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きゅうけいさんは本物の立役者を知る

 がんばるぞーっ。


 がんばるぞーっ。


 ぞーっ……。


 ……といっても、今は待つ時間である。

 門番の一人がギルドマスターのところに向かっているところなのだ。

 一応事前に『魔族容認派』という情報は知っているのだけれど、それはそれとしてどうしても不安にもなろうというもの。


 そわそわ。

 エッダちゃんもそわそわしつつ、こっちを向いた。


「だ、大丈夫ですよっ!」


 そう言って両手をぐっと握って、同じように不安そうな顔をした私を元気づけてくれる。


 ……エッダちゃんとも、付き合いが長い。だからこの子が普段はいつも不安げで『はわわ……』と呟いてばかりの、可愛い系全力投球みたいな女の子であることを私が誰よりも知っている。

 そんなエッダちゃんが、私のためとあらば勇気を出して、ここまで真剣に交渉してくれているのだ。

 嬉しくないわけがなかった。


 モンティ家に生まれて、その責任から頑張っていたけど……すぐに決壊して泣き出してしまうぐらい、不安に弱い涙もろい子。

 あれから、いろいろあった。思えば随分と長い間一緒に居るような気もするし、一瞬の出来事だったような気もする。


 だけど。

 その全ての積み重ねがあって、今の私達がいるのだ。


「エッダちゃんが大丈夫と言ってくれるのなら、きっと大丈夫だね!」

「ふえっ……!?」


 私はそんな喜びをかみしめながら、エッダちゃんを抱きしめて頭をなでなで。

 最近あんまりスキンシップをしていなかったので、元々末っ子的だったエッダちゃんをこうして可愛がれるのは、ある意味一番の癒やしの時間だ。


 そして、久々だから忘れていた。

 お腹にエッダちゃんの感触が当たって、大変に気持ちいいです。

 そして私は、エッダちゃんを抱きしめながら目を閉じて、ひとつのことを思い浮かべながら頭をなで続けた。


 エッダちゃん。

 君はあれから、相当成長したね……?


 ……あっ、門番さんと目が合った。

 そうだね、片方行ったのなら当然片方は残って私のことを見ていないといけないもんね。


「ど、どーもどーも……」


 頭に手を当てながら首を前に出す、いわゆる日本人平社員的な挨拶をした。

 どーもどーも、マイネームイズ無害さん、またの名を小市民さんです。どこにでもいる普通の魔族だよ。

 レベルカンストの魔王がどこにでもいてたまるかって?

 ごもっともです。


 門番さん一瞬驚き、視線を彷徨わせて……最後にがばっと後ろを向き、誰も居ないのを確認してこちらに向き直ると……怪訝そうな顔をしつつも私と同じような礼をした。

 こ、これは……! 初挨拶だ! 今のは返してもらえた!

 とても嬉しいので、思わず表情も緩むというもの。


 門番さんは困りつつも、街の中とこちらに視線を往復させていた。

 わかるよー、この状況困りものだよねー。私が人間だったとしたら、そりゃもう目の前に魔族が居ても困るよねー。


 でも、今日はそんな街に対して遠慮しない方針で行こうと思います!

 この街がどうして『魔族容認派』になったのか……そして、その認識はどれぐらい皆に共有されてるかを知る必要があるからね。

 門番さんを見た限りは、いきなり全員が心を許しているわけではなさそうに見える。


「えーっとお話いいでしょうか」

「あ……俺、ですよね……」


「ですです。あ、緊張しなくても大丈夫ですよー、私はうちのリーダーの尊厳のためにも、無害でやってますので!」


 これは本当です!


「それで……ええっと、ちょっとお話をと思いまして。難しい話でもなければ、どんな回答しても怒らないです。門番さんは、私みたいな魔族を容認する、という街の方針に関してどう思います?」


 結構いきなりぶっこみすぎたかな……と思ったけど、門番さんは意外とすんなり回答してくれた。


「んーと……正直、どう評価していいか分からないですね」

「分からない?」

「ええ。なんつったって俺はここを離れられないんで。竜族の村に行った人は悪くなかったって言うんですけど、俺はさっぱりわからないんですよ。ただまあ……」


 門番さんは一度言葉を区切って、私の方をじーっと見た後、エッダちゃんを見て……あ、パオラさんやレジーナさんも見ているかな。


「……なんか、魔族さんすげえ普通っすね。もっと偉そうだったり、下手に出てきたりすんのかなって思ったんですけど、目を閉じたら魔族とかさっぱり分からない感じです」


 お、おお……!

 かなり手応えがいい! どうしよう、びっくりだよ。


 ——そう楽観的に考えていた。


 門番さんは、とんでもない事実を投げ込んできた。


「やっぱり、話通りだったなあ」


 続く言葉に、私は言葉を失った。


「茶髪の子……えーっと家具の設計とかやってる旦那の娘さん……確か弟じゃなくてお姉さん側だったかな? その子がすごく積極的に広めてたんですね。魔族は人間と同じで、いい人とそうでない人がいるって。竜族の村で魔王に会いに行く話とか、最初に立候補したのもその子だったはずですね」


 その話。

 身体的特徴、家族構成。

 何より、私のことを積極的に受け入れてくれるように動いてくれた子。


 間違いない。

 ルマーニャの街が『魔族容認派』になった直接的要因は……ミーナちゃんだ!

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