きゅうけいさんは本当の敵に気付く
警戒心バリッバリな僧兵さんたちに挨拶を交わし、返事が返ってこない間にお年寄りさんへ。
「どーも、魔王です。指示を出した責任者を探しに来たよ」
まずは挨拶。といってもあんまりおそとむけにはしない。なんかそういう気がしないんだよね、この人。
おじいちゃん、怒って立ち上がる。
どうどう、血圧上がっちゃうよ。
「何故ここまで魔王が入ってきている!? 軍部は何をやっているのだ!」
そりゃー道を開けてもらったです。
とはさすがに軍部の皆さんのためにも、言わない方針で。
だって関係ないのに責任とか取らされちゃいそうだもんね。
「お前達、何としてでも魔王を抑えるのだ!」
僧兵さん、めっちゃ武器を片手に勢いよく殴りかかってきた!
殴りかかるってのは、グーじゃなくてメイスね。
なんていうか、このゲームの僧兵って昔ながらの回復魔法使いの白魔道士ってんじゃなくて、ガッチガチの宗教戦争メイス兵って感じなの。
ガッツリ着込んで、撲殺上等って感じの。メイスって見れば見るほど凶悪な武器だよね。
まあお陰様で、最初のジョブに戦士や騎士を選ばなくても、僧兵だって回復だけじゃなく十分に攻撃もできるのだ。
むしろあんまり回復魔法をゲーム中で使った記憶がない……。
そんなことを思っているうちに、メイスが私の近くにやってきました。
すぐに止まるだろうなー、なんて思っていると。
「……ハッ!」
なななんと! エッダちゃんが代わりに前に出て、私の代わりに僧兵を吹き飛ばしちゃいました!?
えっ、大丈夫なんですかアレ!?
「大丈夫です、なるべく衝撃を与えないようにしていますから」
あっ、ご配慮痛み入ります!
敵対しているからとはいえ、人間に怪我はさせたくないもの。魔族相手だと別だけど。
そりゃ元人間だからね、むしろこの姿になったことで余計に人間へと軽率に危害を加えてしまうようなことは避けるようになった。
案外人間として転生した方が、魔族の事情に配慮しつつ、性格の悪い人間には容赦しない感じになってたかもしれない。
そんなことよりエッダちゃんだ。
「何故ですか……教皇様。あなたは以前、どんな種族であれ垣根を外して対話に持ち込むべきだと仰いました」
「ええい黙れ黙れ! 魔王は別だ! その上で竜族も耳長も魔王に加担するなど!」
耳長、という単語が出た途端に、エッダちゃんの耳がぴくりと動いた。
耳が動くの可愛いね、なんてことを思う余裕などない。
今の一言、明らかに侮蔑だ。
「せっかく耳長で魔族のような肌だろうと目をかけてやったというのに……!」
「……教皇……あなたは最初から、そんな気持ちで交友を……」
エッダちゃんの苦しそうな声に、私の胸も苦しくなる。
……寛容にしてもらっているつもりが、明らかに下に見られていたという宣告。あまりにひどい。
ところが、ここで。
「ふうん」
後ろで、レジーナさんが声を上げた。
こういう場合に前に出ることはあまりない人だと思っていたから驚いた。
「あなたは、竜族に対してもそう思っているのねえ」
「おのれ、やはり人間以外の種族など信用ならん!」
「この状況で、まだ他人に転嫁できるなんて、随分といいご身分ですこと」
ほんとだよ。状況分かってるのかな。
「竜族も魔王につくなど、神の教えなど当てにならん!」
いやマジで状況全く分かってないですね。
こんなのが教皇さんで、よく持っていましたね……?
「神よりも、自分の判断の方が上と」
「俺より偉い者など存在しない!」
「ふうん。ところで」
ずいずいっと前に出てきたレジーナさん。
教皇さんの頭に手を掛け、「ひっ……!」という悲鳴を無視して低い声で呟いた。
「以前、村で長から感じた黒いもやが感じ取れるんだけど、きゅうけいさんはどう思う?」
——黒い、もや。
神に仕える教会の、一番偉い人が、何故こうなっているか。
教皇に黒いもやがかかっていること。
竜族の長に黒いもやがかかっていたこと。
エドモンドさんが戻ってきた後、竜族の村に誰が来たか——!
「【クリエイト:クリアエリクサー】!」
私は、教皇に状態異常回復の薬を飲ませる。
無理矢理、流し込むと……それまで私達が入ってきてからもずっと、竜族どころか傲慢にも神を下げて怒鳴り散らしていた教皇が、一瞬で気絶した。
この反応には、見覚えがある。
「きゅうけいさん……!」
エッダちゃんの、驚愕と怯えを綯い交ぜにした表情を見て、私にも気合いが入る。
もう、今回ばかりは面倒だなんて言ってられない。
「エッダちゃん。覚えている限り、教会の主要な偉い人と、王家の偉い人を教えて!」
「……! はいっ!」
これは、サタンが支配下に置いたユルトの街に近い現象。
間違いない。
ヴェアリーノの中枢は、ルシファーの毒牙に冒されている!






