きゅうけいさんは出迎えに驚く
なかなか自分では気づけない細かい誤字報告、いつもありがとうございます!
ルマーニャの街が『魔族容認派』として宣言するのは、きっと容易なことではなかっただろう。
一人一人の考え方が違うのだ。決して一色にまとまるのは簡単なことではない。
むしろ、今も足踏みしている人がいて当然というぐらいだろう。
それでも、街全体がこの宣言をやって暴動が起こっている様子がない。
何かしらの理由があるだろうと思っていた。
思っていたけど……まさか、それがミーナちゃんによるものだったなんて……!
私にとっては、広大な海から海水をコップ一杯取ってくる程度の魔力消費でしかない。
その一度の魔法に対して、街を変えてしまえるほどのがんばりをしてくれたミーナちゃん。
単純に嬉しいし、頑張りすぎだと思うし、そこまで思い切った行動をやったことに心配すらある。
最初から友好的な人ばかりじゃなかっただろう。女の子が一人で動くにしてはあまりに危険な行為だ。
……いや、ミーナちゃんは13歳の当時でも十分に聡明な子だった。
自分がどれだけ危険なことをやっているか、気付いていないわけがないだろう。
それでも……それでもミーナちゃんは、私のために街の全てを変化させるまで動いてくれたのだ。
——会いたい。
今すぐ、ミーナちゃんに会いに行きたい。
でも、それは正当な手順を踏んでから。
こちらからはシルヴィアちゃんがリーダーとして、エッダちゃんがパーティの顔として。
そして向こう側からミーナちゃんが示してくれた道を壊さないように、大切に進んでいかなくては。
「……お、来ましたね」
門番さんが向こうを見ると、門番さん……と、もう一人めっちゃ恰幅のいい人が走ってきた。
うーん、顎とか貫禄ありますね。走るの大変そうである。
たくさん食べたんだろうなあ。イタリア料理はおいしいからね、仕方ないね。
「はあ……はあ……お待たせしました」
「い、いえ、だいじょーぶです! そんなに慌てなくてもいいのに」
門番さんはまだしも、向こうで必死についてきて未だにひーひー言ってる人は明らかに偉い人。しかも走り慣れている様子ももちろんない。
私への対応を慌てるような理由でもあったんだろうか。
「おちついて、おちついてー。時間はありますし、待ってますからねー」
私はその恰幅おじさんに声を掛けて、南の方を見る。
私の『レーダー』の索敵範囲は、ダークエルフの集落から遙か先まで見渡せる。
この街からは、まだ反応が遠い。ゆっくりしてはいられないとはいえ、そこまで急がないといけない、というほどではない。
待つこと二分ぐらい。
汗を拭いたおじさんは私のところまで恭しくやってきて、エッダちゃん達も確認した後に私へと頭を下げた。
「お待たせして申し訳ありませぬ。ワシはルマーニャの街冒険者ギルドの、ギルドマスターをしているオルランドという者ですじゃ。以後お見知りおきを」
いきなりギルマス自らここまでやってきていた!
びっくりだ、めっちゃ丁寧な対応。
これは見た目も立場もお偉いさんって感じの人だ!
すーぱーおそとむけスタイルで挨拶しなくては!
「お初にお目にかかります、オルランド様。わたくし、冒険者ギルドに登録している『異種族友の会』パーティーメンバーの火神球恵と申します。我々のためにギルドマスター自らご足労頂き、恐悦至極に存じます。つきましてはヴェアリーノとの件に関して、ご協力できればと思い馳せ参じました。どうぞ、よろしくお願いします」
最後に一歩引いて、お辞儀。
あまり待たせるのもあれなので、すぐに腰を上げると……まあ、やっぱりびっくりしちゃってるよね。
元人間だから分かる分かる。自分でやっておいてなんだけど、私の見た目これだからねー。
ある意味ギャップという意味で、おいしいのかも。
「こ、これはこれは丁寧に、ありがとうございます……。あまり硬くならずに接していただければと」
「そですか? でしたら、ダークエルフの集落の村長さんと同じぐらいの距離感で対応しますね。ところで……」
私はふと、最初に思った疑問を聞いてみた。
門番さんの時もそうだったけど、疑問に思ったらまずは聞く。
後回しにしていたら、大抵聞きそびれるか忘れちゃうからね。
後から『あ〜っ! あれ聞き忘れた! 答えは何かなあ……!』って悶々とするのに比べると、どんどん聞いちゃうのは悪くない。
「何故、わざわざ出迎えしてくれたんですか? そこまでしていただかなくても、ちゃんと向かいますよ」
私の疑問に、オルランドさんは顔を青ざめて汗を拭きながら答えた。
「そ、それは……我々冒険者ギルドにとっての絶対的存在、『グランドギルドマスター』のルフィナ様より言われたからでございますぞ……。あのお方は強く、カリスマ性もありますからな。曰く、『恩人だから、礼節を欠くような対応をした場合は首を換えてもらう』と言われまして……」
……うわあ、そういえばそうだった。
私の力強い味方であり、一緒にダンジョン攻略してベルさんを見つけてきたルフィナさん。その地位は、全てのギルドマスターを束ねる立場であるグランドギルドマスターなるもの。
そっか……ルフィナさんも、それだけ私のことをしっかり守ってくれているんだ。
私の味方、多いなあ……。
「それでは、そろそろギルドのワシの部屋へ向かいましょうぞ。いろいろとワシ自身、聞きたいこともありますからな」
空に目を向けたオルランドさんの鋭い目は、ただの恰幅のいいお偉いさんというだけではなく、幾つもの修羅場を経験したであろう風格を感じさせるものだった。
彼の視線の先は、ヴェアリーノの方を向いていた。






