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きゅうけいさんは久々に集落へと入る

 テオ君はもう一人に見張りを任せると、私達に同行することになった。


 久々に入る、日中でも暗い暗い不思議な森。

 光を通さない木々のベールに包まれた中は、青い魔石が神秘的に光る綺麗な場所、ダークエルフの集落だ。


 まず森に入ってすぐに、ダークエルフの皆さんが様子を察して出迎えてくれた。


「あっ、きゅうけいさん! エッダも来てる!」

「知らない人もいるね」

「おーい、きゅうけいさーん!」


 久々に会ったらどんなものかなと思っていたけど、びっくりするぐらいフレンドリー! 私はもう満面の笑みで両手を振りながらみんなに応えていく。


「わーっ! お久しぶりでーす!」


 明るく飛び跳ねていると、私の前面に回り込んで驚いた顔をしたパオラさんと目が合う。


「ほんと、私が言うのも何だけど、よくここまで受け入れてもらえてるよね……」

「それに関しては、正直返事してる私自身がびっくりしてるというか……よくみんな受け入れてくれてるなあって」

「ん? 何か特別なことをしたわけではないの?」

「ちょっと病気を治したぐらいだよ」


 パオラさんは「ふーん」と呟いてエッダちゃんの方に向かった。


「事実は?」

「エリクサーとクリアエリクサーを合計100本以上使ってくれました!」

「そんなことだろうと思ったわ……」


 はぁ……と溜息をついて、頭を振るパオラさん。

 いやあ、確かに価格を聞いた後だとその反応にも納得はしちゃうけど……でも私からしたら、ポーション作るのとエリクサー作るのって寸分違わず手間が同じだからなあ。


 ま、その程度の手間でみんなが元気になってくれるのなら……何よりもエッダちゃんが笑顔になってくれるのなら、私としては何よりも満足だよ。


 -


 勝手知ったる、というほどでもない程度に見知った、一度エッダちゃんに案内されて通ったっきりのダークエルフの集落。

 それでも、この道がどこに続いていくかは覚えている。こっち方面は間違いなく、村長ロベルトさんの大きな屋敷。


「って、エッダちゃんはお父さんお母さんに挨拶していかなくていいの?」

「もちろん後で行きますよぉ。でも、ね」


 エッダちゃんはテオ君を見る。

 その視線を受けたテオ君は小さく頷くと、私の方に顔を向けてはっきりと言った。


「モンティ家は、村を護る者。まずは村長に報告をしなければ、きっと両親共々叱責が来るでしょう」


 テオ君の発言を、当然のように受け入れているエッダちゃん。

 二人にとって、これは当たり前のことなんだ。ストイックだなあ……。

 ちょっとぐらい甘えても、と言おうと思ったけど……これはきっと、私の勝手な理想の押しつけに過ぎないんだろうね。

 だからエッダちゃんもテオ君も、自分たちのお役目に誇りを持ってやっている。

 そこに部外者である私がどうこう言うなんておこがましいということだ——。




 ——っていう考え自体は、まあ合ってたと思う。


「まあ、エッダ!」

「えっお母さん!?」


 エッダちゃんの両親、最初からロベルトさんの家にいましたーっ! 結果的にエッダちゃんは、ストレートで両親に会いに来ただけになっちゃいましたね!

 まあ、結果オーライ!


 賑やかな様子に、メイドのアンジョラさんがちらと顔を出して、私と目が合うとぱあっと笑顔で笑顔が可愛いっ! と思っているうちにすぐに礼をして部屋の中に走って行った。


「とりあえず、あがってお話を聞きましょうか。後ろの方達も、きゅうけいさんの知り合いよね」

「うん、シルヴィアちゃんの代わりに来てもらいました。また後で紹介しまーす」


 私の返事を聞いて頷くと、みんなで屋敷の中へと入った。

 久々のダークエルフの集落で一番の大きな屋敷。前来た時と変わらず、とっても綺麗だ。


 広間に向かうと、アンジョラさんから話を聞いて立ち上がっていたロベルトさんとヴァレリオさんがいた。家族勢揃いだね!


「あ、えっとえっと、ただいま戻りました! どちらかというと用事で立ち寄ったんだけどね。村長は中に?」

「ええ。きゅうけいさんも、お疲れ様。エッダのことありがとうね」

「いえいえっ! むしろエッダちゃんがたくさんヒントをくれたし、助かった方が多かったです! これはほんとのほんと、エイメラ大陸とかエッダちゃんなしでは攻略できなかったぐらい」

「まあまあ」


 そんな娘の活躍にカルメンさんは喜び、ヴァレリオさんは満足そうに頷く。

 ロベルトさんも久々に見るエッダちゃんの姿に笑顔を向けると、私の方へ真剣な顔で向き直る。


「さて、カガミさん。久々の訪問ということですが……何かありましたか?」

「えっと……突然の訪問ですが、たまたま来たかったからかもしれませんよ。何故そう思うか、聞いてもいいですか?」

「シルヴィア殿がいらっしゃらない。挨拶に来るのなら、カガミさんが来たがったのではないかなと思いましてね。内面を推察するようで少し不躾でしたかな」

「いえいえ! もうほんとおっしゃるとおりで! シルヴィアちゃんとは一緒に来たかったんですが、ワケあって別行動となりました」


 ああ、そりゃそうだなあ。私がみんなに会いに来るのなら、シルヴィアちゃんと一緒じゃないなんてありえない。

 そのことにすぐ気付いてくれたあたり、こんな魔王の私に対して、すごく理解があって嬉しい。さすが究極紳士スーパージェントルマン様。ほんと大好き。

 でも今は、可愛いマルティーナさんのことも大好きなので、泥棒猫はしないよ。


 ふと、隣から視線を感じる。

 振り返ると、目が合ったのはレジーナさんだった。

 糸目のほんわかレジーナさん、珍しくすっごく目ん玉まんまるにして驚いている。


 なになに? どったの?


「……きゅうけいさんって、カガミって名前なの?」

「そっから!?」


 さすがに魔王の本名が『きゅうけいさん』なわけないと思うなあ!

 っていうかそれだけ私って自分のこと火神球惠って忘れちゃってるんだ、とほほ。

 一人、ずっと覚えてくれていたロベルトさん、さすがだね!

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