに——」
右の門番さんは、左の門番さんに目配せする。
なんだなんだ?
左の門番さんは、肩に掲げた槍をぽんぽんと叩きながら笑った。
「私はあの時、まだ領主軍として前線に出ていてね」
「あっ、あの時の!」
わー、そうだったんだ。
ん? ということは……!
「いやあ、あのクソ貴族をボロカス言ってくれたのは気分最高でしたね!」
うわあああ!
やっぱりいいいい!
そうだよね! なんか拡声器みたいなのがオンのままだったというもんね!
あのね、元々無言で延々液晶の前でコントローラーを持つだけの超インドア陰キャなの!
妙に気が乗って言いまくっちゃったけど、やっぱり恥ずかしい!
でも、まあその……かなり好意的に受け取られているということも分かったし、みんな大変だっただろうし……いいかな?
「そういえば、その貴族は結局どうなったの?」
「降格ですよ。さすがにマリカを撃ったのがまずかった、皆の証言もあって領主に直談判ですね」
あー、そっか。
まあそりゃ、バリスタで殺されそうになってたの、あの場にいた全員だもんね。
当然怒りますわ。
「うーん、でも……」
「ん?」
「領主と教皇が洗脳されていたから対立したのに、その責任全部おっかぶっちゃったのは可哀想かな? って。まあ降格なしで威張ってるままってのもどうかと思うけどね」
私がそう言うと、門番二人は顔を見合わせた。
そして一瞬間を置き、二人は同時に笑い出したのだった。
「ハハハ、いや失礼しました! さすが我らの英雄様、どうぞお通り下さいませ!」
なんとも不思議な反応をされた。
っていうか英雄様って何ですかソレ。
聞いたことあるような……あるような……。
いや、そうじゃなくて。
「マリカ、ってもしかして」
「バリスタ撃たれたヤツですよ。腕の立つ戦士で、今は後進を育てて……どうだっけか?」
「おう、ギルドの審査員であってる。マリカに会いに行きますか?」
「はい! 会いに行きたいので!」
やった、あの時に軍一つをまとめ上げて味方にしてくれた人の情報、手に入った!
私は後ろのみんなと目を合わせて頷くと、街中へと入った。
-
街中をぶらぶらっと観光。
いきなり魔族の私が入って、どんな反応になるかなと思ってたけど。
「……あ、どもども。どーもどーも。あっこちらもご丁寧にどーも」
なんか、街行く人みんなが私に会釈してくれる。
「これは、どうやら話が行き渡っている、と見て間違いないでしょうね」
「話?」
「きゅうけいさんが来た時に、失礼な対応をしないようにってことです」
なるほどなあ。
いきなり悲鳴上げたりする人がいないということは、徹底しているのだろう。
偉い。そしてここまでやってもらってちょっと申し訳なくもなっちゃう。
「私が思ってた以上に、私を受け入れるための準備を整えてくれたんだなあ」
ありがたく、街中を通らせてもらおう。
そして、分からないことを遠慮なく聞いてしまおう。
「そちらの方、いいです?」
「へひゃい!? わ、私? えっ、魔王さん……うわあっ!?」
魔法のローブを着た女の人、突然びっくりして飛び跳ねた。
え、今の私?
「ど、どーしたの? 何があったの?」
「あっ……ご、ごめんなさい。その、そちらの方に……」
魔法使いさんが指したのは、エッダちゃんだ。
思わぬ人選に、皆で顔を見合わせる。
「以前、魔法を……その、私が撃って……」
「あ」
そういえばあった。一番最初にすんごい魔法が飛んできた。
なんかもうすんげえ威力での不意打ちでびっくりしたけど……。
「……え? もしかして、あの魔法ってあなたですか」
「は、い……私です……」
露骨に怯えた感じの女性に対して、エッダちゃんは慌てて手を振った。
「はわ……い、いえいえ! お仕事、ですよね! 命令されて大変なことしたって分かってますから、私は怒ってないですよぉ。きゅうけいさんも怒ってないと思いますし!」
「そーそー、なんか貴族さん降格したって聞いたし、そんな人の命令を聞いて大変だったねってことで同情十割!」
私とエッダちゃんの言葉に、まだ申し訳なさそうな顔をしつつも、安心したように息をついた。
うーん、真面目さんだ。
「あ、そうだ。私達今から冒険者ギルドの方に寄りたいんですけど」
「ギルドですか? でしたら私も用事があるので一緒に向かいましょう」
おお、渡りに船ですね。よかったよかった。
「そうだ、お名前お聞きしても? あっ私は球恵・火神って言います。みんなきゅうけいさんって呼んでますし、普通にタメ語で絡んでくれると嬉しいかなって」
「えっ……ほんとに? いいんですか? じゃ、じゃあ……きゅうけいさん! よろしく」
おっ、ここに来て意外とフランク!
やったね!
「私はエドモンダよ。ギルドでは魔術師組の監督をしている身なの」
エドモンダさん! ここにきて竜族村長と近い名前に被りましたね。
それなりに長い間こっちで生活しているだけあって、さすがにそろそろこの辺りの地方の女性の名前、全部最後の母音が『あ』なんだなってことも学習しました。
ちなみにエドモンダさんの名誉のために言っておきますが、彼女はめっちゃスマートです。エドモンドさんもスマートです。
格闘ゲームも長い間やってない。そういえばマリカさんも、ちょっとレースゲーム思い出すお名前でしたね。
配管工さんもイタリア人だからね、パスタの国に近い雰囲気のゲームに転生したんだから、名前も被るものです。
そして、たまたま声をかけたエドモンダさんは結構偉い人でした。
グループのリーダーってことだもんね、すごい。
「ところで」
そしてエドモンダさんは、さらりと言った。
「やっぱり用事ってマリカ? 友達になりに来た感じ?」
私の目的、思いっきりばれてました!
ってことは、エドモンダさんはマリカさんの知人さんだ。
そして既に話が行っていると。……そういえばその辺り、ちゃんと話を通してたんだった。
ありがとう、いつでも私の役に立つパオラさん!
「は、はいっ! ぜひぜひお友達にしていただけないかなあと思っていまして……」
「何でそんなに緊張してるのか分からないけど、マリカもきゅうけいさんのこと再々話題に出してたし、堂々としてていいと思うよ」
そうなんですか、よかったー。
……いや、再々話題に出してるってどういうこと?
「直接聞いてみるのも楽しいんじゃないかな?」
あっ、それは是非是非。
会いに行く前に、楽しみ一つ増えちゃった。やったね。
https://twitter.com/Renta_Comics/status/1376815190688235523
本日コミック最新話が更新されました!
ダークエルフの集落の話が綺麗に一話にまとまっていますのでぜひぜひ!






