きゅうけいさんは察知する
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「ん……」
起きた。
当たり前っちゃ当たり前なんだけど、この森、朝になっても「朝だー!」って感じはしない。真っ暗だからね。
でも、本当に綺麗だ。青薔薇って一束数万円したんだよね。それがこの一面って、百万ドルの夜景レベルのとんでもない景色だ。
おっほほほ、まさにお姫様気分ですわー!
さて、起きよ……うおおおっ!? 起きにくいっ! ハンモック、ぐわんぐわんしちゃって起きるの大変! えっと、まず、レベル下げないと引きちぎりそうで怖い。
「【ハイドレベル:9999】」
よしよし、よーし……なんとか掴まって、紐アスレチックで格闘するようなノリで、モゾモゾ脱出することができた。ロベルトさんがどうやって起きているか気になる!
廊下は、なるほど魔光石がつきっぱなしなんだね。外の青さに目が慣れたからか、暖色が暖かくて明るい明るい。
1階に降り、リビングの扉を開ける。そこで私は、とんでもない光景を見た。
「すぅ……すぅ……」
!?
なん、だと……ッ!
シルヴィアちゃんと、エッダちゃん、二人が寝てた。
こう、寄り添うように、寝てた。
人の字睡眠で、シルヴィアちゃんの肩にエッダちゃんの頭が乗ってる。
……これはいい。これはいいものですよ。
私は、二人の正面にあるソファに座った。
紫水晶テーブルを挟んで、二人の寝顔が見れる。
「……」
本当に、浄化しちゃいそうなぐらい……いい。
見てるだけでドキドキするぐらい、いい。
金と銀、白と黒の最高の組み合わせ。
「それにしても、いつの間にか仲良くなったんだろう」
二人はそれこそ、立場が対等ではない上に、接点があまりなかったはずだ。
でも……ひょっとして
(昨日、何かあったのかな?)
と、二人っきりの秘密の話を思い浮かべた。私がいないところでないと、できない話といえば……もちろん、
(私の、話?)
……んふ。
二人が私のことを話題に出してくれるということを想像するだけで、わたくし満足。
どんな話をしたかとか、私だけハブだとか、そんなことはもうどうでもいい。興味を持ってもらえてるし、二人の仲がいい。それだけでもう、満足なのだ。
「ありがたや、ありがたや……」
「ん……っ……?」
「あ、おはよっ」
エッダちゃん起床。明るく声をかける。
あ、エッダちゃんが、膝枕しているシルヴィアちゃんの頭を撫でてるっ! うわ、ロリ巨乳の聖母スマイルやばい、あんなん絶対溶けるぐらい気持ちいい……。
「ありがたや、ありがたや」
「んふふーあがめたまえー」
シルヴィアちゃん寝ぼけてる……! これはチャンス!
私はここぞとばかりに畳みかけた。
「さすが、古竜のシルヴィア様です」
「んふー……」
ドヤかわいいっ!
「竜族の村は、素晴らしい村です」
「とうぜぇん……」
「ドラゴネッティ家は、世界最高の血筋です」
「みんなおもってるよぉー……」
「その中でも、シルヴィア様は最も美しい」
「ちがうよぉ〜お姉ちゃんの方……が……」
あ、目を覚ました。
私と目が合う。それは、恥ずかしいのか、怒っているのか、どう対応すればいいのかとっても困っているような表情だった。
そして、やっぱり……そんな顔もかーわいいっ!
「ありがたや、ありがたや……」
「も、もういいですからっ!」
さすがに怒られた。
でもでも、聞いちゃったもんね。そうか……このシルヴィアちゃんと、同じ血筋の美人のお姉さんがいらっしゃるのね……ふふふ、是非ともお近づきになりたいね!
……娘を誑かした大悪魔とかで逆恨みされないかな。この顔をアップグレードした美女の怒り顔とか、ジャパニーズ小市民のビビリ遺伝子に私の操作権を乗っ取られそう。
ふと、エッダちゃんが真剣な顔になった。
「どうして、きゅうけいさんは、私を助けようと思ってくれたんですか?」
見た目がかわいいからなのは本気なんだけど、あれ多分信じてない顔だ。無自覚っ! 私が男だったら絶対逃さないぐらい可愛い上に幼な母パワーと色気パワーの重ねワザで頭沸騰しちゃうのに。
そんなこんなで、友達が欲しかったからだよーなんて、気楽に話して、ロベルトさんにベッドの紹介もされて楽しみにしていたら、まさかの不意打ちがきた。
「もう多分、集落全員が友人だと思ってますよ」
……ねえ、今のはずるいと思うの。
泣いちゃう。
ほんと私泣いちゃうよもう……。
「エッダちゃん! 私に会いに来てくれて、ありがとね!」
「こちらこそ、きゅうけいさんに出会えて幸せですっ!」
ああ。
私、ほんと、最高の出会いしちゃったな。
-
私は、森を抜けてシルヴィアちゃんの背中に乗った。
「エッダちゃん、また遊びに来てね!」
「はい! 遠いけど、必ず行きます!」
そう、用事がないとさすがに遠いのだ。気楽に来れる距離じゃない。だけど……きっとまた会いに来てくれるよね。
というかあの洞窟が私の正式な現住所ってわけじゃないと思うので、会いに来たときに追い出されてたりして。でも……その時は、そうだね。私から会いに行けばいいんだ。
「ロベルトさん、また寝かせてくださいねーっ!」
「そこは、またお会いしましょう、ではないんですかね!?」
「あはは、もちろん会いにも来たいですよ! でも、私は怠惰のきゅうけいさんですからね! それじゃまた、お会いしましょう!」
私は元気良く叫ぶと、シルヴィアちゃんの首の方を向いた。
……ふと。
私は、何か忘れてるような気がして、小さく呟いた。
「【レベルリリース】【レーダー】。……それじゃ、シルヴィアちゃん、帰ろう!」
『……』
シルヴィアちゃんは、無言で飛び立った。
あっという間にダークエルフの森は小さくなった。
空高く上がった竜の背から、私はいろんな場所を眺めた。
……山を越えて、草原。川とか湖も見える。隠れられそうな森も、たくさんあるね。もっと緑で平らって感じになってるかと思ったけど、いろいろあるもんだ。
目を凝らすと、ダークエルフの森側の向こうに海も見える。
あまり行きの時は見てなかったけど、集中して見てみると、かなり遠くまで見渡せる。視力もなかなか素晴らしいぞベルフェゴールさん。
海は……今のところ、何かおかしい様子はないかな。だけど……あっちが、山で、街を挟んでここから反対方面かあ。
他には———っとぉっ!? うわっ、え、シルヴィアちゃん!?
シルヴィアちゃんが……急に高度を下げだしてしまった。そこはダークエルフの森と、大きい街との間の草原の真ん中。……一体どうしたんだろう、と思って私はシルヴィアちゃんの背中を降りた。
シルヴィアちゃんが、光り輝いて竜の姿を解く。その顔は、少し俯いていて……何か、言いにくそうにしているような、でも怒ったような、そんな顔だった。
「し、シルヴィアちゃん? どうしちゃったのかなぁ〜って」
「……」
「あれ……あ、あの、私、何か、やらかしたでしょうか……?」
まさかの、ご機嫌斜めシルヴィアちゃんさん。どどどうしよう、こんな草原の真ん中で別れたりしたら泣いちゃうよ。
「……きゅうけいさん」
「は、はい」
「何か、言うことありますよね?」
「えっと……もしかして———」
思い当たるのは、飛び立つ直前の小声。
「———魔法を使ったこと、気付いてらっしゃいます?」
「っ! あ、当たり前でしょうっ! 私の背に乗ったなら、きゅうけいさんの声は、どんな小さい声でも音でも、聞き逃すことはありませんっ!」
お、おおっ……!? なんだか、そう言われるとそれはそれで嬉しい! んだけど今は怒ってるシルヴィアちゃん様がちょっと怖い!
ご、ごまかさないでいこう。
「はい。私のレベルを戻して、レーダーを使いました」
「知ってます。……使った理由、やっぱりダークエルフを襲った相手のことですよね」
「うう……そこまで分かりますか」
「きゅうけいさんが気にかける相手なら、あたしの心配はしないでしょうし、それぐらいしかないかなって」
シルヴィアちゃんの心配をしないなんてことはない。だけど、シルヴィアちゃんより強い存在がぽんぽん現れるとは、とても思えないのは事実ではあるのよね。
そしてシルヴィアちゃんの言ったとおりだ。ダークエルフの集落は間違いなく襲われたのだから、心配だった。
だって、まだ、原因が特定できていない。
「あくまで勘だけどね、それでレーダー使ってみたんだ」
「結果はどうですか。私のレベルが4000だとしても、レーダーはレベルの恩恵が少ない方ですからね。とても視界に入る地平線までは分かりません」
……言う、べきかな。うん。言うべきだと思う。
「いるよ。なんかよくわかんないけど、私と似た波長」
「……魔族、ですね」
無言で頷く。
「やはり、そういうことですか」
「……うん?」
「きゅうけいさんのことを信頼して言います。きゅうけいさんは、ダークエルフが人間からの信頼を勝ち取るため、人間に敵対する魔族を倒している。エッダも魔族を倒していると知っていますか?」
「えっ、知らなかった」
「それに関して、どう思いますか?」
「へ? ええっと……そりゃ無害な相手を一方的に殺すのならともかく、人間を襲ってくる相手を倒すのなら非難する要素なんてないけど……」
シルヴィアちゃん、露骨に安堵した顔をする。いやいや、そりゃそんなの当然でしょっていうか、エッダちゃんが人間を守るためにそこまで積極的なことをしていたなんて尊敬だよ。
「つまり今回の一連の事件は同族の復讐か、そうでなければ……何らかの計画の邪魔になったってことですよね」
「そ、そっか……」
確かにダークエルフが魔族を殺すのなら、普通に考えれば魔族側からダークエルフを手にかけようとするのは当然だ。
今度は少し考え込むように時間を取り、シルヴィアちゃんが声を出した。
「……じゃあ、質問します。きゅうけいさんって、人語を解する自分と同じ見た目の魔族が人間を殺したり、エッダを殺そうとするなら……容赦なく同族を殺せますか?」
同族を……殺す。
殺せるかといえば……。
……ゲームで、ダークエルフは容赦なく討伐していた。敵だったし、いかにも悪い奴らって感じだったからだ。
会話が出来たらどうだったろう。……やっぱり、倒したかな? うん、倒しただろうなあ敵だし。
魔族が、会話の可能な存在だとして、私はどうするだろう。
放置すると、ダークエルフの集落が再びやられる。
あの病気か何かで、エッダちゃんが魔族に殺される。
……エッダちゃんが、死ぬ?
考えるまでもない。
「エッダちゃんを殺そうというのなら……容赦なく私の全力で、何の原型か分からなくなるぐらい徹底的に全員ツブすよ」
シルヴィアちゃんが、びくり、と震えた。……いけないいけない、エッダちゃんがやられる想像をしたら、少し頭に血が上っていた。
元々プレイヤー殺しを仕留めていたりと、嫌いな相手には徹底的だったのだ。少し、その部分が出てきてしまった。
「……ごめん。今のは、想像しちゃって、その、シルヴィアちゃんに当たるつもりじゃなかったの……怖がらないで……」
「あ、いえ……すみません、踏み込んだことを聞いてしまって」
「ううん、ありがと。おかげで決心がついた。あっちが来るなら、こっちも本気で相手をするしかないんだね」
思えば、ここまで明確に敵対しているという相手も初めてだ。不謹慎ではあるけど……少し、わくわくするかな。
チート転生だけど、まだ私は「俺様系の最強主人公」って感じの極端な殺戮はしてない。誰彼構わず暴力を振るいたいと思わないからね。というか、そこまでの相手が今まで現れなかった。
……だけど私の「敵」となるのなら。私の大切なものに手を出そうというのなら、容赦はしないよ。
「こっちに来て一番付き合いの長い……って言っても三日目だけど。でも、頭が良くていい子なシルヴィアちゃんだから、言うね」
私の雰囲気が変わったことに気づき。シルヴィアちゃんが真剣な顔になる。
私は、ものの見事にレベルチート転生だ。スキルチートって感じとは違うけど、それでも使える魔法は十二分に強い。
でも本来は、きっとこちらの方が、私を構成するウェイトとしては大きい。
それは……知識。
「私はね、この世界に誰よりも詳しくないけど、この世界に誰よりも詳しいの」
「難しい言い回しですね……どういうことですか?」
「んー。シルヴィアちゃんがそうかはわからないけど……いざとなると尻尾の付け根が弱いとか、お腹以上に喉の下が弱いとか、最強のドラゴンブレスの瞬間の動作が独特な上に、発射中は首を曲げられないので避けやすいし攻撃チャンスだとか」
シルヴィアちゃん、本格的に驚いたって感じの表情、そして一瞬で首を振って元の表情で私を見る。……今の反応、当たってるってことだね。
「怒らないで聞いてほしいけど、私がレベル2000や3000ぐらいだったとしても、多分シルヴィアちゃんに限らず古竜には全員勝てる可能性があるよ」
ゲームプレイヤーだからね。弱点を覚えて、アイテムや装備を工夫して、レベリングめんどくさがった状態からガンガン勝ちに行ってたよ。
あと、縛りプレイとRTAも。なんてったってRTAは速い、めんどくさくないのだ。そんなところも怠惰の大罪感あって、なるほど自分で笑ってしまうけど。
「そんなわけでね。ある程度、レベル1だろうが全種族と勝負出来るの。そういう私に、今のレベルが乗ってるんだ。この意味、わかるかな?」
「……ははは……そんなの、誰も勝てないじゃないですか……」
「そう思うよね? でも私は、油断すると負けると思っている。だから敵対した相手には全力。……私はもう、私の友人達を攻撃する人とも仲良くしようとは思わない。そして私は、きっとサタンとか他の大罪とは全部敵対することになると思うんだ。だから……油断はしないよ」
私の覚悟に、シルヴィアちゃんが息を呑む。そう……決して勝てるとは、限らないんだ。もちろん相当なことがない限り負けないとも思っているけどね。
でも、残り4体の大罪のことは、姿を含めて何も知らないのだ。ここにはそのアドバンテージが存在しない。だから、油断は出来ない。
「それに……」
私は、しっかりシルヴィアちゃんを見た。
「私が勝てても、私の友達が死んだら、私にとっては負けだから」
「……きゅうけい、さん……」
「シルヴィアちゃんのこと、守るだなんて私みたいにたまたまベルフェゴールになった程度の奴が言うなんて、嫌味だし烏滸がましいにもほどがあるけど。それでも守りたいし、死んでほしくないから」
しっかり、シルヴィアちゃんの肩を掴む。恥ずかしいけど、まっすぐ見る。……うん、シルヴィアちゃんも恥ずかしいよね。照れた顔は役得だけど、真面目に続けるよ。
「エッダちゃんも……ダークエルフのみんなも。あと、街の女の子とも知り合ったから、街全部も、ね。全部救うつもりで行くよ」
私ははっきり告げた。
「だから、そうだね。シルヴィアちゃんの強さを信頼して、シルヴィアちゃんに街は守ってほしいと思うんだ」
「私が、街を……ですか?」
「うん。多分だけど、魔物のスタンピードが意図的に起こる」
「な……!」
そう……行きの時にはいた眼下の草原の魔物、それらがすっかりいなくなっている。あまりに静かだ。
こういう雰囲気の時って大抵、前触れなんだよね。ゲームでは多人数が一斉に素材集めの狩りをする……『大討伐イベント』の。
「……本当に、シルヴィアちゃんがいてくれてよかったよ。私一人で、街を放置して敵の本体を叩くなんて、とてもじゃないけどできないから。ずっと街の周りに取り付いてなければならなくなってた」
「……」
「だけど、シルヴィアちゃんなら。この辺りのスタンピードで暴れた魔物、全部相手にしても余裕でしょ?」
「っ! もちろん!」
「いい返事! さすが私が一番信頼しているシルヴィアちゃんだよ!」
私はシルヴィアちゃんの、背中に腕を回して抱きついた。大胆な行動だったけど、でも、本当にシルヴィアちゃんの存在はありがたい。
きっと彼女なら、街を守ってくれる。
「相手は、ダークエルフの森の向こう側から来るよ。だけど本当に恐ろしいのは、意図的に引き起こされたスタンピードが、その反対側の、あの街の向こうからやってくること」
「なっ……! じゃあ、魔族の対応を迂闊にやってしまうと」
「そう、負けるんだ。人間の街は滅ぶ。だけど……相手は失敗した」
そして、私はニーっと笑った。心から信頼するシルヴィアちゃんに、仲間として全幅の信頼を置いて、そして……軽口が言える大好きな友達として、私のドヤ顔自慢を聞いてもらう。
「両方同時に察知できる、この私を知らなかった」
「そ、そうでした……こんなに広い範囲が、レーダーに収まるなんて……」
シルヴィアちゃんの目と口は、今までで一番大きくなった。
私は「やっぱり俺ツエー自慢は最高だぜ!」なんてちょっぴり下品なことも思いつつ、シルヴィアちゃんの近くに行って、頭を撫でる。
「そんな私が、シルヴィアちゃんを友達だと思っているの。その意味が分かるよね」
シルヴィアちゃんの表情が、だんだんと口角が上がり……そして、キリっとした、勝ち気な笑顔で頷く。
「もちろんです!」
「そして、友達だと信頼してるから、シルヴィアちゃんに人間を助ける全てのことをお任せするよ」
「わかりました。あたしは……あたしは! きゅうけいさんの友達だと胸を張って誇れるような、絶対的な勝利をもたらすとあなたに約束します!」
ああ。
本当に、私は、いい出会いをした。
「それじゃ、私は行ってくるよ」
「きゅうけいさん……」
「多分大丈夫だと思うけど、負けたら避難の準備してね」
「きゅうけいさんが負ける相手なら、世界の果てまで逃げても無駄ですね。それに、そこまでの事態になったら私も逃げません」
いや、そこはちゃんと逃げてよ。
「だって、もう……きゅうけいさんのいない、きゅうけいさんより強い魔族の支配する世界になんて、興味ありませんから。きゅうけいさんが死んで、私が生きている意味なんて、ないですよ」
……エッダちゃんといい、なんなの。
今のも。
今のも、ずるいよ……。
「ぐすっ……泣いちゃうでしょ」
「泣いてますよね?」
「そうだね……っ。私、魔族の自分の姿を見て、こんな私が受け入れられるのか不安でいっぱいだったけど……今は、この力と能力を得ることが出来て、本当によかったと思ってるよ」
この能力があったから友達になれたし、この能力があったから、助けたり助けられたりといった関係になることができる。
頼りっきりじゃなく、頼られるばかりでもない。二人じゃないとできないこと。
「私も、誇り高い古竜の長の娘の友達だと、胸を張って言えるような……ッ!?」
私が警戒心露わに町の方を見たのを、シルヴィアちゃんは察した。
「動きがありましたか!」
「うん、それじゃ……積もる話はまた後で!」
「もちろんです! まだまだあのラタンのロッキングチェアを、楽しんでいませんからね!」
シルヴィアちゃん……! 籐家具、気に入ってくれたんだ……嬉しい!
「そうだね! 交換して寝たりもしたいね!」
「はい!」
そして、シルヴィアちゃんは竜の姿になり、飛び立った。
「ありがとう、シルヴィアちゃん。……それじゃあ私も———」
私は……同時に動きがあった海の方を向いた。
「———本気を出しますかね!」