きゅうけいさんはとってもがんばる
https://twitter.com/MasamiT/status/1193551534975356928
きゅうけいさんは休憩したい、次の配信が始まりました!
今回はきゅうけいさんとエッダちゃんの挿絵です、よろしくお願いします!
シーナさんが、金髪ロングの『いかにもフォーマルなエルフです!』って感じの人へとクリアエリクサーを飲ませる。
苦しそうにしていた顔がすぐに良くなり、もう一本のエリクサーを飲んで体調が完全に回復する。
「おっけ、大丈夫そうね」
「はい、はい……! トスカニーニさん、ありがとうございます……!」
おお、私より少し大きいぐらいの結構な身の丈ありそうなスレンダー美女だけど、シーナさんより年下? ちょっとびっくり。
ほんとエルフ、見た目と年齢まったくかみ合わないので油断できないね。
「ううん、私は何もできなかったんよ。ヘルプ求めて、助けがくるまで結局待つだけ。お礼なら、きゅうけいさんに言ってほしいな」
「きゅうけいさん、って、それ名前ですか?」
「そ。ホラ、そこの魔族」
視線がベッドから反対側のこちらに向いて、今気づいたって感じでくわっと目を見開く!
ま、まあ家の中に魔族がいたらめっちゃびっくりしますよね。ていうか魔王ですからね私。
「……あの魔族が、きゅうけいさん、なのですか?」
「そうそう。一応言っておくけど、私じゃ足元にも及ばないぐらい強い古竜サンが来てるのね。そのパーティの部下だから、きゅうけいさん。仲も良さそうだし……っと、そういえばあなたは知らないんだっけ、エッダさん」
私の横にいたエッダちゃんが、ぴょんと私を庇うように前に出る。
「初めまして、私はエッダ・モンティ。ヴァレリオ・モンティの娘で『魔族狩り』モンティ家の末娘です」
「魔族狩り……って、トスカニーニさんと同じ?」
「そうですよぉ。そしてこちらのきゅうけいさんは、人類の味方のためなら魔族も倒してくれて、それ以上にこうやってたくさん薬を作ってくれる、世界一特別で素敵な魔族さんなのですぅ!」
両手を広げて元気よくアピール! うへへ、ありがとうございます。
エッダちゃんはその両手をゆっくり下げると、俯きながらテンションを下げる。
「……ダークエルフの集落も、今のブライトエルフの集落と同じように、全く同じ魔王の呪いにやられたんです」
「え……?」
「そのときは、私一人だけが呪いにかからなくて、しかも以前この村からいただいたユグドラシルの秘薬も全く効かなくて……もう私一人だけに、なってしまうところだったんです。……でも」
そしてエッダちゃんがこちらを向く。
エッダちゃん、柔らかく目を細めながらにこっ。
ちっちゃいエッダちゃんのどこか大人びた微笑みに、私はどきっ。
はにかみながら、頭をぽりぽり。
くすりと笑ったエッダちゃんが、再び前を向く。
「そのとき、きゅうけいさんが山に放置してあった、金貨何十枚って長に聞いた薬を勝手に何本も使って、家族を治したんです。怒られるかと思ったんですけど、きゅうけいさんはむしろその逆で、まごついてる私を尻目に、古竜のシルヴィアさんの背に乗って、集落を救ってくれました」
「……その、魔族のきゅうけいさんが?」
「はいっ」
うんうん、そんなこともあったねー。
ゲームと同じように自動消滅するかな、なんて適当な理由で山に放置していたエリクサーだけど、あれがエッダちゃんの出会いになっているんだから、何がどう影響するかなんて分からない。
バタフライエフェクト、っていうんだっけこういうの。
気まぐれな一手が、予想も付かない影響を出す。
だから私は、今日も良い影響を信じて動くのだ。
そうしてエルフ美女さんとの信頼も、シーナさんとエッダちゃんの二人のおかげで得て、私は次の家へと向かう。
今日は一日、ずっとそんな調子だったのだ。
でもダークエルフの集落の時より時間がかかって、サンドイッチとか食べつつも辺りはすっかり夜。
シルヴィアちゃん心配してないかなー。
「ほんとにきゅうけいさんの薬、すごいっすね。そのクリエイトの魔法、自分にも使えると思うっすか?」
「うーん……最低限、2000はあった方がいいかなーって思うよ」
「そこが最低限……うちの両親でも厳しいっすね……」
うーん、数字がインフレしすぎていて忘れかけているけど、レベル四桁の世界って本当にハードル高いんだ。
ゲームみたいに『ここでレベル9999までレベリングできます』みたいな攻略サイトがまとまってるわけじゃないもんね。
「大体終わって……ああ、後はあそこっすね」
シーナさんが次に向かったのは、村の中心。
この集落に来るとき、私はシルヴィアちゃんの背中の上で、おろおろしながらビーチェさん見てたわけね。
だから森の方はあんまり見てなかった。ビーチェさんは雲とか見てたし踊ってたし。
実はさっきから、町を走っているとちらちら木々の葉の間から、おっきい木が見えるんだ。
なんてことはない、間違いなくあれがユグドラシルでしょ。だってゲームで見たことあるし。
町の様子が全然違ったので、最初は連想できなかった。
あと夜になると、なんかすっごい発光してるのユグドラシル。だからとにかく夜になるほど目立つ。
そして今、自分の目で、ユグドラシルを至近距離で見てるわけだけど……!
「————大きい〜っ!」
すごい! もう大きいとしか言えないぐらい大きい!
そしてぶわーっと光っててもうなんていうかちょうすごい!
語彙力が破滅してる! しかしこれはもう、下手に凝った感想も言えないぐらい、すごいとしか言いようがない……!
VRが立体的に見えるのは、両方の目を使って立体視しているからってのは知ってるけど。
液晶ででかいもの見るのと現実ででかいもの見るのは、平面だから迫力違うってのも知ってるけど。
もうとにかく、大きいやつは『大きい』というだけで、迫力があるってぐらいの大きさ。
初めて修学旅行で数々の建造物を見た時の、あの感覚を思い出すよ。
あと私のレーダーが、ただのマップではなく生命の塊であるように目の前の樹を認識している。
やっぱこの樹すごいわ……何かこうゲームで知識として知っているだけなのとは、全く違って特別に感じる。
エッダちゃんも隣に来た。
「ですよねぇ〜。私も最初に見た時は驚きましたけど、いつ見ても驚いちゃいます。ユグドラシル、ほんとにすごいですぅ……」
うんうん、そりゃもうこれ見て驚かない人はいないね絶対。
それぐらい、あまりにオンリーワンな存在感。
修学旅行はブライトエルフの集落、来た時よりも綺麗にして帰りましょう。
ってなわけで樹の周りにゴミ落ちてたのを拾っておきました。
修学旅行でお寺に来たとき、ゴミのポイ捨てを拾った気分。あれ先生に大げさに褒められて、ちょっと照れちゃったよね。
そのユグドラシルの近くに小屋があり、私はそこに住んでいる管理人さんを治療した。
一連の流れは似たようなものだけど、それでも治療を終えて、小屋を出た。
「……ありがとうございました。きゅうけいさん」
「どういたしまして! 次は?」
「終わりっす。今の小屋が最後……ほんとお疲れ様っす、正直マジ尊敬すわ」
シーナさんの言葉に、隣の光る樹を見ながら大きく溜息をついて腕を伸ばす。
身体から緊張がほぐれていく。
そして私は……大声で宣言した。
「おわったーーー! つかれたーーー! きゅうけいを希望しまーーーす!」






