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きゅうけいさんは子供大好き

「そういえば」


 ここでテオ君が、カルメンさんの方を見た。


「二人ともこっち来てていいの? ノエミは?」

「グラッツィアに任せてるわ」

「ならいいけど……」


 テオ君の質問が終わったところで、エッダちゃんが疑問に声を上げた。

 そしてその疑問は、私も全く同じ事を思った。


「ノエミ? どなたかお客様が来ているの?」

「うん、確かノエミって子はいなかったよね」


 私は以前、ダークエルフの集落の人達を全員治した。その際に、一人一人エッダちゃんが声を掛けて治していった。

 だから全員暗記とはいかなくとも、エッダちゃんが呼ばなかった名前が聞いたことない名前だったら、ダークエルフではないことぐらい分かる。


 その問いに対して、テオ君が「ああ」と何かに気付いたように手を叩いた。


「そういえば、しばらく会ってなかったからすっかり忘れてた」

「え? え?」


 テオ君の視線がヴァレリオお父さんに。

 そしてヴァレリオさんの困ったような笑みが、カルメンお母さんに。


 カルメンさんは満面の笑みで立ち上がり、エッダちゃんの手を引いた。


「すぐに帰りましょう!」

「はわわ……」


 ちょっと戸惑いつつも、言われるままに立ち上がってカルメンさんの後をついていくエッダちゃん。

 慌ただしく出て行く直前にロベルトさんに会釈して、そんな姿をロベルトさんはむしろ嬉しそうに見送っていた。


「えっ。……エッ!? 帰っちゃった!」


 カルメンさん、相変わらずマイペースでぐいぐいいっちゃうなあ! ついていかなくちゃ!


「ロベルトさん、えっと話は」

「一通り話しておくことは話したでしょう。ヴェアリーノとルマーニャの人間の差は分かりませんが、ある程度全ての人間に警戒しつつ、自分たちの主張をしていくつもりですよ。私達のことは私達に任せて、カガミさんはエッダを追ってください」

「ありがとうございます!」


 私もロベルトさんに慌ただしく会釈して、パオラさんとレジーナさんに目配せする。

 二人とも頷いて、ヴァレリオさんとテオ君に先導してもらいエッダちゃんのおうちモンティ家に向かうこととなった。


 -


 モンティ家に入って真っ先に聞こえてきたのが、元気な泣き声。

 その高く遠慮を知らない声量と、階段の奥から聞こえてくるエッダちゃんの「わあああ!」という嬉しさを滲ませる声に、私は何があったのかすぐに理解した。


 急いで私も声のする方に向かい、奥の部屋に入ると……!


「はわ、はわ、泣き止んでくださいぃ〜……!」


 そこには、黒い肌に銀の髪が小さく生えた、ちっちゃい子を抱いたエッダちゃんの姿。


 そう——ノエミちゃんは、エッダちゃんの妹ですっ!


 アルティメット肉食系ダークエルフサキュバスのカルメンさん、ヴァレリオさんを襲ってました!

 ヴァレリオさんがカルメンさんを襲った可能性? 万に一つもないと思います。

 あの呟き姿は一度見たきりだけど、その力関係は私にもはっきり分かる。

 よくぞあの全盛期モードのカルメンさんを相手にして、無事でいられましたね……今足腰立たなくなっていても驚かなかったです……。


 慌てふためくエッダちゃんの隣には、ニコニコ笑顔のカルメンさんとグラッツィアさん。

 新しい家族を紹介する、ほんわか素敵な家族団欒の絵だ。


 しかし、傍目には微笑ましくとも本人にとってはそうではないもの。


「はわわ、はわわ、はわわわわ……」


 全く泣き止む様子のない新たな妹に、若干涙目になりつつあるエッダちゃん。

 すっかりはわわモードになった姿がちょっと可哀想だなと思っちゃうぐらいには付き合いの長いエッダちゃんの近くに行き、赤ん坊をひょいっと取る。


「あっ……」

「大丈夫」



 そして私は、お腹を下に向けてお尻に手を当てる。


(【ハイドレベル:1】)


 レベルを下げて、赤ん坊の重みに口元を緩めながらお尻を軽くぽんぽんと叩く。

 これ、すごくいいって聞いてたけどほんとに効果あった。覚えていて良かった。

 落ち着いてきたノエミちゃんを見て、私はレベルを戻す。


(お尻が濡れてる不快感もあるかも。それじゃ【クリーン】【ドライファッション】……どうかな?)


 ぴたりと泣き止んだノエミちゃんは、すぐに笑顔になってきゃっきゃっと笑い出した。


「赤ん坊の扱いが一番上手いのがうちの魔王様っていう構図、面白すぎるわね……」


 パオラさんの呆れたような苦笑に、思わずみんな笑い出した。

 どーもどーも、子供大好ききゅうけいさんです。

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