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Episode 01 〜転入生〜

〜・〜

 私は普通の女子高生生活を送っていた。友達と雑誌を読んだり、誰と誰がどうなったということは積極的に耳を傾ける。陰口だって、たまに叩く。どちらかというとグループの中心にいる方で、よく小説では主人公のクールな女の子にくだらないと言われるようなタイプだ。別に私はそれが当たり前だと思ってたし、なんの疑問も不満もなかった。そんな、なんの変哲もない日常に、彼女がやってきた。


「皆、新入生だぞ。桜咲菜々さんだ。仲良くしろよー。じゃあ桜咲さん、一言みんなに。」


「桜咲菜々です。」


「他に何か言いたいことはないか?」


「ないです。」


「そんなことはないだろう。まあ、いいだろう。そこ座れ。」


 髪がうすいので波平さんというあだ名の先生が、気まずそうな表情で私の隣の席を指差した。 


 菜々という転入生はとにかく愛想が悪かった。彼女は無表情だった。彼女は一匹狼タイプなのだろう。関わらないようにしよ。そもそもこんな頭悪そうで、彼女から見ればきっと低俗な私とお高く止まっている彼女が関わるきっかけなんてなさそうだが。


 休み時間になり、私は沙織達のところに行って声を低くして言った。


「あの新入生愛想悪くない?」


「わかるー」


「マジそれな」


 いつもどおり転校生の周りには人だかりができていたが、すぐにみんな彼女から離れて行った。


 明里、雪乃、沙織がいつメン、いつも一緒にいるメンバーだ。去年まではひなのもいたんだけど、転校した。原因は、私達のいじめだ。今まで仲良くしてたのに、急に反発し始めたのだ。頭だって私より全然悪かったのに急に「もう、あんた達とはいられないかも。バカバカしくなってきちゃった。そろそろちゃんと勉強とかもしたいし。」なんて言って。この一言で私達の彼女への怒りが爆発した。


私と沙織が中心になって、いじめた。どっちが先にいじめようと言い出したのかなんて覚えていない。体育着を切り裂いたりかなりひどいことをしたが、ひなのは全く気にしてないようだった。しかし今までの明るい性格が嘘だったかのように彼女は静かになった。気が付くと彼女の成績は私より良くなり、ついには有名私立高校に編入した。結果的には良い道に進んだんだから、罪悪感など全く無かった。むしろ羨ましさはある。昔から毎日勉強をしないと不安になる私は、他の子に比べて勉強時間が長い。なのに成績はたいしていいわけではない。だから、彼女の成績の上がり具合に嫉妬して、それもいじめの後押しになったのだろう。


 あの新入生もいじめられるのかな。なんとなく私はあの子はいじめられない気がする。ただ、あの愛想の悪さは問題だ。


〜・〜・〜

 転校が、決まった。良かったと思ってる。これを機に楽に生きよっかなとも。もう疲れちゃったから。


 別にいじめられていたわけじゃない。ただ、クラスの女子たちに合わせて笑っているのに疲れただけ。テレビのイケメン俳優に興味が無いわけじゃないし、友達の恋愛事情が気にならないわけじゃない。だからそういう意味では悪くなかったと思う。たぶん、周りに合わせて意見を言って、面白くもないことに笑うことが嫌なだけなんだ。


 天体観測が天ぷら感染に聞こえたから何?ただの聞き間違いじゃん。本人はほんとに面白いと思っているのだろうか。それとも、生き残るための嘘なのだろうか。もうそんなことを考えながら毎日を過ごすのは嫌だ。もしかしたらもう友達すらいらないのかもしれない。


 少しさみしい人のような気もしたが、そんなことはない。こっちのほうが断然かっこいい。


 新しい学校の初日は完璧だった。陰口叩かれたっぽいけど私はもう、気にしない。


 私は無理に周りを理解しようとしなくなった。どんなときも適当な事を言ってれば周りの女子はそれで満足なのだ。私は愛想笑いがかなりうまいと思う。例えば、机に突っ伏して肩を震わせて音を立てていきを吸えば爆笑してるように見える。だけど、常に爆笑していてはおかしい。そんな風に考えながら、面白くないことに作り笑いをするには、かなり体力がいる。でもそうでもしないと何をされるかわからなかった。


 だから、私は一匹狼になることを決めたのだ。とっつきにくいけど、いじめるほどではない。そんな存在になればいいのだ。



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