きゅうけいさんは一緒に考える
……んん……朝……。
朝だ……!
そう、今日はマルティーナさんのふかふかキングサイズベッドに包まれて眠ったんだ。
なんかもうめちゃきもちよかった。二回分ぐらい寝た気がする。
そして周りには!
……誰もいませんでした。
えっ、置いて行かれた……? しゅん……。
……なんてことは、さすがにもう思わない。眠っている私に気を遣って、静かに起き上がってくれたはずだ。
みんなとの信頼関係、もちろんそれぐらいあるよ。
だから私が一人っきりなのは、最後までグースカ寝てたからですね、よーし、起きよ起きよ!
お部屋を出たら、ちょうどメイドさんがいらっしゃった。
ダークエルフの集落で見たからそりゃいるだろうとは思ってたけど、エルフでメイドってめちゃ新鮮。
ゲームでのタカビーエルフ同様、誇り高いというかプライド高いキャラ多いから、こうやって最初から丁寧で大人しいエルフはなかなか見ない。
「おはようございます、きゅうけい様」
「はーい、おはようございます、かわいいメイドさんっ!」
「ふふ……改めまして、昨日は助けていただきありがとうございました」
「あ、丁寧にどーもどーも。お仕事だからね、困ったことがあったら遠慮なく頼ってどーぞ!」
そんな会話を楽しんで、メイドさんの案内で食卓へ。
入ると、そこにいたのはエッダちゃん。
「きゅうけいさん! おはようございますぅ!」
「おはよー!」
一日の始まりがエッダちゃんのお日様スマイルでハイもう幸せ。
メイドさんが料理を用意しに離れたところで、私はエッダちゃんの隣へと座った。
……エッダちゃんが食卓にいた理由は、まだ食べてたからだった。てゆーか、すんごい巨大なステーキを食べてた。
そうだね。たくさん食べて、エッダちゃんがカルメンママと同じわがままボディになったんだもんね、これぐらい食べても全部胸にしか栄養いかないよね。
ほんと見れば見るほどすんごい食事量と、それに似合わない痩せの大食いらしい細い腕と腰。ちゃんと筋肉はあるって感じなんだけど、本当にびっくりのスタイルである。
「お待たせしました」
「わっ、ありがとうございます、いただきます!」
私の方は、サンドイッチとサラダとチーズとコーヒーというメニューだった。
なるほど、朝からステーキ要求したのはエッダちゃんだからなんだね。ほんとすごいね……。
そんなわけで私は、エッダちゃんと二人でおしゃべりしつつ仲良く朝食を食べたのだった。
ちなみにエッダちゃんの方が先に食べ終わりましたね……。
食事が終わると、待っててくれたエッダちゃんと一緒に広間へ。
既にその部屋にはシルヴィアちゃんがいて、マルティーナさんとお話してた。
「起きましたね。おはようございます、きゅうけいさん」
「おはよー、シルヴィアちゃん! マルティーナさん!」
「はい、おはようございます」
マルティーナさんもすっかり物腰穏やかで視線も柔らかく、本来のほんわかした母性エルフのスマイルになって一安心。この人もなんとも可愛い魅力のある人である。
「そういえば、ビーチェさんは?」
「ビーチェさんは、じっとしていられないって言って、外でアルフォンシーナさんとカストさんの二人と一緒に、魔物の討伐に見回りしてるわ」
起き抜けからそれって、おてんば人魚姫さんほんとアクティブすぎる……。
なんていうか、パオラさんと同じような感覚で接することになるかなと思ってたけど、とんでもない。
事前のイメージとは正反対で、きつそうなパオラさんが丁寧な感じで、お姫様みたいなビーチェさんはなかなか好き放題に動いてる。
うーん、それぞれの種族も含めて先入観はよくないなあ。
「ところで今は何の話してるのー?」
女子会の基本はおしゃべり。だから女の子同士のおしゃべりには加わるのが基本なのです。
……なんてのんきなことを私は考えていたので、その後に聞いたシルヴィアちゃんの意識の高さに反省しました。
「襲撃に関して、考えていました」
「へ?」
「昨日からずっと、狙われた理由や魔物の発生、ダークエルフの集落で起こったことなど……マルティーナさんと情報のすりあわせを行っていたんです。ベッドの中で少し考えて、ある程度整理がついたので意見を聞こうと相談していました」
……わ、わあお……すんません全然私とノリが違いました。
さすができるリーダーのシルヴィアちゃん、この騒動の理由と解決をずっと考えてた。お気楽にぐーすか寝てた私とは段違いだ。
反省反省。
「そうですね、きゅうけいさんにも聞いてもらいましょう。我々は昨日、この集落へと到着しました。これはいいですね」
「うん」
「そして、やってきたタイミングで魔物が集まっていました」
「あっ、そういえばタイミング良かったよね」
「はい。……タイミングが良かった。良すぎましたね」
……何か、含みのある言い方をした。
シルヴィアちゃんが言うには、魔物をけしかけてくるタイミングが良すぎたということ。
そして私たちは、救援の依頼を請けてすぐにやってきたこと。
いや、そもそも……。
「……この集落に『暴食の吐息』が使われたのは、いつだった?」
「やはり気づきましたか。そう、この集落が魔族に狙われたのと、襲われたので数日の開きがあります。弱体し切るにしては早すぎます、何より……」
「……別に、魔物に襲わせなくても、エルフはほぼ全滅した」
「はい」
確かに……。ダークエルフの集落では、もっとみんな弱体化してたし、エッダちゃん一人しか守りにいなかった。
それに比べると今回は、かなりの強行軍だなって思う。
「……なんだか、まるで……目的、ブライトエルフじゃなくて、私たちみたいですねぇ……?」
ぽつりと、エッダちゃんが感想をこぼした。
……私はエッダちゃんの言葉を聞いて、何か頭の中でかちりとはまった感覚があった。
「トスカニーニ一族、テオドロのお爺さんみたいに、大きな筆頭眷属を狩ったわけではないはずですし……最近は、あまり魔族も出ていなかったらしいので、余計に……」
「そうなんだ。じゃあ本当に急な襲来なんだね」
「ですですぅ。だから、そんな急激に相手側が動くほど恨まれているようなことって……」
恨まれる。
エッダちゃんの再びの一言に、再び何かがかちっと嵌まり、私がその正体を考える前に、目の前から「あ」と声がこぼれる。
「……シルヴィアちゃん?」
「いた。いました」
「な、何が?」
「恨まれている人」
シルヴィアちゃんが、私をじーっと見て一言。
「きゅうけいさん。ルシファーの腕を切り落としたじゃないですか」
「————あっ!」
そうだ! 傲慢の魔王、思いっきり腕を切り落としてた! じゃあ相手が狙うのなんて、どー考えても私しかいないじゃないかっ!
「うわちゃー! それだー!」
「ええ。最初から我々が目的で、まんまと誘い出された可能性が高いです。でも……」
シルヴィアちゃんが、最後に口元に手を当てて考える。
「何故、このブライトエルフの集落を狙ったのかしら……」
「偶然?」
「それもあるとは思いますけど、でも……」
シルヴィアちゃん、窓の外を見る。
ビーチェさんが戻ってきていて、私は手を振り返す。
「まずは何より、相手の魔族を倒しましょう!」
「了解!」
『きゅうけいさんは休憩したい』四巻も好調でした、ありがとうございます!
https://twitter.com/MasamiT/status/1194607297265164288
エッダちゃんときゅうけいさんの大きい挿絵もありますので、是非読んでいってくださいませ!






