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きゅうけいさんは帰還する

 それから。

 モンティ家との和解が済んだ後で、ちょっとしたお食事会となった。

 ノエミちゃんがクローエさんのことを随分気に入ってしまったのか、がっちりしがみついて離れなくなってしまってご両親も困り気味。


 いやー、ノエミちゃん、すっかり懐いちゃって……。

 …………。……まさか、と思うけど……王子様系のクローエさんに懐いているの、今から面食いの本能が働いているとかないよね?


「……あら? 私の顔に何かついてる?」

「い、いえいえ〜! あはは……」


 ハイパーアルティメット肉食女子たるカルメンさんの方を思わず見た。


「それにしても、クローエさんって本当に女性なの? 男前ね」


 見なかったことにした。


 すくすく元気に育ってね、ノエミちゃん……!




 みんなとも合流して、全ての仕事が終了した。

 やったことそのものはとてもシンプルで、ヴェアリーノの権限を持つ人たちにクリアエリクサーがぶがぶ飲ませただけなんだけど……とにかく精神的に疲れた。

 いくら呪いとはいえ、人間からの敵対感情は、これで最後にしてほしい……。


 ただ、収穫もあった。

 教皇さんが、竜族の村とそこに住む魔族を味方として受け入れてくれたことだ。


 教会の鶴の一声は、そりゃもーつよい。

 私は見事に、人間側の公認魔族となってしまった。


 それでも受け入れてもらうまでは、まだまだ時間がかかる。

 なんてったって、それ以外の魔族はやっぱり時々現れては人々を恐怖に陥れたりもする。

 北エイメラでもそんな感じだったもんね。

 味方のフリをしているだけかもしれない。敵かもしれない。

 そういう考えは多い。


 だから、私は言ったのだ。


 ——んー、別にいいんじゃない?


 ってね。

 受け入れたくない人は、受け入れなくてもいいし、私に会わなくてもいい。

 私は基本的にヴェアリーノやルマーニャに出向くことはないと伝えたし、会いたくなったら竜族の村に来てくれたらいい。

 それでいいでしょ、ね。




 それにしても……ここまで、長かった。


 転生して、世界一周して。

 魔王を討伐したり、魔王を救ったり。

 自分の眷属を見つけたり、他の眷属を見つけたり。

 人間の街の争いにも参加したりして。


 そして、遂に人間側の公認となったのだ。

 がんばった、私。


 すっかり一年以上、この世界で過ごしてしまった。

 よく働いたような気もするし、常に寝ていたような気もする。

 ま、どっちでもいいや。私は今が休めたらそれでいいのだ。




 集落に帰ると、まずはトゥーリアさんがお出迎え。


「どーもどーも、戻りました」

「おう、まあ元気そうでよかったよ。けっこーすぐに凹んだりすんじゃねーかなって心配してたけど、そういうこともなさそうだな」


 ああ、トゥーリアさんは私のことを、ちゃんと心配してくれていたんだ。

 やっぱいい人だなあ。


 そうだよね、今回はクリアエリクサーで治せる呪いだったから助かったようなものの、もしも本気で嫌われまくって戦争ってことになっていたら、どうしようかと思っていた。

 正直、人間に罵詈雑言投げつけられて解決しないままとか、割とマジで泣いていたかもしれない。


「大丈夫でした。上部の人は、クリアエリクサーを飲ませたらみんないい人で」

「そうか……魔王の呪いがそんなところにも」


 トゥーリアさんは少し考えるようにしていたところで、横から楽しげな声が聞こえてきた。


「ほら、あれクローエじゃん。ハイ私の勝ち」


 そこには、満面の笑みを浮かべるビーチェさんの姿があった。

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