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きゅうけいさんは相手を信じている

 きれいさっぱり、何もなくなった海。

 巻き起こった竜巻の水柱がおさまった海は、綺麗に晴れ渡っていた。


 中心に広がる青空。

 穏やかな海。

 静かな「きゃいきゃい」あっノエミちゃん元気!


「いやいや、さっきの竜巻魔法ってレベルじゃなくないですか!? 何ですかあれ! 何の天変地異かと思いましたよ!?」

「シルヴィアちゃんも、まさかドラゴンブレスをしたまま向きを変えてくるなんて思わなかったよ。いやー、やっぱドラゴンブレスってすごい、海の向こうまで無事か心配になっちゃうぐらい」


 お互いの健闘を称え合って……シルヴィアちゃんが、飛び込んできたっ!

 ひゃわー!


「きゅうけいさん!」

「シルヴィアちゃん!」


 ああもうなんて可愛いの……最強古竜の金髪美少女ちゃん、最近はいつもキリッとしているけど、今日は天使ちゃんモードです。

 はー、腕の中が天国。昇天してこのまま転生しそう。転生先がここだったわ。


 シルヴィアちゃんは一旦離れて、恥ずかしそうにはにかむ。


「ブライトエルフの集落で待機していたんですけど、何も起こることなく問題が解決したと聞きました。それで……その」

「うん?」

「……昨日は、みんなで寝泊まりしたロッティ家のベッドだったんです。でも、きゅうけいさんと出会って以来最初の一人っきりでの就寝で……えっと……寂しいなあって……」


 ……!


「私もだよぉ〜っ!」

「わっ……!? も、もう!」


 私はあまりにも可愛すぎるシルヴィアちゃんの来訪理由に、思わずこちらからハグしちゃった。

 そうだね、今までずっと一緒だったもんね。


 私はシルヴィアちゃんを持ち上げて、ぐるぐるぐる〜っ。

 ぐるぐるぐる〜っ。

 ぐるぐる…………あっ、クローエさんと目が合った。


「ど、どーもどーも……」

「ああいや、思う存分やってもらっていいけど……」

「さすがに見られながらは……って見られながらやってたんだった」


 視線を浴びながら無邪気にぐるぐるできるお年頃ではない。とかいいつつかなり子供の自覚はあります。女性は何歳になっても女子ですので。

 シルヴィアちゃんを下ろすと、当然シルヴィアちゃんとクローエさんが目を合わせる。


「自己紹介させてもらおう。俺はクローエ、こちらのカガミ様の眷属だ」

「あっまだそうだっけ。【シン・マジック:コントラクトブレイク】」

「……。……は?」


 シルヴィアちゃんに、この子は眷属です! 奴隷です! みたいなステータスの紹介はしたくはないし、もちろんエッダちゃん達他のみんなにもしたくはない。


「えっ、えっ? 待って、【ステータス】……えっ」


 思いっきりうろたえてるクローエさんを、シルヴィアちゃんに紹介する。


「今ステータスパネルに書いてあるとおり、この人はグリフォンさん! パオラさん達の友人だよ!」

「へえ……確かに話で聞いたとおりの雰囲気ですね」

「でしょでしょ!」

「ところできゅうけいさん。何かやりましたか? クローエさんの様子がおかしいですけど」


 シルヴィアちゃんの言葉を受けてクローエさんを見ると、信じられないものを見るような目でこっちを見ていた。


「な、なんで!? なんで解除したんだあんた!? 眷属契約がないと、俺みたいなヤツは自由にどこにでも行くぞ!?」

「はあ。じゃあクローエさんに質問です」

「何だ!?」


 なんとも勢いがついているクローエさんに、私は予定を伝える。


「私はこれからパオラさん達の待っている村でぐーたら休みに行きますけど、クローエさんも誘うつもりです」

「えっ」

「友達として一緒に来てほしいところですけど、眷属として命令されないと来ないですか?」

「えっ、あっ」


 クローエさんは、先ほどの勢いを急速にしぼませて「あー」とか「うー」とか言いながらあっちこっち視線を彷徨わせる。

 かわいい。


「眷属契約してないと言うこと聞いてくれないのは友達じゃないですし、どうしても嫌なお願いはしないです。ていうか嫌なら断ってほしいし。だったらもう必要ないでしょ?」


 クローエさんは、王子様の美貌をなんとも気が抜けたような表情にしてぼーっと宙空に視線を彷徨わせると。


「それもそっかあ」


 なんて、大幅に気が抜けたコメントをもらった。


「あ、でも」


 私はクローエさんの近くに行き、指を指す。

 そして、その指をちっちゃいおててが掴んだ。


「クローエさんは、この子の両親に謝ってからね」


 これに関しては、眷属契約していなくても大丈夫と確信している。

 だって、クローエさんはとっても素敵な人だもの。きっと断らない。


 それを肯定するように、ノエミちゃんがにへらとクローエさんに笑いかけた。

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