きゅうけいさんは運命の岐路を予感する
名残惜しいブライトエルフの集落もとい、友達となったマルティーナ・ロッティさんが長を務めるロッティの町を出る。
シーナさん、ファビアさんがお見送り。今日はカストさんが南方面の見張り役。
シルヴィアちゃんが古竜の姿になったところで、名残惜しいけどいよいよお別れだ。
そろそろ乗ろうとかいうタイミングで、ファビアさんが一歩出て、私……じゃなくてビーチェさんかな? そちらに向かって頭を下げた。
「改めまして謝罪をさせてください。本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした……」
「あ、それ知ってるわよ」
「……え?」
不思議な返事をしたビーチェさんが、ニコニコ笑いながら指を振る。
「こういう時は『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』と言うの。そうやってみんな、仲良くなっていくのよ。ハイやり直しね」
「……! はいっ、わかりました! ビーチェさん、本当にありがとうございました! 長を守ってくれて、私を止めてくれて……! ビーチェさんがいなかったら、私は一生の後悔を引き摺るところでした。だからビーチェさんは、私の救世主様です!」
「そこまで言われちゃうと恥ずかしいわね」
自分で催促しておいて照れちゃうビーチェさんかわいいです。
照れを隠すように、シルヴィアちゃんの首と肩の間らあたりにひょいっとジャンプして腰掛ける。
私とエッダちゃんもそれに次いでシルヴィアちゃんの背中に乗った。
「ビーチェさんは、強くて格好良くて、このパーティでも本当に人間なのかと思うぐらいで……」
「あら、それは違うわよ? 【マーメイドフォーム】」
ここでビーチェさん、なんと人魚の姿になったーっ!?
古竜モードのシルヴィアちゃん、めちゃ目見開いてるよ! 初見でも表情まるわかりってぐらいびっくりしてるよ!
ていうかその姿わざわざ出すって、ほんとこの人度胸お化けすぎるでしょ!?
「————え、え? えええっ!?」
「『異種族友の会』って言ったじゃない。私は元魔王筆頭眷属、ビーチェ。レベル9000のマーメイドよ。まあ……【ヒューマンフォーム】」
自己紹介をさらっと終えると、人間の姿に戻ってウインク。あっそれ最高に似合ってます。ほんっと何でも似合うお姫様ルックスだなあ、羨ましい。
「人間の脚が好きで、いつもこの格好だけどね。本領発揮は海よ」
「……『異種族友の会』って、凄いんですね……」
「他にも同じ魔王筆頭眷属仲間のフェニックスやサキュバスクイーンもいるし、暇があったらみんな呼んで遊びに来るのもいいわね」
「どんなパーティなんですかそれ」
「いやほんと、びっくりっすね……」
さすがに二人ともあきれ顔からもう笑うしかないって感じの表情になっちゃった。
うん、気持ちはわかる。
「まー今更っスね」
「……シーナさん、随分堂々としてますね……?」
「いやだって」
そしてシーナさん、私を指さす。
「そこにいる青いの、魔王ベルフェゴールだし」
あ、そういえばシーナさんにしか自己紹介してなかった。
ファビアさん、今度こそ愕然。そりゃ驚くね……。
「はーい! ベルフェゴールきゅうけいさんでーす! でもほんわか可愛い先代ベルフェゴールさんが戻ってきたので、今の私は魔王のつもりなんてない、ほんとにただのきゅうけいさん! あなたの友達希望のきゅうけいさんでーす!」
「と、友達希望!?」
「ファビアさんも、エッダちゃんがいたとはいえ、私を受け入れてくれてありがとね! みんな大好きだよー!」
「……ああもう、本当に明るい人ですねあなたは! 緊張していた私がバカバカしくなっちゃうじゃないですか!」
大きく口を開けて、緑の髪の清楚エルフが大笑いする。
そんな今までになく心を開いたような垢抜けた表情から一転、晴れやかな笑顔で両手を挙げて親指を立てた。
「オッケー! あなたが友達と言うのなら、私も友達! エッダさんの友達なら私も友達でオッケーオッケー! 友達の友達は大体友達!」
「えっ、マジで!? うわーっ言ってみるもんだーっ! ありがとーっ!」
「お安い御用だよ、わっはっは! 今度は酔うまで飲ませるからねー!」
うわーっファビアさん最後に魅力爆発!
深緑の美少女、こんなにはっちゃけ系女子だったんだ。ギャップ萌えでちょーかわいい!
「いい話のところ突っ込むのもアレっすけど、友達の友達は友達じゃないと思うっす……」
あはは……うん、私もそう思う。
友達の友達が見えるクローズドSNSに昔登録してたけど、友達の友達はだいたい他人でした、ハイ。
————でも、そういう時はどうすればいいか。
友達申請して、『友達の友達』という表記を『友達』にしてしまえばいいのだ。
その一歩で、世界はぶわーっと広がる。
「またね! いつでも遊びに来てね!」
「んん……村の守りがあるんで……。でも、竜族の村には興味あるっスよ」
「村ほっぽって遊びに行くよー!」
「ほんとに行きかねないんスよねこいつの性格からすると……」
はっちゃけ度フルマックスのファビアさんと、頭を掻きながら肩をすくめるシーナさんの姿を最後に焼き付けて、シルヴィアちゃんの身体が起き上がる。『グル』と小さく一鳴きして、浮遊感とともに二人の姿が一気に小さくなる。
ゲームの大ジャンプをした時のような、眼下一面が森の視界になって……そのまま、空へ。
最後の最後まで、いい会話ができたと思う。
あれだけちょっとの時間でファビアさんの魅力が出たんだ、きっとマルティーナさんやカストさんも、そして治していった一人一人も。
みんながみんな、とてつもなく素敵な魅力を秘めているに違いない。
そして同時に思ったのだ。
絶対エッダちゃんの故郷も、みんな素敵な魅力を備えている。
そりゃもー、素敵の連続に違いないって、確信している。
だってこれだけ魅力たっぷりのエッダちゃんが、一人でも死ぬと後を追うとまで言ってのけた人たちなのだ。
絶対絶対、みんな好きになる。
私は、かつての出会いへの再発見に心を躍らせながら、上空でうきうき身体を揺らした。
ちなみにビーチェさん、シルヴィアちゃんの背中の上で倒立し始めてました。
ほんとこの旅で一番ビーチェさんが色々ぶっとんでたよ!?
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「それで、村に帰ってきて開口一番に、私へのお礼に出向きたいと言ったわけ……?」
「はーい! なんだかもう、最近ルフィナさんにはお世話になりっぱなしで、ああ一年前ももっとおしゃべりしたかったなあなんて思っちゃうぐらいでしてうへへ」
「どう考えても全ての状況で、私がお礼を言わないといけないはずなんだけどね? なんかもう、きゅうけいさんが無自覚タラシすぎて、私ちょっと本気でやられそうだよね?」
無自覚タラシという、なんとも不名誉……名誉? な称号をもらってしまった。
いやいや、私めっちゃ魔王。見た目真っ青のきゅうけいさんは、初めて湖で自分の顔を見て悲鳴上げた、魔王ベルフェゴール。
そんなことできるよーなタイプではないです、むしろこんな私を受け入れてくれる私以外の全てが神、ゴッド。つまりルフィナさんも神。略してゴッドルフィナ。
「私がタラシとかないない、むしろ私を見て引かないルフィナさんの方が最高なんで。あ、それと依頼料なんですけど。エリクサー類は数百本作った価格はぶっちゃけ大した魔力消費もなかったんで除外して、依頼の対価はシルヴィアちゃんと決めてね。できれば町長のマルティーナさんの負担にならない金額だといいな。私は貨幣とか要らないから、シルヴィアちゃんとルフィナさんで山分けしてくれると助かりまーす」
「だからそういうとこだよ!?」
まあ、エリクサー作ってタダ働きは確かに太っ腹なんだと思う。
でもポーション錬金術師のポーション一本分より魔力使わないし、疲れた分はめっちゃ休憩させていただきましたし、もうほんとあのベッド使えたこととか対価として最高でしたね……。
後はエッダちゃんのレベルが上がったこと。
これはもうほんと、私がお金払いたいぐらい嬉しい。
どうしてもパワーレベリングは、相手がいないとうまくいかないのだ。あんなにちょうどいいボスがいるとは思わなかったので、大変ありがたい。
「ま、そーゆーわけで、私はごはんたべてきまーす」
「はー……わかりました。なるべくきゅうけいさんの要望に見合うように処理します」
「やっぱりルフィナさんいいひと!」
「そーゆーとこだぞー」
最後のぼやきを心地よく背中に受けながら、私は食堂へゴー!
ギルドを出たら、空は雲一つない快晴だった。
うーん、ほんとここ最近いいこと尽くめだなあ……。
いいのかなー、いいのかなー、うっへへへへー。
こんなに幸せで……いいのです! 存分に受け入れましょう!
イエーイ!
食堂に到着したら、パオラさんとベルさんが仲良く正面向き合ってパスタ食べてた。
二人が同時にこちらを見て、ぱたぱたと手を振る。
「タマエちゃん、おかえり〜」
「きゅうけいさん、お疲れさま」
「帰ったよーっ!」
怠惰組が揃いましたね! 私も食堂でパスタを注文してもっちゃもっちゃ食べます。
「ブライトエルフの集落もみんな友達になれたし、いいことばっかり!」
「本当に、きゅうけいさんは人間との垣根を跳び越えそうだなあ」
「でしょでしょー。もしかしたら、いけるんじゃないかな? って最近は思うんだよね」
みんなで楽しく、和気あいあいと喋りながらパスタを食べていた。
ここ最近の、普通の日常に戻ってきた感じ。
……そう。
本当に、普通の日常の一日だったのだ。
————この瞬間までは。
「きゅうけいさん、こちらにいらっしゃいましたか!」
「マモンさん!」
食堂にやってきたと同時に、マモンさんが目の前に飛び込んできた。
うわっテーブルちょっと揺れてる! 静かに……って、すんごい慌ててるの珍しい。
「どど、どうしたんですか?」
「何をのんきにしているのです!? って、情報が出たばかりでしたネ……」
「……何か、あったんですか……?」
マモンさんは大きく深呼吸すると、私の目を見ながら一言。
「ルマーニャと、ヴェアリーノ。この二つの町の教団が、『魔族容認派』と『魔族追放派』で分かれました。それぞれの町にそれぞれの派閥があり、混乱を起こし始めています」
……それは、私の今後を左右する、大きなターニングポイントだった。
これにて五章終了です!
なんか不安そうな引きですが、次の章もしっかりあったかい話にいていく予定です。
本当に光栄で有り難いことに、Renta!様にて絵ノベル+コミカライズの機会をいただき、更新再開のきっかけをいただけました。
更新再開と、配信開始とともに新たにいろんな方に見ていただけて、本当に嬉しい限りです……!
https://twitter.com/MasamiT/status/1194607297265164288
青肌のままOKいただけて、嬉しい反面どこまで受け入れてもらえるか心配でしたが……いざ蓋を開けると手に取ってくださる方が多くて本当に嬉しいです。青肌黒白目魔族は一般人気ジャンル(願望)
沢山かわいいフルカラー挿絵がありますので、一巻あたり100円のきゅうけいさん、是非是非買ってくださいませ!(ちなみに第1巻は無料です)
https://twitter.com/MasamiT/status/1189212053900349442
今ならマイリスト登録すると、私と一緒に、次のメールも『きゅ…』なのかが確認できます!(ええ……?)
実は冬コミに申し込んでいて、ちょっと(元々の制作活動だった)音楽制作のブランクがあるので、しばらくそちらに注力しようと思います。
(こちらの作品とは関係ないですが、『勇者の村の村人は魔族の女に懐かれる』の書籍を持ってスペースに来ていただけたらサインとイラストを描きます
https://twitter.com/MasamiT/status/1112183205824589824
こんなの)
きゅうけいさんは勿論まだまだ続きます! ので、もし応援いただけるのでしたら、
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いただけると、私がめちゃうれしいです!(超アバウト!)
来月はコミカライズも始まる予定ですので、是非是非よろしくお願いします!






