きゅうけいさんは任された
ブライトエルフの村が心配。ってわけで、私達の行き先は再びマルティーナさん達の村になりそう。
「仕方ないね、みんな心配だし……でも、ブライトエルフの集落のみんななら、そう簡単に負けるようなことは――」
「いえ、違います」
「――え?」
シルヴィアちゃんが、私の話を遮って首を振る。
なんでだろうと思っていたけど、話を止めた理由を話した。
「ブライトエルフの集落と騒動になっているかどうかは未知数。ですが、今フェンヴェーナの人間と間違いなく争っている人達がいます」
「あ」
そうだ、当たり前だ。
マルティーナさん達が今どうなっているかは分からないけど、魔族追放派のヴェアリーノは間違いなく魔族容認派のルマーニャと争っている……!
「ということは」
「はい。戦力は確実にルマーニャ方面へと向かわせているでしょうね」
なるほど、納得だ。
争っていると情報が来た時点で、たとえブライトエルフと争っていたとしても、そっちに集中するはず。
「何より、竜族の村がブライトエルフの村に救援に行ったことは、冒険者ギルドを通じて知られています。まとめ役がルフィナで、私達が行ったんですから。その上で、古竜の私が助けに入ると分かっていて襲うとは思えません」
「うん。……でも、それじゃなんで? とんぼ帰りかと思いきやブライトエルフの集落ではない?」
シルヴィアちゃんの言っていることがなんだか矛盾している気がする。
「すみません、分かりにくかったですね。つまり……向かうのはあたしだけです。ルマーニャ方面には、きゅうけいさんが向かってください」
……えっ?
「別行動?」
「そう、なりますね。今回の問題は、容易ではありません。ヴェアリーノ側が何も考えずに反抗してきているとは思えない……絶対とは言えませんが。だから、ブライトエルフの集落で魔族が見つかるのはまずい。向こうはあたし一人で説明して、きゅうけいさんはルマーニャ方面に……ダークエルフの集落に向かってください」
シルヴィアちゃんの言うことは、正しい。
いつもその頭脳に助けられてきたし、私自身もその判断で正しいと思っている。
思っているけど……。
「シルヴィアちゃんと別行動、なんて……」
「あら、きゅうけいさんはあたしのこと、信用できませんか?」
「そ、そういうんじゃないよ! そうじゃなくて……」
「ふふっ、分かってますよ。あまりにも長い間一緒にいたから……ちょっとでも離れるの、あたしも寂しいですから」
シルヴィアちゃん……!
そうか、別行動が心細いのは何も私だけじゃないのだ。
むしろ魔王が襲ってきたこと、そしてレベルのことを考えると、シルヴィアちゃんにとって別行動はデメリットの方が多い。
「きゅうけいさんの隣は、何よりも安全ですから。でも今は、そんなきゅうけいさんと、きゅうけいさんの育てたエッダの力をルマーニャを救うことに使ってほしいんです。あの街には、お世話になりましたから」
今でも思い出す、ケルベロスの襲撃。
シルヴィアちゃんに街の守護を任せていたら、シルヴィアちゃんがやられかけたほど。
それでもスタンピードの全討伐とケルベロスをドラゴンブレスで吹き飛ばしたシルヴィアちゃんは、間違いなく街の皆にとって英雄だ。
そして、歓迎してくれた街の皆のことを、シルヴィアちゃんだって当然大切に考えているはず。
「何かを守りながら戦うのは難しい。他の人なら任せられませんが、きゅうけいさんなら絶対に大丈夫だと思っています。だから、あたしはルマーニャをきゅうけいさんに任せたい」
シルヴィアちゃん……そこまで私のことを……。
パーティーリーダーに、こんなに信頼されているのだ。
頑張らないわけには、いかないよね。
「分かった。ルマーニャのみんなはしっかり守るから、めちゃ任せて!」
「はい、これであたしも安心です」
最後にシルヴィアちゃんの笑顔を見て、私も笑顔になる。
……あの洞窟に飛ばされたときは、本当に心細かった。
いつの間にか、私はもう一人ではいられなくなってしまったのだ。
「でも、さすがにきゅうけいさんとエッダだけだと移動手段もないですし」
ん?
「いろいろと心配なので、移動ぐらいは誰かに任せたいですね。それじゃあ——」
「は〜い!」
私が話の展開に目を丸くしていると、すぐ後ろから声がきこえてきた。
「じゃあ私が、きゅうけいさんの移動手段! どうかしら?」
そこで声を上げたのは、なんと——!
「——レジーナさん!?」






